魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第46話 注目の対戦カード

一回戦第四試合。

ミオのカビゴンが巨体に似合わぬ跳躍を見せ、相手のポケモンを押し潰し戦闘不能にしてしまい、難なく一回戦を突破。

そして続いての試合。

『それでは、続きまして第五試合目を行います! サヤナ選手とティオ選手の入場です!』

引き続き、ハルにとっては目の離せない試合。

両トレーナーがバトルフィールドに立つ。サヤナの相手は、緑色のジャケットを羽織った金髪の少年。

「よろしく! いいバトルにしようね!」

「こ、こちらこそ、お手柔らかに……」

ティオと呼ばれた少年だが、やけにおどおどしている様子。比較対象が緊張とは無縁のサヤナであるため、余計にそう見えるのかもしれないが。

ともあれ、審判に従い、同時にポケモンを繰り出す。

「頼んだよ、ハクリュー!」

「お願い、ノコッチ……!」

サヤナのポケモンは長い体躯の青白いドラゴンポケモン。首と尻尾の先には青い水晶を持ち、東部には短いがツノが生えている。

対するティオのポケモンは黄色の平べったく丸っこいポケモン。小さな羽とドリルのような尻尾を持つ。

 

『information

 ハクリュー ドラゴンポケモン

 宝玉には天候を自在に操る力が

 秘められている。綺麗な湖の底に

 棲むため目撃例は非常に少ない。』

 

『information

 ノコッチ 土蛇ポケモン

 洞窟の奥深くに生息する。地上へ

 出てくることもあるが人に見つかる

 と即座に地中へ逃げていってしまう。』

 

ミニリュウの進化系であるハクリューはドラゴンタイプ、ノコッチはノーマルタイプのポケモンだ。

「それでは、試合開始です!」

バトルスタートと同時に、まずはサヤナとハクリューが仕掛ける。

「行くよ! ハクリュー、龍の息吹!」

ハクリューの首元の水晶が輝く。吐息に龍の力を込め、青いオーラを纏った息吹を放つ。

そこまで素早いポケモンではないのか、息吹はノコッチへ着弾、青白い爆発が巻き起こる。

「続けて電撃波!」

ファーストヒットを奪い、さらにハクリューは首の水晶から波状の電撃を放出、攻撃を受けたノコッチに対して必中技で追撃を放つ。

しかし、

「ノ、ノコッチ、穴を掘る!」

ノコッチも動き出す。ドリルのような尻尾で床に穴を開け、後ろ向きのまま脱兎の如く逃げるかのように地中へ隠れてしまう。

いくら必中技でも、地中に逃げられてしまっては当てられない。

「どこから来るの……ハクリュー、気をつけてね」

周囲を警戒するサヤナとハクリュー。

一方のノコッチは物音一つ立てず、地中から密かに忍び寄る。

「い、今だ! ノコッチ!」

ティオがその名を呼ぶと同時に、ノコッチが勢いよく飛び出してくる。

現れたのはなんと、ハクリューの真正面。

「っ! ハクリュー、龍の――」

まさか真ん前から来るとは思っていなかったのか、サヤナの指示が僅かに遅れる。

対して。

 

「ノコッチ、蛇睨み……!」

 

ノコッチの丸い目が、赤色に妖しく輝く。

不気味な赤い瞳に凝視され、ハクリューの体が竦んでしまう。

ようやくノコッチの目の光が収まるが、

「ハクリュー……どうしたの? 大丈夫?」

ハクリューの様子がおかしい。体が硬直してしまって、思うように動けない様子だ。麻痺の状態異常を受けてしまっている。

「よ、よし……! ノコッチ、頭突き!」

動きの鈍ったハクリューの隙を逃さず、ノコッチが飛び出す。ハクリューへと飛び掛かり、大きな頭で殴りつける。

「ハクリュー! 大丈夫!?」

強烈な頭突きを受け、その衝撃に怯んでしまい、ハクリューの反撃が遅れる。

「こっちも反撃だよ。ハクリュー、龍の息吹!」

ハクリューが龍の力を込めて息吹を放つが、

「ノコッチ、穴を掘る……!」

既にノコッチは尻尾のドリルで再び地中に隠れてしまっている。

龍の息吹は地面に着弾するのみで、ノコッチにダメージは与えられず、

「……頭突き!」

今度はハクリューの斜め後ろから飛び出し、再び頭突きを食らわせる。

衝撃に再び怯んでしまい、またしてもハクリューは反撃の隙を逃してしまい、

「もう一度……!」

ノコッチが立て続けに頭突きを放ち、ハクリューを突き飛ばした。

『ノコッチの頭突きが立て続けに命中ーッ! ティオ選手のノコッチ、特性“天の恵み”と麻痺状態を生かして、一気に畳み掛けています!』

天の恵みは技の追加効果が出やすくなる特性。頭突きは強い衝撃を与えることで相手を怯ませる追加効果があるが、ノコッチは特性によってその発生回数を増やし、さらに麻痺の状態異常を組み合わせてハクリューの行動を封じているのだ。

「い、いい調子だよ、ノコッチ……もう一度、穴を掘る!」

ハクリューの反撃が来る前に、再びノコッチは地中に身を隠す。

「なるほど、天の恵み……このままじゃまずいね。ハクリュー、気をつけて。出てきた瞬間を狙うしかなさそうだよ。君なら狙える、大丈夫」

調子付いてきたノコッチとティオだが、対照的にサヤナは焦りを見せず、落ち着いている。

とはいえ、ハクリューは麻痺を受けている。ノコッチを見てから瞬時に反応するだけの速度は出せない。

「……今だ、頭突き!」

そう、ティオは思っていたのだが。

 

「真後ろ! ハクリュー、捕まえて!」

 

背後から飛び出すノコッチに対し、ハクリューは即座に振り向き、ノコッチの頭突きを回避、さらに長い体を生かしてノコッチに巻きつき、逆に動きを止め、締め上げる。

細身ではあるが全長4メートルもあるその体は、ノコッチの動きを封じるのには充分だった。

「えっ……そ、そんな! ハクリューは麻痺を受けているはずなのに……!」

「ふふふ、特性には特性をってね。私のハクリューの特性は、脱皮なんだよ!」

脱皮は、掛かっている状態異常を治す特性。本当に脱皮するわけではないが、蛇のようなポケモンによく見られる特性のため、そう名付けられている。

「さあ、今度こそ反撃だよ! ハクリュー、投げ飛ばして水の波動!」

体を振るってノコッチを投げ飛ばし、地面に叩きつけ、ハクリューは水晶に水の力を集めて水弾を発射する。

宙を舞うノコッチへと水の波動が直撃、水飛沫が舞い、

「龍の息吹!」

さらにハクリューは吐息に龍の力を込めてオーラを纏う息吹を発射。

青い爆発と共に、ノコッチは吹き飛ばされた。

「ノ、ノコッチ……!」

地面へ撃墜されたノコッチは、そのまま目を回して動かなくなった。

「ノコッチ戦闘不能! ハクリューの勝利です! よって勝者、サヤナ選手!」

『決まったぁーッ! 押されていたかに思われたサヤナ選手、ハクリューの特性を生かして鮮やかな逆転勝利! 二回戦進出を決めました!』

サヤナの勝利が告げられ、熱い逆転勝ちに会場から歓声が響く。

「やった、ハクリューお疲れ様! 麻痺は大丈夫だった? これ、一応食べておいて」

サヤナは戻ってきたハクリューを撫で、麻痺に効くクラボの実を渡す。

ハクリューが木の実を食べ終わると、サヤナはハクリューをボールへと戻し、対戦相手ティオに一礼し、フィールドを後にした。

 

 

 

六、七試合目も順調に終了し、そして、一回戦最後の試合。

この試合は、今大会注目の選手が初っ端からぶつかり合う好カード。

『さぁ! 一回戦最後の試合が、間も無く始まります! 第一回戦、最終試合! スグリ選手とエリーゼ選手の入場です!』

アナウンサーが名を告げると同時、会場が大きく湧き上がる。

それもそのはず、

『今大会注目の一戦! 両選手とも、別の大会で優勝経験を持つ実力派! この二人が当たる場としては、一回戦のこの場は、あまりにも早すぎやしないだろうか!?』

スグリもエリーゼも、他大会で優秀な成績を残す実力者。優勝候補同士が一回戦が激突するとなれば、観客にとっては注目の一戦になること間違いなしだ。

「いっやぁ、まさか一回戦から優勝候補に当たっちゃうとはね。ま、いずれどこかで当たるって考えたら、早めに勝っておくに越したことはないけどさ」

「あら、随分と余裕ね。でもその意見には私も同意。貴方に勝っておけば、ここから先は楽になりますわね」

お互いに余裕たっぷりの様子を見せ、モンスターボールを取り出す。

「出てこい、エレザード!」

「行ってきなさい、チルタリス!」

スグリのポケモンは、細身の体に襟巻を持つ二足歩行のトカゲのようなポケモン。

対するエリーゼのポケモンは、綿雲のような羽毛を持つ青い鳥ポケモン。

どちらも、ハルが初めて見るポケモンだ。

 

『information

 エレザード 発電ポケモン

 100mを5秒で走り抜く脚力を

 持つ。砂漠に生息するが湿地でも

 生きられるほど適応能力が高い。』

 

『information

 チルタリス ハミングポケモン

 ソプラノの歌声はとても美しく

 聴く者の眠気を誘う。穏やかな気質

 だが怒ると灼熱の火の弾を吹き出す。』

 

エレザードは電気・ノーマルタイプ、対するチルタリスは見た目に反してドラゴン・飛行タイプのようだ。

「やっぱりハッサムは出てこないか。ってか一つ聞きたかったんだけどさ。おねーさん、ルーキーじゃないよね?」

「ええ。私はカロス地方の生まれで、以前はカロス地方を旅していたわ。今は相棒のハッサム以外、マデルで捕まえたポケモンだけで旅をしているの。ハッサムはコーチ役だから、大会では使わないわよ」

ともあれ、お互いにポケモンが出揃った。

 

「それでは、試合……開始ッ!」

 

「行きますか! エレザード、まずは十万ボルト!」

いち早くエレザードが動き出す。顔の周りに襟巻を広げ、高電圧の強烈な電撃を放つ。

「チルタリス、火炎放射!」

対するチルタリスはその場から動かず、大きく息を吸い込み、灼熱の炎を吹き出す。

攻撃力は少しだけチルタリスの方が高いようで、少しずつ炎が電撃を押していくが、エレザードを捉えるには至らない。

「火力じゃ負けてるのね……だったら」

だがチルタリスの攻撃力は確認できた。スグリが次の手に出る。

「スピードで勝負だ! エレザード!」

体を屈めたエレザードの後ろ足の筋肉が、一瞬膨張する。

筋肉を電撃で刺激し、次の瞬間、エレザードは地を蹴って飛び出し、恐ろしいほどのスピードで一瞬のうちにチルタリスのすぐ横を駆け抜けていく。

「っ、速い……なんてスピード! チルタリス、気をつけて……!」

「今だエレザード、ドラゴンテール!」

素早さで撹乱し、チルタリスがエレザードの位置を見失ったその隙を突き、エレザードは龍の力を帯びた尻尾を勢いよくチルタリスへ叩きつける。

「っ、チルタリス、飛びなさい!」

しかしチルタリスもそう簡単には倒されない。エレザードの攻撃を受けても怯まず、綿雲のような翼を羽ばたかせ、飛翔する。

「チルタリス、ドラゴンクロー!」

脚に龍の波動を纏わせて輝く鋭い爪を作り上げ、チルタリスは上空から急降下、エレザード目掛けて光の爪を振るう。

「遅い遅い! エレザード、悪の波動!」

対するエレザードは地を蹴って横っ飛び、チルタリスの光の爪を躱しつつ、即座に波状の漆黒の光線を発射。

「それはどうかしら! チルタリス、火炎放射!」

だがそれを予測していたのか、チルタリスは素早くエレザードの位置を捉え、灼熱の炎を吹き出す。

激しい炎が闇の光線を打ち破り、その奥のエレザードを捉え、鮮やかな黄色の体を焼き焦がす。

「やべっ……エレザード、脱出!」

何とか炎から抜け出すエレザードだが、体には黒い煤が残っている。

「そう簡単に隙は作りませんことよ。私を倒すというのなら、もう少し本気を見せてちょうだいな」

「……へっ、言ってくれるじゃん。上等だぜ、受けて立つ! エレザード、炎のパンチ!」

再びエレザードが猛スピードで駆け出す。

一気にチルタリスの懐まで距離を詰めると、炎を灯した拳でチルタリスの顎へとアッパーカットを叩き込み、

「続けてドラゴンテール!」

さらに龍の力を纏った尻尾を鞭のように横薙ぎに振るうが、

「食い止めなさい! コットンガード!」

チルタリスの翼が大きな綿のように膨れ上がり、チルタリスを包み込んで身を守る。

尻尾の一振りで綿毛は振り払われてしまうが、チルタリス本体にダメージはほとんどなく、

「十万ボルト!」

「火炎放射!」

エレザードが電撃を放出するのと、チルタリスが口から炎を吹き出すのはほぼ同時だった。

電撃を食らったチルタリスが墜落するが、その一方エレザードも炎に呑まれて吹き飛ばされる。

「なかなか、やるじゃないの! チルタリス、まだ立てますわよね!」

「そっちこそね……エレザード、ここが正念場だぞ」

砂煙を翼で振り払ってチルタリスが首を上げ、対するエレザードもゆっくりと立ち上がる。

「チルタリス、飛びなさい! 火炎放射!」

翼を広げてチルタリスは飛翔し、大きく息を吸い込んで灼熱の炎を放ち、エレザードの周囲を炎で薙ぎ払う。

「躱せエレザード、十万ボルト!」

大きく後ろに飛んでエレザードは炎から逃れると同時、襟巻きを広げて空中のチルタリスへと高電圧の電撃を放つ。

「ドラゴンクローで防いで!」

空中のチルタリスは脚に龍の力を纏わせて巨大な光の爪を作り上げ、電撃を食い止める。

お互いの強力なエネルギーを持った一撃は、一歩も譲らず激突し、その末に爆発を起こした。

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