魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第47話 ポケモントレーナー“R”

エレザードの電撃とチルタリスの龍爪が激突し、爆発が巻き起こる。

「チルタリス、火炎放射よ!」

直後、動いたのはチルタリスだった。

翼を羽ばたかせて爆煙を吹き飛ばし、大きく息を吸い込み、灼熱の炎を吹き出す。

が、

「よっし……今だ! エレザード、ドラゴンテール!」

爆煙の向こうには、既にエレザードの姿はない。

「っ!?」

慌ててエリーゼが周りを見渡す。

チルタリスの死角、斜め後ろからエレザードが大きく跳躍し、龍の力を込めてオーラを纏った尻尾を横薙ぎに振り抜き、チルタリスへと叩きつけた。

「チルタリス、捕まえなさい! 逃してはダメ!」

尻尾の一撃を受けたが、チルタリスの反応は早かった。

素早く首を伸ばし、嘴でエレザードの尻尾を捕まえ、その動きを止める。

「ドラゴンクロー!」

「遅いッ! 十万ボルト!」

エレザードの動きを止め、チルタリスが脚に輝く龍爪を纏わせる。

しかしその直後、エレザードが尻尾から直接電撃を放ち、ゼロ距離からチルタリスへ電撃を直撃させた。

チルタリスの体勢が崩れてエレザードは解放され、さらに光の龍爪もエレザードを捉えられず、

「決めろ! ドラゴンテール!」

残る力を振り絞り、エレザードは龍のオーラを纏って輝く尻尾をチルタリスの脳天目掛けて渾身の力で振り下ろし、その勢いのままチルタリスを地面に叩き落とした。

「チルタリスっ!?」

エリーゼの声に応え、チルタリスは翼を震わせ、起き上がろうともがく。

しかしそこで遂に体力が尽き、再び地面に倒れ伏してしまった。

「チルタリス、戦闘不能! エレザードの勝ちです! よって勝者、スグリ選手!」

『決まったぁぁぁぁっ! 一回戦から、超絶怒涛の大激闘! どちらが勝ってもおかしくない戦い、紙一重の差で相手を上回り、二回戦へ駒を進めるのは、スグリ選手ぅぅぅッ!』

女性アナウンサーがマイクを握り締めて叫び、会場からまるで決勝戦が終わったかのような大歓声が巻き起こる。

「ふーっ、どうにか勝った……だけどエレザードは全力出し切って完全に手の内晒したし、この大会ではもうお休みかな。エレザード、よくやったぜ」

「くっ、うぅ……いえ、仕方ありません。あと一歩、及びませんでしたわね。チルタリス、よく頑張ってくれましたわ。私もあなたも、もっと精進しましょう」

お互いに全力を尽くしたそれぞれのポケモンを労い、ボールへと戻す。

「わ、私に勝つなんて、相当な腕前ね。この私を打ち負かしたとなれば、優勝以外は認めませんわよ」

「ありがと、おねーさん。元から優勝するつもりで来てるから、任せといてよ」

「エリーゼ、でいいわよ。また戦いましょうね、スグリ。次こそは負けませんから」

「ん、わかった。こちらこそまたよろしくね、エリーゼさん」

スグリとエリーゼは握手を交わし、歓声の中、フィールドを去っていく。

『さあ、これにて一回戦全てが終了しました! どの試合も見どころ満載で、私、一瞬たりとも目が離せませんでした! 一回戦を勝ち進んだ選手たち、果たしてこの中から優勝を決めるのは一体誰なのか! それでは、また明日お会いしましょう! 実況は私、テレビコトブキのタロスがお送りいたしました!』

試合数が多いため、二日目は一回戦で終了。

そして三日目、今日で準決勝まで行われ、四日目に決勝戦が行われる。

 

 

 

「エーフィ、サイコショット!」

「っ、ガラガラ、骨棍棒で防御!」

 

『information

 ガラガラ 骨好きポケモン

 手にした骨を振り回し投げつける。

 空飛ぶポケモンを叩き落とすほどの

 コントロールとパワーが持ち味。』

 

ハルは二回戦、エーフィを出し、対戦相手の骸骨を被って棒状の骨を持ったポケモン、ガラガラを相手に、試合を有利に進めている。

エーフィの放った念力の弾に対し、ガラガラは手にした骨を振り下ろして念弾を打ち壊す。

「スピードスター!」

間髪入れず、エーフィはさらに無数の星形弾を撃ち出す。

ガラガラは再び骨を振り上げるも、それを振り下ろすまでの余裕はなく、星形弾を打ち付けられる。

「っ、ガラガラ、ロケット頭突きだ!」

立ち上がったガラガラは首を引っ込めて硬い頭を構え、勢いよくエーフィへと突っ込んでいく。

しかし、

「今だ! エーフィ、マジカルシャイン!」

エーフィの額の珠が輝き、周囲に純白の光を放出する。

突っ込んでくるガラガラを、逆に光の中に呑み込んだ。

「しまった、ガラガラ……!」

光がようやく収まった時には、ガラガラは戦闘不能となって倒れていた。

『二回戦第一試合、決着ぅぅ! ハル選手、二回戦も終始有利に試合を進めて見事な勝利! 準決勝へと駒を進めましたぁ!』

アナウンサーの声が会場に響く。ハルは二回戦を突破し、一番乗りで準決勝へと進む。

「よかった、勝てた……! エーフィ、お疲れ様だよ」

エーフィの頭を撫でてボールに戻し、ハルはバトルフィールドを去る。

「準決勝からは、ポケモン三体ずつで戦うのか。二回戦はこの後ミオ、サヤナ、スグリ君……どの試合も見ておかないと。特にサヤナの試合は、相手も気になるしね……」

サヤナの二回戦の相手は、不気味な仮面を被った、『ポケモントレーナー“R”』という謎の選手。

一回戦も確認していたのだが、真っ黒なローブに身を包み、対戦相手への挨拶すらせず、バトル中にもポケモンへの指示以外は一切口を開かなかった。

しかもその実力もかなりの腕前。一回戦は瞬く間に試合を終わらせてしまっていた。

「サヤナも不安だけど……人の心配ばっかりしてる場合じゃないな。次の試合、恐らくミオが上がってくるはずだ」

ハルは急いで観客席に戻り、ミオの試合観戦に向かう。

 

 

 

そして。

ハルの予想は、正しかった。

「カビゴン、のしかかり」

カビゴンが大きく跳躍し、重力に従いそのまま落下。

回避させる隙すら与えず、対戦相手のポケモンを押し潰し、戦闘不能とした。

『決着ぅ! ミオ選手、またもカビゴンと共に二回戦を突破! このミオ選手、予選からこの二回戦までずっと、カビゴン一匹のみで戦っております!』

アナウンサーの声をバックに、ミオは笑顔でカビゴンのお腹を撫で、ボールへと戻す。

そしてこの試合の結果により、ハルの次の試合、準決勝の相手はミオになることが確定した。

「あのカビゴン、相当のやり手ですわね。あの子とも、いずれ戦いたいもの」

試合を観戦するハルの横には、エリーゼが座っている。

「ミオ、やっぱり上がってきたか……準決勝で、リベンジを果たさなきゃ」

「あらハル、もしかして貴方、あの子と戦ったことがあるのかしら?」

「ええ。ポケモンセンターの交流所で、調整も兼ねて。その時は負けちゃいましたけどね……」

あの時もカビゴンを使っていたため、ミオの手持ちポケモンは今のところカビゴンしか見えていない。

「準決勝からは三対三よね。ハル、頑張りなさいよ」

「はい。今度は勝って、そのまま優勝してみせますよ」

エリーゼに激励され、ハルは気合を入れ直し、気を引き締める。

少し時間を挟んで、次はサヤナの試合だ。

 

 

 

『さあ、参りましょう! 二回戦第三試合目、“R”選手とサヤナ選手の対戦です!』

テンションの高いアナウンサーの声と会場の歓声を受け、二人の選手がフィールドに立つ。

サヤナの相手となるのは、白い不気味な仮面と黒いローブに身を包んだ正体不明の男、ポケモントレーナー“R”。

『サヤナ選手は優勝こそないものの、出場した大会では必ず好成績を残す実力派! 対する“R”選手はバッジの数以外経歴は一切不明! ミオ選手と同じく、ポケモンもここまで一匹しか使用しておりません! 準決勝に駒を進めるのは、一体どちらか!?』

「それでは、両者ポケモンを出してください」

審判の声を引き金に、両選手は同時にポケモンを繰り出す。

「頼んだよ! ワカシャモ!」

「バクオング」

サヤナのポケモンは。ワカシャモ。

“R”のポケモンは身体中に楽器のパイプのような穴を持つ、怪獣型ポケモンだ。

 

『information

 バクオング 騒音ポケモン

 大声の振動によって大地を揺らし

 衝撃波で敵を吹き飛ばす。

 遠吠えは10キロ先まで響き渡る。』

 

ノーマルタイプのポケモン、バクオング。予選からずっと使われているのがこのポケモンだ。

それを読んで、サヤナは格闘タイプのワカシャモを出したのだろう。

「それじゃ行くよ! ワカシャモ、ニトロチャージ!」

身体中に炎を纏い、ワカシャモは目にも留まらぬスピードで突っ込む。

一気にバクオングまで近づき、そのまま激突し、バクオングを突き飛ばした。

「ワカシャモ、弾ける炎!」

さらにワカシャモは口から火花を散らす炎を放つ。

「バクオング、地震」

対してバクオングが身体中の穴から空気を吸い込み、爆音のような大声を発する。

空気の振動だけで炎の弾を掻き消し、さらにフィールド全体までも大きく揺らし、その衝撃でワカシャモを吹き飛ばした。

「なっ、ワカシャモ!? 大丈夫!?」

吹き飛ばされたワカシャモだが地に手をつき、勢いよく起き上がり、勇ましく鳴く。

「よし、まだ行けるね! ワカシャモ、キャノンパンチ!」

ワカシャモが地を蹴って飛び出し、バクオングとの距離を詰めていく。

「バクオング、ハイパーボイス」

「ワカシャモ、躱して!」

バクオングが再び空気を吸い込み、大声と共に大音量の衝撃波を放つ。

だが今度はワカシャモは思い切り跳躍し、衝撃波を躱すと、上空からバクオングへと強烈な拳の一撃を叩き込んだ。

「一気に行くよワカシャモ! もう一度キャノンパンチ!」

さらにワカシャモは拳を握りしめ、一旦引っ込めた腕をもう一度思い切り突き出す。

それに対して、

「バクオング、噛み砕く」

ワカシャモが突き出した腕を、バクオングは大顎で強引に受け止め、

「ハイパーボイス」

間髪入れずに口から大音量の音波と共に衝撃波を放ち、ワカシャモを大きく吹き飛ばした。

「ぐうっ……」

「気合玉」

さらにバクオングは大きく口を開く。

口内の一点に力が集まり、気合の念弾がバクオングの口から放出された。

「来た……! ワカシャモ、受け止めて!」

回避が間に合わないと判断したのか、サヤナのその指示通り、どうにか立ち上がったワカシャモは両手を構え、正面から気合玉を受け止める。

ズザザザザザ! という音と共にワカシャモが大きく押し戻されるが、それでも地に足をつけて耐え切った。

そして。

「それを待ってたんだよ! ワカシャモ、オウム返し!」

刹那、ワカシャモの構えた両手にバクオングのものと同じ念弾が作り上げられる。

お返しとばかりに、ワカシャモは渾身の気合の念弾をバクオングへと投げつけた。

一直線に飛ぶ気合の念弾はバクオングの額へ直撃。格闘技の気合玉はノーマルタイプのバクオングへと効果抜群、その体勢を大きく崩した。

「今だよワカシャモ! キャノンパンチ!」

その隙を逃さずワカシャモは拳を構え、一気にバクオングへと向かっていく。

しかし。

 

「バクオング、地震」

 

怒りの形相を浮かべたバクオングが爆音の如き怒声を放つ。

爆音の衝撃波によってワカシャモの動きは止められ、さらにフィールド全体も大きく揺れ、地震に巻き込まれてワカシャモが吹き飛ばされる。

「ハイパーボイス」

バクオングがもう一度身体中の穴から空気を吸い込み、口から大音量の音波と共に衝撃波を放つ。

地震を受けたワカシャモを衝撃波に巻き込み、壁にまで飛ばして叩きつけた。

「あ……っ! ワカシャモ!?」

壁に叩きつけられたワカシャモはそのまま力なく床へと落ち、戦闘不能となった。

「ワカシャモ戦闘不能! バクオングの勝ちです! よって勝者、ポケモントレーナー“R”!」

『決まったぁぁ! “R”選手、タイプ相性を覆し、またもバクオングで勝利! 謎の選手が謎に包まれたまま、準決勝へと駒を進めていきます!』

アナウンサーの叫びが試合終了を告げる。善戦していたサヤナとワカシャモだが、残念ながら二回戦で敗北することとなった。

「……負けちゃったね。ワカシャモ、そんな顔しないで。よく頑張ったよ、お疲れ様」

サヤナは悔しそうに低い声で鳴くワカシャモを労い、その頭を撫で、ボールへと戻す。

“R”は何も語らずバクオングをボールへと戻すと、そのままフィールドを去っていった。

「サヤナ、負けちゃったか……」

「さっきの子もそうだけど、バクオング一匹でここまで上がってきてるだけある。あの“R”ってトレーナー、相当な腕前ね」

それにしても、とハルの隣でエストレは続け、

「あのスタイル、気にくわないわね。何の目的か知らないけど、わざわざ顔を隠してるあたりが特に。何かやましいことでもあるのかしら」

「運営が雇ったヒール役か何かですかね? 大会を盛り上げるために、みたいな……」

「それだとしたらこの配役は大失敗よ。不気味すぎて寧ろ盛り上がらないわ」

“R”の正体がそろそろ気になってくるが、それはひとまず置いておく。

次の試合は二回戦最後の試合。スグリが登場する。

 




《キャノンパンチ》
タイプ:格闘
威力:90
物理
砲弾が如く勢いよくパンチを繰り出す。

※普通の格闘タイプのパンチ技が思ったより少なかったので作りました。
※威力はあくまでも目安です。
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