魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第50話 決着、因縁の巨獣!

ヒノヤコマ、ペンドラー、共に戦闘不能。

これでハルとミオ、両者のポケモンは残り一匹となった。

(恐らく、いや間違いなく、ミオの最後のポケモンはカビゴン。いや、もしカビゴンじゃなかったとしても、僕の最後のポケモンは決まってる!)

双方ボールを手に取り、最後のポケモンを繰り出す。

「これで最後だ! 出てきて、ルカリオ!」

「それじゃ最後、カビゴン! 頼むよぅ」

ハルが選ぶは勿論、エースのルカリオ。鋼タイプを持っているため、毒菱も効かない。

そして対するミオは、やはりカビゴンで来た。

「ハル君、ルカリオ持ってたのかぁ。だけどタイプ相性が有利だからっていうだけじゃ、このカビゴンには勝てないよぅ」

「分かってるさ。だけど例え出てくるポケモンがカビゴンじゃなかろうと、僕はこのルカリオで戦う、そして勝つ。そう決めてたんだ」

「それじゃあ、僕と同じだねぇ。僕も、誰が相手でもカビゴンと一緒に勝つ。そのつもりだよぅ」

対峙する両者、準備は整った。

「さあ、始めよう。カビゴン、シャドーボール」

「望むところだ! ルカリオ、ボーンラッシュ!」

双方が動き出す。カビゴンが両手の掌に黒い影の弾を作り上げ、ルカリオは右手から吹き出した波導を槍の形に変えて手に取り、地を蹴って飛び出す。

飛来する黒き念弾を波導の槍で破壊し、ルカリオは一気にカビゴンとの距離を詰め、

「ルカリオ、発勁!」

手にした槍は青い炎が如き波導へと形を変えて右手を覆い、カビゴンの腹部へと波導を乗せた掌底を叩きつける。

だが、

「カビゴン、跳ね返してぇ」

腹部へ打撃を受けたカビゴンは怯まなかった。

大きく息を吸い、凹んだお腹を空気で膨らませ、まるでバンパーのようにルカリオを逆に弾き飛ばしてしまったのだ。

「なっ……!?」

「見ての通り、カビゴンのお腹は厚い脂肪でとっても柔らかいんだぁ。ノーダメージってわけにはいかないけど、パンチやキックなら衝撃を抑えて、逆に跳ね返すことだってできるんだよぅ」

自慢げにミオは語る。 戦術と言っていいのか分からないが、ポケモンの特徴を生かした見事な戦い方だ。

「それじゃカビゴン、のしかかり」

ミオの指示を受けたカビゴンが大きく跳躍、ルカリオの上を取り、その巨体で直接押し潰しにかかる。

「来たか……! ルカリオ、躱してサイコパンチ!」

何度見ても圧巻の光景だが、ルカリオは素早く飛び退いてカビゴンの襲撃を躱す。

床に落ちてうつ伏せになったカビゴンが起き上がったタイミングを逃さず、念力を込めた拳を今度は額へと叩き込んだ。

「よし、続けて攻める! 発勁だ!」

右手に纏わせた波導を増幅させ、ルカリオはさらに掌底を叩きつける。

効果抜群の一撃を受け、カビゴンが呻き声を上げてよろめく。

「ルカリオ、一旦下がって!」

優勢時でも深追いは危険、そうハルは判断し、ルカリオも素早く飛びのき、宙を舞って後ろへと下がる。

だが、

「カビゴン、地割れだよぅ」

ルカリオの着地点を正確に見定め、カビゴンがフィールドを思い切り踏み付ける。

一直線にフィールドにヒビが走り、床が割れ、大地の大顎が如き裂け目がルカリオの着地を待つ。

「まずっ……!? ルカリオ、ボーンラッシュ!」

ルカリオの右手を覆う波導が、槍の形へと変化する。

咄嗟にルカリオは掴んだ槍で地面を突き、地割れの裂け目から着地点をずらす。

「チャンスだよぅ、シャドーボール」

だがその着地点も見切り、カビゴンが掌を開いて黒い影の弾を放つ。

着地したその瞬間、二つの漆黒の弾が飛来し、ルカリオに着弾して吹き飛ばす。

「やっぱり手強いな……そうとなったら、こっちも本気だ! ルカリオ、準備はいい?」

ハルの言葉に、ルカリオは振り返り頷く。

新しく得た力を、いよいよ見せる時が来た。

 

「僕と君の、絆の力に応えて! ルカリオ、メガシンカだ!」

 

大きく叫び、ハルはブレスレットを付けた右腕を掲げる。

ブレスレットに填め込まれたキーストーンが輝き出すと同時に、ルカリオの腕輪のメガストーンもそれに呼応し、七色の輝きを放つ。

双方の光は次々と一つに繋がり、光がルカリオを包み込み、その姿を変えていく。

「メガシンカ――メガルカリオ!」

纏う光を吹き飛ばし、駆け巡る波導をその身に刻み、天を衝く咆哮と共に、ルカリオがメガシンカを遂げる。

『な、なんとなんとなんと!! ハル選手のルカリオ、ここに来てまさかのメガシンカ! ハル選手、ここまで隠していた切り札を、遂に出してきましたぁッ!!』

ルカリオのメガシンカを前に急激にテンションを上げていくアナウンサー、それに続くように会場も凄まじい歓声に包まれる。

「……うーん、想定もしてなかったなぁ。ハル君、メガシンカが使えたのかぁ。これはちょっと、きつくなってきたかもねぇ」

そう呟くミオだが、発言とは裏腹にその口調は寧ろ高揚しているようにも聞こえた。

当然だ。相手が強ければ強いほど燃え上がる、それこそがポケモントレーナーなのだから。

「カビゴン、こっちも全力で行くよぅ。シャドーボール!」

ミオの語気が強まり、カビゴンが両掌を開く。

両手から一発ずつ黒い影の念弾が発射され、さらにカビゴンは口を開いてエネルギーを溜め込み、口内からももう一発影の弾を放つ。

「ルカリオ、躱して! 発勁!」

ルカリオがカッと目を見開き、右手に燃える炎が如き青い波導を纏わせる。

襲い来るシャドーボールを飛び越え、掻い潜り、カビゴンとの距離を詰めていく。

波導を纏った右手が、カビゴンの腹部を捉える。吹き飛ばすとまではいかずとも、その巨体を引き下がらせた。

「かなり威力が上がっている……跳ね返すのは難しそうだねぇ。だったら、のしかかりだよぅ」

カビゴンは野太い咆哮で自身を鼓舞し、地を蹴って大きく跳躍する。

ルカリオの上を取り、重力に従い落下、そのまま押し潰さんと迫る。

「躱してサイコパンチ!」

「させないよぅ、シャドーボールだぁ」

素早く飛び退いてカビゴンの影から離れ、ルカリオが拳を握り締める。

だが落下中のカビゴンの両手から黒い影の念弾が放出され、ルカリオにさらなる追撃を仕掛けてくる。

「っ、仕方ない! ルカリオ、ボーンラッシュ! 防御だ!」

揺らめく波導を槍の形に変え、ルカリオは波導の手にした槍を振り回し、シャドーボールを防いだ。

「ルカリオ、発勁だ!」

手から離した槍は再び形を変え、揺らめく波導となってルカリオの右手を覆う。

起き上がったカビゴンに対し、再びカビゴンとの距離を一気に詰め、右手を突き出す。

「カビゴン、耐えてぇ! シャドーボール!」

掌底を叩きつけられたカビゴンは怯まなかった。

気合いでなんとかルカリオの一撃をその場踏み止まって耐え切り、すかさず口から影の念弾を放ち、ルカリオを吹き飛ばす。

「地割れだぁ!」

「当たるわけには……! ルカリオ、躱して!」

カビゴンが思い切り右足を踏み出し、大地を踏みしめると、フィールドに一直線に亀裂が走る。

起き上がったルカリオは間一髪、ジャンプして地割れを回避、そのままひとっ飛びで一気にカビゴンとの距離をゼロまで縮め、

「もう一度、発勁!」

波導を纏った右手が、今度はカビゴンの額へと直撃。低い呻き声が上がり、カビゴンの巨体がぐらりと揺らぐ。

「よっし、効いてる! ルカリオ、サイコパンチ!」

「させないよぅ、カビゴン、シャドーボール!」

握り締めたルカリオの拳に念力が宿るが、対するカビゴンは掌に作り上げた影の念弾をその手で掴む。

ルカリオの拳に対してカビゴンもシャドーボールを掴んだ手を突き出し、ルカリオに当たったその瞬間念弾は炸裂、逆にルカリオを吹き飛ばした。

「一気に行くよぅ! カビゴン、のしかかり!」

ルカリオが体勢を崩したその瞬間を、ミオが逃すはずはない。

大きく跳躍してルカリオの上を取り、一気に勝負を決めるべく、ルカリオを押し潰しにかかる。

回避は、間に合わない。

「ルカリオ、こっちも行くよ! 最大パワーで、波導弾だ!」

起き上がったルカリオは、両手を重ね、真上に掲げる。

波導を両掌の一点に集めて凝縮し、膨れ上がった波導の念弾を、大砲が如く真上に撃ち出した。

全体重をかけたカビゴンの渾身ののしかかりと、出せる全ての波導を込めたルカリオの念弾が激突。

刹那。

波導の念弾が炸裂し、爆発と共に、カビゴンを青い爆煙に飲み込んだ。

「カビゴン……! まだやれるよねぇ、そのまま、のしかかり!」

爆煙で姿が見えないが、カビゴンを信じ、ミオは叫ぶ。

そして。

ズシィィィィン!! と、会場に轟音が響き、フィールドが揺れる。

砂煙が晴れた時、そこには。

肩で息をしながらもなんとか立っているルカリオのすぐ目の前で、カビゴンがうつ伏せに倒れ伏していた。

 

「カビゴン、戦闘不能! ルカリオの勝利です! よって勝者、ハル選手!」

 

カビゴンが落下したのは、ルカリオのすぐ目の前。惜しくも、僅かに届かなかった。

波導弾の直撃を受け、体力の限界を迎えてそれでもなおルカリオを狙おうとするも、あと一歩が叶わなかったようだ。

『決まったぁぁぁ! これがメガシンカの力! ハル選手、メガシンカの力を存分に振るい、今大会で猛威を振るったカビゴンを見事打ち破り、決勝進出ぅぅぅッ! ミオ選手、惜しくもここで敗退となりましたが、熱い熱いバトルを見せてくれました!』

会場が大歓声に包まれる中、二人はお互いのポケモンを労う。

「やった……! ルカリオ、よくやったね! ……ごめんね、頑張りすぎて、僕もちょっと疲れちゃったよ」

ルカリオに駆け寄るハルだが、メガシンカの疲労により躓いて転びそうになる。

ルカリオが慌てて受け止め、ハルと顔を見合わせてにっこりと笑う。

「カビゴン、お疲れ様。また特訓し直しだねぇ。でもその前に、あとでおいしいご飯、たくさん食べようねぇ」

ミオに撫でられると、カビゴンは顔を上げる。

負けはしたが、それでもやり切った表情でミオの顔を見つめ、にんまりと笑った。

お互いにポケモンをボールへと戻し、両者が歩み寄る。

まさか、ハル君がメガシンカを使えるとは思ってなかったなぁ。今回は、完敗だねぇ」

「いやいや、ミオも強かったよ。タイプ相性で有利なルカリオでも、かなり追い詰められたし」

「ふふふ、ありがとうねぇ。だけど、今度バトルする時は僕が勝つよぅ。今度会ったら、またバトルしようねぇ」

「うん。望むところさ」

バトルを終え、再戦を約束して握手を交わすと、二人はフィールドを後にする。

休憩を挟み、この後はこちらも注目の一戦。謎のトレーナー“R”と、スグリの試合だ。

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