名探偵コナンのネタバレ満載回です。知りたくないよという方はブラウザバックをお願いします。
一時的に警察庁警備局警備企画課の下に就くことになり、私は赤井秀一というFBIのスナイパーを追いかけることになった。
赤井秀一って誰やねんって、本当は上司にツッコむべきだったのだろうけど、私は彼のことを非常識的な手段で知っていたので「あ、はい」と気の抜けた返事しか出来なかった。
赤井秀一───それは子どもの頃に観ていたアニメに出てくる登場キャラクターの名前である。
一応、仏教徒である私は輪廻転生という仏教用語を知っていた。
命というのは、エコ活動で欠かすことの出来ないリサイクルと同じ要領でグルグルと使い回されているという思想が輪廻転生だ。かなりざっくばらんな説明だが、間違いは無いはず。
そんなわけで、私は子どもの頃に見ていたアニメの世界に輪廻転生した。意味が分からない。こんなことって普通あるものなの?
何が死因で亡くなったのかは分からないが、生まれてから二十五年後に同僚の名前を見てこの世界がアニメだということを思い出した。
その同僚の名前は、風見裕也。
盆休みに久しぶりに再会した友人に連れていかれた映画で知った名前だ。
東京の片隅で中小企業に勤めていた前世の私が、久しぶりに取れた纏まった休みというのが盆休みであった。
年齢的にも周りがどんどん結婚していく中、一年ぶりに連絡を取った大学以来の友人は互いに結婚しておらず、長い休みを持て余すという理由で映画を観に行くことにした。
映画のチョイスを友人に任せていたら、在学中の頃より友人が
フロントで買ったパンフレットにはコナンくんと知らない金髪の人がアップで映っていたので友人に聞いてみた所、彼女の推しとのこと。
見たところ外人っぽいし、ジョディ先生達の仲間かな。
そして、挑んだ上映。
幼い頃に観た記憶しかないアニメの映画は、年の功ということもあって凄く楽しめた(土曜サスペンス○場が面白い年齢なのだ)。
今回、キーパーソンとなった友人の推しキャラのことは映画を観る前まで知らなかったが、彼が多くの女性ファンを獲得するのも頷けるカッコ良さを持っていることも分かった。
ってか、FBIじゃなくて、まさかの公安か、あの人。
純日本人ネームで呼ばれてたのにも吃驚した。
「やっぱ、あむぴは格好良いわー。安定のイケメンっぷり」
「小五郎のおっちゃん、まだ妃さんとより戻してないんだ……。ってか、コナンはまだジンと決着つけてないのか」
私がアニメを見たのが二十年程前だが、まだ原作終了への道程は長いらしい。
そんな風に思っていた世界へ輪廻転生。冗談じゃない。
そして、私の期間限定上司がこの人とくるものだから、この世界はもう私に死ねと言っているのかと穿ってしまった。
「駒沢さん。赤井秀一をまた見つけたと聞いたが、どの地点のことだ? この前は新宿のこのポイント、その前が米花町の駅前……。今回は、杯戸町か。奴がまだ東京を拠点にしているのは確かのようだな」
サラサラの金髪とアイスグレーの瞳がなんとも異邦人的な日本人。
我が友人や日本の女性の多くを虜にした“降谷零”、その人である。
私の上司は、一人の男に執着している。
こう言うと、昨今流行りのボーイズラブ的な感じがするが、恋愛的な執着ではない。
例えるとしたら、クロロとクラピカ的な感じだ。うん、あれは珍しく漫画まで買った。
映画を観終わったあと、私は降谷零のことをネットで検索した。
普通に映画以外の彼の立ち位置が気になったからだ。キーパーソンということもあって少し情が湧き、親しみを抱いたこともある。
久しぶりにアニメを見てみるかと、契約している動画アプリでアニメをサラッと眺めたが、仕事終わりの頭では視聴した記憶が残らなかったのだ。
そこで、インターネット上の様々な辞典サイト様にお世話になって、私は降谷零と赤井秀一の確執を知ることが出来たのである。
私の(期間限定)上司は昔、バディである幼馴染と一緒に国際的シンジケート組織に潜入したようだ。
そこで何の因果か、親元は違うが、同じ潜入捜査官である赤井秀一と幼馴染の三人でスリーマンセルを組むことになり、一時期三人は行動を共にしていた。
その折に、とんでもない悲報が舞い込む。なんと、一緒に潜入した幼馴染が
身に危険が迫った幼馴染は最後、赤井秀一が同じ潜入捜査官であることをバラし、古巣であるFBIの伝手を頼ることを提案されるが、間の悪いことに交渉最中、追っ手が二人の元へと迫ってくる。
赤井秀一までが潜入捜査官だとバレてしまうのは不味いと即座に判断を下した幼馴染は、情報が詰まった携帯越しに拳銃自殺を決行する。
だが、それが不幸なすれ違いの始まりだ。
なんと、二人に迫っていた追っ手は降谷零だったのである。
降谷零は、一目見て死んだと分かる幼馴染と、その幼馴染の前で佇んでいる赤井秀一を確認した。
赤井秀一もまさか、降谷零も潜入捜査官だと思わず、「彼は自分が手を下した」と言う旨を告げてしまう。
こうして、幼馴染を殺した男=赤井秀一という簡単な図式が出来上がってしまった。本当は某コント芸人も真っ青な、すれ違いまくった結末の結果に起こってしまった不幸な事故なのだが……。
そんな男───降谷零が今の私の上司である。誰か、変わってくれないかな。もう少し思い出すのが早ければ、そもそも警察官なんて職、目指しもしなかったのになぁ。
チベットスナギツネのように遠い目をしていると、「駒沢。降谷さんとこのハロにご飯あげてくれないか」と
このご時世では珍しいことに、野良犬を保護して飼うことにしたらしい私の上司の休みはとても不規則だ。そこで、彼の家族の世話がたまに仕事として部下の所まで回ってくることがある。
「良いですけど。降谷さん、あの家には女性を入れたくないって前に仰ってませんでしたか?」
「……嗚呼、そう言えば駒沢は女性だったな。大丈夫だろう、そもそも降谷さんのご指名だからな」
「え、まさか、そもそも女と思われていない……?」
私のそんな呟きを意図的に無視した同僚は、態とらしくパソコンと向き合い始めた。
私は(ネット様のお力を借りて)知ってるんだぞ。
貴方が、ソシャゲにハマってネット恋愛しかけたことを。
そして、その恋愛相手の挙動で我が上司と勘違いし、ネット恋愛に苦い思い出があることを。
私は知ってるんだぞ。
どうやら、己は赤井秀一を見つけ出すのが得意らしい。
今日は別件があったのでまだ登庁していなかったのだが、用事を済ませてタクシーを呼ぼうかと思っていた時に、たまたまあのトレードマークのニット帽を見つけてしまったのだ。
大阪人よりも早い足に、慌ててタクシーの運ちゃんに謝って彼の背を追いかける。
昔、私が視聴していた時はただの怪しいお兄さんだったのになぁ。
意味ありげに蘭姉ちゃんの前に現れて、それっぽいことを言っていくキーパーソン、それが彼のポジションだった。
でも、今じゃあ黒の組織のライで、FBIの赤井秀一で、三兄弟の一番上ってことまで分かっている。まさか、彼の妹が準レギュラー化するなんて、当時は誰も思わなかっただろう。
私なんて、その内死ぬんじゃないかって変なメタ推理をしてしまっていたし。ミステリアスキャラって、そういう感じの死に方よくするじゃん?
何度も細い道の曲がり角を曲がって、彼の背中を執拗に追い回してみるが、これはきっと向こうに追っていることがバレている。
だから、こんなにも入り組んだ道に誘い込まれているんだなと数回に渡る鬼ごっこで学んでいた私は、今回もきっと綺麗に撒かれるんだろうなぁと馴染んでしまった諦観を抱く。
これでも、公安に配属されるくらいのポテンシャルはあるんだけどなぁ。これだから、有能キャラは。凡人キャラは、精々彼等の引き立て要因でしかない。なんてグチグチ心中でいいながら、次の曲がり角を曲がったところで───。
気がついたら、前方一面が海になっていた。
さざめく波と、オーシャンビューと言いたくなる白浜を踏みしている足には直に熱が伝わってくる。
「あれ、ここ何処?」
赤井秀一を追っていたら、何処ともしれない海辺に迷い込んでしまった。
お手軽に読める話があと数話続きます。
導入なのでコナンのみですが、次回から世界がONE PEACEになります。
✤駒沢(主人公)
アラサー。前世もアラサー。普段は主に国家議員の案件を取り扱っている。しかし、某国家議員が黒の組織に追われたせいで降谷達と合流。年下上司でも素早く順応。風見ともなんやかんや上手くやれている。
✤赤井秀一
来年、多分映画張る人。知らない方も名前で検索エンジン掛ければ、見たことあると思います。
✤降谷零(安室透)
去年、映画張った人。本名で聞き覚えのない人は、偽名の方なら聞いたこともあるかも。因みに作者はリアル駒沢でした。映画を観るまで全然知らなかった。
✤風見裕也
ググれば、出てくる不憫さん。安室は知らなかったのに、この人は『純黒の悪夢』で知ってました。不思議なことに天海さんとこの方だけ記憶に残ってるんですよね。