魔王と救世の絆   作:インク切れ

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シュンインシティ編――経験
第4話 花の街シュンインシティ


最初に訪れた街、シュンインシティ。

道路はアスファルトで舗装されており、家は木造が多い。

また、街のそこかしこに花壇が用意され、街全体が花に包まれているような印象を受ける。

ひとたび息を吸えば、甘く優しい花の香りが心を癒してくれる。

そして、街の中心に位置するのが大きな花屋。この街の花は、マデル地方の名産品の一つとも言われている。が、

「え? あの花屋さんがポケモンジムなの?」

「うん。タウンマップによると、そうみたいだよ」

ポケモンセンターのロビーで、二人はアルス・フォンのマップアプリを開きながら街のパンフレットの地図と場所を照らし合わせている。どちらの地図も花屋をジムと指しているので、どうやら間違いなさそうだ。

「ま、いっか。私、早速ジム戦に挑戦してくるね!」

「え、もう行くの? 僕はまだちょっと自信ないんだけど……」

「私も勝てるかどうか分かんないけど、ものは試しってね! もしかしたら、もしかするかもしれないじゃん?」

サヤナはこう言うが、ハルとしては自分はまだ間違いなく経験不足だ。シュンインシティまでの道中で何戦かしたものの、対戦相手もまだ新人ばかり。ノーマルタイプを使うトレーナーが多かったため格闘タイプのリオルを主軸に勝ってこれたが、新人を相手にギリギリの勝負をしているようでは恐らくジムリーダーには勝てないだろう。

「うーん、やっぱり僕はまだちょっと自信ないし、もう少し特訓してから行くよ」

「分かった! その代わり、先にジムバッジを貰って自慢しちゃうからねー?」

にひひー、とサヤナは笑い、

「それじゃ、行ってくるね!」

「うん、頑張ってね」

元気よく立ち上がり、ポケモンセンターを出て行くサヤナ。

それを見送り、

「よしっ……と。僕も特訓しなきゃ」

パンフレットによれば、マデル地方のポケモンセンターには地下にバトルフィールドがいくつか用意されており、そこで毎日ポケモントレーナーが交流や特訓をしているとのこと。

より多くの経験を積むため、ハルはポケモンセンターの地下、交流場へと向かう。

 

 

 

勝率は悪くはないが、いいとも言えない。勝ったり負けたりを繰り返している。

「うーん、難しい……でもちょっとずつコツが掴めてきたぞ」

何戦か終え、ハルが少しずつバトルに慣れてきた、そんな時。

「あっれー? 君見ない顔だよね、この街に来たばっか?」

唐突に、後ろから声を掛けられた。

ハルが後ろを振り向くと、そこにいたのは背の高めの少年だった。短めで鮮やかな青髪に、赤いシャツの上から黒いパーカーを羽織っている。全体的に身軽そうな格好だ。

「え? うん、そうだけど……」

「そっかぁ。いやぁ、丁度オレも昨日この街に着いてさ。ずっとここでバトってたらこの辺りの人の名前と顔覚えたし覚えられちゃったんだよね。せっかくだから君の名前と顔も覚えたくてさ。あぁそうだ、オレの名前はスグリ。よろしく」

「あ、うん。僕はハルだよ、よろしくね」

かなり饒舌なその少年はスグリと名乗り、ハルに近づく。

「見た感じトレーナー歴はまだ浅そうに見えるけど、どれくらい? ってか多分オレと同年齢だよね? いくつ? あとどっから来たの?」

次々と質問攻めにあうハル。相手が女の子でもこんな感じなんだろうか、と余計なことを考えながらも、

「えっと、14歳だよ。別の地方から昨日引っ越してきてそのままポケモントレーナーになったばっかりで、ハツヒタウンからここに来たんだ。明日ジムに挑戦してみようかなって」

「おっ、やっぱり歳一緒じゃん。実はオレも一週間前にトレーナーになったばっかなんだよね。オレはカザハナシティ……って言っても引っ越してきたなら分かんないか、地図でいうとこの辺りから来たんだ」

そう言いながらスグリはアルス・フォンを取り出し、地図を開く。ハツヒタウンからシュンインシティよりは距離があるが、それでもここから隣の街だ。

「んで、そこのジムリーダーを倒して、今日ここに来たってわけ」

さらっと。

あまりにもあっさりとスグリは流したが、

「……えっ!? スグリ君、もうジムリーダーに勝ってるの!?」

「いやぁ、まぁね。すごいっしょ?」

驚くハルを見て自慢げにスグリは笑うと、ベルトを捻り、モンスターボールを取り出す。

「なら……」

「さぁて。ここで会ったのも何かの縁だし、一戦やってかない? ハル君、ポケモンは何匹?」

まさにハルが言おうとしてたことを先に言ってくれた。

相手となるスグリは新人とはいえジムリーダーを倒している格上だが、相手にとって不足はない。

「えっと、二匹だよ」

自分のポケモンを数え、そう返す。

「おっけー。それじゃ、二対二のバトルにしよっか。それでいい?」

「うん、大丈夫だよ。それじゃ、始めよう」

 

 

 

そんなこんなで、スグリとのバトルが始まった。

「よっしゃ。じゃあまずはオレから。出て来い、ブイゼル!」

まずスグリが繰り出したのは、オレンジ色のイタチのようなポケモン。首の周りには浮き袋のような輪っかがあり、尻尾は二股に分かれている。

 

『information

 ブイゼル 海イタチポケモン

 二本の尻尾をスクリューのように

 回転させて水中を泳ぐ。地上に出る

 時は首の浮き袋を膨らませるのだ。』

 

ブイゼルという、水タイプのポケモンのようだ。

「それじゃ僕は……出て来て、ヤヤコマ!」

対するハルの初手は、まずはヤヤコマだ。

「さあ、早速始めるよ。ブイゼル、ソニックブーム!」

ブイゼルが動き出す。

挨拶がわりに二本の尻尾を振り抜き、衝撃波を飛ばす。ノーマル技だがなかなか痛い。

「っ、いきなり速い……! ヤヤコマ、反撃だよ! エアカッター!」

ヤヤコマも負けじと力強く羽ばたき、風の刃を飛ばす。

刃がブイゼルを切り裂くが、痛そうな素振りは見せない。

「ならヤヤコマ、疾風突き!」

「へえ、なかなかやるじゃん。ブイゼル、アクアジェット!」

翼を広げたヤヤコマが嘴を突き出し、滑空しながら高速でブイゼルへ突撃する。

だが。

それよりも速く、瞬時に水を纏ったブイゼルがヤヤコマをも上回る猛スピードで飛び出し、ヤヤコマを突き飛ばした。

「えっ……!? 疾風突きは先制技なのに……!」

「残念、アクアジェットも先制技なのさ。先制攻撃技は同じタイミングで使えば、より素早いポケモンの攻撃の方が先にヒットする。ハル君のヤヤコマなかなか動けるけど、オレのスピード自慢のポケモン達には敵わないね」

つまり、スグリのブイゼルはハルのヤヤコマよりも素早いということになる。

「くっ……ヤヤコマ、電光石火!」

「遅い遅い、もう一度アクアジェット!」

再び全速力で突っ込むヤヤコマだが、やはりブイゼルのスピードには勝てず、再び攻撃を受けてしまう。

「だったら遠くから……! ヤヤコマ、火の粉だ!」

何とか立て直したヤヤコマは素早く距離を取り、口から無数の火の粉を吐き出すが、

「ブイゼルは水タイプだよ? 炎技なんか怖くないって! 水の波動だ!」

ブイゼルが広げた掌に、水の力が宿る。

集めた水の力を球体にしてヤヤコマへと撃ち出し、火の粉を一蹴、さらにその奥のヤヤコマへと水弾を直撃させた。

「くぅ……ヤヤコマ、エアカッター!」

「とどめ! ブイゼル、瓦割り!」

水の波動の直撃弾を受けても、何とか耐えきったヤヤコマ。

だがその直後、地を蹴って一気にヤヤコマの頭上へと跳躍したブイゼルが、間髪入れずに手刀を振り下ろす。

「ああっ、ヤヤコマ!?」

瓦割りの直撃を受けたヤヤコマが空中から叩き落とされ、地面に激突する。

ブイゼルの連続攻撃に耐え切れず、目を回して戦闘不能となってしまった。

「ありがとう、ヤヤコマ。休んでて」

倒れたヤヤコマをボールへと戻す。最初にエアカッターを一発当てたが、それ以降は大したダメージを与えられなかった。

スグリというこの少年、ここで戦ったトレーナー達と比べて明らかに強い。

「よし……それじゃあ頼んだよ、リオル!」

ハルの二匹目はもちろんリオル。

「へえー、リオル? 珍しいポケモン連れてるじゃん。それじゃあその実力、お手並み拝見っと……ブイゼル、アクアジェット!」

「リオルのスピードなら! リオル、真空波だ!」

ブイゼルが体に水を纏うのと、リオルが拳を振り抜いたのはほぼ同時だった。

だがその直後、一瞬早く真空波がブイゼルを捉える。

「へえ、リオルの方が速いのか! だったらブイゼル、水の波動!」

しかしその程度ではブイゼルはまだ倒れない。

すぐさま掌に水の力を集めて水弾を作り上げ、リオルへと放つ。

「リオル、躱して発勁!」

右手に青い波導を纏わせ、リオルも攻撃を仕掛ける。

ブイゼルとの距離を詰め、水弾を跳躍して躱すと、波導を纏った右拳をブイゼルへと叩きつけた。

「やべっ……ブイゼル、ソニックブーム!」

「リオル、電光石火!」

吹き飛ばされながらもブイゼルは尻尾を振り抜こうとするが、リオルが間髪入れずに高速移動でブイゼルへと突っ込み、そのまま押し飛ばす。

その一撃でブイゼルは地面に落ち、戦闘不能となった。

「ちぇっ、やっちゃった。ブイゼル、よく頑張った」

ブイゼル単騎で押し切るつもりだったのだろうか、スグリは少し悔しそうな表情を浮かべてブイゼルをボールへ戻す。

しかし二つ目のボールを手に取った時には、既に余裕が戻っている。

ともあれ、これでお互いに一対一だ。

「それじゃ、第二ラウンドといきますか」

そう告げ、スグリが次なるポケモンを繰り出す。

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