魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第22話 熱き暑き真っ向勝負

「うーむ、ダメだったかぁ。メラルバ、よく頑張った! あとは休んでて!」

ヒザカリジム戦。

ヒノヤコマに敗れたメラルバをボールに戻すと、サツキはハルの方に向き直り、

「なかなかやるねー、ハル。そのヒノヤコマなかなか強いから、次はこの子で行こうかな!」

すぐに次のボールを手に取り、二番手を繰り出す。

「燃えろ、ブーバー!」

サツキの次なるポケモンは、燃える炎の体を持つ人型のポケモンだ。

 

『information

 ブーバー 火吹きポケモン

 火山の火口から生まれたポケモン。

 炎を撒き散らして周りの環境を

 住みやすいように変えてしまう。』

 

「ブーバー……持ってるタイプは、炎だけか。ヒノヤコマ、まだ戦える?」

メラルバ戦で受けたダメージはあるものの、ヒノヤコマは翼を広げて勇ましく鳴く。

「へえ、なかなか根性ある子だね。それじゃバトル再開! ブーバー、火炎放射!」

ブーバーが息を大きく吸い込む。

特徴的な長い口を開き、吐息とともに灼熱の業火を吹き出す。

「ヒノヤコマ、躱して疾風突き!」

ヒノヤコマはふわりと浮き上がって炎を躱すと、翼を広げて猛スピードで飛び出す。

ニトロチャージの加速も合わさりヒノヤコマのスピードはかなりのもので、瞬く間にブーバーとの距離を詰め、嘴で突き飛ばす。

「続けてニトロチャージだ!」

そのスピードをさらに加速させるべく、ヒノヤコマは炎を纏って突撃するが、

「ブーバー、クリアスモッグ!」

ブーバーが口から白い煙を吹き出す。

煙はヒノヤコマにまとわりつき、ヒノヤコマを包む炎を消し去ってしまう。

「ヒノヤコマ、振り払って! アクロバット!」

翼を羽ばたかせてヒノヤコマは煙を振り払うと、今度は軽やかに飛び回りながらブーバーへと接近していく。

しかし。

「……あれ?」

明らかにヒノヤコマのスピードが落ちている。

正確には、戻っている、と言った方が正しいか。上がったはずの素早さが、元に戻っているのだ。

「ブーバー、炎のパンチ!」

地を蹴って飛び出したブーバーの右腕の炎が増幅する。

拳を構えたブーバーが、スピードの落ちたヒノヤコマの横から突撃し、ヒノヤコマを殴り飛ばした。

「続けて雷パンチ!」

今度はブーバーの右手を電撃が覆う。

ふらつくヒノヤコマ目掛けて、ブーバーが電撃を纏った拳を叩き込んだ。

「っ、ヒノヤコマ!」

効果抜群の一撃を叩きつけられたヒノヤコマは地面に叩きつけられ、そのまま戦闘不能になってしまった。

「ヒノヤコマ、ありがとう。戻って休んでてね」

ヒノヤコマの嘴を撫で、ボールへと戻す。

「サツキさん。さっきのクリアスモッグは、もしかして……」

「おっ、気づいたみたいだね! クリアスモッグは攻撃のついでに、相手の能力変化を元に戻す技! さらに必中技でもあるから、私のブーバーの前ではいくら能力を上げても意味なし! 能力変化なんか使わないで、ガチンコ勝負でぶつかってこいってことよ!」

だから、ヒノヤコマのスピードは元に戻ってしまったのだ。

サツキは相変わらず得意げに説明する。

「さあ、次はどんなポケモンで来る? もっと私を楽しませてよ!」

「望むところです! それじゃ出てきて、イーブイ!」

ハルが二番手に選ぶのはイーブイ。体格の大きいブーバーに対しても、臆すことなく一歩踏み出す。

戦闘経験はまだ少ないが、やる気は充分。穴を掘るで打点もある。

「なるほど、イーブイで来たか! それじゃあ、その力を見せてもらうよ! 火炎放射!」

「イーブイ、電光石火!」

炎を吹き出す前にイーブイの突撃を受け、口から吹き出た炎は明後日の方向に飛んでいく。

「ブーバー、雷パンチ!」

「イーブイ、穴を掘る!」

すぐさま立て直したブーバーが電撃を纏わせた拳を突き出すが、イーブイは地面に潜って拳を躱すと、ブーバーの足元から飛び出してブーバーを突き飛ばす。

「イーブイ、スピードスター!」

素早くブーバーから距離を取り、イーブイは無数の星形弾を放とうとするが、

「好き勝手はさせない! ブーバー、炎のパンチ!」

拳の炎を増幅させたブーバーがイーブイを逃さず、灼熱の拳を振り抜いて殴り飛ばす。

「火炎放射!」

「っ、躱して!」

立て続けにブーバーが灼熱の炎を勢いよく吹き出す。

起き上がったイーブイは何とか炎を回避するが、尻尾の先を炎が掠め、毛先が黒く焦げる。

「まだ終わってないぜ! ブーバー、雷パンチ!」

拳に電撃を纏ったブーバーがフィールドを駆け、イーブイとの距離を詰めてくる。

「それならイーブイ、穴を掘る!」

イーブイは地面を掘り、素早く床の下へと潜る。

雷の拳は空を切り、直後、ブーバーの足元が割れ、飛び出してきたイーブイがブーバーを突き上げる。

「イーブイ、スピードスター!」

「っ! ブーバー、連続で雷パンチ!」

イーブイが無数の星形弾を放ち、ブーバーは立ち上がると一旦距離を取る。

ブーバーを追尾してしつこく迫る星形弾を、電撃を纏った連続パンチで全て砕く。

「電光石火!」

しかしその星形弾の後ろから、イーブイが猛スピードで突っ込んでくる。

ブーバーの拳を纏う電撃が消えたところに、イーブイが突撃を仕掛けた。

しかし、

「ブーバー、火炎放射!」

イーブイの突進を受けたブーバーが、今度はしっかりと地に足をつけて踏み止まった。

返す刀でブーバーは灼熱の炎を口から吹き出し、イーブイを逆に炎に飲み込んで吹き飛ばす。

「まず……っ! イーブイ、大丈夫!?」

やはり主力の炎技の威力は侮れない。まだイーブイは何とか立ち上がるが、次はない。

そしてそれを分かっているサツキは、当然、

「もう一度火炎放射!」

確実に仕留めに来る。

「イーブイ、潜る!」

イーブイは床下に潜り、間一髪のところで炎を躱す。

そして地中を素早く移動、ブーバーの足元から飛び出し、ブーバーの顎に体当たりする。

「よし、これで……!」

だが、

「っ、ブーバー、耐え切って! 火炎放射でとどめだぁ!」

大きく仰け反りながらも、ブーバーは耐え切った。

目の前のイーブイを一点に見据え、大きく息を吸い込む。

「……これしかない、一か八かだ! イーブイ、ブーバーの口に噛み付く攻撃!」

ブーバーが炎を吹き出す、その直前。

イーブイが口を大きく開き、平べったい嘴のようなブーバーの口に噛み付き、牙を食い込ませ、口を封じた。

「な……っ!?」

こうなってしまっては、ブーバーは炎を吹き出すことができない。

放たれるはずだった炎はブーバーの口の中にどんどん蓄積され、遂に限界を超えて爆発を起こした。

しかし当然、イーブイも爆発に巻き込まれてしまう。

「ブーバー!?」

「イーブイ……!」

やがて爆煙が晴れると、まず、ブーバーは口から黒い煙を上げながら仰向けに倒れていた。

そしてそのすぐ横で、爆発に巻き込まれたイーブイも目を回して倒れていた。

「……イーブイ、ブーバー、両者共に戦闘不能です!」

お互いに戦闘不能。これで、二人とも残り一体となった。

「ブーバー、よく頑張った! 休んでて!」

「イーブイ、お疲れ様。ゆっくり休んでてね」

ハルとサツキが、それぞれのポケモンを労い、ボールへと戻す。

「ブーバーの炎エネルギーを口の中で爆発させるなんて! なかなか大胆なことをしてくるじゃん?」

「あの局面では、それしか思いつきませんでした。ブーバーの特徴的な口の形を見て、噛み付けば口を塞がせることができるかなって。でも引き分け覚悟だったので、イーブイには悪いことをしたかもしれません」

「そんなことないさ! 私にはイーブイも迷わずハルの指示に応えていたように見えたよ! それにしても、観察眼もなかなかだねえ」

それじゃあ、とサツキは最後のボールを手に取る。

それに合わせて、ハルもボールを取り出す。

「これで最後だ、行くぜっ! 燃えろ、カエンジシ!」

「さあ、最後は君だ。出てきて、リオル!」

ハルの最後のポケモンはもちろんリオル。

対して、サツキのポケモンは雌の獅子のようなポケモン。頭から背中にかけて束ねた髪のように長く伸びた炎の鬣を持つ。

 

『information

 カエンジシ 王者ポケモン

 何匹もの群れで暮らし鬣が一番

 大きなオスが群れのリーダーを務める。

 メスたちは協力して群れの子供を守る。』

 

「カエンジシ、タイプは炎とノーマル……ノーマルタイプなら……!」

タイプ相性的には、格闘タイプのリオルが有利に立ち回れる。

とはいえ相手はジムリーダー、それも最後のポケモン。充分に警戒して挑まなければならない。

「それじゃあ、最終戦を始めるぜ! どこからでもかかってきな!」

「ええ。全力で行きますよ!」

カエンジシは小さく唸り声を上げて、じっとリオルを見据える。

対するリオルも身体中の波導を滾らせ、戦闘態勢に入る。




元々サツキは初期設定ではポプラという名前だったのですが、剣盾にポプラさんが登場してしまったので急遽名前を変えるハメに……
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