「Go!Shout! ガマゲロゲ!」
ロノウェの雄叫びと共に繰り出されたポケモンは、身体にコブを持つ大きな蛙のようなポケモンだ。
『information
ガマゲロゲ 振動ポケモン
コブを振動させて空気を揺らし
音波を放つ。拳のコブを振動
させればパンチの威力も増大する。』
ガマゲロゲ、水と地面タイプを併せ持つポケモンだ。
「ニューラ、もう少し頑張ってもらうよ……冷凍パンチ!」
ニューラの手に冷気が宿り、鋭い氷を作り出す。
素早く、かつ不規則な動きでガマゲロゲとの距離を一気に詰め、ニューラは氷の拳をガマゲロゲへと突き刺す。
しかし、
「甘い甘い、甘っちょろい! ガマゲロゲ、そっくりそのまま冷凍パンチ!」
氷を刺されたガマゲロゲは引き下がらず、瞬時に反撃を放つ。
お返しとばかりに冷気を込めた拳を放ち、ニューラを殴り飛ばした。
「ハイパーボイスだァァ!」
ガマゲロゲの頭のコブが振動し、大気を揺るがす音波を放ち、体勢を崩したニューラを音波に巻き込みさらに吹き飛ばす。
「やべっ……ニューラ!」
バクオング戦でのダメージも受けていたニューラはさすがに耐え切れず、ここで戦闘不能となってしまう。
「まずは一匹ィ! 言っておくが、俺様のポケモンは俺様のテンションが高いほど力を出せる。バクオング戦で俺様の力を判断したなら、それはあまりにも浅はか! 軽率! 的外れってモンだぜぇ!?」
調子付くロノウェに対して、スグリは顔色一つ変えない。
「ニューラ、お疲れさん。戻りな」
ニューラを戻し、次のボールを手に取るが、
「さて、お前にちょっと聞きたいことがある」
バトルを再開させる前に、スグリはロノウェへと疑問をぶつける。
「ゴエティアは謎だらけだけど危険な闇の組織。しかも魔神卿ってことは、お前、その闇の最深部の存在だろ。そんな奴がなんでこの最前線、テレビ中継までされているバトル大会に出てきた? お前たちの存在が大々的に知られれば、活動しにくくなるんじゃないのか」
「あぁん? 逆だぜ、逆! 俺様の作戦はこうだ。テレビ中継を通して、ゴエティアの実力を知らしめる! そうすりゃゴエティアがどんだけヤバい組織か一目瞭然、見た奴らは思うだろ。ゴエティアはヤバい組織だ、あいつらに楯突いちゃいけないってな!」
「だったらもう一つ上のレギュレーションに出た方がいいはずだ。ここはバッジ数四つから六つ。そんなに強さは伝わらないだろ」
「おいおいそこを突くのはナンセンスってモンだぜ!? ハッと思いついた行き当たりばったりの作戦だったから、ジム周りが間に合ってねえんだ! 言わせんな!」
それに、とロノウェは続け、
「例えこのレギュレーションだろうとも、実力派の選手は目白押し! さらにこの会場を簡単に制圧してしまう力! これだけで十分俺たちのヤバさ、伝わるよなぁ!?」
静寂の会場に響き渡る大声でロノウェは叫び続ける。
「さあ、もういいだろ! さっさと次のポケモンを出せよ! こっちは早いとこお前を叩きのめしたくて仕方ねえんだ!」
「はいはい、分かったよ。だけどその作戦、致命的な欠陥があるぜ」
「あぁ!?」
明確な苛立ちを込めるロノウェに対し、スグリは超然としたまま告げる。
「その作戦、オレが勝てばどうなる? ゴエティアの魔神卿はトレーナー歴の浅いガキに負けた。ゴエティアなんて大したことない、そうなるんじゃないのか?」
その言葉を聞き、先程まで苛立っていたロノウェは急に吹き出す。
「ぷっ……はははは! 何を言いだすかと思えば! お前みたいな甘っちょろいガキに、俺様が負けるわけねえだろうが! それを証明してやるからよぉ! さあ、さっさと次のポケモンを出せ!」
「へっ、後悔すんなよ。出て来い、フローゼル!」
スグリが二番手のポケモンを出す。水タイプのフローゼルだ。
「さあ、ガマゲロゲ! ハイパーボイス!」
ガマゲロゲが頭のコブを振動させ、大音量の音波を放つ。
「フローゼル、躱してアクアジェット!」
フローゼルは体に水を纏い、飛び出して音波を躱すと、目にも留まらぬ速度で突撃する。
ガマゲロゲの腹部へと激突、しかし、
「甘いっつってんだろうがよォ!? ガマゲロゲ、瓦割り!」
ガマゲロゲは地に足を付けて踏み止まり、すぐさま手刀を振り下ろして反撃する。
「遅いっての。フローゼル、リキッドブレード!」
フローゼルが右掌を広げると、水が噴き出し、水の剣を作り上げる。
その刀を握り、手刀を躱し、フローゼルは横腹を狙って剣を振り抜き、ガマゲロゲを切り裂く。
「ガマゲロゲ、冷凍パンチだぁ! 叩き込め!」
唸り声を上げたガマゲロゲが両手に冷気を纏わせ、そのまま連続パンチを繰り出すが、
「フローゼル、躱してもう一発だ!」
フローゼルは最低限の動きでガマゲロゲの拳を躱し続ける。
隙が出来たところに、フローゼルは手にしたままの刀をもう一度振り抜き、再びガマゲロゲを切り裂いた。
「ちぃっ、ちょこまかと鬱陶しいなァ! それなら!」
ニヤリと笑い、ロノウェはエレキギターを掻き鳴らし、叫ぶ。
「エンジン全開! ガマゲロゲ、掻き乱せ! ハイパーボイス!」
ガマゲロゲが大きく身震いし、全身のコブを一斉に振動させる。
激しい大気の振動により、耳をつんざくノイズと共に強烈な音波が放射される。
「ぐぅ……っ!」
「今だぜガマゲロゲ! ハイドロポンプ!」
ノイズによって動きを止められたフローゼルへ、ガマゲロゲは大量の水を噴射し、フローゼルを吹き飛ばした。
「……チッ、フローゼル、まだ行けるか?」
スグリの言葉に応えてフローゼルは起き上がり、頷く。
「フローゼル、アクアジェット!」
体に水を纏い、フローゼルは再び突撃する。
今度はガマゲロゲの腕を正確に貫き、そのまま後方へと駆け抜けていく。
「ガマゲロゲ、撃ち落とせ! ハイドロポンプ!」
ガマゲロゲはすぐに振り向き、大量の水を噴射するが、高速で動き回るフローゼルを捉えられず、
「フローゼル、冷凍パンチ!」
旋回して戻って来たフローゼルが冷気を込めた拳を突き出し、ガマゲロゲの腹部を殴る。
「効かねえぜ! ガマゲロゲ、瓦割り!」
「遅い! フローゼル、噛み砕く!」
振り下ろされるガマゲロゲの手刀を躱し、フローゼルはガマゲロゲの腕へと食らい付き、すぐに離れる。
「リキッドブレード!」
さらにフローゼルは水の刀を作り上げてガマゲロゲを背後から切り裂き、すぐに飛び退いてスグリの元へと戻る。
「素早さだけは一流だな!? だがそんな戦法、いつまでも通用すると思うな!」
「だったら破ってみせなよ。フローゼル、アクアジェット!」
フローゼルが体に水を纏い、目にも留まらぬスピードで突撃を仕掛ける。
しかし、
「上等だオラァ! ガマゲロゲ、One more time! 掻き乱せ!」
ガマゲロゲが再び全身のコブを思い切り震わせ、全方位へと耳をつんざく破壊のノイズを放つ。
空気の振動によりフローゼルを覆う水を掻き消し、フローゼルの動きを完全に止め、
「ハイパァァァボイスゥゥゥゥッ!」
そのコブをさらに大きく振動させ、周りの空気ごとフローゼルを派手に吹き飛ばした。
「フローゼル……ッ!?」
フローゼルは床と平行に勢いよく吹き飛ばされ、壁に激突してそのまま戦闘不能となった。
「ちっ……フローゼル、よく頑張った」
壁にめり込むフローゼルをボールに戻し、スグリはロノウェへと向き直る。
「ヒャアッハッハッハッァ! 無駄だ、無駄だぜ、無駄なんだよォ! さあ、まだ続けるかぁ? 大会ルールは三対三だし、そこまでなら相手になってやっても構わねーぜぇ?」
狂ったようにエレキギターを搔き鳴らし、ロノウェが笑い叫ぶ。
「生憎、逃げるのは嫌いなんでね。こいつで二枚抜きしてやるよ。出て来い、ジュプトル!」
一歩も引かず、スグリがボールを取り出す。最後のポケモンはエースのジュプトルだ。
「ほぉ、草タイプか。だがそんなのは関係ねぇ! ガマゲロゲ一体でそいつも倒し、その後ハルもぶっ潰す! タイトルを獲ってる実力派のトレーナーでも、魔神卿には手も足も出ねえってことを、思い知らせてやるぜぇ!」
「そうはさせない。御託はいいから、かかってきなよ」
ロノウェは恐怖をばら撒く狂った笑みを、スグリは小さく不敵な笑みを浮かべ、互いの敵を見据える。
「行くぜぇ! ガマゲロゲ、ハイドロポンプ!」
ガマゲロゲが大きく息を吸い込み、大量の水を噴射する。
「ジュプトル、躱して接近だ」
水柱を躱しつつ、ジュプトルは少しずつガマゲロゲとの距離を詰めていく。
「そのジュプトルも大方スピードタイプだろう! だったらその動き、止めてやるぜ! 対抗できるか!?」
会場にエレキギターの音を響かせ、ロノウェが引き裂くような笑みを浮かべる。
「聞かせてやるぜ、破壊の叫び! ガマゲロゲ、ハイパ――」
「リーフブレード!」
一瞬だった。
ジュプトルの腕から生える葉が刃のように伸びたかと思うと、一気に急加速し、ガマゲロゲがノイズを放つよりも早く、かつ的確に、ガマゲロゲを切り裂いた。
「な……にィ!? っ……ガマゲロゲ!?」
ガマゲロゲの体がぐらりと傾く。
ジュプトルが構えを解いたその刹那、ガマゲロゲは仰向けに倒れ、戦闘不能となった。
「遅いんだよ、動きがね。ってか、さすがに水・地面タイプで草タイプに勝とうなんて、無理があるでしょ」
スグリがニヤリと笑う。
魔神卿を相手に、一歩も引くことなく。
「あんたの言葉、そのまま借りるよ。お次がフィナーレだ」
「ぐぅぅぅぅ……!」
対して。
怒りを隠そうとすらせず、憤怒の形相を浮かべ。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
我を忘れて暴走する獣のように、雄叫びを上げる。
「俺様をコケにしやがったな! ぜってえ許さねえ! 俺様の相棒で、地獄送りにしてやるぜオラァ!」
怒号と共に、ロノウェが最後のボールを取り出す。
しかし。
『ロノウェ、ストップ。撤退指示が出てるはずだよね』
突如。
会場のスピーカー越しに、マイクを通した女性の声が響く。