魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第33話 アリスの電撃戦術

「エレブー、雷パンチ!」

右腕を振り回して電撃を溜め込み、エレブーは地を蹴って飛び出し、エーフィに殴りかかる。

「エーフィ、躱してスピードスター!」

対するエーフィは素早く後ろへと飛んで電撃の拳を躱すと、無数の星形弾を放って反撃する。

「エレブー、瓦割り!」

左手で手刀を振り下ろし、エレブーは星形弾を全て砕く。

だがこれでエレブーの技は全て分かった。全て手を使った技であるところからも、やはり力自慢のポケモンだと分かる。

「シャドーボール!」

「躱して炎のパンチ!」

額の珠から影の弾を放つエーフィに対し、エレブーは腕に炎を灯して飛び出す。

影の弾を飛び越え、一気にエーフィとの距離を詰め、炎の拳でエーフィをぶん殴った。

「よし、クリーンヒット! 続けていくわよ、雷パンチ!」

殴り飛ばされるエーフィに対し、すぐさまエレブーは腕に電撃を纏わせ、追撃を仕掛ける。

「くっ、エーフィ、サイコショット!」

エーフィの額の珠に、サイコパワーが溜め込まれる。

直後、エレブーの電撃の拳がエーフィに叩き込まれるが、その瞬間に念力の弾が放たれ、お互いに吹き飛ばされた。

「エレブー、負けちゃダメよ! 冷凍パンチ!」

床に手を付き、低く唸りながらエレブーは立ち上がると、拳に冷気を纏わせて突っ込んで来る。

「エーフィ、食い止めて! マジカルシャイン!」

エーフィの額の珠が眩い光を発し、純白の光が放出される。

突っ込んで来るエレブーを、真っ白な光の力で逆に押し返した。

「次よ! 雷パンチ!」

しかし光が消えた瞬間、電撃を纏ったエレブーが一気に突っ込んでくる。

対応する隙も与えず、電撃の拳で再びエーフィを殴り飛ばした。

「これで決めるわ! エレブー、炎のパンチ!」

雄叫びと共に拳に炎を纏わせ、エレブーは腕を振り回しながらエーフィへと突撃する。

「くっ……まだだ! エーフィ、マジカルシャイン!」

フィールドに倒れながらも、再びエーフィは純白の光を放ち、エレブーを食い止める。

真っ白な光によって炎のパンチは阻まれるが、

「それじゃさっきと同じよ! エレブー、雷パンチ!」

光が消えた瞬間、再びエレブーが電撃を纏った腕を突き出す。

渾身のパンチがエーフィを捉え、吹き飛ばす。

「っ、エーフィ!」

金属の床に激突し、エーフィはまだ立ち上がろうとするもそこで力尽き、倒れてしまう。

「エーフィ、戦闘不能。エレブーの勝利です」

中盤までは互角に戦っていたが、エレブーの馬力に押し切られてしまった。

「お疲れ様、エーフィ。ゆっくり休んでて」

エーフィを労ってボールに戻し、ハルは即座に次のボールを手に取る。二番手はもう決まっている。

「本当は成長して進化を遂げたイーブイの力を見せたかったんですけど……さすがはアリスさんですね」

「とは言ってもカザカリ山道で戦った時と比べて、随分と腕は上がってるわよ。エーフィも君のバトルスタイルに合わせた動きができていたし。だけど、終盤は私のエレブーの得意な間合いで戦っちゃってたかな」

さあ、とアリスは続け、

「次のポケモンは誰? ハル君とポケモンとの絆、もっと見せてよ」

「ええ、勿論です! 次は君だよ、出てきて、ワルビル!」

ハルの二番手はワルビル。ハルの手持ちの中でも、電気タイプに対して明確に有利を取れるポケモンだ。

「なるほど、ここでワルビルね。タイプ相性だけじゃなく、力自慢のエレブーにも対応できるいいチョイスね。だけど、私のエレブーもパワーじゃ負けないわよ」

このワルビルの存在は、ディントス教司教と戦った時にアリスに知られている。おそらく、対策も組まれているだろう。

「僕のワルビルなら、やってくれますよ。勝負はここからです」

ハルの言葉に呼応し、ワルビルは大顎を開いて大きく吼え、エレブーを威嚇する。

対するエレブーも腕を振り上げ、雄叫びを上げる。

「行きますよ! ワルビル、シャドークロー!」

ワルビルの構えた両手に、黒い影が集まる。

漆黒の鉤爪を携え、ワルビルは地を蹴って飛び出す。

「エレブー、炎のパンチ!」

対するエレブーも両腕を振り回して炎を纏わせ、ワルビルを迎え撃つ。

両者の拳が真っ向からぶつかり合う。威力は互角、どちらも一歩も譲らない。

「エレブー、一度離れなさい。冷凍パンチ!」

「それなら、穴を掘る!」

競り合った末に一度距離を取り、エレブーは拳に冷気を纏わせる。

対してワルビルは床を叩いて穴を開ける。

金属製なのは表面だけのようで、金属の床を砕いたワルビルは素早く地中へと潜り姿を隠す。

「さあ、どこから来るのかしら。エレブー、迎撃準備よ」

地中に潜ったワルビルに対し、エレブーはどこからでも来いと言わんばかりに右腕を振り回し、大きく吼える。

「今だ! ワルビル!」

「っ、後ろ! 瓦割り!」

黒い床を突き破って姿を現わすワルビルに向けて素早くエレブーは振り返り、右腕を振り下ろす。

僅かにワルビルの方が早かったが、それでもエレブーは力尽くでワルビルの襲撃を凌ぎ切る。

「エレブー、もう一撃よ!」

右腕でワルビルを食い止めつつ、エレブーが左腕を横薙ぎに振るい、食らいつくワルビルを叩き飛ばす。

「畳み掛けなさい! 冷凍パンチ!」

「来るよ! ワルビル、シャドークロー!」

体勢を崩すワルビルを狙い、エレブーが両腕に冷気を纏わせて襲い掛かるが、ワルビルも咄嗟に両腕に影の爪を纏わせて迎え撃つ。

両者が再び激突し、さらに、

「エレブー、瓦割り!」

「ワルビル、噛み砕く!」

即座に技を切り替えてエレブーが腕を振り下ろすが、ワルビルが大顎を開いてその腕に噛みつき、動きを止める。

「っ、さすがのパワーね。だけど私のエレブーはまだ左腕が使えるわよ! 冷凍パンチ!」

右腕を封じられながらも、エレブーは左拳を握り締め、冷気を纏わせる。

だが、

「僕のワルビルを、甘く見ないでくださいよ! ワルビル、そのまま持ち上げて、投げ飛ばすんだ!」

エレブーの腕に食らいつくワルビルが首を振るう。

顎の力だけでエレブーを宙に持ち上げ、エレブーの体勢を崩して冷凍パンチを不発させると、首を大きく振ってエレブーを思い切り投げ飛ばした。

「なっ……!?」

「今だワルビル! シャドークロー!」

床に叩きつけられたエレブーが起き上がろうとするが、それよりも早く、ワルビルの漆黒の影の爪がエレブーを切り裂いた。

エレブーの体がふらりと傾き、その場に倒れ伏す。

「エレブー戦闘不能。ワルビルの勝利です」

審判の女性が淡々と告げる。多少ダメージは受けたが、最低限の被弾でエレブーを突破できた。

「エレブー、よく頑張ったわね。休んでなさい」

エレブーをボールに戻すと、アリスは即決で次のボールを手に取る。

「もう一度あなたの出番よ。輝け、マルマイン!」

アリスが出したのは先鋒で姿を見せたマルマイン。

しかし、

「えっ?」

このチョイスに素っ頓狂な声をあげたのはハルだった。

「どうかした?」

「いや、だって、そのマルマイン……シグナルビームと電気技しか覚えてませんよね……?」

確かに、虫タイプの技であるシグナルビームはワルビルに効果抜群だ。

しかし、だとしてもそれ一本で戦うのはいくらジムリーダーとはいえ無理がある。

そう、ハルは考えていたのだが、

「そうね。でもせっかくだから、エースポケモンは最後に出したいじゃない?」

冗談めかしくアリスは笑うと、

「ま、こっちにも考えってものがあるのよ。すぐに分かるわ。それじゃ、バトル再開よ」

そう言われ、ハルとワルビルも改めて戦闘態勢に入る。

「それじゃマルマイン、まずはシグナルビーム!」

先に動き出したマルマインが、額からカラフルな光線を発射する。

「ワルビル、穴を掘る!」

対するワルビルは素早く穴を掘って身を隠す。

ビームを回避しつつ、地中からひっそりと忍び寄る。

「早速潜ったわね。エレブーは対応しきれなかったけど、私のマルマインなら……」

アリスがそこまで言ったところで、ワルビルがマルマインの背後から現れ、牙を剥いて襲い掛かる。

しかし、

「躱して! シグナルビーム!」

恐るべき瞬発力で一瞬のうちにマルマインはワルビルの襲撃を回避し、逆に光線をワルビルへと浴びせた。

「っ、ワルビル! やっぱり素早いな……」

ワルビルが体勢を立て直した時には、既にマルマインはワルビルと大きく距離を取っている。

「このフィールドは表面が金属で出来ているから、普通のフィールドに比べて地中からの攻撃に少しだけ時間が掛かる。私のマルマインの瞬発力なら、避けきれるわ」

「それなら、地上戦です。僕のワルビルの持ち味は穴を掘るだけじゃありませんよ! 燕返し!」

ワルビルが地を蹴って飛び出す。

一気にマルマインとの距離を詰め、腕を振り抜く。

「マルマイン、シグナルビーム!」

マルマインがカラフルな光線を放つが、ワルビルは右腕を振り抜いて光線を弾き飛ばし、間髪入れずに左腕を振り下ろしマルマインへと叩きつける。

燕返しは飛行タイプの技ゆえ、効果は今一つだが、

「いいぞ、続けてシャドークロー!」

一瞬怯んだマルマインへ、続けざまに影の爪が襲いかかり、斬撃を浴びせる。

「噛み砕く!」

さらに猛攻を仕掛けるべく、ワルビルが大顎を開いた、その瞬間。

 

「マルマイン、十万ボルト!」

 

マルマインが周囲へ強力な電撃を放出する。

しかしワルビルは地面タイプ。当然、電気技は効かない。

「……? よく分からないけど、ワルビル、そのまま攻撃だよ!」

謎のアリスの指示に一瞬動きの止まったハルとワルビルだが、すぐに動き出す。

だが。

突如、ワルビルの周囲から尖った黒い金属片が浮かび上がり、ワルビルへと突き刺さる。

「!?」

「チャンスよ、シグナルビーム!」

思わず動きを止めたワルビルの隙を見逃すはずもなく、カラフルな光線が撃ち込まれ、ワルビルは吹き飛ばされた。

「っ……! 今のは……?」

何が起こったのか分からず焦りを隠せないハルに対し、アリスは余裕の笑みを浮かべる。

「ハル君のワルビルはさっき、穴を掘るでフィールドの金属床を壊したよね」

フィールドの穴を指差しながらアリスは続ける。

「床に穴を開けた時に出来た金属片を、マルマインの電磁力で操ったのよ。私のマルマインは複雑な電気の操作が得意だから、軽い金属くらいなら武器にできるのよ」

ハルがマルマインの方を見ると、マルマインの周囲を無数の金属片がゆっくりと宙を漂いながら渦巻いている。

「あれを突破しないといけないってことか……ワルビル、やれそう?」

ワルビルに言葉を掛けるハルだが、返事は分かっている。

ハルのワルビルは、それくらいでたじろぐほど弱いポケモンではない。寧ろこの戦いを楽しむように、ニヤリと笑って頷く。

「いい度胸してるじゃない。それじゃバトル再開よ! マルマイン、十万ボルト!」

マルマインが電気を操作すると、周囲に浮かぶ金属片が一斉にワルビルへと襲い掛かってくる。

「ワルビル、シャドークローで迎え撃つんだ!」

影の爪を両腕に纏わせ、ワルビルも地を蹴って飛び出す。

飛来する金属片を左腕で跳ねのけ、一気に距離を詰めて右腕を振るい、マルマインを切り裂く。

(アリスさんのペースに飲まれちゃいけない。確かに金属片を操れるのは厄介だけど、逆にいえばその武器を使わなければワルビルには対応できないってことだ。ワルビルが有利なことには変わらない!)

「ワルビル、続けて噛み砕く!」

怯んだマルマインに向けてワルビルが大顎を開き、その牙を丸いボディへ食い込ませる。

「マルマイン、振り払いなさい! 十万ボルト!」

噛み付かれたマルマインが電子音の混ざったような雄叫びを上げ、周囲へ強い電気を放つ。

刹那、無数の金属片が飛来してワルビルへと突き刺さり、牙の拘束が緩む。

「マルマイン、お返しよ! シグナルビーム!」

間髪入れずにマルマインの体が激しく発光し、額からビームを放出。

ゼロ距離射撃を躱せず、ワルビルが吹き飛ばされる。

「もう一度よ!」

さらに続けてマルマインは激しい光を放つ光線を連射する。

「っ、ワルビル! 穴を掘る!」

体勢を崩しながらも、咄嗟にワルビルは床を突き破って地中へと身を隠す。

「また潜ったわね。さあ、私のマルマインのスピードを見切れるかしら? 言っておくけど、マルマインは体力じゃなくて電気で動くから、動き回ってもスタミナ切れはしないわよ」

アリスの言葉と同時に、マルマインが猛スピードでフィールド上を動き出す。

(……落ち着け。あのマルマインのスピードは確かに速いけど、逆にいえばそれだけだ。攻撃力もエレブーに比べれば控えめだし、あのスピードさえ見切れば、マルマインは倒せる!)

「ワルビル、焦らないで。相手の動きを見切って、一撃をお見舞いしてやるんだ」

気配を隠し、地中に潜んだまま。

動き回るマルマインの様子を、ワルビルはじっと探る。

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