魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第56話 激闘の果て! 蒼と翠の交錯

ハルとルカリオ、スグリとジュプトル。

ライバル同士、そのエースポケモンが、バトルフィールドを挟んで対峙する。

「ルカリオ、発勁!」

「ジュプトル、燕返し!」

両者が同時に動いた。

ルカリオが右手に青い炎が如き波導を纏わせ、一気に距離を詰めていく。

ジュプトルも向かってくるルカリオを迎え撃つように、地を蹴って飛び出していく。

ルカリオが右手を突き出すが、ジュプトルは流れるようにその右手を躱すと、勢いそのままに腕を振り抜き、ルカリオを押し戻す。

「リーフブレード!」

さらにジュプトルは腕の葉を刃のように伸ばし、そのまま斬りかかってくる。

「っ、ルカリオ、波導弾!」

ルカリオは素早く立て直すと、右手を構えて掌から青い波導の念弾を放出する。

ジュプトルは腕の刃を振るって念弾を両断し、さらにもう一太刀でルカリオを狙うも、ルカリオはその間に大きくバックステップで距離を取り、反撃の体勢を構える。

「ルカリオ、サイコパンチ!」

「遅い遅い! ジュプトル、電光石火!」

ルカリオが拳に念力を纏わせる。

しかし動き出そうとしたその時には、既にジュプトルは目にも留まらぬ速度で距離を詰めており、ルカリオを突き飛ばす。

「くっ、さすがはスグリ君のエースポケモン……ルカリオ! 僕たちも行くよ!」

ハルの呼び声に、ルカリオは無言のまま頷く。

「っ! 来るか……!」

スグリの表情が、ほんの僅かに強張る。

右手を高く掲げ、ハルは思い切り叫ぶ。

 

「僕と君の、絆の力に応えて! ルカリオ、メガシンカだ!」

 

ハルの右腕のブレスレットに填め込まれたキーストーンが光を放ち、ルカリオのメガストーンと光を繋げる。

七色の光に包まれ、ルカリオの姿が変化していく。

波導の力とメガエネルギーが体内を駆け巡り、メガシンカを遂げたルカリオが天高く咆哮する。

「遂に来たか、メガルカリオ……! ジュプトル、メガシンカポケモンの強さはサオヒメジムでメガライボルトと戦ったお前なら理解してるよね。気をつけて戦うぞ」

他のものとは一線を画す能力、メガシンカ。その強力な力はハルだけでなく、アリスとのジム戦を経験しているスグリも分かっている。

「よしっ! ルカリオ、発勁!」

パシンッと手を叩き、青い波導をその右手に纏わせ、ルカリオが地を蹴って飛び出す。

「ジュプトル、躱してリーフブレード!」

突き出されるルカリオの右手を躱すと同時、ジュプトルの腕の葉が伸びる。

躱した勢いをそのままに腕の葉を振るうが、

「ルカリオ、右! ボーンラッシュで防いで!」

ルカリオの右手を纏う波導が形を変えて槍となる。

手にした槍を振り抜き、ジュプトルの振るう葉の刃を防いだ。

「波導弾!」

「もう一度リーフブレード!」

波導の槍が再び形を変え、今度は念弾となる。

放出された波導弾に対して再びジュプトルは伸ばした腕の葉を振るうが、メガシンカしたことで波導弾の威力が上がっている。

メガルカリオは特性“適応力”により、自分のタイプと同じタイプの技の威力を上げる力を持つのだ。

リーフブレードで応戦し、波導弾を防いだジュプトルだが、先程のように叩き斬ることができなかった。

「サイコパンチ!」

「躱して燕返し!」

念力を拳に纏わせるルカリオを、真っ向からジュプトルは迎え撃つ。

真っ直ぐに繰り出される強烈な拳の一撃を左腕を払って受け流し、剣を振るが如く振り抜いた右腕をルカリオへと叩きつける。

「発勁!」

だが燕返しを受けたルカリオの動きは止まらない。

その場に踏み止まって腕の一撃を耐え切り、爆発的に展開された波導を纏った掌底をジュプトルに叩きつけ、大きく吹き飛ばした。

「チッ、燕返し程度じゃ怯まないってか……! だったら……!」

スグリの表情から、いよいよ余裕がなくなっていく。

普段から挑発や冗談も交え、余裕たっぷりに戦うスグリが、ここまで必死に戦うのを見たのは初めてだった。

しかしそれでも、まだ秘策がある。

着地したジュプトルが、カッと目を見開く。

 

「ジュプトル! 草の誓いだ!」

 

ジュプトルが床に手を触れる。

その手が光を放ち、刹那、ルカリオの足元から風と共に無数の葉の竜巻が吹き上がった。

「なっ……!?」

スグリにしては極めて珍しい、単発の火力を重視した大技。

予想だにしない足元からの一撃に、なす術もなくルカリオは竜巻に巻き込まれ、宙に放り投げられる。

「リーフブレード!」

地を蹴り、ジュプトルが大きく跳躍する。

両腕の葉の刃を展開させつつルカリオへと一気に接近し、腕を振り抜き、二対の刃でルカリオを切り裂いた。

「ルカリオ! 大丈夫!?」

ルカリオが床へと撃墜される。効果今ひとつとはいえ、的確に急所を切り裂いた一撃だった。

「畳み掛けろ! ジュプトル、燕返し!」

さらにジュプトルは絶対に避けられない打撃を仕掛けてくる。

「っ! ルカリオ、ボーンラッシュ!」

立ち上がったルカリオの右手から波導が吹き出し、槍の形となる。

ジュプトルの四肢を使った流れるような連続攻撃を、槍を振り抜き、回し、なんとか凌ぎ切った。

「波導弾だ!」

燕返しが防がれるや否や、ジュプトルは即座にバックステップで距離を取る。

対してルカリオの掴んだ槍が形を変えて波導の念弾となり、ジュプトル目掛けて放出される。

「防ぐぞ! リーフブレード!」

波導弾もまた必中技。ジュプトルは腕の葉を伸ばし、波導弾を食い止める。

「ルカリオ、発勁!」

「ジュプトル、草の誓い!」

右手に波導を纏わせたルカリオが飛び出すのと同時、ジュプトルは床に手を着き、ルカリオの前進を遮る形で床から無数の葉を乗せた竜巻を柱のように放つ。

それでも足元から出てくると分かれば怖くはない。竜巻を躱しつつ、ルカリオは少しずつジュプトルとの距離を詰めていく。

「避けてくるなら……ジュプトル、躱してリーフブレード!」

振り下ろされるルカリオの右手を躱し、すぐさまジュプトルは腕の葉を刃のように伸ばし、ルカリオを斬りつける。

「サイコパンチ!」

だがそれに合わせ、ルカリオは念力を纏った左拳を裏拳のように放つ。

葉の刃と念力の拳が激突し、火花を起こして競り合うも、

「波導弾だ!」

一瞬の隙を突いたルカリオが青い波導の念弾を撃ち出し、攻撃直後のジュプトルを吹き飛ばした。

「ここで一気に決める! ルカリオ、発勁!」

ルカリオの翳した右手が、蒼炎が如き波導を展開する。

波導の力を携え、地を蹴ってフィールドを駆け抜ける。

「そっちがその気なら、こっちもだ! ジュプトル、草の誓い!」

対して。

ジュプトルの体が、鮮やかな翠のオーラに包まれる。

特性“新緑”。体力が少なくなった時に、草タイプの技の威力を上げる特性だ。

一点に集めた繁茂の力を、ジュプトルが大地へ送り込む。

次の瞬間、ルカリオの足元から遥かに規模を増した深碧の竜巻が吹き上がる。

風の柱に飲み込まれ、宙に放り出されるルカリオだが、

「ルカリオ! そのまま急降下だ!」

ハルは迷わなかった。パートナーを信じ、叫ぶ。ルカリオの猛撃は、まだ止められていない。

その瞳にライバルを見据え、落下の勢いさえ逆に利用し、蒼き流星が如く、ジュプトルを狙い急降下する。

「……っ!」

この瞬間。

ほんの一瞬、スグリは迷った。

確実に勝ちに行くなら、ここは回避の指示を出す場面。

しかし。

ここが正念場。そしてこのバトルは、ライバルとの雌雄を決する大舞台。

その最終局面において、相手が全力を振り絞り、渾身の一撃を仕掛けてきたのだ。

で、あれば。回避など、どうしてできようか。

こちらも、最大の一撃をぶつけるのみ。

「……ジュプトル! リーフブレード!」

そんな主の思いを感じ取ったのか、ジュプトルもニヤリと笑い、両腕の葉を伸ばす。

体内に漲る自然の力を溜め込み、翠の大刀が如く展開させ、その場でルカリオを迎え撃つ。

刹那。

 

蒼と翠が、激突した。

 

メガルカリオの波導の掌底と、ジュプトルの葉の大刀が、正面から鎬を削る。

一歩も譲らず競り合い、力は膨らみ、そして。

遂には、大爆発を起こす。

「ルカリオ!」

「ジュプトル!」

爆発と爆煙に巻き込まれ、二匹の姿は見えなくなる。

やがて少しずつ煙が晴れ、少しずつ視界が開けていく。

激闘を制したのは、どちらか。その答えは、すぐに明らかとなった。

「…………負けかぁ」

やり切った、しかしその中に悔しさを込めた声でそう呟いたのは、スグリだった。

片膝をつき、まだ何とか意識を保つルカリオの目の前で、ジュプトルは持てる力の全てを使い果たし、うつ伏せに倒れていた。

勝負の結果を見届け、バトルが終わったと分かると、ルカリオの体を光が包み、メガシンカが解ける。

そしてそれと同時に、ルカリオ、そしてハルも体から力が抜け、その場に座り込んでしまう。

「……………勝った……の……?」

集中が完全に切れ気が抜けてしまい、ぼーっとしたまま、まだ状況をはっきりと掴めていないハルだったが、

「ハルー! すっごーい! スグリ君に勝っちゃうなんて!」

駆け寄ってきたサヤナの言葉で、ようやく意識を戻す。

「勝った……? そうだ、勝った。勝ったんだ……! すごいよ、ルカリオ! 僕たち、スグリ君に勝ったんだよ……!」

何とか立ち上がるも、駆け寄る気力が残っていないので、ハルはふらつきながらもルカリオの元へと歩み寄る。

ルカリオに至ってはもはや立ち上がる力すら残っていないようだったが、それでもハルの方を振り返り、嬉しそうに小さく吠える。

「……ジュプトル、お疲れ。いつの間にかハル君に追い抜かれちゃったな。最後はオレのミスだ、ごめんな」

スグリがそう言ってジュプトルの頭を撫でると、ジュプトルは目を開き、悔しそうに唸るが、スグリのその言葉を否定するようにゆっくりと首を横に振る。

「悔しいよな。オレも一緒だ。でもまた、すぐに追い抜き返そうぜ」

ジュプトルをボールに戻して立ち上がると、スグリは座り込んだままのハルへと歩み寄る。

「……いやぁ、見事に負けちゃったよ。正直言って、負けるとは思ってなかった。ってか、オレに勝ってそんな嬉しい?」

「そりゃあそうだよ。僕にとってスグリ君はいつも先を行く存在だったし、スグリ君の強さはよく知ってる。そんな強いトレーナーに、やっと勝てたんだもの」

「ま、それもそうか。オレ強いし……負けちゃったけど」

スグリも負けた手前どこかいつもの調子が出ないようだが、

「だけど、次は勝つよ。正直、ハル君に負けたのは悔しい。めちゃくちゃ悔しい。だからこそ、これをバネにして、オレたちはこの先もっと強くなる。ハル君、その時にはまたバトルしようよ。今日のリベンジを果たすからね」

「うん。僕だって今日の結果だけに満足はしないよ。スグリ君が強くなるなら、僕だってもっと強くなる。こっちからもお願いするよ、またバトルしようね」

再戦を誓う、ハルとスグリ――

「……ってちょっと! 今回私だけ仲間はずれにされちゃったんだから、私とも約束だよ! 私ともまたバトルするの!」

「も、もちろんだよ。サヤナも、またバトルしようね」

――とサヤナ。

ともあれ、ハルは一日に二回もメガシンカを使い完全にクタクタなので、今日ハダレタウンを出るサヤナとスグリと再会を約束し、今日はポケモンセンターにもう一泊することにした。

明日になったら、次のジムリーダーが待つ街へと出発だ。

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