魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第45話 本戦の顔ぶれ

「ワルビル、シャドークロー!」

ワルビルが腕に黒い影を纏わせ、影の爪を作り上げる。

腕を振り抜き、対戦相手のポケモン、眼のような形をした触覚を持つ虫ポケモンに斬撃をぶつける。

 

『information

 アメモース 目玉ポケモン

 四枚の小さな翅で上下前後左右へ

 自由に飛び回ることが出来る。

 触覚の目玉模様で敵を威嚇する。』

 

切り裂かれたアメモースはそのまま床に倒れ、戦闘不能となった。

予選は三人の総当たり戦で一位となった者のみが本戦に進むことができ、ハルはこれで二勝目。つまり、予選突破は確実となった。

スタジアムのロビーへと戻ると、先に予選を終えた選手たちも、続々と集まってきていた。

ハルは確実に突破したが、サヤナたちの結果が気になる。予選の結果はアルス・フォンに送信され、その後、ロビーの電光掲示板でも予選通過者が発表される。

やがて、予選が全て終了したのか、アルス・フォンから通知音が響く。

アプリを開くと、予選通過者の名前と顔写真がずらりと並ぶ。

「おっ、ハル君ここにいたんだ。予選も無事突破したみたいだね」

後ろから声を掛けられる。振り返ると、声の主はスグリだった。

「スグリ君! お互い予選突破できたね!」

「そーだね。ま、予選はらくしょーだったけど。ハル君かサヤナちゃんと決勝で戦わないといけないし、こんなところで苦戦なんてしてられないね」

そう返し、スグリは得意げに笑う。

アルス・フォンの画面には、他にも見慣れた顔が並んでいた。

サヤナ、エリーゼ、そしてミオ。ハルの知り合いは、全員予選を突破したようだ。

そして、ロビーに設置された大きな電光掲示板に、本戦のトーナメント表が映し出される。

今回の大会は一回戦が終わる毎の対戦相手のシャッフルがないため、二番目以降に戦う相手のことをある程度分析できるのだ。

ちなみに、レギュラーランクでも準決勝からはテレビ放送があるらしい。

「僕はトーナメントの左側か……」

「オレは右側だ。サヤナちゃんもこっちだから、並び的に……準決勝でサヤナちゃん、決勝でハル君かな」

ハルとスグリがトーナメントを眺める。ミオがハルと同じ左側におり、お互いが勝ち進めば三回戦、つまり準決勝でぶつかることになる。

さらに、エリーゼが、

「スグリ君。一回戦の相手、エリーゼさんだよ」

「ん? ……げっ、ハッサム連れてたあのトレーナーか。勝つのは難しそうとか言ってたらいきなり一回戦で当たるなんて、ついてないな」

しかし言葉とは裏腹に、スグリの顔つきはなんだか愉快そうだ。当たって砕ける、ではなく、本気で勝つ気でいるのだろう。

そして、もう一人。ずらりと並ぶ顔写真において、一際異彩を放つ者。

「なんだこの人……名前は……『ポケモントレーナー“R”』?」

顔写真と名前の時点で既に謎の不気味さを放つ者がいる。

漆黒のローブに身を包み、黒く丸い目と同じく黒い裂けた口が描かれた白い仮面という、奇天烈な姿。

「変な仮面つけてるけど、なんだろうね。運営が特別に雇ったヒール役か、あるいはエンターテイナーとかじゃない? ま、お手並み拝見ってとこかな。二回戦でサヤナちゃんと当たるみたいだぜ、こいつ」

ともあれ、一日目は予選だけで終了。

無事予選を突破し、明日はいよいよ本戦だ。

 

 

 

『さあ、間も無く始まります! ハダレタウンバトル大会、レギュラーカップ! 出場者のジムバッジ数は四つから六つ! 実況は私、テレビコトブキのアナウンサー、タロスが務めさせていただきます!』

本戦当日。

タロスと名乗った女性アナウンサーが、テンションを上げてマイクを握る。

『今大会は私がマイク一本で盛り上げていきますので、皆さんも盛り上がってまいりましょう! みんなー! ノってるかーい!』

そのコールはなんだかバトル大会とは少し違うような気もするが、観客席からはアナウンサーの声に合わせて大きな歓声が上がる。

『よーっし! それではいよいよ! ハダレタウン大会レギュラーランク、開幕でーっす!』

アナウンサーの叫びと、再び巻き起こる大声援が、大会の開始を告げる。

『レギュラーランクはジムバッジ数四つから六つのトレーナーたちが集う大会! 言うなれば夢に向かって今まさに突き進んでいる戦士たち! その中でトップに輝く戦士は一体誰なのか! それでは参りましょう、一回戦第一試合! ハル選手とリオン選手の入場ですっ!』

名を呼ばれて控室を立ち、選手入場。ハル、まさかの第一試合だ。

バトルフィールドを挟んで向こう側に立つのは、見知った顔だった。

「久しぶりだね、えーっと……ハル君。前回は負けちゃったけど、今回は私が勝たせてもらうよ!」

「そうは行きません。僕だって、前回よりも強くなっていますから!」

カザハナシティの大会、その一回戦で当たった金髪の少女、リオンが対戦相手だ。

「それでは、ポケモンを出してください」

審判に従い、両者がモンスターボールを取り出す。

「出てきて、ヒノヤコマ!」

「頼んだわよ、モルフォン!」

ハルのポケモン、ヒノヤコマに対し、リオンのポケモンは薄紫色の巨大な蛾のようなポケモン。

 

『information

 モルフォン 毒蛾ポケモン

 夜になると活動を始める。翅から

 振り撒かれる鱗粉は吸うと毒に侵さ

 れる上に幻覚作用を持つ危険な代物。』

 

かつてリオンが使っていたコンパンの進化系だ。タイプは変わらず、虫・毒タイプ。

『ハル選手はヒノヤコマ、リオン選手はモルフォンを繰り出した! タイプ相性ではハル選手が有利ですが、どんな戦いを見せてくれるのか!』

アナウンサーの言う通り、タイプ相性ならハルが有利だ。向こうはコンパンから進化しているが、こちらもヤヤコマからヒノヤコマへ進化している。

審判の合図で、いよいよバトルが幕を開ける。

「それでは、試合開始です!」

「行くよ! ヒノヤコマ、まずは疾風突き!」

試合開始の合図と共に、いきなりヒノヤコマが動き出す。

目にも留まらぬ速度でモルフォンの懐へ飛び込み、嘴で腹部を狙う。

しかし、

「来た! モルフォン、捕まえて!」

ヒノヤコマの嘴の一撃を受けた、その瞬間。

モルフォンが六本の脚を動かし、ヒノヤコマを捉えてしまう。

「なっ!?」

「毒々の牙!」

ヒノヤコマの動きを止め、モルフォンは牙を突き刺して毒を送り込み、そのまま投げ飛ばした。

「ヒノヤコマ! 大丈夫!?」

幸い毒の状態異常は受けなかったようで、ヒノヤコマはすぐさま翼を広げ、再び飛翔する。

「それなら、ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」

勇ましく鳴くヒノヤコマの翼から火の粉が吹き出し、その身を炎が纏う。

「モルフォン、銀色の風!」

モルフォンは虫タイプ、さすがに炎を纏ったヒノヤコマを受け止めることはできないようで、モルフォンは大きな翅を羽ばたかせて銀色の鱗粉を乗せた風を放つ。

鱗粉の乗った風が、ヒノヤコマを纏う炎を吹き消してしまい、

「続けて毒々の牙!」

牙から毒液を滴らせたモルフォンが、ヒノヤコマへと飛びかかる。

「っ! ヒノヤコマ、エアカッター!」

炎を掻き消されたヒノヤコマは咄嗟に技を切り替え、翼を羽ばたかせて空気の刃を放つ。

牙を剥いて襲い掛かるモルフォンだったが、小さい口で全ての刃を食い破ることはできず、結果的にエアカッターを受けてしまう。

「ヒノヤコマ、もう一度ニトロチャージ!」

「くっ、やるね……モルフォン、サイコショット!」

ヒノヤコマが再び炎を纏い、突撃を仕掛ける。

体勢を立て直したモルフォンはサイコパワーを溜め込み、向かってくるヒノヤコマへ念力の弾を放つが、

「ヒノヤコマ、躱して!」

高速で突っ込むヒノヤコマは、急旋回して念力の弾を躱しそのまま突撃、今度こそモルフォンに激突し、突き飛ばした。

「よっし……! 続けてアクロバットだ!」

ニトロチャージによってエンジンが掛かり、素早さが上昇。

さらに加速しながら、ヒノヤコマは一気にモルフォンとの距離を詰めていく。

「モルフォン、銀色の風……!」

翅を羽ばたかせ、鱗粉を乗せた風を吹かせるモルフォンだが、

「っ、速い……間に合わない……!」

既にヒノヤコマはモルフォンの背後まで回り込んでいる。

そのまま翼を振り下ろして叩きつけ、モルフォンを床へと叩き落とす。

「くぅ……まだよ! モルフォン、サイコショット!」

地面に落ちたままだが、それでもモルフォンはヒノヤコマを見上げ、サイコパワーの念弾を放出する。

「一気に決めるよ! ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」

ヒノヤコマの体が炎を纏う。

念弾を躱しつつそのまま急降下し、モルフォンに激突、爆発と共に床へとめり込ませた。

「モルフォン……!」

砂煙が晴れると、そこにはモルフォンが身体を焦がし、目を回して倒れていた。

「モルフォン戦闘不能、ヒノヤコマの勝利です! よって勝者、ハル選手!」

『決まったぁぁ! ハル選手のヒノヤコマ、タイプ相性で有利なモルフォンに対し、終始有利に立ち回り、スピードで圧倒! これでハル選手、二回戦進出でぇーっす!』

女性アナウンサーの声が響き渡り、会場に歓声が湧く。

「よし、一回戦突破……! ヒノヤコマ、お疲れ様。頑張ったね」

腕に留まったヒノヤコマの嘴を撫で、ボールへと戻すと、ハルはリオン相手に一礼し、バトルフィールドを後にする。

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