魔王と救世の絆   作:インク切れ

119 / 121
第116話 一回戦・痺れ煌めく第一試合

ハルたちが会場に到着し、他の選手たちも続々とスタジアムのロビーへと集まってくる。

『選手の皆さま、お待たせいたしました。只今より、本戦トーナメント第一回戦の組み合わせを発表いたします』

アナウンスが流れるとともに、ロビーの電光掲示板に対戦カードが映し出された。

同時にアルス・フォンの大会アプリでも、同じく一回戦の組み合わせが見れるようになった。

「来たっ! さあ、私の相手は誰かな!?」

サヤナが真っ先に反応し、他の者たちも掲示板を眺めたり、あるいはフォンを開いたりと、対戦相手を確認していく。

「僕の相手は……あっ、この人たしか……」

ハルの一回戦の相手は、昨日スグリから名前を聞いた一人、ライタだ。ラルドと同じく、大会初出場で本戦に上がってきた、情報のないトレーナー。

「サヤナ、対戦相手どんな人だった?」

「うーん……知らない人。予選の動画を見ておこうかな。エリーゼさんは?」

「私もご存じない方ですわね。まぁ、誰が来ても全力でお相手するだけですけれど」

試合順はハルが六試合目、サヤナが四試合目でエリーゼは十試合目だ。ちなみにどうやら今回の大会は一回戦ごとに対戦相手のシャッフルがあるらしく、トーナメント表もないので二回戦以降の相手はまだ分からない。

「私たちの試合はまだ先だし、しばらくは観客席にいていいんじゃないかな?」

「そうね。出番が来るまでは、他の参加者の戦い方を見せてもらうとしましょう」

対戦相手も判明。まもなく、本戦の開幕だ。

 

 

 

『さあ、遂に開催いたしました、ポケモンバトル大会イザヨイリーグ! ある意味でポケモンリーグ大会の前夜祭ともいえるこの大会、優勝するのは一体誰なのか? まもなく、一回戦第一試合が始まろうとしているところであります! 実況は私、テレビコトブキのアマネがお送りしております!』

会場は既に熱気に包まれている。テレビ局から派遣された女性アナウンサーが、テンション高くマイクを握り、叫ぶ。

『なお、今大会は特別に、本日限りではありますが! マデル地方四天王のあるお一人を、解説としてお招きしております!』

アナウンサーの言葉に会場からは期待の声が上がる。開会式でチャンピオンに会えるだけでなく、四天王をもこの目で見られるのだ。当然だろう。

『それでは、ご紹介しましょう! マデル地方四天王が一角、水タイプのエキスパート! 「荒波の貴公子(タイダルスーパースター)」こと、カリスさんです!』

アナウンサーの紹介に続き、隣の男性がマイクを手に取る。

『こんにちは! 四天王のカリスです! 本戦出場者のみんな、激しく暴れる荒波のような、熱いバトルを期待してるよ! そして観戦者のみんな、大会の盛り上がりは君たちに掛かっている! 今日はみんなで応援して、叫んで、盛り上がろう!』

まるで童話や乙女ゲームに出てくる王子様を模したような白い舞台衣装のような服装の、青髪のイカした美青年だった。

カリスと名乗ったその男が呼びかけると、会場からは歓声に混じって次々と黄色い声援が飛ぶ。

「えーうそー!? まさかカリスさんが来てるだなんて! すごーい!」

横にいるサヤナも立ち上がり飛び跳ねている。会場の盛り上がりだけでいえばチャンピオンの挨拶の時以上だ。

「えっ? サヤナ、あの人ってそんなに凄い人なの?」

隣のサヤナに尋ねるが、テンション爆上げのサヤナにはハルの言葉などまるで聞こえていない様子。

「あら、サヤナったら……しょうがないわね。あの人はマデル地方の四天王の一人、水タイプ使いのカリス。四天王になったのは最近で、ホウエン地方出身のポケモントレーナーよ」

サヤナの代わりに答えたのは、後ろの席に座っているエリーゼ。

「だけど四天王でしょ? この盛り上がり方、チャンピオンより人気みたいですよ」

「それはね、彼にはたくさんの女性ファンがいるからよ」

ハルの疑問にエリーゼは再び答え、

「今やマデル地方のみならず各地でも名をあげる、時代を駆けるトップアイドルグループ『ブルースター』。元はこのマデル地方で生まれたアイドルグループなのだけれど、カリスさんはそのリーダーなのよ」

 

『information

 四天王 カリス

 専門:水タイプ

 異名:荒波の貴公子(タイダルスーパースター)

 最新リリース曲:「弾けろ☆Hydro cannon!!」』

 

「あぁ、なるほど……」

「まぁ、私はアイドルにはあまり興味がないのですけれどね」

それを聞けばさすがに納得だ。

マデル地方四天王、それに加えてトップクラスの人気を誇るアイドルとなれば、それは騒がれるわけだ。

『さあ、カリスさんに挨拶をしてもらったところで、準備が整ったようです! 只今より、イザヨイ大会本戦、一回戦が始まります! 第一試合、両選手の入場です!』

再びマイクを手に取ったアマネが、声高に叫ぶ。

『まずは現在ジムバッジ六つ、コロン選手! 前回のハダレタウン大会ビギナーランクの準優勝者、期待の新星トレーナーだ! ハダレ大会決勝での無念の惜敗をバネに、さらに強くなって大会の場に帰ってきたぞ!』

現れたのは、黄色いもこもこしたジャケットに丸眼鏡の茶髪の少年。

『そのコロン選手の対戦相手となるのは、今回の優勝候補の筆頭格! マデルの人なら誰もが知ってるメガシンカ使い、サオヒメジムリーダーアリス! ジムリーダーの立場に留まらず、さらに高みを目指すため、この大会にやってきた!』

『ジムリーダーが参戦とは、珍しい展開だよね。アリスちゃんとはエキシビジョンで何回か戦ったことがあるけど、本気の彼女は四天王である僕を追い詰めるほどの実力者だ。本気のジムリーダーを相手に、コロン君がどう戦うか、ってところかな』

さすがにこういう場には慣れているようで、アリスは笑顔で手を振り、歓声に応える。

「これより、一回戦第一試合、アリス選手対コロン選手のポケモンバトルを始めます。使用ポケモンは二匹、ポケモンの入れ替えは自由。先に相手のポケモンを二匹倒した方の勝利となります。それでは、ポケモンを出してください」

審判がルールを告げ、アリスとコロンがモンスターボールを手に取る。

「まさか一回戦からジムリーダーと当たるなんて思っていませんでした……だけど、電気タイプの対策はできてる。ここは、勝たせてもらいます……!」

「あら、それは楽しみね。それじゃ、私も君のその自信に応えて、全力で相手をさせていただくわ」

口上を挟み、お互いに準備は整った。両者、同時にボールを掲げる。

「ビブラーバ、出て来い!」

「輝け、エレキブル!」

 

『information

 ビブラーバ 振動ポケモン

 翅を振動させることにより超音波を

 出して獲物や外敵を気絶させてしまう。

 四枚の翅が成長しきれば進化は近い。』

 

『information

 エレキブル 雷電ポケモン

 戦いになると発電した電気を無尽蔵に

 放ち続ける。接近してきた相手には

 尻尾を巻き付かせ直接電撃を浴びせる。』

 

コロンのポケモンは、四枚の薄い翅で宙に浮かぶ細身のポケモン。虫のような姿だが龍の血を持つ歴としたドラゴンポケモンであり、進化するとフライゴンになる。

次にアリスの繰り出した、黄色の身体中に黒い縞模様を刻み、長い二本の尻尾を持つ大柄なポケモン。ジム戦で使用していたエレブーの進化系となるポケモンだ。

 

「それでは、試合開始ッ!」

 

「ビブラーバ、大地の力!」

審判の掛け声を引き金に、先に動いたのはコロンとビブラーバ。

金切声を上げると地面が揺れ始め、床が割れて大地のエネルギーが光と共に溢れ出し、エレキブルへと襲い掛かる。

「エレキブル、構わず進んで! 炎のパンチ!」

対するエレキブルは握り締めた拳に炎を灯すと、いきなり正面突破を仕掛ける。

大地エネルギーの中へと飛び込んだエレキブルは、なんと波を掻き分けるようにそのまま正面から大地エネルギーの奔流を突っ切り、強引に大地の力を突破してしまった。

「えっ……ビ、ビブラーバ! 避けて!」

慌てて翅を羽ばたかせ、ビブラーバが飛び立つが、

「逃すなエレキブル! 瓦割りよ!」

全力で地を蹴り、エレキブルは一気に跳躍。そのまま思い切り腕を振り下ろし、手刀を放ってビブラーバを床へと叩き落とした。

「ぐっ、まずい……だけど! ビブラーバ、虫のさざめき!」

地面に倒れながらも、ビブラーバが翅を振動させ、強烈なノイズと共に衝撃波を放出。

まだ空中のエレキブルはノイズを受けて体勢を崩し、うまく着地できず床に落ちてしまう。

「よし、上手くいった! ビブラーバ、竜の波動!」

飛び立ったビブラーバが息を吸い込み、青色のブレスを放つ。

放たれたブレスは竜の形となり、光の牙をエレキブルに突き立て、青い爆発を起こす。

だが。

「エレキブル、炎のパンチ!」

青い煙の中からエレキブルが飛び出す。

竜の波動を浴びたとは思えない反撃速度で、拳に炎を灯した纏わせたエレキブルが拳を突き出す。

「速い……けど、ビブラーバ! 躱して虫のさざめき!」

その場にふわりと浮き上がり、間一髪のところで炎の拳を回避すると、四枚の翅を構えるが、

「そうはいかないわ! 捕まえなさい!」

エレキブルの尻尾が伸びる。

長い二本の尻尾が瞬時にビブラーバを絡め取り、動きを完全に封じてしまう。

「決めなさい! 冷凍パンチ!」

尻尾を振り下ろしてビブラーバを床に叩きつけ、間髪入れずにエレキブルは冷気を纏った拳をビブラーバへと叩き込んだ。

「ビブラーバ……!」

地面とドラゴンを併せ持つビブラーバには氷技は致命的。耐えられるはずもなく、体を凍りつかせて動かなくなってしまった。

「ビブラーバ戦闘不能! エレキブルの勝利!」

『冷凍パンチが決まったぁ! アリス選手のエレキブル、ビブラーバの攻撃を全く気にも留めず、拳でねじ伏せる! まずはアリス選手が先手を取りました!』

バトルが始まって速攻、アリスはコロンの一匹目を下してしまった。

難なくビブラーバを倒したエレキブルは両腕で胸を打ち鳴らし、雄叫びをあげる。

「くっ……ビブラーバ、戻って」

コロンはビブラーバを戻し、即座に次のボールを手に取る。

(これがジムリーダー……タイプ相性でどうこうできる相手じゃない。ここはエースを出すしかない!)

「出てきて、サワムラー!」

コロンの二番手は、バネのような脚を持つ格闘ポケモンだ。

 

『information

 サワムラー キックポケモン

 足が自在に伸び縮みする。相手の間合い

 の外から足を伸ばしてキックを繰り出し

 一方的に相手を蹴っ飛ばしてしまう。』

 

「あら、よく鍛えられてるポケモンね。どんな戦いを見せてくれるのかしら?」

「バトルはここからです……僕のエースの力、ぶつけてやります!」

バトル再開。再び、コロンが先手で動き出す。

「サワムラー、メガトンキック!」

サワムラーがその場で脚を構える。

次の瞬間、脚が二倍くらいまで一気に伸び、強烈な蹴りがエレキブルを捉える。

「やるじゃない! エレキブル、雷パンチを床へ!」

立て直したエレキブルが、電撃を纏わせた両拳を床へと叩きつける。

刹那、一対の電撃の衝撃波が地を這い、サワムラーへと襲い掛かる。

「遠距離戦もある程度こなせるわけですか……サワムラー、跳躍して! メガトンキック!」

大ジャンプして衝撃波を躱し、サワムラーは上空から再び脚を伸ばしたキックを放つ。

「エレキブル、受け止めなさい! 冷凍パンチ!」

両腕に冷気を纏わせ、エレキブルはその場で構える。

冷気を込めた両手で、サワムラーの伸ばした脚を真っ正面から受け止めた。

「甘いっ! サワムラー、ブレイズキック!」

捕まえられたサワムラーの脚が炎を纏う。

冷気を溶かし、さらに黄色い体毛を焦がしてエレキブルを蹴り飛ばした。

「今だ! インファイト!」

好機を逃さず、サワムラーが一気にエレキブルの懐へ飛び込む。

「エレキブル、来るわよ! 雷パンチ!」

怒涛の連続攻撃を放つサワムラーに対し、エレキブルは両腕に電気を纏わせ、腕を交差させて防御の体勢で迎え撃つ。

立て続けに繰り出されるサワムラーの連続蹴りをエレキブルは正面から受け、そして締めとなる渾身のキックすら、勢いに押されるも吹き飛ばされることなく耐え切った。

「くっ、決めきれないか……」

「……今よ! エレキブル、捕まえなさい!」

インファイトを放ってサワムラーが一息ついた、その瞬間。

エレキブルの二本の尻尾が瞬時に伸び、瞬く間にサワムラーを縛り上げ、完全に拘束してしまう。

「あっ……しまっ――」

「エレキブル! そのまま電撃をお見舞いしてやりなさい!」

間髪入れずに、エレキブルの尻尾から高電圧の強力な電撃が放出される。

尻尾に雁字搦めにされたサワムラーはとうぜんただでは済まない。体の芯まで痺れさせられ、ぐったりと床に倒れてしまう。

「雷パンチ!」

それでもまだ倒れておらず、体を震わせて起き上がろうとするサワムラーに対し、エレキブルは拳に電撃を纏わせ地を蹴って飛び出す。

エレキブルの全力ストレートの雷拳がサワムラーの脳天を容赦なく捉え、壁までぶっ飛ばした。

「サワムラー!?」

壁に激突したサワムラーは重力に従って床に落ち、そのまま動かなくなった。

「サワムラー戦闘不能! エレキブルの勝利! よって勝者、アリス選手!」

『第一試合、決着ぅ! アリス選手、エレキブルのパワーを生かし、単体でコロン選手のポケモン二体を撃破! 圧倒的な実力を見せつけ、二回戦進出です!』

『さすがはジムリーダーのポケモン、見事なパワーだ。相手の攻撃を気にも留めないバトルスタイルも、力自慢のエレキブルと見事にマッチしている。素晴らしいね』

解説のカイリも彼女を賞賛する。

ジム戦でもアリスは強かったが、今のバトルを見た限り、ジムでのバトルは彼女の本気の片鱗も見せていない。これが、ジムリーダーの真の実力。

互いに一礼すると、アリスは盛り上がる観客席に手を振り、バトルフィールドを去っていく。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。