魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第61話 獄炎の七人目

「ルカリオ、よく頑張ったね。お疲れ様」

「ガバイト、戻って休め」

バトルを終えたハルとパラレルは、両者のポケモンをボールへと戻し、パラレルがハルの方へと向き直る。

「なるほど、後半から実力を発揮してきたか。そのルカリオも思っていたよりは強いようだな」

だが、とパラレルは続け

「バトル中にも言った通りだ。お前はまだルカリオの力を引き出せていない。言うなればルカリオの力に頼りきっている。その状態では、俺たちゴエティアに打ち勝つことは到底不可能だろうな」

「……」

ハルは言い返すことができなかった。パラレルの言葉には、ただの煽り文句として聞き流すことのできない妙な重みを感じるのだ。

「まぁ、次に相見える時を楽しみにするとしよう」

それだけ告げ、パラレルは追撃を仕掛けてくることもなく引き下がる。

 

 

 

ピピッ、と。

アモンの煌びやかな服に仕込まれた発信機が、小さく音を鳴らす。

「おや」

それを聞いたアモンが、横でハルと戦っているパラレルの試合を横目で確認する。

ちょうど、ルカリオとガバイトが相討ちでバトルを終えたところのようだ。

「そろそろ頃合いですかな。思いの外早かったですが」

そう呟き、アモンはモンスターボールを取り出す。

「お二人さま。せっかくのバトルの最中ですが、こちらの準備が整ったようですので、ここで打ち切らせていただきますぞ。ローブシン、戻りなされ」

アリスとミオにそれだけ言ってアモンはローブシンをボールに戻し、唐突にバトルを打ち切ってしまう。

「何を言っているのかしら。あんたたち二人とも、ここで私に捕まってもらうのよ。勝手にバトルを中止して逃げるなんて、そんなことができると本気で思っているのかしら」

「ええ、できますとも」

アリスに対し、あまりにもあっさりとアモンは言い返す。

「はぁ?」

「なぜなら、ここにはもう一人、魔神卿がおりますからな」

そうアモンが告げた、次の瞬間。

 

「ジヘッド! ドラゴンダイブ!」

 

ここにいる誰のものでもない男の声が響き、その刹那、すぐ横の壁が爆発と共に吹き飛ばされ、爆煙の中から黒いポケモンが襲い掛かった。

そのポケモンはまずライボルトに襲い掛かり、激突して壁へと叩きつけると、

「ラスターカノン!」

すぐさま二本の銀色のレーザーを放ち、キルリアを吹き飛ばす。

そして襲撃者が姿を見せる。その黒いポケモンは、二つの頭を持っていた。

 

『information

 ジヘッド 乱暴ポケモン

 二つの頭は仲が悪く常に餌を

 巡って争っている。最終的に争い

 に負けた方が進化時に脳を失う。』

 

「誰!」

その場にいる者の注目を集める中、壊れた壁から男が現れる。

燃える灼熱の炎が如き真っ赤な短髪と瞳。その眼光は猛獣、もしくは悪魔のように鋭く、両耳にリングのピアスをつけている。

服も黒みがかった赤色のスーツ系の服装で、とにかく赤色に身を包んだ男だ。

その男はアリスたち三人には目もくれず、

「こっちの仕事は終わったぞ、あとは撤収するだけだ」

アモンにそう告げる。

「お疲れ様でした。全て破壊できましたかな」

「お前にもらったリストに書いてあったやつは全部ぶっ壊した。破壊漏れがあったらお前の責任だからな。出てこいメタング」

「心配ご無用ですぞ。それでは帰りましょうか。出てきなさい、トロピウス」

赤い男はメタングを、アモンは首元に果物を生やした飛龍のようなポケモンを出す。

 

『information

 トロピウス フルーツポケモン

 首元の果物は甘くて美味しく南国

 では子供たちのおやつとなる。大きな

 葉を翼のように羽ばたかせ空を飛ぶ。』

 

赤い男のメタングは恐らくパイモンの連れていた個体だろう。アモンの口ぶりからしても、この男は魔神卿で間違いない。

そしてアモンのトロピウスだが、こちらもこちらで通常種よりも大柄だ。三メートルはあるだろうか。

「待ちなさい! 逃すわけ――」

「黙ってろ。俺様が喋る」

アリスの言葉を遮り、赤い男が口を開く。

「俺様はベリアル、魔神卿の一人だ。今回はアモンがいる手前、全員見逃してやるが、次はないと思えよ」

やはりこの男も魔神卿。

パイモン、ダンタリオン、ヴィネー、ロノウェ、アスタロト、アモン、そしてベリアル。ハルはこれで、魔神卿全員と遭遇したことになる。

「俺様はゴエティアの中でも直接戦闘専門、まどろっこしいことは嫌いでな。組織の邪魔になるようなやつは全員ぶっ殺して解決するような悪党だ。無様な死体になりたくなけりゃ、今後ゴエティアに楯突くような真似はやめておくんだな。それじゃ撤収だ。メタング、破壊光線!」

ベリアルは一方的に喋り続け、メタングが上を向いて極太のレーザーをぶっ放す。

天井に穴を開け、ベリアルはメタングに飛び乗り、アモンとパラレルはトロピウスの背中に乗る。

ハルたちが呆気にとられている間に、ゴエティアの三人は穴を開けた天井からそのまま飛び去っていってしまった。

 

 

 

しばらくして警察が到着し、拠点を最奥までくまなく捜査したが、成果はほとんど得られなかったそうだ。

というのも、ゴエティアに関する資料や研究の痕跡は全て木っ端微塵に破壊されてしまっていたのだ。

先ほどのアモンとベリアルのやり取りから察するに、アモンとパラレルが戦っている間、裏でベリアルが壊して回っていたのだろう。

その後、拠点から出たハルたちはイチイと合流し、ポケモンセンターへと戻ってきていた。

「ごめんね、ハル君、ミオ君。面倒な事件に巻き込んでしまって」

「いえ、参加させてほしいとお願いしたのは僕たちの方ですから」

「これからも何か力になれることがあれば、お手伝いしますよぅ」

成果は何もなかったが、ひとまずゴエティアの拠点は無力化することができた。

ちなみに、外で待機していたイチイだが、飛び去っていくベリアルたちをはっきり見ていたらしい。

「ゴエティアの者たちが脱出して来たのは見えたのですが……すみません、逃してしまいました。思いの外スピードが速く、私のポケモンでは追いつけず……」

「いいのよ。あいつらを一人で追いかける方がよっぽど危険だわ。イチイも、せっかく来てくれたのに何もさせられなくてごめんね」

さて、とアリスは続け、

「ハル君はこれからカタカゲシティよね。ミオ君はこれまで通りの自由旅かしら? 二人とも、応援してるわ。ここから先も頑張ってね」

「カタカゲシティですか……あそこのジムリーダーは少し癖のある方ですが、ハル君ならきっと大丈夫。頑張ってくださいな」

「はい。ありがとうございます!」

「また会いましょお。イチイさんのジムにも、またチャレンジに行きますねぇ」

別れを告げ、ジムリーダーの二人は自分たちの街へと帰っていった。

そして、

「それじゃハル君も、ここでお別れだねぇ。次に会うときは、またバトルしようねぇ」

「うん。次にやるときも、負けないからね」

ミオも、次の街へと旅立っていく。

それを見届け、ハルも歩き出す。次なる目的地は、カタカゲシティだ。

 

 

 

「そーいや」

マデル地方某所、上空。

メタングの背に座り、ベリアルがアモンの方を振り向く。

「結局聞いてなかったんだが、お前、何のために俺をあそこに呼んだんだ。俺しか呼ばれてなかったのも気になるし、説明しろよ」

「あぁ、そうでしたな」

思い出したかのようにアモンはそう返すと、

「とはいえ、あなただけを呼んだことには大した理由はないのですがな。パイモンには報告済、ロノとアスは先の大会乱入の後始末に追われていますし、ヴィネーはオフで連絡が取れず。ダンはまた何か計画しているようでそちらに注力していましたので、時間の空いていたあなたを呼んだ、そんなところでしょうかな」

「そーかい。んで? いい加減に本題に入れ。俺を呼んだ目的は何だったんだ」

苛立ちを隠そうともしないベリアルに対し、アモンは特に口調を変えることなく、

「ほほほ、そう焦りなさるな。では、話していきましょうか。実は、面白いものを手に入れまして」

懐から、小さなメモリを取り出す。

「これなんですがな。この中には、ゴエティアの戦力を飛躍的に増大させる可能性を込めたデータが入っているのです。ベリアル、あなた、アゾット王国はご存知ですかな?」

「アゾット……? 知らねえな、どこの国だ」

「カロス地方の近くに位置する王国ですぞ。神秘科学技術の発達した、科学力に優れた国ですな」

「んで? それがどうしたんだよ」

疑問を浮かべるベリアルに、さらにアモンは続ける。

「このメモリの中には、アゾット王国でかつて使われたある“禁術”のデータが記録されているのです。厳重なロックと暗号化が掛けられていましたが、既に解読の突破口は掴んでおりますぞ」

「禁術だぁ? そんなに大それたもんなのかよ」

「完全に解読してみなければ分かりませんが、ゴエティアの戦力を底上げする大きな可能性を秘めている、それだけの価値がある。少なくとも私はそう思いますな。このデータの正体は……」

アモンはそこで一拍置き、

 

「“アゾット・レポート”。キーストーンなしでメガシンカを人工的に発生させる、アゾット王国の禁忌とされた技術、“メガウェーブ”についての記録です」

 

「なに? 人工メガシンカだと!?」

気怠げだったベリアルの表情が、一瞬にして驚愕へと変化する。

「間違いありません。これを解読し、再現すれば、人工的にいくらでもメガシンカポケモンを量産できる。研究してみる価値はありそうではないですかな?」

「ハッ、そいつぁ面白えな。キーストーンやメガストーンを集める必要さえなくなるってことか。そりゃあいい、解析を心待ちにしてるぜ」

「ええ。既に解読の突破口は開けております故、楽しみに待っていてくだされ」

不敵な笑みを浮かべ、魔神卿たちは空を飛び去っていく。

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