拙作は過去編を取り扱うために捏造が凄いですが、それでも大丈夫な方は是非楽しんでいってください。
どうやら、私はまた転生したらしい。
海辺に落ちていた鏡で自分の姿を確認したら、The・日本人だった容姿が金髪・アイスグレーの瞳という某上司みたいな彩色になっていて「ひぇぇえええ」と小さく悲鳴を上げてしまった。
そして、その瞬間にこの小さな体で生きていた時分の記憶を一気に取り戻した私は、二度目の体験にがくりと肩を落としたのである。
嗚呼、また別の人間の人生からスタートかと。
赤井秀一は死神だった。
そんな結論がで終わった頃には、私も立派に成人前だ。
あまり海賊も来ない海域に位置どっていることもあって、島民達はかなり呑気者が多い。
だが、あまり来ないからと言って、確実に来ないなんてことはなく。
年に一度は上陸してくる奴等に対抗出来るのは、平和ボケしまくっている治安官と警ら隊だけで、この十五年の間に何度か危ない場面に遭遇したこともあった。
そこで、私の番である。
───なんでか、私の番なのである。
前世、私は(期間限定)上司として降谷零を持っていた。
そして日夜、米花町の導火線が短い犯罪者達と鎬を削りあっていた。
そう、意外と武力派なんです、私。
この小さくなった体が前世のように使えるかという不安があったが、それが杞憂なことは直ぐにわかった。
思い描いたように入っていく右ストレート。
回し蹴りもジャーマンスープレックスも、十時固めだって思いの描くままにやりたい放題だ。
まるで、某ドラゴンボールを集めるあの漫画で出てくる枷をつける系修行を前世ではしていたのかと思ってしまう程に体が軽いのである。
あんまりにも想像通りに攻撃がキマッていくものだから、ついつい羽目を外して暴れ回ってしまった。
その結果、漂着した海賊は全滅。
しかも、殆どの海賊が私によって地に沈められるという快挙が成し遂げられてしまった。島民達は目玉を飛び出させて驚き、私も目玉と舌を飛び出させて驚いた。
───こうして、私は故郷の
そんな私もいつの間にか、成人だ。
子どもの成長って、驚く程に早い。
そろそろ将来のことを考えなければいけないのだが、どうやら私の両親を含む他の島民達は、私がこの島の警ら隊に入り、ゆくゆくは治安官になるものだと思い込んでいるらしい。
まぁ、地方警察官も悪くは無いよねー。
前世では、バリバリのキャリア組で出世街道を爆走していた警部補だったんだし。
あの頃は地方の警察署に勤務することをよく夢想したね。
夜中のパトロールでもしながら地元の不良とかに注意して、「うるせー! ポリ公が!!」とか言われながら反発なんてされちゃってさ。
でも、五年くらい経ってからある日入った定食屋。そこで、あくせく働く元不良がねじり鉢巻姿でホールを回しててさ。思わぬ再会を果たすんだよね。「あ、あの時のポリ────警官さん」
彼は、私に空いている席を勧めたかと思えば、お冷とほうれん草のお浸しをサッと出してくる。
「ちょっと時間がかかるんで、ほうれん草のお浸しでも摘みながら待っててください。直ぐに注文の物持ってくるんで───料金は気にしないでください。おれ、あの時、貴方に補導してもらったから今があるんです。感謝してます」
ああー! チープな展開だけど、こういうのが欲しくなるよね!
公安なんてさ、家族や友達との縁は薄くなるし。
大体取り扱っている事件が大きいから、家に帰れることなんてあんまり無いし。
結婚なんて、夢のまた夢。出会いなんてあるはず訳もないし。
いっつも、小休憩の度に移動を考えたよね。
もうこんな所にはいられないって。
でも───そうやって耐えられなくなる度に運良く事件が解決したり、多くの人を助けれたりして神様から飴を貰っていた。
その達成感を味わうために次も頑張ろうっていうループに入っちゃうから、結局はズルズルと赤井秀一を追っ掛けてこんな所に転生するまで、公安部に居続けてしまったんだよねー。
「私、海軍に入る」
気がついたら、この世界で最も大きな犯罪取締組織に入ることを決意していた。
私が転生したこの世界は、どうやら普通の犯罪者(トリックを使いまくる沸点の低い輩)は居ないようで、それよりも海を我が者顔で跋扈している海賊の方が犯罪率が高い。
そんな海賊達を取り締まる公機関が海軍だ。
こう見えて、長年公安で桜の紋に恥じないように正義を貫いてきたのだ。
自分でも思っている以上に正義感が強かったらしい私は、今世でも力のない民草を守るために自分の力を使うことを決意した。
「そうだ、自衛隊になろう」的なノリで、海軍になることにした私は、島民達の必死な引き締めを振り切って、海軍学校に履歴書を送り付けた。筆記テストも面接もなく、あっさりと合格通知が届いたことにより私が島を出ることが決定した。
そして───今日この日、私は生まれて初めて
だが、島を出る前にちょっと問題を解決していこう。
私の故郷は、そもそも幼子を
「キッドくん。私の代わりに君がこの島を守るんだよ。ちゃんと守れたら都会のお菓子たくさん買ってきてあげる」
「うっせー、ババア!! とっとと出ていくなら出ていけ!!」
「わぁ、ちょっとしか教えてないのに、いい蹴りしてくるなぁ」
炎のように赤い頭をポンポン叩いてお願いしたら、目にも止まらぬ速さで上段蹴りが飛んできた。降谷さんにはまだまだ及ばないけど、風見の野郎と同じくらいの威力はある。
だが、風見程度ではまだまだ。私は余裕綽々とキッドくんの蹴りをいなす。まだ六歳くらいのはずだから、この分だと将来は降谷さんとも張り合える立派なゴリラになっているだろう。
「いい? 男の海賊は金的だよ、此処を狙うんだよ。女の海賊は、下腹を狙いなさい。命の駆け引きしてんだから容赦なんていらないから」
股間と下腹を交互に指差して「此処と此処ね」とくどいくらい言い続けたら、「分かってるってば!!」って何故か頬を赤らめてキッドくんが金切り声を上げる。
「っつーか、なんで海軍なんて入んだ? オメェは此処にずっと居たらいいだろ」
生まれつき風見の野郎のように目付きの悪い彼は、普通に視線を交わしていても睨まれているような心地になる。うーん、強面も悪くは無いと思うんだけどねー。風見は気にしてたもんなー。
「私の正義を貫くためかなー? あら、意外と言ってみると格好良いなこれ」
「んだよ、それ。セイギなんてこの島を守ることでも貫けるだろ」
「もっと多くの人を海賊から救いたいんだ。理不尽な暴力から色んな人を助けられたら、それって凄く素敵じゃない?」
「……ってことは、おれら以外の奴等を救うために島を出るってことだろ。コマにとって、おれらはそのてーどの存在だったってことじゃねェか」
おや、何故か話の雲行きが怪しくなってきた。
普通に綺麗でクサイ話に終わる予定だったのに、今のキッドくんは他所に女を作った旦那を見るような目で私を見上げている。
「お前なんて、海軍でもどこへでも行っちまえよ。もう知らねェ」
そんな捨て台詞を吐いて、キッドくんは踵を返し走っていってしまった。彼の小さな背中を惚けたように見送ることしか出来なかった私は、知らず眉根を下げる。
「そんなに慕ってくれてたとは、知らなかったなぁ」
素直に“居て欲しい”って言えないキッドくんの天邪鬼な台詞に頬をポリポリ掻きながら、彼との日々を思い出す。
ちょっと近所で悪さをしている悪戯小僧とキッドくんは有名であった。
『キッド』という名前にはとても聞き覚えのあった私は、もしや彼もこの世界に転生して、此方の世界でも気障な窃盗犯をしているのかと早とちりし、早々に補導したのも良い思い出だ。
怪盗キッドとは、なんの縁もゆかりもない彼は、ユースタス・キッドという純朴な少年だ。逆立つような赤髪と齢六歳でありながら、アウトローも顔負けの眼光の鋭さを誇る彼に手を焼いていた島民達は、これ幸いと私に彼の教育を頼んできた。
問題児を更生させてくれと言われてしまったら、元警察官としてもやらざるを得ない。
ちょっとしたお小遣いが発生することもあって、私は彼の悪さをする体力を削るために“降谷式特訓〜新人公安向け〜”を施すことにしたのだ。
私の上司は、結構面倒みの良い人だ。
時間が空いていたら部下の訓練に付き合ってくれるし、美味しいご飯もたまにくれる。
私は訓練嫌いなので一度も頼んだことがなかったのだが、風見の策略によりいつの間にか場をセッティングされて、しょうがなく何度か彼と拳を交じらせたことがあった。もし、元の世界に帰れたら風見にプリンをたかってやる。
勿論、例の映画でも大暴れしていた降谷零に勝てるはずも無く、私はずっと惨敗を喫している。あのゴリラ、一時間も試合しているのに息一つ乱さないって本当に人間辞めてると思う。
そんな降谷さんの考案したトレーニングで、名前のこともあって放っておけないキッドくんと遊んでいたら、意外な程に懐かれていたのだ。
これは、私の不良更生の夢想も叶えられたのでは?
まさか、全然違う世界でその夢を果たすことになるとは思いもしなかったけれども。
まぁ、そんなこんなで、私は島民達に惜しまれながら海軍学校の門を叩いたのである。
軽いジャブでキッドの未来がバタフライ・エフェクトしてます。
✤コマ(主人公)
海軍の女性は鳥から名前を頂戴してる方が多いので、主人公は駒鳥から借りました。公安→海軍にクラスチェンジ。直ぐ海軍に入ったことを後悔する。
✤ユースタス・キッド
彼の発言を見るに、幼少期からなかなかヘビーな過去を送っているのではということに。拙作では海賊慣れしていない島民が手練の海賊により蹂躙される→キッドは島民を惨殺場面を見せつけられた上でその海賊たちに働かされる→けどどっかで力(悪魔の実)を手に入れ、無双始める→シャボンディー諸島編的なふんわり過去捏造で行こうかと思います。