魔王と救世の絆   作:インク切れ

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ハダレタウン編――大会
第43話 悠久の街ハダレタウン


メガシンカを継承後、ハルが休んでいる間に、サヤナとスグリもジム戦に勝利、ライトニングバッジを獲得。

サオヒメシティを出る前にアリスとリデルにもう一度挨拶し、そして、その二日後。

三人は、カタカゲシティへ向かうまでの中間に位置する街、ハダレタウンへと訪れていた。

このハダレタウンにはジムこそないものの、非常に規模の大きな街。

街の周辺には古代の遺跡やその跡が残る、古代文明と現代の適合した街。その街並みから、『悠久の街』とも呼ばれている。

そしてその街の中心部には、古風な外見を模った巨大なバトルスタジアムが鎮座する。

「ねえハル、次の大会って、かなりおっきな大会なんでしょ?」

「アリスさんによると、そうみたいだね。調べてみようか」

ポケモンセンターのロビーのソファに腰掛け、ハルはサヤナに返事をしながら、アルス・フォンを開き、大会のホームページにアクセスする。

どうやら、マデル地方のジムバッジの所持数によって参加できるレギュレーションが異なるようだ。

「えーっと、レギュレーションは三つ。バッジの数が一個から三個のビギナーランク、四個から六個のレギュラーランク、七個から八個のアドバンスランク。僕たちはレギュラーランクだから、相手はみんな同レベル、もしくは格上だね」

現在、ハルとサヤナはバッジ四つ、スグリはバッジ五つだ。

「参加者が多い場合は予選が行われる、だって。その後に本戦トーナメントがあるから、優勝するには……予選を勝ち抜いた後、四連勝しないといけないのか」

単純計算だとそういうことになる。三戦目が準決勝、四戦目が決勝だ。

「関係ないね。オレはバッジ五つ、並大抵の相手に負ける気はしないし、ハル君はメガシンカが使える。サヤナちゃんだって、魔神卿の直属の部下とほぼ対等にやり合えるだけの実力は持ってるじゃん。格上が相手なら、いい下克上のチャンスっしょ」

モンスターボールを手の中で弄びながら、スグリが笑う。

「そうだね。びびってても仕方ないし、今の僕たちの力がどこまで通用するのか試すいい機会だよ」

「よーっし! 私も燃えてきたよ! 大会は明後日だけど、早めに参加登録しちゃおう!」

大会に向けて気持ちを高めつつ、ハルたち三人は出場登録のため、大会の会場へと向かう。

 

 

 

登録後、三人は一旦そこで別れ、ハルはポケモンセンターの地下、交流場に来ていた。

ポケモンの調整も兼ねて、数試合ほどポケモンバトルをしようと考えたのだ。

そして勿論、ハルと同じような考えを持つトレーナーは他にもいる。

「ねえ君、よかったらバトルしない?」

交流場にいた一人の少年が、ハルに声を掛けてくる。

ハルも背が高い方ではないが、その少年はハルよりもさらに背が低かった。黄色の髪はくるくるに巻かれており、カラフルな模様の入った白いTシャツと黒のハーフパンツはどうにもサイズが大きすぎるように見える。

「君は? どこかで見たような……」

そしてこの少年、何となくだが見覚えがある。

どこで会ったのかは思い出せないが、

「そうだねぇ、僕は覚えてるよ。君、カザハナシティのバトル大会に参加してたよねぇ」

その少年は、ハルのことが分かるらしい。

「僕の名前はミオ。君と同じく、カザハナ大会に参加してたポケモントレーナーだよぅ」

抑揚のない、どこかぼーっとしたような口調で、その少年はミオと名乗る。

「カザハナ大会……ミオ……あっ!」

そこでハルも思い出した。

「そうだ! 確か一回戦で、サヤナと戦ってた……」

懐かしのカザハナシティバトル大会、そこでのサヤナの一回戦の対戦相手だった少年だ。使っていたポケモンはラルトスだったか。

「明後日、大会があるでしょお? 準備のために、少しバトルしたいんだぁ。よかったら、どう?」

突然の申し出だったが、ハルとしてもちょうどいい。元より、そのためにここに来ているのだから。

「いいよ。僕も大会に出るから、ちょうどいいかな」

「決まりだねぇ。それじゃあバトルはポケモン一匹ずつで。早速、始めようかぁ」

 

 

 

両者がバトルフィールドに立ち、準備は整った。

モンスターボールを取り出し、同時にポケモンを繰り出す。

「出てきて、エーフィ!」

「カビゴン、出番だよぅ」

ハルのポケモンはエーフィ、それに対してミオのポケモンは、まん丸に太った大きな怪獣のようなポケモン。

 

『information

 カビゴン 居眠りポケモン

 腐ったものやカビが生えたものでも

 消化できる。空腹を知らせる腹の音は

 ドラゴンポケモンの咆哮に匹敵する。』

 

ノーマルタイプのポケモン、カビゴン。バトルフィールドに降り立つと同時に、その重量でズシンと床が揺れる。

「これは……随分と大きなポケモンだな……」

少なくとも、ハルが今まで戦ってきた中では一番大柄なポケモンだ。

ルカリオを出すのが正解だったかと一瞬考えたが、さすがに大会参加者に対してエースを見せたくはない。

それに、ハルのエーフィだって充分強い。

「それじゃ、始めるよ! エーフィ、サイコショット!」

まず先手を取って動いたのはエーフィ。額の珠に念力を溜め込み、サイコパワーの念弾を発射する。

「カビゴン、のしかかり」

だが、対してカビゴンはその鈍重な見た目からは想像もつかない機敏な動きで大きく飛び上がり、サイコショットを躱し、さらにエーフィ目掛けて落ちてくる。

「まずっ……! エーフィ、後ろに躱して!」

咄嗟にエーフィは飛び退き、何とかカビゴンの襲撃を躱すが、床の揺れに思わず体勢を崩す。

少しでも遅れていたらあの腹の下敷きになっていただろう。一発でゲームエンドすらあり得た。

「危ない危ない……エーフィ、反撃だ! もう一度サイコショット!」

床の揺れでふらついたエーフィだが、ダメージはない。額の赤い珠から、再び念力の念弾を発射する。

ようやく立ち上がったカビゴンのその額にサイコパワーの弾が直撃し、

「エーフィ、続けてスピードスター!」

さらにエーフィは二股の尻尾を振って追撃、無数の星型弾がカビゴンへと降り注ぐ。

しかし、

「カビゴン、毒々だよぅ」

立て続けに攻撃を受けてもカビゴンは怯まず、口から猛毒の液体を吐き出す。

「カビゴンは特防が高いんだぁ。特殊技じゃ、弱点を突かないとそう簡単には倒せないよぅ」

にんまりと、しかしどこか得意げな笑みを浮かべるミオ。エーフィの攻撃にも構わず、毒液を浴びせる

しかし、

「なるほど……だけど、僕のエーフィには、補助技は効かないよ」

エーフィの体に触れた毒の液体はエーフィを蝕むことができず、跳ね返され、逆にカビゴンに毒液が浴びせかけられた。

「僕のエーフィの特性はマジックミラーなんだ。エーフィへと向けられた補助技は、全て跳ね返るよ! エーフィ、マジカルシャイン!」

耐久力の高いカビゴンなら、毒が入ったのはチャンス。エーフィの額の珠が白く輝き、純白の光線がカビゴンに向けて発射される。

が、

「なるほどねぇ。だけど……カビゴン、シャドーボール」

毒を食らったはずのカビゴンは、顔色ひとつ変えない。

けろっとした表情のまま、黒い影を一点に集めて影の念弾を放ち、マジカルシャインを打ち消してしまった。

「えっ……?」

「僕のカビゴンも、毒は効かないんだぁ。免疫っていう特性のおかげで、毒状態にならないんだよぅ」

一本取ったと思ったハルだったが、ミオがさらにその上をいく。

「さ、続けるよぅ。カビゴン、もう一度のしかかり」

再びカビゴンは大きく跳躍し、上空からエーフィを狙い、巨体で押し潰さんと飛び掛かってくる。

「エーフィ、後退して! サイコショットだ!」

やはりこの光景はかなりのインパクトだが、一度見てしまえば怖くはない。エーフィは素早く距離をとってカビゴンの襲撃を躱し、さらにジャンプして揺れを避け、床にうつ伏せになるカビゴンへとサイコパワーの弾を発射する。

カビゴンの後頭部へ念弾が直撃、さすがに痛みを感じたのか、カビゴンが呻き声をあげる。

「よし! 続けてマジカルシャイン!」

起き上がったカビゴンへと、エーフィは立て続けに攻撃を放つ。

額の珠が白く輝き、純白の光が放出される。

だが。

 

「カビゴン、地割れだぁ!」

 

眩い光によって、エーフィの視界も一時的に防がれる。

それを見逃さず、カビゴンは地に足をつけてマジカルシャインを耐えきり、エーフィの足元を見定め、拳を思い切り床へと叩きつける。

カビゴンが床へと放った一撃により、床が裂け、割れる。裂け目は一気にエーフィの足元まで広がり、エーフィはその割れた床へと落ちてしまう。

「なっ……」

ハルが声をあげる間もなかった。

刹那、叩き割られた大地の底から爆発が生じ、大量の土砂とともにエーフィが吹き飛ばされる。

「エーフィ……!?」

宙を舞い、エーフィは重力に従って地に落ちる。

その一撃で、目を回して倒れ、戦闘不能になってしまった。

「な、なんて威力なんだ……」

「もしかして、知らなかった? 地割れは一撃必殺技、相手に当たれば相手を一撃で戦闘不能にしてしまうんだよぅ。その代わり技範囲はかなり狭いから、例えば、エーフィが足を止めていた今みたいに絶対に当てられるタイミングで使わないと当てられないけどねぇ」

のんびりとしたままの様子のミオだが、その口調はどこか誇らしげだ。後ろのカビゴンも、自慢げに低く鳴き声をあげる。

「一撃必殺……そんな技があるなんてね。僕の知識不足だった……ごめんね、エーフィ。よく頑張ったね」

撫でられたエーフィは、気にするな、といった様子で首を振る。

エーフィを労い、ボールへと戻し、

「ミオ、強いね。バッジはいくつなの?」

「えーっと、この前取ったバッジで……五つかなぁ」

五つ。ということは、

「僕は四つだから……もしかしたら大会で当たるかもしれないんだね」

ハルが出場するのは、バッジ数が四つから六つのトレーナーが集まるレギュラーランク。

つまり、ミオとは大会でまた戦う可能性があるということ。

「そうなんだねぇ。それじゃ、当たっても負けないよぅ」

「僕だって、次こそは負けないさ。大会でまた戦おうよ」

「うん。スタジアムで会うの、楽しみにしてるよぅ」

ミオはにっこり笑い、右手を差し出す。

ハルもすぐにその意図を理解し、握手を交わした。

「じゃ、僕はそろそろ行こうかなぁ。じゃあねぇ」

カビゴンを戻すと、ミオは手を振り、先に交流場を出て行った。

(それにしてもあのカビゴン、かなり強かった。一撃必殺技はもちろんだけど、あの耐久力も厄介だな。もし当たったときのために、ちゃんと対策を考えておかないと)

新たなライバルの出現を受け、気を引き締めるハル。

ハダレ大会は、いよいよ明後日に開催される。

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