魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第24話 バトル大会! inヒザカリタウン

ジム戦の数日後。

ハルは大会が行われるスタジアムの前までやって来ていた。

アルス・フォンで調べた情報によれば、ヒザカリタウンで行われる大会は、ジムバッジの所有数が四個以下のトレーナーが出場できる大会のようだ。

ハルのバッジは現在三個。つまり、カザハナシティでの大会と違って、ハルよりも格上のトレーナーも多いということ。

「……だけど逆に考えれば、ここでいい成績を残せば自信にも繋がる。僕だってバッジを三つ持ってるんだ、やってやるぞ」

参加登録は済ませておいた。自身を鼓舞し、気を引き締め、ハルはそのまま会場内へ足を踏み入れる。

 

 

 

『さあ、いよいよヒザカリタウンバトル大会が開幕いたします! 今大会の出場選手はバッジを四個まで集めたトレーナーたち。果たしてどんなバトルを見せてくれるのでしょうか!』

スタジアム内の放送席には一組の男女が座り、やたらとテンションの高い実況の男性が、マイクを持って叫ぶ。今大会のために派遣されたアナウンサーだろう。

しかし。

『なお、今大会は、解説としてヒザカリタウンのジムリーダー、サツキさんに来ていただきました! 皆さん、盛大な拍手を!』

女性の方は、もっとテンションが高かった。

 

『皆さぁぁぁん! こーんにーちはぁぁぁぁ! ジムリーダーのサツキです! 今日はよろしくねえぇぇぇぇ!』

 

湧き上がる歓声など一瞬で掻き消すかのように、サツキの元気一杯の大声がマイク越しに響き渡る。

マイクに向かってそんな大声を出せば、直後に来るのは耳をつんざくノイズ。

キィィィィィン! と嫌な音が会場に響き、皆が耳を覆った。

が、当のサツキは自分の声が観客の鼓膜と解説席のマイクを破壊しそうになったことに気づいていないらしく、

『あれぇ? 皆さっきまでの歓声はどうしたの? 今日は折角の大会なんだから、皆盛り上がっていくぜ!』

慌ててアナウンサーがサツキのマイクの音量を下げたため、今度は爆音が響かずにすんだ。

(サツキさん、マイクいらないんじゃないかなぁ……)

そう思ったのは、恐らくハルだけではないだろう。

『……それでは、気を取り直して! ヒザカリ大会の一回戦、第一試合を行います!』

予想だにしなかった解説席からのダイレクトアタックを食らってすっかり静まり返っていた会場だが、アナウンサーの声によって再び会場は湧き上がり、いよいよ、大会が始まる。

 

 

 

『さあ、それでは続いての試合に参りましょう! 一回戦の第三試合、対戦するのは、現在バッジ三つ、ハル選手! 最近手に入れたバッジは解説のサツキさんのコロナバッジとのことです!』

『おお、ハル君か! 昨日ジムでやったけど、強かったぜあの子!』

『そんなハル選手の相手は、同じくバッジ三つ、ダリ選手! 最近手に入れたバッジは、サオヒメシティのジムバッジのようです!』

『サオヒメのジムリーダーに勝ってるんだ! あそこの人は二重三重に戦術を組み合わせて戦ってくるから、そう簡単には勝てないはずだよ。私よりもずっとバトルが上手い人だし。だけどハル君もとっても強かったから、個人的には一回戦から注目の対戦カードって感じだねぇ!』

(そういえば、この間会ったアリスさん、サオヒメに向かうって言ってたな)

サオヒメシティと聞いて、ハルは山道で出会ったアリスのことをふと思い出す。

『サツキさんも注目の両者、これは名勝負の予感! それでは、両選手入場です!』

入場の合図を受け、二人がバトルフィールドを挟んで立つ。対戦相手のダリはハルよりも大柄な少年だ。

「相手になるのはお前だな。俺を楽しませてくれよ」

ダリが不敵に笑う。相手がかなりガタイが良く、目つきが悪いので思わずビビりかけたハルだが、

「……ええ。いい勝負にしましょう!」

これは公式のポケモンバトル、怯える必要などない。すぐに威勢を取り戻す。

「それでは、両者ポケモンを出してください」

審判に従って、二人は同時にボールを取り出す。

「出てきて、ヒノヤコマ!」

「行ってきな、ヤミカラス!」

ハルが選んだのはヒノヤコマ。対するダリのポケモンは、黒い帽子を被ったカラスのようなポケモン。

 

『information

 ヤミカラス 暗闇ポケモン

 真っ黒な姿や特徴的な鳴き声から

 不吉の証とされる。餌を求めて街に

 現れ捨てられたゴミを撒き散らす。』

 

悪・飛行タイプのヤミカラスが相手。互いに空を飛ぶポケモン同士の対戦となった。

『それでは、ヒザカリ大会一回戦、第三試合、スタートです!』

「行くよ! ヒノヤコマ、疾風突き!」

いきなりヒノヤコマが猛スピードで動き出す。

ヤミカラスの反応速度を上回るスピードで一気に距離を詰め、嘴で突き飛ばす。

「続けてニトロチャージ!」

ヒノヤコマの翼から火の粉が吹き出し、その体を炎が纏う。

ヤミカラスへとさらに追撃を掛けるが、

「ヤミカラス、守る!」

突如、ヤミカラスの周囲に守りの結界が展開される。

突っ込んでいったヒノヤコマだが、結界に阻まれ、逆に弾き返されてしまった。

「悪の波動!」

その隙を狙って、ヤミカラスは紫黒の光線を発射する。

『おおっと! ダリ選手のヤミカラス、ヒノヤコマを弾き返しました!』

『防御の常套手段だねえ! 上手く使えば一気に流れを引き寄せられる技。ダリ君から見ればチャンスの場面だね!』

悪の波動の直撃を受け、ヒノヤコマが吹き飛ばされる。

「ヤミカラス、ドリル嘴!」

嘴を伸ばし、ヤミカラスはドリルのように高速回転しながら突撃を仕掛けていく。

「ヒノヤコマ、来るよ! 上昇して回避!」

体勢を崩されながら、ヒノヤコマは咄嗟に翼を羽ばたかせて急上昇。すんでのところでヤミカラスの嘴の攻撃を回避した。

「よし、エアカッターだ!」

回転を解いたヤミカラスに、ヒノヤコマが上空から翼を羽ばたかせ、風の刃を落とす。

ヤミカラスは風の刃を躱しきれずに、その身を切り裂かれる。

「ヒノヤコマ、アクロバット!」

「ヤミカラス、立て直せ! 悪の波動!」

ヒノヤコマが素早くヤミカラスへと近づいていくのに対して、空中で体勢を整えたヤミカラスは黒い波動の光線を放つ。

ヒノヤコマの攻撃は悪の波動に阻まれ、ヤミカラスには届かない。

「ヤミカラス、ドリル嘴!」

「ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」

両者共に一旦距離を取り、ヤミカラスは嘴を伸ばして高速回転し、ヒノヤコマは全身に炎を纏い、一直線に突っ込んでいく。

お互いが正面から激突、威力は互角だが、この激突はヒノヤコマにとって互角では終わらない。

「ヒノヤコマ、アクロバット!」

両者がぶつかり合いの末に一旦離れた次の瞬間、ヒノヤコマは素早くヤミカラスの背後に回り込む。

『ヒノヤコマのスピードが上がっています! これは!?』

『ニトロチャージの追加効果だね! 炎の力で自らを加速させる! 炎タイプの攻めの常套手段! これはちょっとずつハル君に流れが向いてるかな!』

翼をヒノヤコマに叩きつけられ、ヤミカラスが突き飛ばされる。

「ぐっ、ヤミカラス、悪の波動!」

体勢を崩され、ヤミカラスは周囲へと悪意に満ちた闇の波動を放つ。

だがスピードの上がったヒノヤコマは悪の波動を素早く躱し、

「ニトロチャージ!」

力強く鳴いてその身を炎に纏い、ヤミカラスへと突撃を仕掛ける。

「っ、ヤミカラス、守る!」

ヤミカラスの周囲に、守りの結界が張られる。

この結界が相手ではどんな攻撃も通用しないが、

「ヒノヤコマ、急上昇!」

結界に激突する直前、ヒノヤコマはほぼ直角に急上昇し、結界への直撃を避けた。

「エアカッター!」

結界が消えたところに、ヒノヤコマは風の刃を放つ。

「っ、ヤミカラス!」

その身を刃に切り裂かれ、ヤミカラスはドサリとフィールドに落ち、戦闘不能になった。

『決まったぁぁぁ! ハル選手のヒノヤコマ、スピードを生かして攻め込み、ダリ選手のヤミカラスとの空中戦を制しました!』

アナウンサーの高らかな叫び声が会場内に響き渡り、場内に歓声が沸く。

『ヒノヤコマの持ち味を生かしたいい試合だったね! ニトロチャージからの猛攻、私も大好きな戦い方だったよ!』

いかにも炎タイプ使いらしいサツキの言葉を聞きながら、ハルは腕に留まったヒノヤコマの頭を撫でてボールに戻し、対戦相手に一礼すると、フィールドを後にする。

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