続くかどうかはしらぬいです
「叩き潰せ!1隻も残すな!!」
戦場の砲声を掻き消すほどの怒声が、紺碧の海に響き渡る。数多のKAN-SENが各々得物を振るう中、指揮官移動用らしき軽装の
「指揮官殿!?無闇矢鱈に御座船で前へ出るのは辞めてくだされとあれほど…!庇いきれませぬ!ここは拙者らに任せ、後方にて督戦を!」
白い軍服に黒々とした長髪を靡かせ、手に日本刀を持つ艦船…重桜所属、高雄型重巡洋艦一番艦、高雄が洋上から声をかけるが帰って来るのは叱責のみ。
「高雄、お前俺を庇う暇があるなら前に進め、前に!1歩でも旗艦に迫れ!1隻でも多く沈めろ!」
「雑兵の首とそなたの命、代えられるものではないのだぞ!」
「だから旗艦を仕留めろと言ってんだろうが!!」
注文が酷くなっている、と高雄が文句を言う暇もなく、数発の砲撃が男の乗船の真横を掠めていく。しかし男は顔色一つ変えることなく、どころか嬉々とした声を挙げて指揮刀を振り上げた。
「良ォし!セイレーンの下手くそ共がここまで照準合わせられるならお前なら当てられる!撃て、高雄!旗艦狙ってぶち抜けぇ!!」
目は爛々と輝き、今にも海面に飛び込みそうな程身を乗り出す青年に、高雄は最早溜息をつくしかない。
「無茶もせめて艦種の違いを考慮してから言っていただきたい…が」
轟音一閃。蒼い光の尾を引いて、3連1射の高雄の主砲が敵の旗艦らしき巡戦に突き刺さる。しかし、重巡の一撃ではその装甲を傷つけても撃沈までは至らない。無論高雄とてそんな事は百も承知。
「この装甲、火力を頼れと言ったは拙者!なら応えずば武士が廃ろう!全砲門開け!悪、即ち断つべし…
世界一の技術力と讃えられる鉄血から譲り受けた(というより半ば強奪したと言った方が正しい)主砲から、霰の如く弾丸が発射される。高雄型特有の「全弾発射」は彼女の前方を大きく薙ぎ払い、旗艦までの道を切り開いた。
「艤装解除ッ!!」
腰に据え付けた砲身を解除し、居合刀だけを左手に帯びた高雄は力強く水面を蹴る。彼女の一蹴りは数十メートルを優に飛び、5足目には既に
鯉口を切り、6足目。
柄に手をかけ、7足。
そして―――
「御首、頂戴仕る」
抜刀、交錯、断首、納刀。
8足目にて止まった高雄の背後で、真っ赤な飛沫が海面に映えた。
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突如として洋上に現れ、地球の7割を占める海を我がものとした謎の敵対勢力、セイレーン。故郷を離れ、奴ら、そして袂を分かったアズールレーンとの戦いに没頭して幾年がたっだろうか。
「美事!御美事!!」
なんて考える事もなく、海洋軍事国家、『重桜』艦隊の指揮官はセイレーンの上位個体を討ち取った部下を無邪気に褒め称えていた。戦争が始まって殺し合いの場にいるのだ、そんなものに思いを馳せてもどうにもならない。
「ふぅ、またつまらぬものを斬ってしまった…」
最も、彼が手足の如く使う艦隊の要、高雄は些か違った。彼女は義を重んじ、納得がいかなければ軍属の身ながら剣を置くことも厭わぬ武人肌。祖国の首脳陣からすればなんとも扱いにくいKAN-SENだろう。
「それで良い。いや、それが良い」
だが、自分のように考え無しに戦い続ける馬鹿よりよっぽどマシだ。彼女の在り方は好ましい。護国のKAN-SENとしてではなく、1人の人間として。
「指揮官殿、無事で何よりだが少しは命を大切にしてくれぬか。無論拙者の力の及ぶ限りお守り致すが、幾らなんでも限界というものがある」
「俺は要領悪いから前に出てこの目ん玉で戦況見ねぇと指揮取れないんだよ」
「だがそなたを失うような事があれば…!」
「へーへー、愛しの高雄ちゃんに想われて指揮官感激ですよー」
お小言にそんな軽口で返すと、途端に高雄が言葉に詰まる。いつもならおっ被せて怒鳴ってくるんだが、とそちらを見やると大層珍しい表情をした秘書艦がいた。
「あ、な…!?こっ、ここは戦場だぞ…!?いきなり、そんなこと…!」
今にも爆発しそうな赤い顔に、パクパクと開閉を繰り返す唇。見開かれた美しい琥珀色の瞳を見て、指揮官の中の嗜虐心がゾクゾクと唆られる。後でしばかれるんだろうなとは思いつつもあっさり欲望に白旗を挙げ、彼は艦隊のメンバーに見えないよう高雄の頬に手を伸ばした。
「今は勝ち戦だ。この話は後で、な。……夜は部屋の鍵、空けとくぞ」
「っ…承知、した…」
何を想像したか、腕で己の身体を強く掻き抱く高雄の首筋に1つ口付けを落とす。艶っぽい吐息を間近に感じながら、名残惜しくも指揮官は背後を振り向いた。
振り向いたのだが。
「戦闘後の労いが姉と上司の惚気とか新手の嫌がらせか、ハラスメントか」
「英雄色を好むというやつだ。強者にしか認められぬ特権、それくらい許してやれ、摩耶」
「ぼぼぼ僕はえっちなのはいけないと思います!!!」
「………盗み聞きは『見せつけてるのはそっちだろうが!!!!』……すんません」
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大洋の遥か向こう、かの技術大国鉄血海軍本部。その執務室では、1人の男がくたびれた軍帽を弄び、楽しそうに地図を眺めていた。
「重桜から打電あり、セイレーン大艦隊ヲ破ル、か。上位個体も湧いただろうに、あの馬鹿中々どうしてやるものだ」
傍らに座るのは、艶やかな紫色の髪に左眼を眼帯で覆った女性。男とは対象的に、靴を踏み鳴らしている。
「他人の戦果は聞き飽きた。ロイヤルへ殴り込みをかけるのはまだか」
「そう言ってくれるな、シャル。ティルも迎えに行かねばならんし、シュペーに傷を付けたお嬢様の艦隊も叩かねばならない。やる事は山積みだ。諸君の声を全て聞き入れていたら、満場一致でロイヤル本国へ雪崩込む事になりかねん」
くるり、くるり。人差し指にかけ、回していた帽子をはたと止める。
鉄血の頂点に立つ存在、指揮官が用いるには些か廃れたと言わざるを得ないそれ。
しかし、それこそ今の鉄血を支える反抗の灯火だった。
「もっとも、その筆頭は他ならぬ私だがね」
その一言が引き金かのように、部屋がどす黒い気に支配される。
シャルと呼ばれた女性が思わず腰を浮かす程の殺意。先程まで不敵な笑いを貼り付けていた男の顔からは、一切の表情が抜け落ちていた。
「彼女が遺したモノを、みすみす手放す訳にはいかん。私にはこれを守り、拓き、そして解き放つ義務がある。一時期の感情で暴発させるなど言語道断」
汚れ、擦り切れ、明らかに襤褸と化した軍帽を被り直す。受けた屈辱を今一度確かめるか如く、深く、深く。
「かの宰相も復仇なぞ望んではいるまい。彼女の眠りを妨げては悪い」
帽子のつばに掛けられた右手、その薬指。鈍く光る銀色の指輪を目に収め、シャル…シャルンホルストはただ項垂れる事しかできなかった。
「すまない…軽率な事を言った」
「気にしてくれるな。シャルが言うようにひとつ意地を見せねばならぬのも事実ではある。……ふむ、嫌がらせがてら………」
指揮官の指先が地図の上を泳ぐ。
数瞬迷った末、彼が指し示したのは碧色の焔海。
「サディアとロイヤルの仲でも裂くとするかね」
碧き航路の守り手と、その高邁なる思想に反旗を翻す愚者。数え切れぬ程の犠牲を払い、正義は貫かれ悪は淘汰された…。
そんな決まりきった台本が、この瞬間、確かにぐらつき始めた。
拙者最強!拙者最強!!うぉぉぉおおお!!
という事でレッドアクシズの指揮官話でした。
イメージはアレです、某宮崎生まれの捨て奸野郎と牛乳大好きスツーカおじです。
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