魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第20話 中腹にて

「ふぅ……やっとここまで来たよ……」

カザカリ山道を進み、中間地点まで辿り着いたハルは、そこに建てられていたポケモンセンターへ迷わず足を踏み入れる。

既に日は傾きかけている。そこまで体力に自信はないので、ハルにとっては山道は堪えるものがある。

山の中ということもあってか、ロビーには客はハル一人しかいない。ソファに腰掛け、休憩していると、

「失礼しまぁす」

人が入ってきた。ハルと同じ、旅のトレーナーだろうか。

「あら、珍しく先客がいるみたいね。君も旅するトレーナーかしら?」

女性だ。鮮やかな金髪のボブカットで、毛先は水色。大きな荷物を背負い、青白いグラデーションのかかった服に、下は作業着のような格好。正直、あまり上下の服の組み合わせが合っていないように見える。歳は二十半ば、といったところだろうか。

「ええ。ハルといいます」

「ハル君、いい名前ね。私はアリス。君と同じ、しがないポケモントレーナーよ」

アリスと名乗ったその女性はその大きな荷物をドスンと床に下ろし、テーブルを挟んだハルの前のソファに座る。

「この山道、大変だよねー。サオヒメシティに用事があるんだけど、荷物も重いし辛いのなんの。私は空を飛べるポケモン持ってないから、大変よ」

「そ、そうなんですか」

はー、と息を吐き、アリスは無造作に足を組んで手で顔を仰ぐ。気さくだが割と大雑把な人物だ。

「……ねえハル君、暇?」

唐突にそんなことを聞かれた。

「え? ま、まぁ……今日はここに滞在する予定なので」

次に何を言われるかなんとなく分かっているが、ハルは正直に返す。

ポケモントレーナーなら、次にこう言ってくるだろう。

 

「じゃあさ、私とポケモンバトルしない?」

 

……やっぱり。

 

 

 

そんなわけで、ハルとアリスのカザカリ山道でのバトルが始まった。使用ポケモンは一体ずつ。

「それじゃ行くよ、ライボルト!」

アリスのポケモンは、黄色い鬣を持つオオカミのようなポケモン。

 

『information

 ライボルト 放電ポケモン

 電気を周囲に呼び寄せる力を持ち

 体毛に電気エネルギーを蓄える。

 鬣から雷雲を作ることができる。』

 

「電気タイプのポケモンか……なら」

ハルはリオルの入ったボールを手に取るが、

「……ん?」

ベルトに付けたボールの一つが、カタカタと揺れている。イーブイの入っているボールだ。

「ごめんなさいアリスさん、ちょっとだけ待ってもらえますか? イーブイ、どうしたの?」

アリスに待ってもらい、イーブイをボールから出す。

するとイーブイは、ライボルトと相対するかのように前に進み出る。まるで、自分がバトルしたいかのようだ。

「えっ? 君が戦いたいの? でも傷は大丈夫?」

ハルが尋ねるとイーブイは万全だと言わんばかりにその場を駆け回る。

とはいえさっき傷を治してもらったばかりなので、ハルとしてはやはり少々不安だ。

「戦わせてあげたら?」

そんな様子を見てか、アリスが声を掛ける。

「せっかく戦いたくてボールから出てきたんだから、バトルさせてあげましょ。ジム戦をするってわけじゃないんだから、気楽に。ね?」

「うーん……」

ハルは少し悩むが、

「……そうですね。それじゃイーブイ、頑張るよ」

イーブイの熱意を感じ、バトルさせることとした。

「それじゃ、バトル開始ね! ライボルト、まずは放電!」

先に動いたのはアリス。

ライボルトが鬣から電気を放ち、周囲に電撃を撒き散らす。

「電気タイプには……イーブイ、穴を掘る!」

対するイーブイはその場で素早く地面に穴を掘り、地中へと潜んでライボルトの放電を躱すと、直後に足元から飛び出す。

穴を掘るは地面タイプの技。ライボルトには効果抜群だ。

「いいぞイーブイ! 続けてスピードスター!」

さらにイーブイは尻尾を振って無数の星型弾を飛ばし、ライボルトへ追撃を掛ける。

「やるね……ライボルト、負けてられないよ! 目覚めるパワー!」

ライボルトは素早く起き上がると、周囲に薄い水色のエネルギーの球体を放ち、星形弾を相殺する。

「イーブイ、噛み付く!」

イーブイは素早くライボルトとの距離を詰め、ライボルトの鬣に噛み付く。

「っ! ライボルト、振り払って!」

ライボルトはしつこく首を振ってイーブイを引き剥がそうとするが、イーブイはなかなか離れない。

「だったら放電よ!」

振り払うのを諦め、ライボルトは鬣から電気を発し、周囲に放電する。

口を離して躱そうとしたイーブイだが、避けきれずに電撃を浴びてしまう。

「さあ今度はこっちの番! ライボルト、シグナルビーム!」

ようやくイーブイを引き剥がしたライボルトが、激しい光を放つ光線を発射する。

電撃を浴びて動けないイーブイに光線が直撃し、吹き飛ばす。

「イーブイ! 大丈夫!?」

吹き飛ばされて地面に落ちたイーブイだが、起き上がってハルの言葉に応える。

「さあ、まだまだ行くよ! ライボルト、目覚めるパワー!」

「イーブイ、穴を掘るで躱して!」

ライボルトが薄い水色の無数のエネルギーの球体を放ち、それに対してイーブイは再び地面に潜り、地中に隠れる。

「同じ手は通じないわよ! ライボルト、放電!」

ライボルトが鬣から電撃を生み出す。

放つ電撃を足元へ集中させ、地面を叩き割ってイーブイを地上へ引きずり出した。

「えっ……!?」

「今よ! ライボルト、シグナルビーム!」

強引に宙に打ち上げられたイーブイに対し、ライボルトが激しく光を放つ光線を発射する。

空中で身動きできず、イーブイは光線の直撃を受けてしまう。

「放電!」

その隙を逃さず、ライボルトは咆哮とともに鬣から電撃を放出、イーブイを巻き込んで周囲へと放電した。

「イーブイ!」

放電に巻き込まれたイーブイが体を痺れさせ、目を回して倒れてしまう。

イーブイは戦闘不能、よってこの勝負は、アリスの勝利だ。

 

 

 

「アリスさん、強いですね……」

バトルが終わった後、二人はポケモンセンターのロビーに戻って話し込んでいた。

自分から申し込んだバトルだからと、アリスは持っていた傷薬でイーブイを回復してくれた。

「うふふ、ありがとう。このライボルトね、つい昨日進化したのよ。特訓の成果が実ったわ。ね?」

アリスが足元に座るライボルトを撫でると、ライボルトは心地好さそうに小さく鳴く。

「ハル君のイーブイさ、まだ仲間にしてまもないでしょう? 私、そういうの分かるんだよね」

「ええ、そうなんです。この山道で出会ったんですよ」

ちなみにそのイーブイは今アリスの膝の上でブラッシングされている。

「やっぱり? 戦っててそんな感じがしたわ。強い弱いじゃなくてね、まだ君の戦い方、バトルスタイルっていうのかな、そういうのをよく分かってないような気がしたの」

だけど、とアリスは続け、

「その割には、なんだかとっても君に懐いているみたいよ? さっきのバトルも、まだ分からない中で一生懸命ハル君のために頑張っていたように見えたわ」

「……そうなの、イーブイ?」

イーブイの顔を見つめると、ぶぃっ! と笑顔とともに威勢のいい返事が返ってきた。

「さて、と。よいしょ……っ」

イーブイをハルに返し、重そうな荷物を再び担いで、アリスは立ち上がる。

「アリスさん、今からサオヒメシティまで行くんですか? もう夕方ですよ?」

「大丈夫よ。ライボルトが電気で道を照らしてくれるし、ヒザカリタウンで休憩してから行くわ。ハル君もヒザカリタウンまで行くんでしょ?」

ハルが頷くと、それなら、とアリスは続け

「近いうちにヒザカリタウンでバトル大会が開かれる予定だったはずよ。君も出てみたらどうかしら? 私はなるべく早くサオヒメシティに行かないといけないから参加できないけどね」

ヒザカリにはジムもあったはずだ。しばらくは留まることになりそうだ。

「それと」

ポケモンセンターを出ようとしたところで、アリスは振り返る。

「今日は一匹ずつのバトルだったけど、次に会う時にはもっとたくさんの君のポケモンを見たいわね。きっと、そのイーブイみたいに君と仲がいいんだと思うわ」

「……はい。次に会ったら、またバトルしましょう。今度は、僕が勝ちます!」

「その言葉、忘れないわよ? じゃあね」

そう告げて笑顔で手を振り、アリスはポケモンセンターを出て行った。

「イーブイ、初めてのバトルお疲れ様。いいバトルだったよ」

膝の上のイーブイを撫でると、イーブイはにんまりと笑みを浮かべた。

今日はここで休んで、明日はヒザカリタウンに出発だ。

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