シュンインシティを目指し、ハルとサヤナは二人で道路を進んでいく。
「ねえ、ハル!」
ハルの隣を歩くサヤナがこちらを振り向き、口を開いた。
「ん、なに?」
「折角ポケモントレーナーになったんだからさ、自分の力で新しいポケモンを捕まえてみたくない?」
二人のバッグの中には、博士から貰った五個のモンスターボールがある。ポケモントレーナーはこのボールを使って、気に入ったポケモンを仲間にしていくのだ。
「そうだね。ポケモンジムに挑戦するなら、手持ちポケモンが一匹だけじゃ太刀打ちできないだろうし……」
「でしょ? そこでだよ」
サヤナはまるで何かとてもいいことを思い付いたかのように胸を張り、得意げに続け、
「ここは街と街を繋ぐ道路だけど、さっきから周りを見てると何種類かポケモンがいるんだよ。今後の練習のためにも、まずはここで一匹ポケモンを捕まえてみようよ!」
サヤナの言う通り辺りを見渡してみれば、確かにポケモンがいる。
木々からは鳥ポケモンのさえずりが聞こえるし、草むらは時折ガサガサと揺れ、小川にも水ポケモンの影が映る。
「たしかに、それいいね。気に入った野生のポケモンを探してみよっか」
「さんせーい! それじゃハルと違うポケモンを捕まえて見せ合いたいし、私はあっちの方を見てくるね! 捕まえたらまたここに集合だよ!」
そう言うが早いか、サヤナは猛スピードで駆け出して行った。
「ちょ、ちょっと、サヤナ……まぁいいか。僕もこの辺で探してみようかな」
ずっとサヤナのペースに振り回されている気がするが、気持ちを切り替え、ハルもポケモンを探し始める。
「さて、まずはどこから探そうか……」
とりあえず定石通り、ハルは草むらに入り込む。
しかし、ハルが一歩足を踏み入れたその瞬間。
ガサッ! と音がし、草むらの中から矢のように何かが飛び出してきた。
「うわっ!? な、なに!?」
びっくりして尻餅をついてしまうが、ポケモンが出てきたことは間違いない。座り込んだまま、ハルはポケモン図鑑を取り出す。
襲撃者が旋回して目の前に戻ってきた。赤い顔をした、小柄な鳥ポケモンだ。
『information
ヤヤコマ コマドリポケモン。
さえずり声が美しく人懐こいので
人気のあるポケモンだが縄張り荒らし
には容赦のない攻撃を仕掛ける。』
「ノーマル・飛行タイプのポケモンか……格闘タイプのリオルはちょっと不利だけど、頼んだよ!」
立ち上がり、ハルはリオルを繰り出す。このヤヤコマをゲットすることに決めた。
そして威嚇してもこの場から離れないハルとリオルを外敵だと認識したのか、ヤヤコマも今度こそ本気で突っ込んでくる。
「っ、リオル! こっちも電光石火だ!」
ヤヤコマの技が電光石火であることに気づき、ハルも同じ技を指示。リオルも素早く飛び出して、ヤヤコマを迎え撃つ。
「リオル、発勁!」
正面からぶつかり合い、お互いに競り合う中、リオルが右手に青い波導を纏わせ、右拳を突き出してヤヤコマを突き飛ばす。
「よし、いいよ! 続けて真空波!」
さらにリオルはその場で拳を振り抜き、真空の波を飛ばして追撃。
しかしヤヤコマも動きが早い。すぐに体勢を整え、羽ばたいて上昇し、真空波を躱す。
そのまま旋回し、ヤヤコマは嘴を突き出し、再び全速力で突っ込んできた。
「また来たか! リオル、電光石火!」
再びリオルも猛スピードの突撃を仕掛ける。二者は再び正面から激突する。
ここまでは先ほどと同じ。
しかし今度はリオルが押し戻された。電光石火に比べて、ダメージが大きい。
「えっ!? もしかして……技が違う?」
慌ててハルはポケモン図鑑を取り出し、ヤヤコマの技を調べる。
「ええっと……“疾風突き”……? 飛行タイプの先制技か!」
電光石火と挙動がよく似ていたが、どうやら違う技のようだ。
「なるほど、気をつけないと。リオル、頑張るぞ! 発勁!」
立ち上がったリオルは、右手に青い波導を纏わせて飛び出す。
対するヤヤコマは嘴を開いて無数の火の粉を吹き出すが、サヤナのアチャモの火の粉より威力は弱めだ。
右手を突き出して火の粉の中を突っ切り、リオルは波導を纏った右手をヤヤコマに叩きつけた。
強い衝撃を受けて、ヤヤコマが空中でふらつく。
「今だよリオル! 真空波!」
それを見逃さず、着地したリオルは右手を振り抜き、真空の波を飛ばす。
真空波がヤヤコマを捉え、地面へと叩き落とした。
「よし、これで……! いけっ!」
地面に落ちたヤヤコマを狙い、ハルはモンスターボールを投げる。
ヤヤコマに当たると、ボールはひとりでに開き、ヤヤコマがその中へと吸い込まれる。
「どうかな……来い……っ!」
ボールが地面に落ち、赤い光を点滅させながら左右に揺れる。
しばらく音を立てて揺れ続けるが、やがて一度だけカチッと音がし、揺れと点滅が止まった。
すなわち、
「……やった! ヤヤコマ、ゲット!」
初めてのポケモンゲット、無事成功。
「ヤヤコマ、これからよろしくね」
ポケモントレーナーになったということを改めて自覚し、ハルは待ち合わせの場所へと戻る。
ハルがスタート地点に戻り、しばらく経った後。
「ハルー! お待たせー!」
少し離れた木陰から、猛スピードでサヤナが戻ってきた。リオルの電光石火といい勝負かもしれない。
「ごめんねー! 最初に狙ってたポケモンに逃げられちゃって、大変だったんだよー! でも、ちゃんとかわいいポケモンを捕まえたよ!」
悔しがるかと思えばすぐににんまりと笑みを浮かべるサヤナ。感情が忙しい。
「よかったね。サヤナ、どんなポケモン捕まえたの?」
「えっとね、この子! 出ておいで、コフキムシ!」
サヤナが出したのは、首にフサフサの体毛を持つ黒い芋虫のようなポケモンだった。
『information
コフキムシ 粉吹きポケモン
体の周りの粉が体温を調節するため
高い適応能力を持つ。外敵に対して
は毒の粉を撒き散らして反撃する。』
コフキムシという、見た目通りに虫タイプのポケモンのようだ。
「ねね、ハルのはどんなポケモン? かわいい?」
「僕のはね、こんなポケモンだよ。かわいいけど結構血の気が多いのかも」
ハルもボールを取り出し、先ほど捕まえたばかりのヤヤコマを出す。
「わぁ、かわいいじゃん! だけど、私が最初に狙ってた鳥ポケモンとは違うね」
そう言いながらサヤナはポケモン図鑑を取り出す。
画面には、ツツケラという鳥ポケモンが表示されていた。
「ま、このコフキムシもかわいいから、全然問題ないね」
にひひー、とサヤナは笑い、コフキムシの頭を撫で、ボールへと戻す。
「さ、ハル! ポケモンも捕まえたし、シュンインシティまでレッツゴー!」
「わ、だから、待ってってば!」
再びサヤナが勢いよく駆け出し、慌ててハルもヤヤコマを戻すと、急いでその後を追う。
初めてあとがきを書いてみます。こういうあとがきって、読者の方々的にはあった方が面白いのですかね?定期的にあとがきを続けるかどうかは分かりませんが、ご意見いただけると助かります。あった方がいいという意見が多ければ、毎回書いていきたいと思います。今回はハルとサヤナの二人とも、新しいポケモンをゲットしましたね。今回の話でお分かりかと思いますが、マデル地方にはさまざまな地方のポケモンが幅広く生息しています。ちなみに二匹とも六世代のポケモンなのは特に深い意味はありません。次回は、いよいよシュンインシティに到着です。ジムにいきなり挑戦するかどうかは、次回をお楽しみに。