魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第14話 ジム前哨戦、格闘少女

改めて、カザハナシティ。

質朴で趣のある街並みで、そこまで大きな街ではないものの、ここでは最近ポケモンバトルに力を入れている。

バトル大会が行われたり、ジムリーダーのヒサギが格闘タイプ使いであることもあってか道場のような建物がいくつか立ち並び、街のショップにも先頭に役立つ木の実やアイテム、ポケモンを鍛えるのに役立つ栄養ドリンクなどの品揃えが充実している。

 

 

大会の翌日。

ハルは早速、ポケモンジムを訪れていた。

先ほども述べたようにこの街には道場のような建物がいくつがあるが、その中でも最も大きなもの。それがカザハナジムだ。

「失礼します……」

木製のドアを横にスライドし、ハルはジムへと入っていく。

内装はシュンインジムとは大きく異なる。壁は木造、床には畳が敷かれ、格闘タイプの使い手が集まりそうな雰囲気を醸し出す。

そして。

「チャレンジャーの方っスね!?」

ハルを出迎えたのは、赤いスポーツウェアを着て青い髪をポニーテールにした少女。歳はハルよりも上に見える。

「えっ? あ、はい! ハルといいます」

突然現れた少女に驚くも、返事をして名を名乗る。

「ハルっスね! あたしはアカメ! この道場で稽古に励むポケモントレーナーで、ヒサギさんの一番弟子っス!」

アカメと名乗った少女は顔いっぱいに笑顔を浮かべ、

「このジムは格闘タイプの使い手が集まる場所。格闘タイプ使い、それは日夜戦いへの努力を怠らない、強い闘志を持つものっス。もちろん、私もその一人っスよ」

「そ、そうなんですか……」

「もちろんっスよ! そして日々戦いへの努力を重ねる格闘タイプ使いは、常に戦いを求めているものっス!」

つまり。

「格闘タイプ使いに会ったなら、挨拶代わりにポケモンバトルしていくのが常識! さあ、ハル! ジム戦前に一丁、私と勝負するっス!」

 

 

 

どうやら、アカメに勝たないとジムリーダーに挑戦できないらしい。

そんなわけで、ジム戦の前哨戦。

ハルとアカメによるポケモンバトルが始まった。

「使用ポケモンはお互いに一体、先に相手のポケモンを倒した方が勝ち。いいっスね?」

「はい。始めましょう!」

「よーっし! それじゃあ出番だぜ、ヌイコグマ!」

アカメが繰り出すは、ピンクと黒を基調とした熊のようなポケモン。なんとなくだがぬいぐるみのようにも見える。

 

『information

 ヌイコグマ じたばたポケモン

 見た目は愛くるしく人気も高いが

 パワーは凄まじい。怒ると思い切り

 暴れて周囲のものを吹き飛ばす。』

 

ノーマル・格闘タイプを併せ持つポケモンのようだ。

「格闘タイプなら……出てきて、ヤヤコマ!」

対するハルのポケモンは、格闘タイプに有利な飛行タイプを持つヤヤコマだ。

「さあ、行くっスよ! ヌイコグマ、まずはぶん回す!」

バトル開始と同時、ヌイコグマが大きく跳躍した。

ヤヤコマの上を取って体を丸め、空中で高速回転を始めたかと思うと、そのまま弾丸のように突っ込んでくる。

「ヤヤコマ、躱してエアカッター!」

突撃の軌道は一直線。ヤヤコマは落ち着いてヌイコグマの回転攻撃を躱すと、翼を強く羽ばたかせて空気の刃を飛ばす。

「ヌイコグマ、じたばたっス!」

ヌイコグマが後ろ足で立ち上がり、前足をばたつかせる。

一見すると可愛げのある動きだが、ヌイコグマは前足のばたつきで空気の刃を砕いてしまった。

「なかなかパワーがあるな……だったらスピードで勝負だ! ヤヤコマ、撹乱するよ! 疾風突き!」

ヤヤコマが翼を広げて飛び出す。

ヌイコグマの頭上を猛スピードで旋回しつつ、隙を見て一気に突っ込む。

「速いっスね……! ヌイコグマ、迎え撃つっスよ! 瓦割り!」

再び上半身を持ち上げるヌイコグマだが、前足での攻撃よりも早くヤヤコマが突撃し、嘴で突き飛ばす。

「続けて電光石火!」

素早く距離をとったヤヤコマが再び翼を広げる。今度はヌイコグマを狙い、一直線に突っ込んでいく。

対して。

「ヌイコグマ、しっぺ返し!」

電光石火を食らったヌイコグマは怯まなかった。

そのまま前足を思い切り振り払い、ヤヤコマをぶん殴ったのだ。

「っ!? ヤヤコマ!?」

思いもよらない一撃を受け、ヤヤコマが吹き飛ばされる。

しかも火力がやたらと高い。しっぺ返しは悪タイプの技、効果抜群でもないのに、かなりのダメージを受けた。

「どうっスか、今の一撃! しっぺ返しは相手からの攻撃を受けた直後に使うと、威力が二倍になる技っス! 下手な牽制攻撃は通用しないっスよ!」

はっはー! といかにも自慢げにアカメが笑う。

だが厄介な技であることには間違いない。体勢を崩せなければすぐさま反撃を受けかねないとなると、ちまちま削るよりも一気に攻めた方がよさそうだ。

「よし、ヤヤコマ、反撃だよ! エアカッター!」

起き上がったヤヤコマは翼を広げて飛翔し、強く羽ばたいて空気の刃を飛ばす。

「ヌイコグマ、躱してぶん回す!」

対するヌイコグマは大きく跳躍すると再び体を丸め、高速回転しながら突っ込んでくる。

「だったら疾風突きだ!」

やはり軌道は直線的なので回避は簡単。

回転攻撃を躱すと、ヤヤコマは翼を広げて高速で飛び出すが、

「もう一度っス!」

ヤヤコマを捉えられず回転したまま床に激突したヌイコグマは、その反動で再び飛び上がる。

回転を続けたまま、さらにヤヤコマを狙ってきた。

「っ! ヤヤコマ、上! また来るよ!」

慌ててヤヤコマは横に急旋回するが、ヌイコグマの突撃が翼を掠め、体勢が乱れる。

「今度こそ! ヌイコグマ、瓦割り!」

空中でふらつくヤヤコマに対し、ヌイコグマが大きく跳躍してヤヤコマの上を取る。

そのまま前足を勢いよく振り下ろし、床へと叩き落とさんと迫る。

「させるか! ヤヤコマ、火の粉だ!」

しかしその直前。

咄嗟にヤヤコマが無数の火の粉を吹き出し、ヌイコグマに浴びせかける。

「炎技……! しまった、ヌイコグマ! 大丈夫っスか!?」

アカメが慌ててヌイコグマに呼び掛ける。

効果抜群ではないはずなのだが、火の粉を浴びたヌイコグマは大きく怯み、ヤヤコマへ攻撃できずに床に落ちてしまう。

「……なんだかよく分からないけど、チャンスだよ! ヤヤコマ、エアカッター!」

ヤヤコマが翼を羽ばたかせて空気の刃を飛ばす。

体勢の整わないヌイコグマにヤイバが直撃し、その身を切り裂く。

「これで決めるよ! 疾風突き!」

翼を広げて滑空し、ヤヤコマが一気に距離を詰める。

ヌイコグマが嘴で突き飛ばされる。効果抜群の攻撃を受け続けたこともあってか、目を回して倒れ伏してしまった。戦闘不能だ。

「ヌイコグマ!? ……くっそー、あたしの負けみたいっスね……」

アカメは悔しそうにヌイコグマをボールへと戻す。

「お見事っス、ハル! それじゃ、ジムリーダーの元へ案内するっスよ!」

「その前に、あの、ちょっといいですか?」

「ん? どうしたんっスか?」

奥の部屋の扉を開けようとしていたアカメだが、ハルに呼び止められて戻ってくる。

「ヌイコグマってノーマル・格闘タイプですよね? 炎が苦手なんですか?」

「あれ、もしかしてヌイコグマの特性を知らなかったんスか?」

ハルが尋ねると、アカメは少し驚いたような表情を浮かべ、

「ヌイコグマは、もふもふという特性を持ってるっス。これは直接攻撃のダメージを抑える代わりに、炎タイプの技を大ダメージで受けてしまう特性。てっきり知っててあのタイミングで使ってきたんだと思ってたっスけど、違うんっスか?」

「あ、そうだったんですか……いえ、実はあの時は咄嗟に攻撃できる技を選んだだけで……」

先制技を持つヤヤコマだが、既に瓦割りの攻撃を繰り出そうとしていたヌイコグマにそれ以上近づかせるのは危険。

なのでハルはヤヤコマの技の中では一番出の早い火の粉を選択したのだ。

「……ま、まぁ、ハルが勝ったってことには変わりはないっス! あっ、そうだ、ヤヤコマを回復してあげないといけないっスよね。あたしの傷薬をあげるっスよ」

そう言いながらアカメはハルに傷薬を手渡す。

戦いでの傷を癒してもらったヤヤコマは気分良さそうに鳴き、翼を広げた。

「それじゃ改めて、カザハナシティジムリーダー・ヒサギさんのところまで案内するっスよ。準備はいいっスか?」

「はい、お願いします」

アカメに連れられ、ハルはジムリーダーの待つ部屋へと進む。

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