魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第48話 リベンジマッチ!ハダレ大会・準決勝

「オンバット、龍の息吹!」

二回戦、第四試合目。

スグリのポケモン、オンバットが、対戦相手の紫色の毒蛇のようなポケモンへ龍の力を帯びた息吹を放つ。

 

『information

 アーボック コブラポケモン

 腹に持つ顔の模様と不気味な

 吐息の音で獲物を威圧する。

 竦んだ獲物を長い体で捕らえる。』

 

「っ、アーボック、毒々の牙!」

息吹を受けたアーボックは体を起こすと、牙を剥いてオンバットへと食らいつく。

「遅い遅い、躱してアクロバット!」

オンバットを狙ってアーボックが次々と噛み付きを仕掛けるも、オンバットはそれを易々と躱し、軽快な動きでアーボックの背後に回り込み、体当たりを仕掛ける。

「今だアーボック! 締め付ける!」

体当たりを受けたアーボックの反撃は速かった。すぐさま長い胴体が動き、瞬く間にオンバットを囲む。

だが、

「遅いんだってば! 龍の息吹!」

アーボックの反撃は速かったはずだが、スグリとオンバットにとってはこれでも遅い。

オンバットはこちらを振り向いた瞬間のアーボックの顔面に龍の息吹を撃ち、アーボックの体勢を大きく崩す。

「これでとどめだ、オンバット、鋼の翼!」

顔に龍のオーラをぶつけられてよろめくアーボックの脳天へ、オンバットが鋼の如く硬化させた翼を振り下ろす。

アーボックは甲高い悲鳴を上げ、フィールドに倒れてそのまま戦闘不能となった。

『決まりましたぁ! スグリ選手、激闘を見せてくれた一回戦とは打って変わり、終始余裕の戦いを見せつけ、二回戦も突破! そして、これで準決勝へ進む選手が全て決定しました!』

やはりスグリは勝ち上がってきた。体格に大きな差があるポケモン相手でも、余裕の勝利だ。

『それでは、一時間の休憩を挟んだ後、準決勝進出の選手に一言インタビューさせていただき、それから準決勝を行います!』

「……え? インタビュー?」

思わず素っ頓狂な声を上げたのは観客席のハルだ。

「にひひー、ハル、インタビューだって! ちゃんと上手く喋らなきゃダメだよ!」

しかもハルの隣に戻ってきているサヤナがプレッシャーを掛けてくる。

「や、やめてよサヤナ……インタビューなんてされたこともないんだから……」

「どうせ意気込みを聞かれるくらいですわ。そんなに緊張することでもないわよ」

少しだけ薄ら笑いを浮かべながら、エリーゼが口を開く。

「優勝したい、って気持ちを、会場全体に伝えてきなさい。それでいいのよ」

「……うぅ、緊張するなぁ」

緊張を抱えたまま、ハルはサヤナとエリーゼに背中を押され、控え室へと向かう。

 

 

 

「さあ、間も無く準決勝が開始されます! ということで、その前に!」

今大会司会の女性アナウンサーは、実況席からマイクを持ってバトルフィールドに降りてきている。

「優勝まではもう少し! 見事準決勝まで勝ち上がってきた、四人の選手に! ここからの意気込みを聞いていきたいと思います!」

アナウンサーの言葉に続けて、観客席全体から歓声が飛ぶ。

「それでは……まずはハル選手から! 一言お願いします!」

アナウンサーからマイクを手渡される。

緊張は、吹っ切れた。

「残ってる人たちは、僕よりも強い人たちばかりです。だけど、ここまで来たからには、優勝目指して、全力で戦い抜きます!」

ハルの力強い言葉を受け、会場がどっと湧き上がる。

「はい! 準決勝、決勝に向けて、強い心意気を示してくれました! それでは!」

ハルからマイクを受け取り、次にマイクを渡されるのは、

「次はミオ選手!お願いします!」

相変わらずぼーっとした感じのミオが、マイクを受け取る。

「えーっとぉ、優勝したら、ポケモンのみんなと一緒に美味しいものを一杯食べに行きます」

いかにもミオのキャラらしいコメントに、会場からは笑いも混じった歓声が響く。

「さて、それでは次は、ポケモントレーナー“R”選手! お願いします!」

「……」

謎の男“R”がマイクを受け取ろうとしないどころか無反応なので、アナウンサーがマイクを白い画面の口元へと向けるが、

「……」

「えーっと、あの……“R”選手……何か一言……」

「……」

流れる沈黙。そして、

「……はいっ! “R”選手は、とっても無口な方でしたね!」

ついに痺れを切らしたアナウンサーは“R”へのインタビューを諦め、スグリへとマイクを渡す。場を盛り下げない咄嗟のアドリブ力はさすがプロのアナウンサーというべきか。

「さあ、それでは最後に、スグリ選手! お願いします!」

「ま、誰と当たってもやることは変わらないんですけどね。戦って勝つだけ。オレとオレのポケモンなら、それができる。見ててくださいよ、勝ってみせます!」

自信に満ちたスグリの言葉に、再び巻き起こる歓声。

「自信満々のコメント、ありがとうございます! さあ、それではいよいよ、準決勝を開始します! 最初の対戦カードは、ハル選手対ミオ選手! ここからは、三対三のバトルになります! 果たして、どんなバトルを見せてくれるのでしょうか!」

アナウンサーが実況席に戻り、いよいよ準決勝。ハルの相手は、以前敗れたミオ。リベンジマッチだ。

年の割に強力なポケモンを使うトレーナー。得ている情報はカビゴンのみ。しかし、そのカビゴンの情報はここまでのバトルを見てしっかり仕入れてある。

「さすがハル君、ここまで上がってくると思ってたよぅ」

「ミオもね。僕もどこかで当たるとは思ってた。この間のリベンジを果たさせてもらうよ」

「それができるなら、ねぇ」

ハルとミオは同時にボールを取り出す。

『それでは、準決勝第一試合、スタートです!』

「両者、ポケモンを出してください!」

審判の声に合わせて、モンスターボールからポケモンが現れる。

「まずは君だ。出てきて、ワルビル!」

「よぉし、頼んだよぅ、ペンドラー」

ハルが先発に選んだのはワルビル。対してミオの初手はカビゴンではなかった。

出てきたのは、鎌首をもたげた巨大なムカデのようなポケモンだ。

 

『information

 ペンドラー メガムカデポケモン

 巨体の割に素早い動きで獲物を

 狙う。首の爪で獲物の動きを封じ

 頭の角を突き刺してとどめを刺す。』

 

虫と毒タイプを併せ持つポケモンのようだ。ワルビルからは一応有効打として燕返しがあるが、

(向こうの虫技はワルビルに効果抜群になるな……気をつけなきゃ。それに……)

ワルビルも力自慢のポケモンではあるが、なんせ今回の相手は巨体だ。長い体は頑強で、カビゴンよりも大きい。

ペンドラーというポケモン自体好戦的な性格であり、バトルが始まれば力を生かして攻めてくるだろう。

そう、ハルは考えていたのだが。

「それでは、試合……開始ッ!」

ミオの初手は、違った。

 

「ペンドラー、毒菱だよぅ」

 

バトル開始直後、ペンドラーは毒を含んだ撒菱をワルビルの足元へと散らしたのだ。

「えっ……?」

「さ、ペンドラー、メガホーンだよぅ」

困惑するハルをよそに、ペンドラーは頭を下げてツノを構え、勢いよく突撃する。

「っ、ワルビル、躱して燕返しだ!」

ペンドラーのスピードはかなり速いが、軌道は直線。

ワルビルは素早く飛び退いてペンドラーのツノの一撃を躱し、刀身のように腕を振り抜き飛び掛かる。

「ペンドラー、メガホーンで防御」

向かってくるワルビルに対し、ペンドラーは角を横薙ぎに振り払い、ワルビルの攻撃を迎え撃つ。

本来は角で突き飛ばす技なのを防御に使ったためか、威力は思ったほど高くなく、追撃は来ない。

「さっきの技は……?」

図鑑を取り出し、ハルは毒菱を調べる。

「ええっと……交代したポケモンが浮いていなければ、そのポケモンを毒の状態異常にする、だって……?」

「そーだよぅ。不利な相手が出てきたからって交代すると、毒を浴びちゃうよぅ」

つまり、これでハルは安易にポケモンを交代することができなくなった。

もう一つ痛いことに、エーフィを出しづらくなった。補助技を反射するマジックミラーの特性を持つエーフィだが、既に撒かれてしまった毒菱を防ぐことはできない。

(幸い、飛んでいるヒノヤコマと鋼タイプのルカリオには毒菱は効かないけど……もしかして、出すポケモンを誘導する目的もあるのか……?)

この時点で、ハルの後続はほぼヒノヤコマとルカリオに絞られた。ミオがここまでの試合を見ていたなら、そこまで考えていても不思議ではない。

「さ、次だよぅ。ペンドラー、ベノムショック」

続けて、ペンドラーはツノの先から滴らせた毒液をワルビルへと放つ。

「ワルビル、弾け! シャドークロー!」

両腕に影の爪を纏い、両手を振り抜き、ワルビルは毒の液体を弾く。

やはりそこまでの威力はない。おそらくこのペンドラー、後続のポケモンに流れをつなぐサポートの役割を担っているのだろう。

「ちなみにベノムショックは毒状態のポケモンに威力が増す技だよぅ。この技自体も毒にすることがあるから、気をつけてねえ」

ミオは力の抜けた笑顔でそう語る。

「それじゃ、まだまだ行くよぅ。ペンドラー、メガホーン!」

思い切り角を突き出し、再びペンドラーは勢いよく突進を仕掛ける。

「ワルビル、穴を掘る!」

サポート担当だからとはいえメガホーンの直撃を受けるわけにはいかない。ワルビルは素早くフィールドに穴を掘る。

ペンドラーの突撃を床に潜って躱し、地中から忍び寄ると、その足元から飛び出し、ペンドラーを殴り飛ばした。

「やるねぇ。それじゃあ、次はこうかなぁ」

ペンドラーが起き上がったのを確認すると、ミオは次の手に出る。

 

「ペンドラー、バトンタッチ」

 

次の瞬間、ペンドラーはミオの構えたボールへと戻っていく。

「えっ?」

「それじゃあ頼んだよぅ、トゲチック」

戸惑うハルのことは気にせず、ミオは次のポケモンを繰り出す。

卵の形をした体に首と短い手足、そして天使のような小さな翼が生えたようなポケモンだ。

 

『information

 トゲチック 幸せポケモン

 純粋な心を持つ者の前にだけ

 姿を現すポケモン。幸運を運ん

 でくるという言い伝えがある。』

 

『ミオ選手、ここでバトンタッチによりポケモンを交代! 出て来たのは、トゲチックです!』

タイプはフェアリーと飛行。ワルビルにとっては、悪技を半減する上に地面技を無効化する厄介な相手である。

本来ならば、ハルも相手に合わせて別のポケモンに交代してもいい場面。

なのだが、

「……なるほど。そのための毒菱ってことか」

その交代を、撒き散らされた毒菱が躊躇わせる。

交代際に毒菱を踏むと、そのポケモンは毒を受けてしまう。

ここで飛行タイプを持ち毒菱の効果を受けないヒノヤコマを出すとしても、その後に出すワルビルは確実に毒を受ける。

さらに、毒を受けるとまずいことはもう一つある。

(確か、あのペンドラーのベノムショックは毒を受けたポケモンに対して威力が上がる。出来れば、ワルビルに毒は与えたくない)

敢えてミオがベノムショックの説明をしたのも、ここでハルの交代を躊躇わせるためだろう。有利な対面を作って、一体ずつ相手を倒していくつもりか。

「……ワルビル、相性の悪い相手だけど、ここは頑張って。君に毒を受けさせたくはないし、頼んだよ」

タイプ相性は不利だが、やむを得ない。ワルビルもハルの言葉を受け、任せろと言わんばかりに大きく吼える。

「……よし! ワルビル、シャドークロー!」

ワルビルが両手に影の爪を纏わせ、トゲチックへと飛びかかる。

しかし、

「トゲチック、躱してエアスラッシュ」

見た目に反して素早い動きでトゲチックはワルビルの爪を躱すと、小さい羽をぱたぱたと羽ばたかせて空気の刃を飛ばし、ワルビルを切り裂く。

「っ、速い……!」

「バトンタッチは、ただ交代するだけじゃない。交代前のポケモンの能力変化を引き継ぐんだよぅ」

ミオが再び説明を始める。

「能力変化……? だとしても、さっきのペンドラーは能力変化の技なんて……」

「うんうん、技は使ってないよぅ。だけど」

ハルの疑問に対し、ミオはどことなく得意げな表情で言葉を続ける。

「ペンドラーの特性、加速っていってねぇ。そんな動きは見せなかったけど、時間が経つにつれて素早さが上がっていくんだぁ。それを引き継いだから、今のトゲチックは素早さが上がってるんだよぅ」

「っ、なるほど。通りで……」

予想はしていたことだが、やはりミオの強さはカビゴンだけではなかった。

ハダレ大会準決勝、ミオ戦は、一筋縄ではいかなさそうだ。

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