魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第21話 燃えろ! 炎のヒザカリジム!

カザカリ山道を下っていくうちに、ゴツゴツした歩きづらい道は次第に石や岩の数を減らしていく。

ポケモントレーナーの休息の目印、赤い建物の屋根が、木々の奥にちらりと見えた。

そのうち、山道は舗装された歩きやすい道へと変わっていく。

「……よし! やっと着いたぞ」

アルス・フォンを開いて、ハルは現在地を確認する。

画面には“ヒザカリタウン”、そう表示されていた。

 

 

 

ヒザカリタウン。

その名前の由来にもなった強い日差しが特徴的な町だが、山から小川が流れてくるので水が枯れることもなく、植物にとってはまさに天国のような場所。

その一方、人の住む場所として見ればまだまだ田舎町。そのため、町興しのためにジムを作ったり、バトル大会を開くために小規模ではあるがスタジアムを建設したりと、ポケモンバトルによって町に活気を与えようとしているらしい。

そんな町に辿り着いたハルだが、

「ジムに挑戦する体力は、残ってないかな……」

普通のバトルに比べて、やはりジムバトルは緊張感が違うし、その分体力も使う。端的にいえば、疲れる。

道中でですれ違うトレーナーとバトルをしながら慣れない山道を下ってきたこともあり、ジムに挑むには少々心許ない。

「しばらくポケモンの特訓と調整をして、ジムは明日以降に挑むことにしようかな」

そう呟いて、ハルはひとまずポケモンセンターの地下へ向かう。

 

 

 

翌日。

地図アプリを片手に、ハルはポケモンジムを訪れていた。

カザハナシティの道場のような見た目と趣は違えど、やはり町に合わせた和の雰囲気が見て取れるジムだ。どことなく屋敷のようにも見える。

「失礼しま……えぇ?」

扉を開いてジムに入ったハルだが、そこで素っ頓狂な声を上げる。

それもそのはず、ジムの外装と内装が違いすぎるのだ。

ジムの中は赤と金色の装飾で派手に彩られていた。バトルフィールドだけは普通の造りのようだが、あまりにも外から見た和の雰囲気とはかけ離れている。

さらになんだか部屋全体が蒸し暑い。部屋の隅や壁に沿って観葉植物が置かれているが、そのためだろうか。

そして、

「おはようございまぁっす! ジムの挑戦者ってことでいいのかな!?」

元気一杯の大声がハルを出迎える。

声の主はバトルフィールドの向こうにいる女性。ハルへと駆け寄ってくる。

オレンジ色の服の上から赤色の長袖のシャツの袖を腰のところで結んで掛けており、黒いショートパンツを履いている。炎のような真紅の髪はポニーテールにして結んでいる。

「私はサツキ! ここヒザカリタウンのジムリーダーを務めてるよ! よろしくね!」

 

『information

 ジムリーダー サツキ

 専門:炎タイプ

 肩書き:爆炎天使(ブレイズエンジェル)

 ジムリーダー歴:半年』

 

ジムリーダー――サツキは、そう叫ぶように名乗る。

「あ、こんにちは……僕はハルです……」

最初の挨拶からして、既にハルはサツキのテンションに圧倒されている。

「ハル君だね! 私に勝ちたいってんなら、そんな縮こまってちゃダメだぜ! 熱く燃える炎みたいに、もっと強気でいかなきゃなー!」

そんなハルの様子を見てサツキは爽やかな笑みを浮かべ、

「それじゃ早速始めるか! ハル、ジムバッジはいくつ?」

「えっと、二つです」

「おっけー! それじゃあ使用ポケモンはお互い三匹ずつだね! バトル中にポケモンを交代していいのはチャレンジャー、つまりハルだけだよ!」

普通なら審判がするはずのジムのルールを、サツキが先に説明してしまう。

ここまでで既にサツキの勢いに圧倒されてしまっていたハルだが、

「……はい。お願いします!」

やることは分かっている。ジム戦をして、勝てばいいのだ。

「おおっ! いい表情になってきたじゃん! それじゃ、バトルと行こうか!」

三つ目のジムバッジを賭けた、ハルのジム戦が始まる。

 

 

 

「それではこれより、ジムリーダー・サツキと、チャレンジャー・ハルのジム戦を行います。使用ポケモンはお互い――」

「あ、その説明さっきしちゃったから、省いていいよ。それより、早くジム戦を始めさせてよ!」

審判の男性の言葉を遮り、サツキは待ちきれないと言わんばかりにボールを取り出す。

「そうでしたか……それでは両者、ポケモンを出してください」

サツキに続いて、ハルもモンスターボールを構える。

「よっしゃ! 燃えろ、メラルバ!」

「最初は君だ、出てきて、ヒノヤコマ!」

ハルのヒノヤコマに対し、サツキの初手は炎のような形の五本のツノを持つ虫ポケモンだ。

 

『information

 メラルバ 松明ポケモン

 五本の角から炎を出して攻撃する。

 ある地域では太陽から生まれたと

 伝えられ信仰の対象になっている。』

 

炎と虫のタイプを持つポケモンのようだ。タイプ相性では、ヒノヤコマが有利となる。

「ハルも炎タイプか……メラルバ、炎対決、負けられないよ!」

「ヒノヤコマ、タイプ相性は有利だけど、向こうはジムリーダーだ。気をつけて戦うよ」

両者のポケモンが出揃い、いよいよバトル開始だ。

 

「それでは、ジムリーダー・サツキと、チャレンジャー・ハルのジムバトルを開始します!」

 

「行くよ! ヒノヤコマ、まずはニトロチャージ!」

勇ましい鳴き声と共に、ヒノヤコマが翼から火の粉を吹き出し、その体に炎を纏わせる。

「それじゃメラルバ、こっちもニトロチャージだ!」

対するメラルバもツノから吹き出した炎を全身に纏わせ、跳躍して突撃。

二体が炎の弾の如く、正面から激突する。

「ヒノヤコマ、疾風突き!」

競り合った末にお互いに一度距離を取ると、ヒノヤコマは嘴を突き出し、目にも留まらぬ速度で突っ込む。

「メラルバ、躱してシグナルビーム!」

対するメラルバはぴょんと跳躍してヒノヤコマの突撃を躱すと、その瞳から輝く光線を発射する。

「っ、ヒノヤコマ、アクロバット!」

光線がヒノヤコマの背中に直撃するも、効果は今一つ。

そのままヒノヤコマは空中を旋回し、素早く軽快な動きで距離を詰め、メラルバを突き飛ばす。

「メラルバ、ギガドレイン!」

メラルバの五つの角から光の触手が飛び出し、ヒノヤコマへと向かってくる。

「ヒノヤコマ、もう一度アクロバット!」

ヒノヤコマが再び動き出す。軽快な動きで光の触手を躱しながら、メラルバへ一気に接近していく。

しかし。

 

「今だメラルバ! ワイルドボルト!」

 

メラルバの周囲に火花が迸り、バチバチと弾けるような音が響く。

直後、その体が電撃を纏い、メラルバは突っ込んでくるヒノヤコマを真正面から迎え撃つ。

再び双方が激突するが、今度はすぐに均衡が破れる。

電撃を纏ったメラルバが、ヒノヤコマを逆に突き飛ばした。

「っ、電気技……! ヒノヤコマ、大丈夫!?」

飛行タイプを持つヒノヤコマには、電気技は効果抜群となる。

「炎タイプを使う以上、電気技は持たせて当然! 苦手な水タイプへの対策にもなるしなー!」

ふふふー! とサツキは得意げに笑う。

「流石はジムリーダー……タイプ相性で有利だからって、簡単には勝てないってことだね……」

イチイやヒサギもそうだったように、苦手タイプ対策は万全、ということだろう。やはりジムリーダーは一筋縄ではいかない。

「当然! さあメラルバ、ニトロチャージ!」

五本の角から炎を吹き出し、メラルバが炎に包まれ、火の弾のように飛び出す。

「ヒノヤコマ、躱して!」

電撃を食らったヒノヤコマだが、なんとか立て直して上昇する。

ただ完全に躱し切ることはできず、メラルバの攻撃がヒノヤコマを掠めた。

「ヒノヤコマ、ここから反撃だ! エアカッター!」

ヒノヤコマが激しく翼を羽ばたかせ、無数の風の刃を飛ばすが、

「メラルバ、躱してワイルドボルト!」

ニトロチャージでスピードが上がっているメラルバに躱され、メラルバは電気を身体中に纏って突っ込んでくる。

「ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」

ヒノヤコマは炎を纏い、メラルバの電撃の突進を迎え撃つ。

お互いの力は互角、しかし、ニトロチャージの追加効果により、ヒノヤコマのスピードが上昇する。

「よし、ニトロチャージならワイルドボルトを防げる! ヒノヤコマ、疾風突き!」

速度の上がったヒノヤコマが、嘴を突き出して猛スピードで突撃。

目にも留まらぬ速度で、メラルバを突き飛ばす。

「やるじゃんやるじゃん! メラルバ、シグナルビーム!」

「ヒノヤコマ、アクロバット!」

メラルバが瞳から光線を乱射するが、ヒノヤコマは素早く飛び回る。

次々と撃ち出される光線を掻い潜り、メラルバとの距離を詰めていく。

「……今だっ! メラルバ、ワイルドボルト!」

だがヒノヤコマが眼前まで迫るかといったその瞬間、メラルバの全身が激しい電撃に覆われる。

向かってきたヒノヤコマを一気に仕留めるべく、前方へタックルを仕掛けるが、

「……そんな気がしたんだ! ヒノヤコマ、急上昇!」

スピードの上がっているヒノヤコマは間一髪、ギリギリで急上昇、メラルバの突進を躱しきった。

「エアカッター!」

勢い余って後方へすっ飛んでいくメラルバの体から電撃が消えたところへ、ヒノヤコマは翼を羽ばたかせて空気の刃を飛ばす。

「あ、やばっ……! メラルバ、シグナルビーム!」

宙に浮いていたメラルバは回避ができず、咄嗟に光線で迎え撃とうとするが間に合わない。

風の刃に切り裂かれて撃墜され、そのまま目を回して倒れてしまう。

「メラルバ戦闘不能、ヒノヤコマの勝ちです!」

まずは一勝。ハルが先手を取った。

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