魔王と救世の絆   作:インク切れ

32 / 121
第29話 Mega Evolution

「貴方たちのような普通のトレーナーでは我々に勝てないのは当然なのです。なぜなら」

「我々にはご加護があるからです。教皇様が、『母なる君』が、我々を守ってくださっている」

修道服の二人組、ルニルとグニルが、いよいよ本気で攻撃を仕掛けてくる。

だが、その時。

 

「あら。それじゃあ、普通のトレーナーじゃなければいいのね?」

 

突如ハルとサヤナの後ろから響いた、女性の声。

次の瞬間、ニダンギルとランプラーの上空から落雷が如く電撃が落ち、二体を吹き飛ばした。

「……! まさか、この電撃は……」

「ええ……あの者が来てしまいましたね」

ルニルとグニルが忌々しそうに呟き、少し後ずさりする。

そして、乱入者は現れた。

「ハル君、久しぶりね!」

ハルたちの前に立つ、一人と一匹。

その正体は、

「アリスさん!」

カザカリ山道で出会った女性、アリスと、彼女の連れているライボルトだった。

山道では作業着のような格好だったアリスだが、今は青と白のグラデーションの掛かったスカートだ。

先ほどの電撃は、このライボルトが放ったもので間違い無いだろう。

「他の信者は私に出会うとすぐに逃げていくのに、あんたたち二人は懲りないわね。ディントス教はいつから通りかかったトレーナーを襲う邪教に成り下がったのかしら。最初からかもしれないけど」

「邪教……? なんですって……!?」

「何たる侮辱! 我らがディントス様を邪なる者と申しますか!」

「ええそうよ。文句があるなら、まずは私を倒してごらんなさい。ハル君、サヤナちゃん、あとは任せて」

瞬く間に憤怒の形相へと変わっていくルニルとグニル。対して、そんな二人を見てもアリスは相変わらず余裕を浮かべたままだ。

「いくらジムリーダーの貴女といえど、今回ばかりは許せません! ニダンギル、起きなさい!」

「ディントス様への侮辱、万死に値する! ランプラー、行け!」

怒りの雄叫びをあげる司教二人組。しかし、

「えっ……えっ!? ジムリーダー!?」

ハルは別のところに気を取られていた。アリスというこの女性、なんとジムリーダーだったらしい。

「そうだよ。もしかしてハル、知らなかったの?」

サヤナは知っているようだ。しかも、

「驚くのはまだ早いよ。アリスさんの凄いところは、ここからなんだから!」

アリスにはまだ何かあるらしい。とにかく、ハルとサヤナはアリスと司教二人の戦いを見守る。

「仕方ないわね。だったら私たちも、ちょっとだけ本気を出しちゃおうかしら」

アリスが不敵な笑みを浮かべ、ブレスレットを付けた右腕を天に掲げる。

刹那。

ブレスレットに填め込まれた宝石が、眩い光を放つ。

 

「我らの絆よ、閃光が如く煌めけ! ライボルト、メガシンカ!」

 

ライボルトの全身の体毛が逆立ち、首元に隠れていた宝石――メガストーンが露わになる。

アリスのブレスレットの宝石とライボルトの首元の宝石が呼応し、光が一つに繋がる。

七色に輝く光が、ライボルトの姿を変化させていく。

体毛が、鬣が、稲妻のように鋭く逆立つ。

同時に、その体には先程までと比べ物にならないほどの膨大な電気を纏っている。

「メガシンカ――メガライボルト!」

アリスが叫び、ライボルトが雷の如く天を貫く咆哮を放つ。

トレーナーとポケモンの強い絆の力がもたらす、限界を突破した進化。

進化を超えた超進化、メガシンカだ。

ハルも聞いたことはあったが、まさか、それをこの目で見られる日が来ようとは。

「……何の! ランプラー、火炎放射!」

「恐れることはない! ニダンギル、イビルスラッシュ!」

ランプラーが膨大な灼熱の炎を吹き出し、ニダンギルが剣を構えて突撃していく。

だが、

「ライボルト、パワーボルテージ!」

ライボルトの鬣が激しい電気を纏う。

鬣から溢れ出した電気が、電撃の衝撃波となって放出される。

ニダンギルの斬撃を容易く打ち破り、ランプラーの炎を貫き、二匹のゴーストポケモンを吹き飛ばした。

「な……っ! つ、強い……!」

「これが、メガシンカの力ということですか……」

「仕方がありませんね……グニル」

「分かっています、ルニル。一時退却しましょう」

ルニルとグニルは急いでそれぞれのポケモンを戻し、逃げるようにその場を去っていった。

「……ったく、逃げ足の速いこと。あの二人、そろそろ本気で手を打たないといけないわね」

はぁ、とアリスがそう呟くと、ライボルトが再び光に包まれ、元の姿に戻る。

「ライボルト、お疲れ様。休んでていいわよ。それとも、貴方も久しぶりにハル君とお話しする?」

頷いたライボルトを見て小さく笑い、アリスはハルとサヤナの方へ向き直る。

「……さてっと、ハル君には改めて自己紹介しないとね。私はサオヒメシティジムリーダーのアリス。隠してたわけじゃないんだけど、この地方で私のことを知らない人って結構珍しいから、一般トレーナーとして話してみたかったのよね。私、マデルだとちょっとした有名人だから」

「あぁ……そういうことですか」

ハルは最近マデルに引っ越してきたため、アリスとしても自然に接しやすかったのかもしれない。

「そして、サヤナちゃんはハル君のお友達だったのね。特訓の方は順調かしら?」

「うーん……特訓中だけど、まだアリスさんには及ばないかなぁ……」

珍しくサヤナが自信のない発言をする。

「そんなことないわよ。昨日のジム戦だって、私に勝つまであと一歩だったじゃない。順調に鍛えていけばもっと強くなれるわよ」

そんなサヤナの様子を見て、うふふ、とアリスは柔和な笑みを浮かべる。

「あの、アリスさん」

ふとそこでハルが口を開く。

「ん? どうしたの?」

「さっきの二人組って、一体何だったんですか? ディントス教って名乗ってましたけど……」

「ああ、あいつらね……」

途端に、アリスの表情が険しくなる。

「この街の過激派宗教団体よ。教祖は教皇ディントス、その名前をそのまま取ってディントス教。最近創始された宗教よ。元々この街には使われていない教会があってね、そこをディントスが買い取ったの。初めの方は慈善活動を行う穏便な教団だったんだけどね……」

苦い顔のままアリスは言葉を続け、

「最近『母なる君』とか呼ばれる信仰対象ができたみたいで、その頃から積極的に布教活動を始めたのよ。何でも信仰の証にポケモンをその『母なる君』なる者に捧げて救いを受けるんですって。明らかに胡散臭いんだけど、何故か少しずつ信者が増えてる。迷惑だって報告も多数受けてるから私が圧力をかけて布教を抑えてるんだけど、さっきの司教だけは懲りずに活動を続けてる。あの二人妙に強いしね、まぁ私には遠く及ばないけど」

はぁ、とアリスは息を吐き、

「……さて! それじゃあハル君、ジムで待ってるわね。特訓を積んでからでも、今すぐでも。私とこのライボルトがいつでも相手をするわ」

じゃあね、とアリスは手を振り、街中に去っていってしまう。

「……何かアリスさん、大変そうだね」

「これだけ大きな街だと、問題も多いのかなぁ」

とりあえず、再会したハルとサヤナは改めてポケモンセンターへと向かう。

 

 

 

ポケモンを休ませてあげたあと、ハルとサヤナは地下の訓練所に来ていた。

「ハル。久々に会ったんだし、特訓がてらバトルしない?」

「うん、いいよ。僕もジム戦に向けて調整をしたかったところだし」

サヤナのバトルの申し出を、ハルは快く承諾する。

「よし、決まり! じゃあ三対三のバトルね! 私でもアリスさんには勝てなかったから、私に勝てないと、サオヒメジムは攻略できないよ!」

「望むところだよ。ハツヒタウンでの最初のバトルのリベンジもしたいしね」

バトルフィールドに立ち、二人はボールを取り出す。




《イビルスラッシュ》
タイプ:悪
威力:90
物理
闇の力を込めた刃や剣で斬撃を浴びせる。急所に当たりやすい。

《パワーボルテージ》
タイプ:電気
威力:100
特殊
溢れ出す激しい電撃を衝撃波と共に周囲へ放つ。一定確率で相手の特防を下げ、麻痺状態にする。

※威力はあくまでも目安です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。