魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第55話 水の一閃、フローゼル!

ワルビルを倒され、ハルが二番手に選んだのはエーフィ。

対するスグリのポケモンは、同じく二番手のフローゼルだ。

「さあ、オレのフローゼルにどこまで着いてこられるかな! フローゼル、冷凍パンチ!」

握り締めた拳に冷気を纏わせ、フローゼルが二股の尻尾をスクリューのように回転させて勢いよく飛び出す。

一気にエーフィとの距離を詰め、冷気の拳で殴りかかるが、

「エーフィ、躱してシャドーボール!」

素早さならエーフィも負けていない。

フローゼルの拳を軽やかに躱し、即座に額の珠から黒い影の弾を放ち反撃する。

「フローゼル、躱してアクアジェット!」

しかしフローゼルも影の弾を跳躍して躱すと、水を纏い猛スピードで突っ込む。

弾丸のように飛び出すフローゼルの突撃は、回避の隙すら与えずエーフィを突き崩し、

「冷凍パンチ!」

さらに冷気を纏った拳を突き出し、今度こそエーフィを殴り飛ばす。

「っ、エーフィ! 大丈夫!?」

床に倒れたエーフィだが、即座に起き上がり、ハルの声に応えて頷く。

(くっ、あのアクアジェット、速すぎないか……?)

大会で見たスグリのメンバー五匹の中でも、このフローゼルとジュプトルのスピードは頭一つ抜けている。

特に厄介なのがアクアジェットだ。元々の素早さに先制攻撃の特性も加わり、初速から圧倒的なスピードを叩き出してくる。

「だったらこれだ! エーフィ、スピードスター!」

ハルの導き出した答えはやはり必中技。エーフィが尻尾を振り抜き、必中の無数の星形弾を放つ。

しかし、

「エーフィも必中技持ちかぁ。ま、でも……」

スグリがニヤリと笑い、フローゼルが掌を開く。

「フローゼル、リキッドブレード!」

開いたフローゼルの掌から水が噴き出し、水の剣を作り上げる。

剣を手に取り、フローゼルは横薙ぎに振るう一太刀で星形弾を両断、さらに剣を構えたままエーフィとの距離を詰めていく。

「なら、エーフィ、サイコショット!」

エーフィの額の珠が輝き、念力の弾が放出される。

フローゼルの突き出す剣と激突、競り合った末に爆発を起こし、爆風で水の剣を打ち消した。

「冷凍パンチ!」

爆煙の中を潜り抜け、冷気を纏わせた拳を構えたフローゼルがエーフィへと襲い掛かる。

「今だ! エーフィ、マジカルシャイン!」

飛び掛かるフローゼルをその視界に捉え、エーフィの額の珠が白く輝き出す。

刹那、その珠から眩い純白の光が放出され、突っ込んできたフローゼルを飲み込み、逆に吹き飛ばし、スグリの元へと押し戻してしまう。

「続けてスピードスターだ!」

尻尾を振り抜き、エーフィは即座に必中の星形弾で追撃を仕掛けるが、

「甘い甘い! フローゼル、リキッドブレード!」

立ち上がったフローゼルは既に水の剣を手にしている。

星形弾を両断しながら一気に突き進み、剣を横薙ぎに振るってエーフィを切り裂く。

「エーフィ、躱して!」

フローゼルが剣を立て続けに振るうが、対するエーフィは軽快なステップで次々とフローゼルの斬撃を躱していく。

「……フローゼル――」

「今だエーフィ! シャドーボール!」

スグリが何か言おうとしたが、ハルとエーフィの方が速かった。剣を振った直後のフローゼルの隙を狙い、エーフィは黒い影の弾を放出。

反応が遅れ、フローゼルがシャドーボールを受けて押し戻される。

「遅かったか……気をつけろフローゼル、剣撃が単調になってる。ハル君が相手なら一撃振ったら離脱でいいから、隙を見せるな」

頭を振って体勢を立て直し、フローゼルはスグリの指示を受けて頷き、再び構える。

「フローゼル、冷凍パンチ!」

「エーフィ、シャドーボール!」

拳に冷気を纏わせるフローゼルに対し、エーフィは再び漆黒の影の弾を放出する。

シャドーボールがフローゼルの拳とぶつかり、腕を覆う冷気を掻き消した。

「サイコショット!」

さらに続けて、エーフィはサイコパワーを一点に集め、念力の弾を放出。

しかし。

 

「今だフローゼル! 噛み砕く!」

 

待ってましたとばかりに、フローゼルが大口を開けて牙を剥く。

噛み砕くは悪タイプの技、念力の弾を容易く食い破り、その奥にいるエーフィへと噛み付き、牙を食い込ませる。

「っ、しまった……エーフィ、マジカルシャイン!」

もがくエーフィの額の珠が白く輝くが、

「フローゼル、アクアジェット!」

牙を離して水を纏い、フローゼルがエーフィを突き飛ばし、その反動で離脱。

直後に白い光が放出されるが、フローゼルは既にマジカルシャインの範囲外に逃れている。

「もう一度アクアジェット!」

フローゼルが再び水を纏ったかと思うと、次の瞬間にはエーフィの眼前に迫り、そのままエーフィを突き飛ばす。

「このまま押し切る! リキッドブレード!」

「そうはさせないよ! マジカルシャイン!」

エーフィの額の珠が白く輝き、フローゼルの広げた掌から水が噴出する。

フローゼルの水の刃が振るわれ、エーフィを一の字に切り裂く。

直後、額の珠から純白の光が放出され、フローゼルを覆い尽くし、光に飲み込んだ。

「エーフィ!?」

「フローゼル……!」

純白の光の前に飲み込まれてフローゼルは吹き飛ばされるが、それでもまだ低く唸り、肩で息をつきながら何とか立ち上がる。

そして。

一方のエーフィの体がぐらりと傾き、そのまま地面へと倒れる。

目を回し、戦闘不能となってしまった。

「エーフィ……お疲れ様。休んでてね」

エーフィの方が被弾が多かったため、この結果は当然だろう。エーフィを労い、ボールへと戻す。

ハルが最後のボールを手に取るが、そこで。

「さて、ハル君。この試合、実はここまでオレの想定通りなんだよね」

ハルをまっすぐに見据え、スグリがそう告げる。

「えっ……?」

「大会の試合を見てて気づいた。ハル君の手持ちってさ、水タイプに弱いじゃん。ワルビルとヒノヤコマは水技が効果抜群、エーフィとルカリオにも等倍で一貫する上に、水タイプに対して効果抜群になる技を誰も覚えてないよね」

実際、その通りだ。ハルの手持ちの四匹の中で、電気技もしくは草技を覚えたポケモンはいない。

「だからオレが立てた作戦はこうだ。今回の軸はフローゼル。初手はオンバットに任せてエンジンを掛け、ルカリオ以外の三匹に効果抜群を取れる水タイプのフローゼルで一気に駆け抜ける。最後の一匹はほぼ間違いなくルカリオだから、メガルカリオをフローゼルと最後のポケモンの二匹掛かりで仕留める。ここまで順調、作戦通りなんだよ」

たしかにスグリの言う通りだ。ここまで、ハルはスグリのポケモンのスピードを生かしたバトル展開を捉えきれていない。

だが。

「……やっぱり、スグリ君はすごいね。常に僕の先を進んでる、そんな気がする」

だからといって。

「だから僕は、スグリ君に勝ちたいんだ。新しい力を得た今なら、スグリ君にだって追いつける。いや、追いついてみせる」

それは、決して諦める理由にはならない。

理由は単純。バトルはまだ終わっていないからだ。ハルにはまだ、ポケモンが残っている。

「これで最後だ。出てきて、ルカリオ!」

ハルの手にしたボールから、最後のポケモン、エースのルカリオが現れる。

「最後はやっぱり、ルカリオだよね。フローゼル、気をつけろ。今までの相手とは一味違うぞ」

フローゼルもダメージは決して小さくないが、闘志は充分。

スグリに呼応して唸り、相手となるルカリオを見据える。

「行くよッ! ルカリオ、ボーンラッシュ!」

「来い! フローゼル、リキッドブレード!」

ルカリオが掌から波導を生み出し、フローゼルが掌から水を噴き出す。

波導の槍を手にしたルカリオと、水の剣を手にしたフローゼルが、正面切って衝突する。

お互いの獲物が激突し、その力はほぼ互角。

しかし、

「……!」

その直後、ダメージの蓄積によるものか、フローゼルが僅かにふらつく。

「ルカリオ、発勁!」

その隙をハルが見逃すはずもない。手にした槍は形を変えて右手を覆う波導となり、ルカリオが掌をフローゼルへと叩きつける。

腹部に掌底を叩き込まれたフローゼルが吹き飛ばされる。重力に従って床に落ち、そのまま目を回して戦闘不能となった。

「ここまでか……フローゼル、よく頑張った。休んでな」

フローゼルをボールに戻したスグリは、即座にボールを手に取った。

どうやら、既に最後のポケモンは決まっているらしい。

ボールを突き出し、スグリの最後のポケモンが現れる。

「さあ、最後はお前だ! 出て来い、ジュプトル!」

やはりと言うべきか、スグリの選んだポケモンはジュプトル。

決勝の締めに相応しい、エース同士の対決だ。

「やっぱり、最後はジュプトルだったか……だけど、相手にとって不足はない。ルカリオ、絶対勝つよ!」

「ジュプトル、ハル君のルカリオはメガシンカが使える。メガシンカポケモンを倒せば、オレたちの士気も上がるってもんだぜ。本気で行くぞ」

お互いのトレーナーの言葉に応え、お互いのエースポケモンがフィールドに立ち、対峙する。

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