魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第23話 突破せよ! 炎の女王カエンジシ

「リオル、電光石火!」

いよいよヒザカリジム戦もお互いに最後の一匹。

最後の先手を取ったリオルが動き出す。

地を蹴って目にも留まらぬスピードで踏み出し、カエンジシとの距離を一気に詰め、そのままカエンジシへ突き当たる。

「カエンジシ、火炎放射!」

だがリオルの突撃を受けたカエンジシはしっかりとその場で踏みとどまり、即座に灼熱の炎を噴射する。

「っ……! リオル!」

咄嗟に防御を固めるリオルだが、炎に押されて逆にリオルが押し戻されてしまう。

「だったら、真空波だ!」

すぐさま立て直し、リオルは拳を振り抜いて真空波を飛ばす。

「先制技ならカエンジシ、回避!」

素早く駆け出し、カエンジシは真空波を躱すと、

「今度はこっちの番! カエンジシ、ワイルドボルト!」

その身体に電撃を纏わせたまま、地を駆ける。

「リオル、発勁! 受け止めて!」

両手を突き合わせて波導を纏わせ、リオルは両手でカエンジシを迎え撃つ。

電撃を纏ったカエンジシと互角に競り合い、その突進を何とか食い止めた。

「もう一度、発勁!」

ワイルドボルトは反動の大きい技で、即座に次の手に出ることができない。

青い波導を纏ったリオルの拳を避けることができず、カエンジシは殴り飛ばされる。

「やってくれるねぇ! カエンジシ、火炎放射!」

低く唸ったカエンジシが息を吸い、再び灼熱の業火を吹き出す。

「リオル、躱して真空波!」

走ってカエンジシの炎を躱しつつ、リオルは腕を振り抜いて真空波を放つ。

高速で飛ぶ真空波がカエンジシに直撃。電光石火と違って格闘技である真空波は効果抜群、カエンジシが少し後ずさりする。

「今だ、サイコパンチ!」

その隙を狙って、すかさずリオルが踏み込む。

拳に念力を纏わせ、カエンジシへと殴りかかるが、

「カエンジシ、悪の波動!」

カエンジシが咆哮とともに紫黒の光線を放つ。

光線を受けたリオルの右手からは、瞬く間に念力が引き剥がされていき、

「火炎放射!」

続けて灼熱の業火が撃ち出され、リオルは炎に飲まれて吹き飛ばされてしまう。

「はっはー! エスパータイプの技なら、悪タイプの技で打ち消してしまえばいいのだぜ! エスパー技は悪タイプには効かないからなー!」

「っ、なるほど……リオル、大丈夫?」

炎をまともに浴びたリオルだが、体の煤を払うとハルの言葉に応えて頷く。決してダメージは小さくないが、それでもまだ戦える、そして勝つ。カエンジシの炎にも負けないリオルの熱い思いが、ハルには伝わってきた。

「……よし! リオル、発勁だ!」

パチンと手を叩いて気合を入れ直し、右手に波導を纏わせ、リオルが駆け出す。

「カエンジシ、火炎放射!」

リオルを迎撃すべく、カエンジシが灼熱の業火を吹き出す。

鞭のように振るわれる炎を、リオルは飛び越え、搔い潜ってカエンジシの懐に飛び込み、カエンジシの頬へと右拳を叩き込んだ。

効果抜群の一撃をまともに受け、カエンジシがよろめく。

「いいぞリオル、続けてサイコパンチ!」

「間に合えーっ! 悪の波動!」

さらにリオルが拳に念力を乗せるが、カエンジシは体勢を崩しながらも黒い光線を放つ。完全に念力を剥がすことはできないが、それでもダメージは抑えられた。

「リオル、一旦下がって!」

「カエンジシ、立て直すわよ! ワイルドボルト!」

サイコパンチの入りが甘かったため、ハルはリオルを引き戻し、リオルは素早く後ろに飛んで距離を取る。

直後にカエンジシが身体に電撃を纏わせるが、リオルが既にそこにいないのを確認すると、首を大きく振って体勢を整え、突撃を仕掛けてくる。

「リオル、躱して真空波!」

カエンジシの電撃を帯びた突進を、リオルは跳躍して躱すと、腕を振り抜き、駆け抜けていくカエンジシへと真空の波を飛ばす。

「カエンジシ、そのまま右に! そこからUターン!」

リオルに背を向けているカエンジシには後ろは見えないが、サツキの指示により素早く右に曲がって真空の波を回避、さらにUターンして、着地しようとするリオルを再び狙う。

「リオル、発勁!」

空中に飛んだ以上、回避はできない。

右手に纏う波導を強め、リオルは突っ込んでくるカエンジシに合わせて右手を叩きつける。

しかし勢いがついている分、今度はカエンジシの方が強く、リオルは押し負け、突き飛ばされてしまう。

「火炎放射!」

「っ、リオル、躱して!」

カエンジシが灼熱の炎を放って追撃を仕掛け、リオルは横っ飛びして何とか炎の一撃を避け切った。

「危ない……リオル、電光石火!」

立ち上がったリオルが地を蹴り、目にも留まらぬスピードで飛び出し、カエンジシへと突撃する。

電光石火の一撃では、カエンジシを突き飛ばすことはできないので、

「続けて発勁!」

体勢の崩れたカエンジシへ、さらにリオルは波導の力を纏った右手を叩き込む。

しかし。

 

「カエンジシ、大文字!」

 

カエンジシの瞳が、長い鬣が、燃えるが如く赤く染まる。

刹那、カエンジシが巨大な炎の弾を放出、炎弾は“大”の字を描いて展開し、リオルへと襲い掛かる。

「っ……!?」

先ほどまでの火炎放射よりも、さらに高火力の炎。

最早この距離では回避は不可能。リオルは咄嗟に波導を纏わせた右手で防御の構えを取るが、それだけで食い止めることなどできず、リオルは炎に飲まれてしまう。

「くっ……リオル!」

発勁で多少は威力を削いだため、この攻撃はまだ耐えられるだろう。

だが次はない。この爆炎から逃れ、勝つ方法を探る。

「ハル! 悪いけど、勝負を決めるよ! カエンジシ、火炎放射!」

しかしサツキは手加減ひとつしない。

向こうもリオルがまだ倒れてはいないと踏んだようで、爆炎の中へと容赦なく炎を撃ち込む。

しかし、

(……! リオル……?)

今この瞬間。

ハルの頭の中に、リオルの声が響いたような気がした。

まだ勝負を諦めていない、勇ましい声が。

(……そうだ、僕たちはまだ負けてない! あの力を、解き放つんだ!)

「……僕たちは、負けません! リオル、発勁!」

もちろん、あの波導の力の原理など全く分かっていないが。

ヒノヤコマとイーブイの頑張りに応えたい、そしてなによりリオルと一緒に勝ちたい。

そんな思いを込め、リオルを信じ、ハルは叫んだ。

刹那。

 

リオルを囲む爆炎が、青き烈風と共に消し飛んだ。

 

「な……なんだっ!?」

驚きを隠せず、炎の中心に目をやるサツキ。

立ち上がったリオルの身体は波導に覆われ、その手には青い炎のような波導を纏っていた。

そして。

ハルには感覚で分かった。リオルが必ず、この力を発動させると。

「……なんだかよくわからないけど、ハル! 君とリオルの溢れんばかりの熱意、伝わってきた!」

だけど、とサツキは続け、

「バトルはここから! 君のその力で、私のカエンジシを倒してごらんよ!」

「ええ、望むところです! リオル、電光石火!」

波導を纏ったリオルが、地を蹴って飛び出す。

目にも留まらぬスピードで一気にカエンジシとの距離を詰め、カエンジシを突き飛ばした。

「やっぱり威力も上がってる……! カエンジシ、火炎放射!」

すぐさま体勢を立て直し、カエンジシは灼熱の炎を吹き出す。

「リオル、躱して発勁!」

大きく跳躍して炎を躱し、リオルは炎のような波導を纏った右手をカエンジシへと叩きつけた。

効果抜群の一撃を受け、カエンジシが吹き飛ばされる。

「サイコパンチ!」

さらにリオルは拳に念力を纏わせ、吹き飛ぶカエンジシを追って拳を振りかぶる。

「悪の波動!」

だがカエンジシもジムリーダの最後の一匹、やられっぱなしでは終わらない。

体から悪意に満ちた漆黒の波動を放出し、リオルの拳を纏う念力を打ち消し、弾き返す。

「今だ! カエンジシ、火炎放射!」

「っ、リオル、発勁!」

すかさずカエンジシが炎を噴射し、リオルは激しい波導を纏った右手を突き出し、炎を受け止める。

「ワイルドボルト!」

その直後、電撃を纏ったカエンジシが突撃を仕掛ける。

対応が遅れ、リオルは突撃を食らって吹き飛ばされる。

「あと一撃! カエンジシ、火炎放射!」

「っ! リオル、立て直して! 真空波!」

カエンジシが息を吸い込んだその時、リオルは宙を舞いながらも腕を振り抜いて波導を乗せた真空の波を飛ばす。

カエンジシの額に波が命中し、カエンジシの動きが止められる。

「こうなったら……! カエンジシ、行くぜ!」

サツキが叫び、カエンジシがそれに呼応して雄叫びを上げる。

「カエンジシ! 大文字!」

カエンジシの瞳が真紅に染まり、口から大の字を描いた巨大な炎弾が放出される。

ここまででダメージを受け続けていたにも関わらず、その炎は全く弱まってはいない。

「これはとても躱せない……勝負を決めに来たんだ! だったらリオル、こっちも行くよ!」

ハルの言葉にリオルは頷き、拳を握りしめて波導をさらに強める。

「リオル、発勁!」

激しく燃えているかの如き青い波導を右手に纏わせ、リオルは炎の中へと自ら飛び込んでいく。

灼熱の炎がその身を焼いていく。ダメージが小さいわけがないが、それを気にも留めずにリオルはひたすら突き進む。

そのまま、カエンジシの下顎に右手を叩きつけ、天高く吹き飛ばした。

「カエンジシっ!?」

サツキの叫びがフィールドに響く。

打ち上げられたカエンジシは重力に従ってそのまま落下し、床にドサリと落ちる。

そしてそれを確認したリオルも、膝をついて崩れ落ちてしまう。

それでもリオルは地に伏すことなく、ハルの方を振り返ると、小さくニヤリと笑みを浮かべた。

 

「カエンジシ、戦闘不能。リオルの勝利です! よって勝者、チャレンジャー・ハル!」

 

ハルの勝利が告げられるや否や、ハルはバトルフィールドのリオルへと駆け寄る。

「やったあああ! リオル! やったよ、三つ目のジムも制覇したんだ! お疲れ様、よく頑張ったね!」

今にも倒れそうなリオルを抱きかかえると、ボロボロになりながらも、リオルは得意げに吠えてみせた。

「カエンジシ、お疲れ様……ふぅ」

そしてサツキはといえばカエンジシを戻した直後、燃え尽きてしまったかのようにへたりとその場へ座り込んでしまい、

「はぁ……負けちゃった」

ピクリとも動かず、力なく呟いた。

サツキが動く気配がないので、ハルはサツキのところまで歩み寄る。

「あ、ごめんね……私、バトルで負けるといつもこうなっちゃうんだ。特にジム戦は熱くなりすぎて、疲れちゃうんだよね」

ハルが近づくと、その顔を見上げてサツキは力のない笑みを浮かべた。

「さあ……それじゃあ、熱い気持ちを、炎のように燃える熱意を、私に見せてくれたお礼に、これを……」

そう言って、サツキは審判の男性から小さな箱を受け取る。

中には、太陽を模したような形にアルファベットのCの文字を描いた、赤色とオレンジ色で作られたバッジが収められていた。

「私の熱いバトルに打ち勝ち、ヒザカリジムを制覇した証……コロナバッジを、君にあげよう」

最後の一言だけ。

燃え尽きたサツキの笑みに、少しだけバトル中の面影が見えた。

「はいっ、ありがとうございます!」

ハルのバッジケースに、三つ目のバッジが収められた。

コロナバッジは、熱い熱い戦いに勝利したハルの高揚感を表すように、赤く煌めいていた。

 

 

 

ポケモンセンターに戻り、ポケモンたちを回復させている間、ハルはロビーで考え事をしていた。

(今までリオルがあの能力を発動してきたのは、ジム戦の時だけだ)

大会の時やポケセンの地下で戦った時は、例の現象は起こらなかった。

(しかも今日やカザハナジムの時は、何だかリオルと感覚が一つになっているような感じだった。一体、あの力は何なんだろう……)

色々考えてみるが、残念ながらハルは人並みの知識程度しか持ち合わせていない。

そうこうしているうちに、

『ハルさん、お待たせしました! お預かりしたポケモンは、皆元気になりましたよ!』

ポケモンの回復が終わり、ハルを呼ぶアナウンスが響く。

「……うーん、ダメだ! 考えてても始まらない。旅を続けていれば、いずれ分かる時が来るさ」

とりあえず、しばらくはヒザカリタウンに滞在だ。

数日経てば、ヒザカリタウンバトル大会が開催される。

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