魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第59話 交わらぬ者

「えっ……?」

ハルに対して突如告げられた、パラレルと名乗る少年からのバトル。

「お前、パイモンが注目するほどのトレーナーだそうじゃないか。そんなお前の実力、見せてもらう。そしてお前に勝ち、俺はもっと強くなる。さあ、一対一のバトルだ。逃がしはしないぞ」

まっすぐにハルを見据え、パラレルはモンスターボールを取り出し、ハルへと突きつける。

「……分かった、相手になるよ。勝負だ」

今までパラレルの剣幕に怯んでいたハルだが、ハルも覚悟を決め、モンスターボールを手に取る。

「ミオ、アリスさん、そっちの大男の相手をお願いします。こいつは僕をご指名みたいですから」

「私たちなら心配ご無用よ、任せておいて。ミオ君、一緒に戦いましょう」

「ええ。僕たち二人で、この大男を倒しましょお」

アリスとミオもボールを手に取り、魔神卿アモンと対峙する。

「ほっほう、この私に挑むとは勇敢なこと。いいでしょう、元より私もそのつもり。しばらくの間、相手取って差し上げましょう」

アモンもボールを取り出し、アリスとミオの二人組を迎え撃つ。

 

 

 

「一対一なら君だ。出てきて、ルカリオ!」

「我が力を示せ、ガバイト!」

 

ハルのポケモン、ルカリオに対し、パラレルのポケモンは、サメのようなヒレを持つ青い小型の恐竜のようなポケモン。

 

『information

 ガバイト 洞穴ポケモン

 宝石の原石を巣穴に集める習性を

 持つ。宝石を狙う外敵に対しては

 鋭い爪や牙で容赦なく切り裂く。』

 

見た目通りドラゴンタイプを持つ他、地面タイプも併せ持っている。

(ドラゴンと地面タイプか……ルカリオは地面技が弱点だから、気をつけて戦わないと)

そこまで大柄なポケモンではないが、竜の血を引く立派なドラゴンポケモン。警戒するに越したことはない。

パラレルはルカリオをじっと眺め、

「なるほど。そいつが、メガシンカを使うルカリオか」

「……! そうか、ロノウェが大会の会場にいたから、僕がメガシンカを使えることはお前たちも知っているんだな」

「その通り。さあ、メガシンカを使え。全力で俺と戦ってもらうぞ」

いきなりメガシンカを要求するパラレル。だが、ハルとて出し惜しみするつもりはない。

「こっちだってそのつもりさ。ルカリオ、いきなりだけど、頼むよ!」

ハルの呼びかけにルカリオは頷き、腕輪をつけた右腕を構える。

「ルカリオ、メガシンカ!」

ハルのキーストーンとルカリオのメガストーンから放たれる光の束が一つに繋がり、ルカリオを包む。

光の中で、ルカリオは姿を変え、メガシンカを遂げる。

「ほう、これがメガルカリオ……ガバイト、メガシンカポケモンをも薙ぎ倒し、さらなる強さを得るんだ。始めるぞ」

そしてメガシンカを遂げたルカリオを見ても全く表情を変えず、パラレルはガバイトへと指示を出す。

「ガバイト! まずはドラゴンクロー!」

咆哮と共にガバイトが駆け出す。

鋭い爪に龍の力を込め、ガバイトは地を蹴って飛び出し、蒼く輝く爪を振るう。

「ルカリオ、サイコパンチ!」

対するルカリオは拳に念力を纏わせ、ガバイトへ拳を突き出す。

ガバイトの龍爪と激突し、火花を起こして激しく競り合う。

「っ、ガバイト、離れろ!」

力技では勝てないと見たのか、ガバイトは大きく後退し、素早く後ろへ飛び退くと、

「穴を掘る!」

建物内のはずだが、鋭い爪で床をたやすく叩き割り、ガバイトは地中へ潜る。ここが最下層なのか、潜行に影響はないようだ。

だがハルが今まで見てきたものとは違う。ガバイトは床下へと完全に姿を隠したわけではなく、背ビレを出したまま、海原を泳ぐサメのように一直線にルカリオへと突っ込んでくるのだ。

「見えてるなら、ルカリオ、波導弾だ!」

背ビレだけを出して迫り来るガバイトに対し、ルカリオは右手を突き出し、掌から青い波導の念弾を放出する。

必中の波導の念弾は吸い込まれるように背ビレへと直撃する。

が、しかし、

「無駄だ」

パラレルが告げると同時、ガバイトの背ビレはまるで剣かのように波導弾を両断してしまった。

「なっ……!?」

直後、ガバイトが地中から飛び出し襲撃、ルカリオを突き飛ばす。

「俺のガバイトの背ビレは頑丈で、さらに鋭い。遠距離から防ごうとしたところで無駄だぞ」

パラレルの言葉に続き、ガバイトも両腕を振り上げて甲高く吼える。

「なるほど……ルカリオ、立て直して。ここから反撃だよ! 発勁だ!」

体勢を整え、右手に燃える炎が如き青い波導を纏わせ、ルカリオが地を蹴って飛び出す。

「ガバイト、ドラゴンクロー!」

対するガバイトも鋭い爪に龍の力を纏わせ、ルカリオを迎え撃つ。

正面きっての激突ではさすがにルカリオに分があるようで、徐々にルカリオの波導の掌底がガバイトを押していく。

(強いけど、手応えは充分ある。魔神卿レベルほど強くはない。気を抜かなければ、勝てる相手のはず!)

「ルカリオ、一気に押し切って!」

「っ、ガバイト! 引き下がれ!」

波導を纏った右手をさらに押し出そうとするルカリオだが、不利だと悟ったガバイトは瞬時に飛びのき、体勢を立て直す。

「サイコパンチ!」

「押し返せ。炎の牙!」

拳に念力を込め、さらに殴りかかっていくルカリオに対し、ガバイトの牙が炎を灯す。

突き出されるルカリオの右ストレートを回避するが早いか、その右腕に噛み付いた。

牙を食い込ませた瞬間、炎が膨れ上がって爆発を起こし、爆煙と共にルカリオを吹き飛ばした。

「っ、ルカリオ! 大丈夫!?」

吹き飛ばされたルカリオはすぐさま立ち上がり、再び構えを取るが、

「……あれ?」

同じく爆発で吹き飛んだはずのガバイトが、どこにもいない。

「地中か! それならルカリオ、奴の位置を探るんだ!」

ルカリオは波導の力でガバイトの出す波導を探り、姿を消したガバイトを探す。

しかし、

「遅いな。ガバイト、行け!」

その瞬間には既にガバイトがルカリオの足元から飛び出してくる。強襲を仕掛け、ルカリオを宙へと打ち上げた。

「っ、やっぱり……!」

「反応が遅すぎる。ポケモンは強いが、トレーナーはまだまだだな。ポケモンの高い実力を扱いきれていない」

そうパラレルは吐き捨て、

「ガバイト、炎の牙!」

再び牙に炎を灯したガバイトが、ルカリオを追って跳躍する。

「くそっ……好き勝手させない! ルカリオ、ボーンラッシュ!」

宙を舞うルカリオが咄嗟に波導の形を変え、手にした槍を突き出す。

ガバイトの牙はルカリオを捉えられず、やむなく波導の槍へと噛み付く。爆発を起こすが、爆炎も爆風もルカリオには届かず、

「僕だって戦えるんだ! ルカリオ、発勁!」

黒煙の中へとルカリオは切り込み、波導を纏った右手を振り下ろすが、既にそこにはガバイトはいない。

「隠れたか……ルカリオ、今度こそ!」

ルカリオは目を閉じ、波導を感知して再びガバイトの位置を探る。

「遅いと言っている! ガバイト、行け!」

次の瞬間、ルカリオの背後からガバイトが飛び出す。

鋭い爪の切っ先を、ルカリオへ突き立てる。

しかし。

「……来た! ルカリオ、発勁!」

ルカリオが目を見開き、背後へ波導を纏った右手を思い切り突き出す。

襲撃を仕掛けたガバイトの腹部に右手を叩き込み、逆に吹き飛ばした。

「なにっ!? ガバイト、一旦戻ってこい。立て直すぞ」

起き上がったガバイトは素早く地中に潜り、パラレルの元へと戻る。

「今のタイミングなら穴を掘るを使ってくる気がしてたよ。だからすぐにルカリオにガバイトの位置を探らせたんだ。さっきはやられたけど、同じ手は効かないよ」

「ほう、少しはやれるようだな。だが」

表情を変えることなく、パラレルはハルに対して言い放つ。

「先ほどの発言を撤回するまでには至らないな。メガルカリオのその潜在能力を、お前は引き出しきれていない。つまり、お前は俺には勝てない。お前にはこのガバイトを倒すことはできない。もし倒せたとしても、ルカリオも倒れているだろうよ。相討ちが限界だろうな」

「なんだって……? そんなの、やってみなきゃ分からないだろ」

「俺には分かるのさ。結果はすぐに明らかになる。さあ、続けるぞ」

お互いの敵をその瞳に映し、バトルが再開される。

「絶対に勝ってやる! ルカリオ、ボーンラッシュ!」

「ガバイト、ドラゴンクロー!」

ルカリオの右手を纏う波導が槍へと形を変える。

竜の力を込めた輝く爪を振るうガバイトの斬撃を回避し、波導の槍を操る。

「アイアンヘッドだ!」

対するガバイトは頭の皮膚を鋼の如く硬化させる。

回避を捨て、連続で繰り出される槍の攻撃を硬い頭で耐え抜き、

「炎の牙!」

連続攻撃が止まるや否やすぐさま飛び出し、炎を灯した牙を剥く。

ルカリオに牙が突き刺さると同時、炎が爆発し、ガバイトもろともルカリオを吹き飛ばす。

「攻撃の手を緩めるな! 穴を掘る!」

さらにガバイトは地中に潜り、背ビレだけを出しながら一直線にルカリオへ向かっていく。

「ルカリオ、発勁!」

地中から飛び出し襲撃するガバイトに対し、ルカリオは青い波導を纏った右手を振り下ろす。

二者の攻撃は一歩も譲らず、お互いに競り合うが、

「今だ! 波導弾!」

その直後、ルカリオの右手を覆う波導が念弾として放出され、ガバイトを吹き飛ばした。

「ルカリオ! もう一度発勁!」

吹き飛ぶガバイトを追い、ルカリオは再び右手に波導を纏わせ、勢いよく突っ込んでいく。

「穴を掘る!」

対するガバイトは着地と同時に穴を掘って地中に潜り、身を隠す。

発勁は命中せず、その直後、ルカリオの背後からガバイトが飛び出し、そのまま襲い掛かる。

「ルカリオ、躱してサイコパンチ!」

ガバイトの襲撃を何とか躱すと、ルカリオは拳に念力を込め、ガバイトへと殴りかかるが、

「炎の牙!」

牙に炎を灯したガバイトは念力を纏ったルカリオの拳に噛み付く。

爆発が生じ、ルカリオは吹き飛ばされるが、念力の拳を浴びているガバイトもノーダメージとはいかない。

それでもまだ両者共に立ち上がり、戦闘の構えは崩さない。

「そろそろ決めるぞ。ガバイト、ドラゴンクロー!」

ガバイトが吼え、両手の爪に龍の力を纏う。

青く輝く龍爪を構え、ルカリオへ真っ直ぐに突撃する。

「そっちがその気なら、こっちだって! ルカリオ、発勁だ!」

ルカリオも右手に爆発的な波導を纏わせ、ガバイトを迎え撃つべく突っ込んでいく。

ガバイトの龍爪と、ルカリオの波導の右手が正面から激突した。

「……覚悟! 炎の牙!」

一歩も引かず競り合う中、ガバイトが牙に炎を纏わせ、ルカリオの腹部へと噛み付いた。

それによって爪に掛かる力が僅かに弱まり、均衡が崩れ、ルカリオの右手がガバイトへと炸裂。

しかし次の瞬間、牙に灯る炎が爆発し、ルカリオとガバイトは同時に吹き飛ばされた。

「っ、ルカリオ!」

「……ここまでのようだな」

叫ぶハルとは対照的に、パラレルは結果が分かっているかのように呟く。

吹き飛ばされて床に倒れるルカリオの体が光に包まれ、メガシンカ前の元の姿に戻る。つまり、戦闘不能を意味する。

一方で、ガバイトの方も目を回してうつ伏せに倒れ伏し、戦闘不能となっていた。

つまりこの勝負は、引き分けだ。

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