魔王と救世の絆   作:インク切れ

55 / 121
第52話 轟雷の狂者

「Go!Shout! ガマゲロゲ!」

ロノウェの雄叫びと共に繰り出されたポケモンは、身体にコブを持つ大きな蛙のようなポケモンだ。

 

『information

 ガマゲロゲ 振動ポケモン

 コブを振動させて空気を揺らし

 音波を放つ。拳のコブを振動

 させればパンチの威力も増大する。』

 

ガマゲロゲ、水と地面タイプを併せ持つポケモンだ。

「ニューラ、もう少し頑張ってもらうよ……冷凍パンチ!」

ニューラの手に冷気が宿り、鋭い氷を作り出す。

素早く、かつ不規則な動きでガマゲロゲとの距離を一気に詰め、ニューラは氷の拳をガマゲロゲへと突き刺す。

しかし、

「甘い甘い、甘っちょろい! ガマゲロゲ、そっくりそのまま冷凍パンチ!」

氷を刺されたガマゲロゲは引き下がらず、瞬時に反撃を放つ。

お返しとばかりに冷気を込めた拳を放ち、ニューラを殴り飛ばした。

「ハイパーボイスだァァ!」

ガマゲロゲの頭のコブが振動し、大気を揺るがす音波を放ち、体勢を崩したニューラを音波に巻き込みさらに吹き飛ばす。

「やべっ……ニューラ!」

バクオング戦でのダメージも受けていたニューラはさすがに耐え切れず、ここで戦闘不能となってしまう。

「まずは一匹ィ! 言っておくが、俺様のポケモンは俺様のテンションが高いほど力を出せる。バクオング戦で俺様の力を判断したなら、それはあまりにも浅はか! 軽率! 的外れってモンだぜぇ!?」

調子付くロノウェに対して、スグリは顔色一つ変えない。

「ニューラ、お疲れさん。戻りな」

ニューラを戻し、次のボールを手に取るが、

「さて、お前にちょっと聞きたいことがある」

バトルを再開させる前に、スグリはロノウェへと疑問をぶつける。

「ゴエティアは謎だらけだけど危険な闇の組織。しかも魔神卿ってことは、お前、その闇の最深部の存在だろ。そんな奴がなんでこの最前線、テレビ中継までされているバトル大会に出てきた? お前たちの存在が大々的に知られれば、活動しにくくなるんじゃないのか」

「あぁん? 逆だぜ、逆! 俺様の作戦はこうだ。テレビ中継を通して、ゴエティアの実力を知らしめる! そうすりゃゴエティアがどんだけヤバい組織か一目瞭然、見た奴らは思うだろ。ゴエティアはヤバい組織だ、あいつらに楯突いちゃいけないってな!」

「だったらもう一つ上のレギュレーションに出た方がいいはずだ。ここはバッジ数四つから六つ。そんなに強さは伝わらないだろ」

「おいおいそこを突くのはナンセンスってモンだぜ!? ハッと思いついた行き当たりばったりの作戦だったから、ジム周りが間に合ってねえんだ! 言わせんな!」

それに、とロノウェは続け、

「例えこのレギュレーションだろうとも、実力派の選手は目白押し! さらにこの会場を簡単に制圧してしまう力! これだけで十分俺たちのヤバさ、伝わるよなぁ!?」

静寂の会場に響き渡る大声でロノウェは叫び続ける。

「さあ、もういいだろ! さっさと次のポケモンを出せよ! こっちは早いとこお前を叩きのめしたくて仕方ねえんだ!」

「はいはい、分かったよ。だけどその作戦、致命的な欠陥があるぜ」

「あぁ!?」

明確な苛立ちを込めるロノウェに対し、スグリは超然としたまま告げる。

「その作戦、オレが勝てばどうなる? ゴエティアの魔神卿はトレーナー歴の浅いガキに負けた。ゴエティアなんて大したことない、そうなるんじゃないのか?」

その言葉を聞き、先程まで苛立っていたロノウェは急に吹き出す。

「ぷっ……はははは! 何を言いだすかと思えば! お前みたいな甘っちょろいガキに、俺様が負けるわけねえだろうが! それを証明してやるからよぉ! さあ、さっさと次のポケモンを出せ!」

「へっ、後悔すんなよ。出て来い、フローゼル!」

スグリが二番手のポケモンを出す。水タイプのフローゼルだ。

「さあ、ガマゲロゲ! ハイパーボイス!」

ガマゲロゲが頭のコブを振動させ、大音量の音波を放つ。

「フローゼル、躱してアクアジェット!」

フローゼルは体に水を纏い、飛び出して音波を躱すと、目にも留まらぬ速度で突撃する。

ガマゲロゲの腹部へと激突、しかし、

「甘いっつってんだろうがよォ!? ガマゲロゲ、瓦割り!」

ガマゲロゲは地に足を付けて踏み止まり、すぐさま手刀を振り下ろして反撃する。

「遅いっての。フローゼル、リキッドブレード!」

フローゼルが右掌を広げると、水が噴き出し、水の剣を作り上げる。

その刀を握り、手刀を躱し、フローゼルは横腹を狙って剣を振り抜き、ガマゲロゲを切り裂く。

「ガマゲロゲ、冷凍パンチだぁ! 叩き込め!」

唸り声を上げたガマゲロゲが両手に冷気を纏わせ、そのまま連続パンチを繰り出すが、

「フローゼル、躱してもう一発だ!」

フローゼルは最低限の動きでガマゲロゲの拳を躱し続ける。

隙が出来たところに、フローゼルは手にしたままの刀をもう一度振り抜き、再びガマゲロゲを切り裂いた。

「ちぃっ、ちょこまかと鬱陶しいなァ! それなら!」

ニヤリと笑い、ロノウェはエレキギターを掻き鳴らし、叫ぶ。

 

「エンジン全開! ガマゲロゲ、掻き乱せ! ハイパーボイス!」

 

ガマゲロゲが大きく身震いし、全身のコブを一斉に振動させる。

激しい大気の振動により、耳をつんざくノイズと共に強烈な音波が放射される。

「ぐぅ……っ!」

「今だぜガマゲロゲ! ハイドロポンプ!」

ノイズによって動きを止められたフローゼルへ、ガマゲロゲは大量の水を噴射し、フローゼルを吹き飛ばした。

「……チッ、フローゼル、まだ行けるか?」

スグリの言葉に応えてフローゼルは起き上がり、頷く。

「フローゼル、アクアジェット!」

体に水を纏い、フローゼルは再び突撃する。

今度はガマゲロゲの腕を正確に貫き、そのまま後方へと駆け抜けていく。

「ガマゲロゲ、撃ち落とせ! ハイドロポンプ!」

ガマゲロゲはすぐに振り向き、大量の水を噴射するが、高速で動き回るフローゼルを捉えられず、

「フローゼル、冷凍パンチ!」

旋回して戻って来たフローゼルが冷気を込めた拳を突き出し、ガマゲロゲの腹部を殴る。

「効かねえぜ! ガマゲロゲ、瓦割り!」

「遅い! フローゼル、噛み砕く!」

振り下ろされるガマゲロゲの手刀を躱し、フローゼルはガマゲロゲの腕へと食らい付き、すぐに離れる。

「リキッドブレード!」

さらにフローゼルは水の刀を作り上げてガマゲロゲを背後から切り裂き、すぐに飛び退いてスグリの元へと戻る。

「素早さだけは一流だな!? だがそんな戦法、いつまでも通用すると思うな!」

「だったら破ってみせなよ。フローゼル、アクアジェット!」

フローゼルが体に水を纏い、目にも留まらぬスピードで突撃を仕掛ける。

しかし、

「上等だオラァ! ガマゲロゲ、One more time! 掻き乱せ!」

ガマゲロゲが再び全身のコブを思い切り震わせ、全方位へと耳をつんざく破壊のノイズを放つ。

空気の振動によりフローゼルを覆う水を掻き消し、フローゼルの動きを完全に止め、

「ハイパァァァボイスゥゥゥゥッ!」

そのコブをさらに大きく振動させ、周りの空気ごとフローゼルを派手に吹き飛ばした。

「フローゼル……ッ!?」

フローゼルは床と平行に勢いよく吹き飛ばされ、壁に激突してそのまま戦闘不能となった。

「ちっ……フローゼル、よく頑張った」

壁にめり込むフローゼルをボールに戻し、スグリはロノウェへと向き直る。

「ヒャアッハッハッハッァ! 無駄だ、無駄だぜ、無駄なんだよォ! さあ、まだ続けるかぁ? 大会ルールは三対三だし、そこまでなら相手になってやっても構わねーぜぇ?」

狂ったようにエレキギターを搔き鳴らし、ロノウェが笑い叫ぶ。

「生憎、逃げるのは嫌いなんでね。こいつで二枚抜きしてやるよ。出て来い、ジュプトル!」

一歩も引かず、スグリがボールを取り出す。最後のポケモンはエースのジュプトルだ。

「ほぉ、草タイプか。だがそんなのは関係ねぇ! ガマゲロゲ一体でそいつも倒し、その後ハルもぶっ潰す! タイトルを獲ってる実力派のトレーナーでも、魔神卿には手も足も出ねえってことを、思い知らせてやるぜぇ!」

「そうはさせない。御託はいいから、かかってきなよ」

ロノウェは恐怖をばら撒く狂った笑みを、スグリは小さく不敵な笑みを浮かべ、互いの敵を見据える。

「行くぜぇ! ガマゲロゲ、ハイドロポンプ!」

ガマゲロゲが大きく息を吸い込み、大量の水を噴射する。

「ジュプトル、躱して接近だ」

水柱を躱しつつ、ジュプトルは少しずつガマゲロゲとの距離を詰めていく。

「そのジュプトルも大方スピードタイプだろう! だったらその動き、止めてやるぜ! 対抗できるか!?」

会場にエレキギターの音を響かせ、ロノウェが引き裂くような笑みを浮かべる。

「聞かせてやるぜ、破壊の叫び! ガマゲロゲ、ハイパ――」

 

「リーフブレード!」

 

一瞬だった。

ジュプトルの腕から生える葉が刃のように伸びたかと思うと、一気に急加速し、ガマゲロゲがノイズを放つよりも早く、かつ的確に、ガマゲロゲを切り裂いた。

「な……にィ!? っ……ガマゲロゲ!?」

ガマゲロゲの体がぐらりと傾く。

ジュプトルが構えを解いたその刹那、ガマゲロゲは仰向けに倒れ、戦闘不能となった。

「遅いんだよ、動きがね。ってか、さすがに水・地面タイプで草タイプに勝とうなんて、無理があるでしょ」

スグリがニヤリと笑う。

魔神卿を相手に、一歩も引くことなく。

「あんたの言葉、そのまま借りるよ。お次がフィナーレだ」

「ぐぅぅぅぅ……!」

対して。

怒りを隠そうとすらせず、憤怒の形相を浮かべ。

「ぐぅぅぅぅぅぅぅァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

我を忘れて暴走する獣のように、雄叫びを上げる。

「俺様をコケにしやがったな! ぜってえ許さねえ! 俺様の相棒で、地獄送りにしてやるぜオラァ!」

怒号と共に、ロノウェが最後のボールを取り出す。

しかし。

 

『ロノウェ、ストップ。撤退指示が出てるはずだよね』

 

突如。

会場のスピーカー越しに、マイクを通した女性の声が響く。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。