魔王と救世の絆   作:インク切れ

111 / 121
第108話 鋼鉄の最終計略! 金剛のメガハガネール

「ルカリオ、発勁!」

メガシンカを遂げたマキノのハガネールに対峙し、ルカリオが右腕を振るう。

その右手から燃える炎のような青い波導を放出し、ルカリオは地を蹴って駆け出し、ハガネールの胴体へ波導を炸裂させる。

しかし、

「ハガネール、アイアンテール」

結晶体の体へと波導を撃ち込まれたハガネールは痛みを感じる様子すら見せずにルカリオを弾き返し、巨大な尻尾を動かす。

攻撃を弾かれて逆に体勢を崩したルカリオへ、結晶体の尻尾を振り下ろし、ルカリオを吹き飛ばした。

「くっ……! ルカリオ!」

幸いにも鋼技は効果今ひとつ、ルカリオはすぐに立ち上がる。

だが今の一撃で、ハガネールがただ硬いだけではないということが分かった。攻撃力も決して侮れない。

「防御はピカイチみたいだけど、これならどうだ! ルカリオ、波導弾!」

両手を覆う波導を青い光弾へと変え、ルカリオが波導弾を放つ。

必中の光弾はハガネールに向けて正確に飛び、そのまま直撃した。

波導の炸裂を顔面で受けてしまい、ハガネールは小さく呻く。

(発勁よりは通りがいい……顔に当たったからっていうのもあるだろうけど、少なくとも防御と比べると特防は低いみたいだな)

メガハガネール突破の糸口をひとつ掴んだハルだが、あくまでもそれは糸口。

己の切り札の弱点は、マキノ自身も理解しているはずだ。

「ハガネール、反撃ヨ。地震攻撃」

ハガネールが咆哮し、大きな尻尾で床を乱打する。

大地が揺れ、地鳴りと共に衝撃波が周囲一帯へ放出される。

「ルカリオ、ジャンプ! そのまま竜の波導だよ!」

地を這う衝撃波を跳躍して回避し、ルカリオは両腕の波導を放出する。

発射された波導のは青い竜の姿と形を変え、ハガネールに襲い掛かるが、

「ラスターカノン」

突如、ハガネールの周囲を漂う金属片が一斉に輝き、無数の鋼のレーザー光線を放射する。

竜の波導がハガネールを捉えるが、ルカリオも回避が間に合わず、無数の光線を浴びて床に落とされてしまう。

「ハガネール、ストーンエッジ」

立て直したハガネールが床に尻尾を叩きつけると、地中から無数の尖った岩の柱がルカリオを狙って突き出てくる。

「ルカリオ、躱して発勁! 顎を狙うんだ!」

右手に波導を纏わせ、ルカリオが駆け出す。

襲い来る岩の柱を躱し、くぐり抜け、足場に利用して跳躍し、岩の柱を乗り越えてハガネールの眼前へと迫り、右腕を振り上げアッパーカットを叩き込む。

ハガネールが仰け反り後退する。物理技でも顔に対しては多少は通るようだが、

「ラスターカノン」

ハガネールの周囲の金属片が輝き、一斉に鋼エネルギーの光線が放射される。

空中にいたルカリオには躱すことができず、光線をまともに浴びて吹き飛ばされてしまう。

「っ、やっぱり硬い……! 動きは遅いけど、ここまで硬いと遅くても問題ないのか……?」

このハガネールは動作自体は極めて遅い。同時に攻撃を繰り出しても、ルカリオの攻撃が普通に先に当たる。

しかしそれを補って余りあるハガネールの強みは、やはりその圧倒的な防御性能。

胴体への攻撃は効果抜群の一撃ですらほぼ通用せず、顔に攻撃を当てれば通りはするもののすぐさま反撃を繰り出してくる。

さらに厄介なのが、遠距離への攻撃手段を持っていること。これにより遠くからの一方的な攻撃も通用せず、結果的に隙がほとんど少なくなっている。

「ハガネール、地震」

再びハガネールが大地を打ち鳴らし、フィールドを大きく揺らす。

「ルカリオ、躱して波導弾!」

ルカリオは跳躍して地震の衝撃波を回避すると、両手に波導を纏わせて青い波導の念弾を放つ。

「ハガネール、ストーンエッジ」

ハガネールが尻尾で床を叩き、守りの壁を作るように岩の柱を地中から突き出す。

複数の柱が波導弾の行手を阻んで食い止め、残った岩の柱はルカリオを狙って次々と突き出てくる。

「ルカリオ、砕くよ! ボーンラッシュ!」

波導の槍を手に取り、ルカリオが槍を構える。

青い槍を回し、突き出し、ルカリオは岩の柱を打ち砕く。

「なら、ラスターカノン」

だが休む間もなく、ハガネールがさらに周囲の金属片を輝かせる。

「迎え撃つよ! 竜の波導!」

手にした槍は姿を変え、竜の頭を形作る。

ルカリオが青い光の竜を飛ばすと同時、ハガネールも金属片から鋼エネルギーの光線を発射。

双方の攻撃が正面から激突、競り合った末、爆発を起こす。

「今だ! ルカリオ、波導弾!」

爆煙に視界を阻まれようが、波導の力を持つルカリオには関係ない。掌から発射された波導弾が爆煙の中を突っ切り、確実にハガネールを捉える。

だが。

「ハガネール、地震」

咆哮によって煙が吹き飛ばされ、そこに現れた光景は、全体重を乗せた巨体でルカリオを押し潰そうと迫るハガネールの姿だった。

「まず……っ!? ルカリオ、躱して!」

咄嗟に飛び退き、ルカリオは間一髪のところでハガネールの全身のボディプレスを回避する。

しかしハガネールが床に激突し、大きな揺れと共に衝撃波が放たれる。

さすがにこれを躱す余裕はなく、ルカリオは衝撃波を受けて吹き飛ばされてしまう。

「ぐっ……ルカリオ、大丈夫!?」

効果抜群の一撃を受けたが、それでもルカリオは立ち上がる。決してダメージは小さくないものの、まだ充分戦える。

「よし、ルカリオ! ボーンラッシュ!」

波導の槍を手に取り、地を蹴ってルカリオが飛び出す。

一気にハガネールへ近づき、起きあがろうとするハガネールの頭上へ飛び乗り、槍の刺突の連撃を浴びせる。

「ハガネール、起きなさい。ラスターカノン」

攻撃後即座に距離を取ったルカリオに対し、ハガネールはゆっくりと鎌首をもたげ、周囲を浮遊する金属片から無数のレーザー光線を放つ。

「ルカリオ、波導弾!」

ルカリオの持つ槍が青い念弾へ形を変え、掌から放出される。

鋼のレーザー光線と激突し、再び爆発を起こし、

「ハガネール、地震」

咆哮で爆煙は吹き飛ばされ、尻尾を床に叩きつけてハガネールが地揺れと共に衝撃波を放つ。

「地震で来るなら……ルカリオ!」

地を駆けるルカリオが跳躍する。

次のハルの指示が分かっているかのように、右手に燃えるような青い波導を纏わせる。

「発勁!」

ハガネールの懐まで潜り込み、波導を纏わせた右腕を振り上げ、ハガネールの下顎を殴り飛ばした。

だが。

「ハガネール、ストーンエッジ」

呻き声をあげて仰け反りながらも、赤い瞳がルカリオを捉える。

次の瞬間、ルカリオを囲むように地中から無数の岩が出現。

「捕らえなさい」

マキノがそう告げた直後、岩が伸び、ルカリオを岩の柱で囲い込む。

さらに複数の柱が重なり合って組み合わさり、脱出不可能な岩の牢獄を作り上げてしまう。

「っ、しまった……! ルカリオ、抜け出して! 発勁だ!」

岩の中から、ルカリオが波導を纏わせた掌を叩きつける。

バキリ、と砕けるような音が響いたので手応えはあるようだが、無数に重なり合った岩の柱の牢獄はそう簡単には壊れない。

「ハガネール、アイアンテール」

しかしルカリオに比べ圧倒的な重量を持つハガネールなら、質量に任せて岩の牢獄を破壊することも容易い。

ハガネールがゆっくりと結晶体の尻尾を持ち上げ、狙いを定める。

狙うは岩の下のルカリオ。周りの岩ごと、標的を叩き潰すつもりか。

「っ、ルカリオ――!」

ハルが叫んだ、次の瞬間。

ハガネールの尻尾が振り下ろされ、岩の牢獄が容易く粉砕される。

だが。

 

「まだ、終わってません! ルカリオ、発勁!」

 

刹那。

崩れた岩の牢獄の中から、青い光が迸る。

無数の岩の柱を破壊し、その下のルカリオを押し潰そうとしていたハガネールの尻尾が、止まった。

「ん……?」

予想外かつ計算外の事態に、マキノが怪訝な表情を浮かべる。

砂煙が晴れ、慌ててマキノが状況を確認すると、

「なっ……まさか、ハガネールの尻尾を、持ち上げているノ!?」

さすがのマキノも驚きを隠せなかった。

ルカリオの両腕が巨大に膨れ上がった青い波導を纏わせ、ハガネールの尻尾を食い止めているのだ。

「ルカリオ! そのまま、押し返して!」

ルカリオが目を見開き、瞳から青い光を放つ。

刹那、ルカリオの掌からジェット噴射のように青い波導が放出され、ハガネールの尻尾を持ち上げ、押し返した。

バランスを崩し、ハガネールの巨体がぐらりと揺れる。

「今だルカリオ! ボーンラッシュ!」

ルカリオの両腕を纏っていた膨大な波導が、体を覆うように展開された。

跳躍し、両腕に青く輝く波導の槍を携え、二刀流の怒涛の連続攻撃がハガネールを襲う。

「っ、何なのこの力……何より、この波導の量は……ッ」

マキノの機械の瞳が点滅し、身体中に波導を纏うルカリオを捉える。

「なっ……メガシンカによるシンクロ率、150%ですっテ……!? 私とハガネールでさえ、そこまでのシンクロ率に達したことはないというのに……!」

表情に驚愕を浮かべたままのマキノは、それでも自分に言い聞かせるように言葉を続ける。

「ルカリオはピンチになると波導の力を増幅されるポケモン……その波導の力は尋常ではないけれど、裏を返せばそのルカリオの体力も残り少ないということ。これはジムバトル、ジムリーダーとして私がやるべきことは最後まで勝利を求めて戦うこと! ハガネール、貴方も全力を見せるのヨ!」

ハガネールもまだ起き上がり、マキノの言葉に応えて咆哮を上げる。大気を揺るがし、周囲の金属片を激しく回転させ、自身を鼓舞する。

「ハガネール、ラスターカノン!」

ハガネールの周囲の金属片が、一斉に輝き出す。

そこから撃ち出される無数の鋼のレーザーはルカリオを狙うのではなく、一点に収束していく。

一点に集められた鋼の光線は次第に規模を増し、やがて極太の巨大なレーザー砲として発射される。

「ルカリオ! 波導弾!」

ルカリオの体を覆う波導が、全て掌の一点に集約される。

腕を開くほどの巨大な波導の光弾を作り上げ、掌を砲口として青い波導の砲弾を撃ち出す。

巨大な波導の念弾と、強大な鋼エネルギーの砲撃が正面から激突。

激しい音を立てて両者が競り合い、その末に、遂に波導の念弾が鋼の砲撃を撃ち破る。

遮るものがなくなった波導の念弾はまっすぐハガネールへと突き進み、着弾して青い爆発を起こし、ハガネールを波導の渦に飲み込んだ。

「ハガネール……!」

ハガネールの巨体が揺れて傾き、地響きを立てて床に倒れ込む。

動かなくなったハガネールの体が七色の光に覆われ、その姿をメガシンカ前の元の姿に戻す。

すなわち。

 

『ハガネール、戦闘不能。ルカリオの勝利です。よって勝者、チャレンジャー・ハル!』

 

「よっし……やったあああああ! ルカリオ、勝ったよ! 勝ったんだ!」

思わず走り出したハルに向かって、ルカリオも駆け寄る。

お互いに最高の笑顔を浮かべ、ハイタッチを交わす。

「……負けてしまったわネ。ハガネール、お疲れ様。立派な戦いぶりだったわヨ」

しゃがんでハガネールの頭を撫で、マキノはハガネールをボールへと戻す。

「それにしても、あのルカリオの波導の力、そしてあの規格外なシンクロ率。やれやれ、また研究したい項目が増えてしまったわネ。困ったものだワ」

発言とは裏腹に愉快そうな笑みを浮かべ、マキノはハルへと歩み寄る。

「ハルサン、お見事ネ。貴方とポケモンたちの圧倒的な絆の力、この身にひしひしと感じたワ」

「ありがとうございます。マキナさんのハガネールも、とっても強かったですよ」

ハルの返事にマキノは微笑み、パチンッと指を鳴らす。

するとバトルで穴や亀裂だらけになった床や壁が、みるみるうちに勝手に修復されていく。

「うわぁ……!」

「このバトルフィールドを構成している物質も、私が作り出したのヨ。ひとりでに傷を治してしまう優れものなの。応用が難しくてまだこの部屋でしか運用できていない試作品なんだけド」

まぁそんなことより、とマキノは続け、白衣の懐から小さな箱を取り出す。

箱の中には、小さなバッジが入っていた。灰色の歯車の形をしており、中央に白くGの文字が刻まれた、シンプルな作りのバッジだ。

「これはイザヨイジム制覇の証、ガウスバッジ。さあ、受け取って」

「はい、ありがとうございます!」

ハルのバッジケースに填め込まれたジムバッジは、これで七つ目。

ポケモンリーグ出場まで、いよいよあと一つだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。