大会当日。
大規模な大会ということで、会場やその周辺はかなりの賑わいを見せていた。
元より観光名所としても有名なこのハダレタウンでバトル大会となれば、これだけ人が集まるのも必然である。
「うわぁ! テレビ中継まで来てるよ!」
サヤナが指差した先にあるのは、テレビ局の中継車だ。『テレビ コトブキ』と書かれている。
「本当だ……コトブキって確か、シンオウ地方本部のテレビ局だよね」
「イザヨイシティにテレビコトブキの支部があるから、そこからだろうね。ま、テレビ放送されるのはアドバンスランクのバトルだろうけど」
スグリはどことなく残念そうだ。しかしテレビに出たかったというわけではないようで、
「オレとしてはああいうのが来てくれるとやりやすいんだよねー。変に緊張していつも通りの実力を出せなくなるやつっているからさ」
「あはは……そ、そうだね……」
苦笑いするハルはまさにその緊張するやつである。スグリもサヤナも緊張とは無縁そうだが、サヤナに関してはむしろ張り切りすぎて逆に空回りする可能性もありそうだ。
そんな時、
「あら、ハルじゃない。あなたも大会に?」
後ろから聞き覚えのある声を掛けられ、ハルは振り返る。
そこにいたのは、
「あっ、エリーゼさん!」
以前ヒザカリ大会で戦ったポケモントレーナー、エリーゼだった。戦力を隠す気もない余裕の表れか、それとも大会では使わない予定なのか、傍らには相変わらず護衛のように鋼のボディを持つ赤い虫ポケモン、ハッサムを連れている。
「ふふふ、お久しぶりね。せっかくの大きな大会だし、私も出場しようと思ってね。ハル、バッジの数は?」
「四つなので、レギュラーランクですね。エリーゼさんは?」
「あら、私は五つだから……同じランクね。もし戦うことになったら、今回は本気で相手してあげるから、覚悟しておきなさいよ?」
恐らくは、このハッサムが出てくるのだろう。
「あっ、はい……お、お手柔らかに……」
引きつった笑顔で、ハルはそう返す。
そんなハルの様子を見てエリーゼは微笑み、じゃあね、と手を振り、先に会場入りしていった。
「おいおい……マジかよ。あれでレギュラーランクって、やばくね?」
エリーゼか会場に向かっていった後、口を開いたのはスグリだ。
「やっぱり、スグリ君もそう思うよね……」
「ああ。見てすぐに分かった。あのハッサム、やばいぜ。ってかあの人多分ルーキーじゃなくね? 多分他の地方を回ってからこっちに来てるタイプの人だよ。あのハッサム相手だと、まともにやりあったら勝つのはかなり難しそうだね」
それでも、勝てないとは言わないあたり、いかにもスグリらしい。事実、発言とは裏腹にその表情は先ほどよりも楽しげだ。
「さ、オレたちも行こう。目標はでっかく、優勝だ」
「そうだね。もうすぐ開会式が始まるよ」
「よーし、私もなんだか燃えてきたよ! どんな人たちと戦えるのか、楽しみだね!」
サヤナの言う通りだ。どんなに強い相手でも、楽しんで戦えばいい。
ハルたち三人も会場入りし、いよいよ、ハダレタウンポケモンバトル大会が幕を開ける。
予想通りというべきか、かなりの参加者がいるようで、予選が行われることになった。
三人、または四人ずつの総当たり戦で、そこで一位になった者のみが本戦に進出できる。
全員が一勝一敗で並んだ場合は、勝ち試合の時間が一番短かった者が一位となる。
開会式も終わり、ハルは予選会場に移動。早速、一試合目が始まろうとしている。
ハルの最初の試合、相手は分厚いコートを着て丸眼鏡をかけた少年だ。
「これより、予選リーグ、ハル選手対クラン選手の試合を行います! 使用ポケモンはお互い一匹! それでは両者、ポケモンを出してください!」
審判の指示に従い、二人がボールを取り出す。
「頼んだよ、ヒノヤコマ!」
「出て来い、ニドリーノ!」
ハルが選んだのはヒノヤコマ、対戦相手クランのポケモンは体に針をいくつも持つ紫色のポケモン。額からは一際長い毒針が生えている。
『information
ニドリーノ 毒針ポケモン
気性の荒いポケモン。頭の毒針を
武器として振り回しながら戦うが
鋭い爪からも毒を分泌している。』
「相手は毒タイプのポケモンか……毒の状態異常に気をつけないとね。ヒノヤコマ、あのツノには注意して」
「接近戦に持ち込めばこっちが有利だな。だけどニドリーノ、向こうの素早さには気をつけろよ」
ポケモンを繰り出し、準備は整った。
「それでは、試合……開始!」
「飛ばすよ! ヒノヤコマ、エアカッター!」
スタートが告げられた直後、ヒノヤコマが先手を取る。
翼を激しく羽ばたかせ、無数の空気の刃を飛ばす。
「ニドリーノ、振り払え! 毒突きだ!」
対してニドリーノは毒を帯びたツノを振り回し、襲い来る空気の刃を片っ端から弾き飛ばしていく。
「今だヒノヤコマ、疾風突き!」
その直後、ヒノヤコマは嘴を突き出し、目にも留まらぬ速度で突っ込む。
炎の弾を全て薙ぎ払い、一息ついたニドリーノの一瞬の隙を狙い、鋭い嘴でニドリーノを突き飛ばす。
「くっ、やるな……! ニドリーノ、立て直していけ! 十万ボルト!」
すぐに起き上がると、ニドリーノは飛び去るヒノヤコマへ向けて高電圧の電撃を放つ。
「っ、電気技! ヒノヤコマ、躱して!」
咄嗟にヒノヤコマは飛行の軌道を変え、電撃から逃れつつ、ニドリーノの頭上を旋回。立て続けに放たれる電撃を躱しきり、
「ヒノヤコマ、ニトロチャージだ!」
旋回しながらその身に炎を纏わせ、再びニドリーノへ突撃を仕掛ける。
「ならこっちは……ニドリーノ! 毒突きだ!」
対するニドリーノは毒を帯びたツノをヒノヤコマへ向け、その場でどっしりと構えて迎え撃つ。
両者が激突、激しく競り合った末に、お互いに一度距離を取る。
しかし、
「ヒノヤコマ、疾風突きだ!」
次の瞬間、ヒノヤコマは猛スピードで一気にニドリーノとの距離を詰め、嘴でニドリーノを突き飛ばした。
「なっ……速い!?」
「ニトロチャージの追加効果だよ。この技は相手に当たると炎の力で素早さを上げることができる。さっきの真っ向勝負で、ヒノヤコマは普段より素早くなってるんだ!」
ハルの言葉に合わせて、ヒノヤコマもハルの頭上を羽ばたきながら勇ましく鳴く。
「ちっ……だったらニドリーノ、スマートホーン!」
低く唸ったニドリーノがツノを構え、ヒノヤコマへと狙いを定め、地を蹴って飛び出す。
「ヒノヤコマ、躱してエアカッター!」
ヒノヤコマは素早く反応し、ニドリーノの横に回り込もうとしたが、ニドリーノがヒノヤコマの動きに合わせて正確に軌道を変え、ヒノヤコマを角で突き飛ばした。
「っ! この技、もしかして……」
「そうとも、スマートホーンは必中技なんだ。いくら避けようとしても、この技は避けられないぞ」
つまり、どれだけニトロチャージで素早さを上げようとも、スマートホーンを躱すことはできない。
「さあもう一度行くぞ! ニドリーノ、スマートホーン!」
再びツノを構え、ニドリーノはヒノヤコマへと狙いを定めて飛び出す。
しかし、
「だったらヒノヤコマ、ニトロチャージ!」
それに対して、翼から炎を吹き出したヒノヤコマは炎を纏い弾丸のように突撃。
「なにっ!? ニドリーノ!」
両者が激突するが、素早さが上がったおかげで勢いをつけたヒノヤコマが打ち勝ち、ニドリーノを突き飛ばす。
「いいぞヒノヤコマ! 続けてアクロバットだ!」
一気にヒノヤコマは加速し、吹き飛ぶニドリーノへと瞬時に追いつき、翼を振り下ろし、ニドリーノを地面へと叩きつけた。
「くっ……まだだ! 十万ボルト!」
咄嗟にニドリーノがツノから電撃を打ち出すが、倒れたまま故狙いが定まらず、僅かにヒノヤコマの横に逸れてしまう。
「今だ! エアカッター!」
刹那、ヒノヤコマが激しく翼を羽ばたかせ、空気の刃を乱射する。
「ニドリーノ、躱すんだ!」
なんとか起き上がったニドリーノだが、時すでに遅し。
眼前に迫った空気の刃を躱す余裕はなく、エアカッターに切り裂かれる。
「ニドリーノ!?」
ニドリーノの足取りがふらつく。そのまま目を回して、地面に倒れ伏してしまった。
つまり、
「ニドリーノ、戦闘不能! ヒノヤコマの勝ちです! よって勝者、ハル選手!」
審判がハルの勝利を告げる。まずは一勝だ。
「よし! やったねヒノヤコマ、お疲れ様!」
ハルがヒノヤコマを呼ぶと、ヒノヤコマはご機嫌な鳴き声をあげ、ハルの腕にとまる。
ヒノヤコマの好物である甘い木の実、モモンの実を渡し、ハルは対戦相手に一礼し、フィールドを後にした。
キャラクター紹介ってあった方がいいですかね?
オリキャラばかりの小説なので、設定資料としての掲載を検討中です。