魔王と救世の絆   作:インク切れ

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サオヒメシティ編――Evolution
第27話 砂中の襲撃者


朝早く、ハルはヒザカリタウンを出発していた。

自然豊かなヒザカリタウンからうって変わり、サオヒメシティまでの道は植物が少なく、ゴツゴツとした岩場が多いが、ちゃんと通れる道は用意されており、山道よりは歩きやすい。

そして、そんな道を進むハルは。

今まさに、地中からの襲撃を受けていた。

 

「うわっ!?」

 

足元から何者かに襲われ、ハルは咄嗟に飛びのいたものの尻餅をついてしまう。

襲撃者の正体は、ポケモンだった。

 

『information

 メグロコ 砂漠ワニポケモン

 体温を下げないように地中で生活。

 獲物や外敵を見つけると足元から

 襲い掛かり大顎で噛み付くのだ。』

 

砂の色をした、目元の黒い小柄なワニのようなポケモン。

どうやら、このメグロコが縄張りとしている地に踏み込んでしまったらしい。襲撃はハルに躱されたが、それでも唸り声をあげてハルを威嚇している。

「地面と悪タイプのポケモンか……この道以外を通ってサオヒメシティに進もうとするとかなり遠回りになるし、君には悪いけど、ここを通させてもらうよ。出てきて、ヒノヤコマ!」

縄張りに踏み込んでしまったのは自分なので倒すつもりはないが、一旦撃退すべく、ハルはヒノヤコマを繰り出す。

そして外敵が戦うつもりだと認識したようで、メグロコは牙を剥いて本格的に襲い掛かってきた。

「ヒノヤコマ、エアカッター!」

ヒノヤコマが翼を羽ばたかせて空気の刃を放つが、メグロコは頑丈な顎で刃を噛み砕いてしまう。

「それならニトロチャージだ!」

ヒノヤコマの翼から火の粉が吹き出し、その身に炎を纏う。

メグロコの噛みつきを躱し、炎の突撃を仕掛けるが、対するメグロコは素早く地中に潜って身を隠す。

「なかなか素早いな……ヒノヤコマ、上昇して様子を探ろう」

地中からの攻撃を警戒し、ヒノヤコマを上空へと移動させる。

しばらくするとメグロコが地中から現れる。攻撃が届かないと判断したようだが、

「今だよヒノヤコマ! 疾風突きだ!」

その瞬間を狙って、ヒノヤコマが高速で急降下し、一気にメグロコとの距離を詰める。

対応する隙すら与えず、嘴でメグロコを突き飛ばし、

「アクロバット!」

さらにヒノヤコマは身軽な動きでメグロコとの距離を詰め、翼を振りかぶる。

だが翼が振り下ろされる直前、メグロコが大顎を開いてヒノヤコマに噛み付いた。

「っ、ヒノヤコマ! エアカッターだ!」

ヒノヤコマが体を振ってもがきつつ、翼を羽ばたかせて風の刃を飛ばす。

しかしメグロコは刃を受けてもヒノヤコマにかじり付いたまま中々離れない。

「しぶとい……! それなら、ニトロチャージだ!」

ヒノヤコマの全身を炎が包む。

これには流石のメグロコも振り落とされてしまうが、ヒノヤコマから離れたメグロコは即座に渦巻く砂を発生させ、ヒノヤコマの炎を打ち消してしまった。

「今のは……砂地獄か」

地面技なのでヒノヤコマにダメージはないが、メグロコが体勢を立て直す隙を作るには充分。

このメグロコ、野生のポケモンにしてはかなりの腕前の持ち主だ。

「なかなか強いポケモンだな……これ、ゲットしたいかも。仲間になってくれれば心強いぞ……」

ハルの手持ちポケモンはまだ三匹。そろそろ新しい仲間を増やしたい頃だ。

このメグロコを捕まえることができれば、いい戦力になってくれるだろう。

「よし、ヒノヤコマ、もう一度疾風突き!」

ヒノヤコマが嘴を突き出し、目にも留まらぬスピードで突撃する。

やはりこのスピードには対応できないようで、メグロコは突き飛ばされてしまう。

「今だヒノヤコマ! ニトロチャージ!」

炎を纏い、さらに突撃を仕掛けるヒノヤコマ。

メグロコは地中に潜る余裕はなく、炎を纏っていては噛み付いての迎撃もできない。

しかし。

 

大きく吼えたメグロコの体が、突如青く光り輝く。

 

「えっ……!? これって……!」

やはりこのメグロコ、相当強いポケモンだったようだ。

間違いない。昨日見たものと全く同じこの光は、進化の光。

光に包まれたメグロコが、そのシルエットを大きく変えていく。

ようやく収まった時、先ほどまで四足歩行をしていたメグロコは二本足で立ち上がり、別のポケモンとなっていた。

 

『information

 ワルビル 砂漠ワニポケモン

 両目は熱を感知し暗闇でも周囲の

 様子を把握できる。大顎で外敵に

 噛み付き投げ飛ばして追い出す。』

 

先程までのメグロコと比べて体色は変わらないが、二本足で立ち上がっており、体つきがより頑強になっている。

「まさか相手が進化してくるなんて……ヒノヤコマ、まだ行ける?」

進化したワルビルを見てヒノヤコマは一旦ハルの元まで戻り、頷く。

「よし! ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」

ヒノヤコマが力強く鳴き、その身を炎に包んで突撃する。

しかし、ワルビルは口を開き、ヒノヤコマの炎の突進をその大顎で受け止めた。

ヒノヤコマに牙を食い込ませ、そのまま首を振るい、投げ飛ばして地面に叩きつける。

「っ! ヒノヤコマの炎を気にもしないなんて……!」

進化する前と比べて、明らかに強い。先ほどまでは炎を纏っていたヒノヤコマに手出しができていなかったはずだ。

「途端に相性が悪いな……ヒノヤコマ、一旦戻っててくれ」

ヒノヤコマをボールへと戻し、ハルは別のボールを取り出す。

「頼んだよ、リオル!」

代わりにハルが繰り出したのはリオルだ。悪タイプを持つワルビルに対して、有利に戦える。

「リオル、電光石火!」

地を蹴って飛び出し、リオルが猛スピードで突撃する。

一瞬で懐へと潜り込み、ワルビルを突き飛ばす。

「発勁!」

さらに波導の力を纏った右手をワルビルに突き出すが、ワルビルは右腕を振るってリオルの右手を受け止め、さらに左腕でリオルを弾き飛ばした。

「これは……燕返し! それならリオル、真空波!」

すぐさまリオルは起き上がり、腕を振って真空の波を放つ。

ワルビルの額に直撃し、わずかに後ずさりする。

「もう一度発勁!」

右手の波導を強め、リオルはワルビルへと向かっていく。

それを見たワルビルは今度はすぐさま地中に潜り、姿を隠してしまうが、

「リオル、波導の力で場所を探るんだ」

リオルは生命体の波導を感じ取ることができる。例え相手が地中にいようとも、その場所を正確に捉える。

「リオル、出てきた瞬間に発勁!」

直後、リオルの足元から勢いよくワルビルが飛び出す。

しかしそれを予知していたリオルは身を捻ってワルビルの攻撃を躱すと、波導を纏った右手を叩きつけ、ワルビルを大きく吹き飛ばす。

「真空波!」

宙を舞うワルビルへ、さらにリオルは真空の波を放つ。

真空波の直撃を食らって、ワルビルは地面に撃墜される。

「よし……今だ!」

それでもまだゆっくりと起き上がろうとしているワルビルに対し、ハルはモンスターボールを投げつける。

ボールがワルビルの脳天に直撃し、ワルビルが間抜けな声を上げてすっ転んだ直後、モンスターボールが開き、ワルビルはその中に吸い込まれる。

ボールが地面に落ち、ボタンが赤く点滅し、激しく揺れる。

やがて、カチッと音がし、点滅とボールの揺れが止まった。

「……やった! ワルビル、ゲット!」

ハルの手持ちに、またもう一匹、新しい仲間が加わった。

「ワルビル、突然攻撃しちゃってごめんよ。大丈夫かい?」

ハルは捕まえたばかりのワルビルを出し、体力回復効果のあるオボンの実を差し出す。

まだ気が立っている様子のワルビルだったが、自分を打ち負かしたリオルもいるため、反抗はせずにハルからオボンの実を受け取る。

しかしそれを食べた瞬間、表情が一変した。

「……え? まだ欲しいの? まぁ昨日の優勝商品だからまだ沢山あるよ。待ってね……」

バッグを探り、ハルはいくつかオボンの実を取り出す。

ワルビルは瞬く間に木の実を食べてしまうと、機嫌良さそうに雄叫びを上げる。

「気に入ってくれたなら嬉しいよ。ワルビル、これからよろしくね」

ハルが手を差し出すと、ワルビルはご満悦な表情でハルの手を握り、続けてリオルとも握手を躱す。

旅の仲間にまた一匹頼もしいポケモンを迎え、ハルは改めて次の街、サオヒメシティを目指す。




前話の分です。
《サイコショット》
タイプ:エスパー
威力:80
特殊
サイコパワーを一点に集め、念力の弾を放出する。

※威力はあくまでも目安です。
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