内特1課―内閣府特別調査局1課―の事件簿   作:しゃもじん

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記念すべき第一話
今回の主人公の名前は樹神彰、コールサインはケント。

こんな感じで、短編でちょっとした事件簿みたいな感じにやっていきたいと思います。ときには推理モノ、ときにはバトルもの、そんな感じですね。


Case1:大脱出

 中身のほとんどを失って、すでに原型を留めなくなりつついる包装から煙草を取り出し、そして口に咥える。すぐにそこのコンビニで買った安物のライターで火をつけ、ゆっくり、長く息を吸う。口の中に漂う芳醇な香りはこんなときでも変わることなく、俺を満足させてくれた。

 

「おい、樹神。公用車は禁煙だろ」

「んなこと知ったもんか。それとも窓を開けるほうがお望みか?」

 

 運転席に座る相棒を横目で見る。任務前の、俺の喫煙グセは局内でも比較的有名になってしまったお陰で、いつしかいつも同じ車をあてがわれるようになっていた。時刻は深夜2時を少し過ぎた頃合い。マトモな人種ならこの時間に大人数で出歩くなんて真似をすることはない時間だ。

 

「ったく、ここはお前の家じゃないだろ。後ろの席に置いてある着替え、正直、臭うぞ」

「煙草とどっちがお望みだ?」

「どっちも遠慮したいね、クソッタレ」

 

 露骨すぎるぐらいに悪態をついてみせる相棒の反応を意にも介さず、ひときわ大きく息を吐く。口から立ち上る紫煙は車内を満たし、うっとりとした陶酔感すらもたらしてくれる。任務の特性上、カーステレオも付けられないこの暗闇の中で娯楽なんて、この程度が限界だった。

 

「グリフィンよりチームワン、網にかかった」

「……了解、状況を開始する」

 

 くつろいで居たところに入る無線で、否が応でもスイッチを切り替えなければならない。まだつけたばかりの煙草を捨てるのは勿体ないが、吸ったまま外に出るほど間抜けな真似も出来ない。ドアをそっと開け、外に出ると隣の相棒もついてきた。

 

「さて……ケント、お前はブツを追いかけろ。俺は周囲の状況を確認する」

「よし、任せたぜ」

 

 相棒が車のトランクから装置を取り出し始める。一方の俺は車から速歩きで離れ、PDAに表示された追跡対象を目指して闇に包まれた街を進む。

 今日の任務は、監視対象が持っている盗品の奪取。仮にも政府の機関だというのに、こんなこそ泥みたいな事をするハメになるとは、なんていう愚痴を上司に言ってみたが、当然一笑に付されてしまった。

 

「やれないことはない、がワシらのモットーなのを忘れたか?」

「そんなの初めて聞きました」

「そりゃそうだろう、ワシが今作ったからな」

 

 そんな感じで、マトモに取り合ってくれるわけもなく。嫌々ながらもこういった真似をさせられている。

 

 

 

「周囲の監視は居なさそうだ。そっちはどうだ」

「まだ尾行に気付かれた様子はない。ただ、何でまた能力が不明なんだよ」

「知るかそんなもん。そもそもこいつらの目的も何も分からん以上、そんなキモの情報がわかるワケないだろ」

 

 相棒にも軽く愚痴りつつ、暗闇の中を大勢で進んでいく奴らを追いかける。数は多いが、その立ち居振る舞いからしてそれほど訓練された連中ではなさそうだ。足音も大きく、周囲への警戒も甘い。こりゃ、忍び込む前にコイツらまとめて片付けたほうが楽なんじゃないだろうか。

 

「……あのな、今日の任務はあくまで証拠品を持って帰るだけだからな」

「まだ何も言ってないだろ」

「わかるよ、お前のことだからな」

 

 何でもお見通しみたいな感じが気に食わない。が、しかし、あいつの能力を知ってしまった今は、事実すべて見られているのだから反論は封じられてしまう。敢えて聞かなかったフリをして、また黙々と奴らの追跡を始めた。

 

「奴らは建物に入った。こっちもついていくぞ」

「了解、周囲の見張りが増えた様子もないから安心しろ」

 

 音もなく建物の中に忍び込む。正面の衛兵を避け、裏口をゆっくりと開いてみる。おまけ程度に見張りが立っていたが、ものの数秒でそいつの意識は闇の中に葬ってやった。

 

「さて、そっちでブツの場所はわかるか」

「とりあえず上層階なのは確定だ。それ以上の情報はわからん」

「そうか、なら階段を上がって強行偵察と行こうか」

 

 階段を駆け上る。途中で見張りに見つかる可能性を多少は考慮していたが、階段に見張りを立てる余裕は無いらしい。あっさりと最上階まで登ってしまい、正直拍子抜けだ。

 

「そっちは何か分かったか」

「いいや、ま、お前が見に行けばいいだろ」

「そりゃそうだな」

 

 軽口を叩きながら、防火仕様になっている扉をゆっくりと開く。ボロっちいビルということもあって、ドアを開くときにきしむ音が聞こえてきた。ここで音を鳴らすことになるのは想定外だが、ここまでの様子からしてロクに訓練された連中ではないだろう。そんな慢心がそこにあった。

 確かにそこに、目的の品はあった。しかし、さっきのドアの音で気付かれたのか、その品を囲む二人が周囲をキョロキョロと見回し、ブツから離れようとしない。不意に、踏み出した先にあった空き缶を踏んづけてしまう。大きな音を立てて転がるそれは、相手の意識を奪うのに十分だった。

 

「おい、誰だ!」

 

 呼びかける声を無視し、彼らの意識の外から忍び寄る。そして、机の上に置かれた物を奪い取って駆け出す。気付かれなければ御の字だが、果たして。

 

「おい、待て!」

「チッ、やっぱりダメか。おい、プランBだ!」

「はいよ、こっちは準備OKだ」

 

 すぐに明かりがすべて消える。一時的な停電。相棒が作動させたツールが周囲から明かりを奪っていく。一気に、周囲の区域が闇に沈んだ。やはり闇は落ち着く、なんていう感慨に浸る間もなく、奴らの動きを伺おうとした刹那、頬の横を高速の物体がかすめていく。

 

「貴様、逃さんぞ」

「あいにく、今日は鎮圧まで賃金に含まれて無いんでね」

 

 奴の懐に拳銃が入るほどのスペースはなかった。となればこの弾丸が奴の特異能力か。それならさっさと逃げるが吉だ。俺だって痛い思いはしたくない。任務を果たせればそれで十分だ。

 

「よっ……っと、それじゃ、次は塀の中で会おうぜ」

「ふざけるな、待て!」

 

 スッと割れた窓枠に立ち、そのまま飛び降りる。眼下の地面はまだ遠い。ポケットに手を突っ込むと、残り少ない煙草が指先に触れた。勿体ないが、元々このつもりだ。取り出し、指先に力を込める。俺の質量のほとんどを込めたソレは、地面めがけて落ちていく。初速をつけてやったお陰で俺よりも早く落ちていくそれが地面に到着したとき、耳をつんざくような轟音が聞こえた。

そしてすぐに、ふんわりと俺が着地する。そう、特異能力持ちを狩るのは俺たちみたいな能力持ちに限る。今回はどういうわけか、警察が先に能力持ちの情報を手に入れていたらしく、俺たちに任務が下ったというわけだ。

 

 俺の能力は、質量の付け替え。手にした煙草に俺の質量の殆どを送り込み、先に地面に落とす。そうすることで、俺自信はほとんど質量を失っているから落下の威力は軽減され無傷で脱出できるという寸法だ。周囲の地面に凹みを残してしまったみたいだが、まぁ気にする必要もないことだ。

 

「おいおい、またかよ」

「それで、このブツはどうする」

「すぐに警察がやって来る。そこに渡してくれ」

「あいよ」

 

 地面に突き刺さった煙草を抜き取り、そして火を付ける。質量を元に戻しているから、それは思った以上にアッサリと抜け、口で咥えることも造作ない重さになっていた。

 

「さて、と。奴らは追ってくる気はないんかね」

 

 後ろからはけたたましいサイレンが鳴り響いていた。これを警察に引き渡したら今日の任務は終了。さっさと帰って、温かい布団でしっかり休ませてもらおう。

 




最後のシーン、主人公の貧乏性ここに極まれりって感じですね
これからもこんな感じで書きたいので、よろしくお願いします。
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