ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか   作:その辺のおっさん

9 / 68
ブラフマーストラは武器や眼から放たれるだけではない





今回、アンチ・ヘイトと感じられる箇所があります、不快に思った方は申し訳ございません


第4話

『豊穣の女主人』に団体様がやってきてから、隣に座っているベルは耳まで真っ赤にしてカウンターに突っ伏してしまっている。最初、カルキは何事かと思ったが、入ってきたとある人物でどうしてベルが突っ伏しているのかが分かった

 

「ほら、起きろベル、例の【剣姫】がいるぞ」

 

「いや、カルキさん、そ、そんなこと言ったってぇ」

 

そう、やってきたのは【ロキ・ファミリア】だったからだ、どうやら、ベルはあの人数の中から目ざとく【剣姫】を見つけたためこうなってしまったらしい、ダンジョンに女の子との出会いを求めてオラリオに来たくせに、女性に対して超が付くほどの奥手、そんな矛盾を持った少年がベル・クラネルという人物である。

 

「【ロキ・ファミリア】の皆さんはうちの常連さんなんです。彼等の主神であるロキ様に、私たちのお店がいたく気に入られてしまって」

 

傍から見るとおかしいベルの様子に気付いたシルがこっそりベルに教えている。そして、ベルの視線を追ってみると、ベルは周りの女性には目もくれず【剣姫】だけをカウンターに突っ伏しながら凝視していた。よくもまあそんな器用なことができるものだとある意味感心していると

 

「そうだ、アイズ!お前のあの話をきかせてやれよ」

 

酔っぱらっているのであろう、唐突に狼人が話し始めた

 

「あれだって、帰る途中で何匹か逃がしたミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ⁉そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」

 

「ミノタウロスって17階層で襲い掛ってきて返り討ちにしたらすぐ集団で逃げていった?」

 

「それそれ!奇跡みてぇにどんどん上層に上っていきやがってよっ、俺たちが泡食って追いかけていったやつ!こっちは帰りの途中で疲れていたってのによ~」

 

なるほど、5階層でベルが遭遇したミノタウロスは【ロキ・ファミリア】が逃がしたしまったと、そしてそのことを恥じるわけでもなく、酒の肴にすると……

 

「そんでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえガキが!」

 

駆け出しの何がおかしいのか、誰しもが駆け出しの頃はあるだろうに……

 

「抱腹もんだったぜ、兎みたいに壁際まで追い込まれちまってよぉ!可哀想なくらい震え上がっちまって、顔を引きつらせてやんの!」

 

狼人の・・・はて、名前は何だっただろうか、オラリオに来た頃に【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】についてはある程度は調べたが、取るに足らない小物しかいなかったので忘れたな……とカルキが少し考えている間に、話は進んでしまっていたらしく「アイズたん萌えー」とか笑い声や少し言い争う聞こえてくる。そして

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

とうとう我慢できなくなったのか隣にいたベルが店の外に飛び出していった。「ベルさん⁉」とシルも追いかけていったが、追いかけてどうするのか、追いついた後の慰めなんてただベルのプライドを傷つけるだけだというのにと思いつつ、残った魚の姿焼きでも食べようかとカルキが手を伸ばすと、

 

「あなたは追いかけないのですか?彼はあなたの連れでは?」

 

カルキの斜め後ろから店員であろうエルフが聞いてきたので

 

「追いかけてどうしろと?今、慰めの言葉をかけることの方が侮辱だろうに」

 

「何を当たり前のことを」と返すと、そのエルフはフッと笑った、いや、何が面白いのかと疑問に思っていると

 

「おいおい!兄ちゃん!正直に言えよ!【ロキ・ファミリア】が怖いって!」

 

あの狼人と同じように酔っぱらっているのであろう、別のテーブルからからカルキに対してそんな言葉が聞こえた

 

………怖い?誰が?自分(カルキ・ブラフマン)が【ロキ・ファミリア】を恐れていると思われている?そのことに気付いたカルキは唐突に笑い始めた

 

「フッ、ハハハ!自分が!【ロキ・ファミリア】を恐れる!?あんな取るに足らない小物の連中を!?いや!これは中々面白い冗談だ!ハハハ!」

 

あまりにも大声で笑いすぎたのであろう、今や、『豊穣の女主人』はカルキの笑い声だけが響いていた

 

「ほぉ?ええ度胸しとるなぁ?自分?」

 

だが、自分の【眷属】(ファミリア)を馬鹿にされたロキは黙っていられず、神の力(アルカナム)を解放しつつ、カルキに迫るが、カルキは臆した様子もなく、

 

「いや、すまない、ロキ神よ、だが、自分が【ロキ・ファミリア】を恐れない道理がちゃんとあるのだから、それは仕方のないことだろう?」

 

「ほぉ?どんな道理なんや?ゆうてみい」

 

どうやらさらにロキ神を怒らせてしまったらしい、もう周りはカルキ以外ロキの迫力に負けて何もできない状況なので、ゆっくりと椅子から立ち上がり、カルキは語りだす。

 

「ではロキ神よ、敢えて問おう、何故古代の人々は恐怖の象徴として(ドラゴン)を選んだと思う?モンスターは他にもいたにもかかわらずだ」

 

「……はぁ?」

 

唐突な質問にロキが答えに窮していると、カルキは【ロキ・ファミリア】の面々が座っているテーブルの間を歩きながら、朗々と語り始めた

 

「答えられないのなら教えよう、それは、(ドラゴン)には、人が及びもしない賢い頭脳、爛々とした(まなこ)、劫火を放つ巨大な口、どんな防具でもたやすく切り裂く鋭い牙と爪、禍々しい全身を覆う統一された色の鱗、そしてその鱗に覆われた巨躯、どこまでも飛ぶことの出来る翼、地面に降り立てばその場所から一歩も動かすことが出来ず、後退をしない強靭な脚、どんな人間でも一撃で殺すことの出来る尾、これらをもって(ドラゴン)は古代の人々から畏怖され、恐怖の象徴となったのだ」

 

「だが」、と一拍おいて

 

「もし、今、自分の目の前に、作り物の頭、復讐心で曇り切った(まなこ)、笑うことしかできない口、折れた牙と爪、ころころ色の変わる鱗、蛇か蜥蜴のような貧弱な体躯と人一人殺せない程の細い尾、縛られ、どこにも飛べない翼、偶にしか前に出ず、突っ立ているだけの脚、こんな(ドラゴン)が目の前にいたら、恐怖は微塵も感じられないだろう?……つまりはそういうことなのだロキ神よ」

 

このカルキの言い草に、ロキも、【ロキ・ファミリア】の面々も、周りの客も、『豊穣の女主人』の女将と店員も誰もが呆然として静まり返る中、フッとカルキは笑うと

 

「しかし、ここは酒場だ、酒場とは誰もが楽しく酒を飲む場であり、このような雰囲気にしてしまったことは自分に非があるだろう」

 

そう言うと自分の懐から持っていた金貨の入った袋を出して、近くにいたエルフの店員に渡し

 

「これは、迷惑料も入っている、ただ、出ていった連れは無類のお人好しだから数日後には代金を持ってくるだろう」

 

と言ってと堂々と『豊穣の女主人』から出ていった

 




言葉によるブラフマーストラ

豊穣の女主人でロキ・ファミリアをボコるSSは数あれど、言葉でボコるのはこれくらいではなかろうか、まあ、インド神話はたとえ話多いよねって



ドラゴンのたとえ話のイメージとしては、
作り物の頭→フィン
復讐心で曇り切った眼→アイズ
笑うことしかできない口→ティオナ
折れた牙と爪→ベート
ころころ色の変わる鱗→ティオネ
蛇か蜥蜴のような貧弱な体躯と尾→ロキ・ファミリアの団員
縛られ、どこにも飛べない翼→リヴェリア
偶にしか前に出ず、突っ立ているだけの脚→ガレス
となっています。ロキ・ファミリアファンの皆さん、気分を害されたらすみません、何でもry

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。