魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第69話 打ち破れ、砂嵐の歌姫!

「エーフィ、戦闘不能! フライゴンの勝利です」

フライゴンの放ったドラゴンビートにより、エーフィは戦闘不能となってしまう。

「エーフィ……お疲れ様。よく頑張ったね」

ハルが倒れたエーフィを抱きかかえると、エーフィは瞳を開き、ハルの目をまっすぐに見つめる。

「分かってる、大丈夫。後は任せておいて。休んでてね」

エーフィをボールへと戻すと、ハルは次のボールを取り出す。

「砂嵐はもう吹いてない、相手は飛行できるポケモン。ここは君しかいない、出てきて、ヒノヤコマ!」

ハルが繰り出すのはヒノヤコマ。空を飛ぶフライゴンに互角に立ち回れるだけでなく、実はタイプ相性も悪くはない。

こちらの炎技は半減されてしまうが、フライゴンの技も大地の力は無効、ギガドレインと虫のさざめきは非常に効きが悪い。ドラゴンビートしか打点がないのだ。とはいえそのドラゴンビートが強烈なので、決して油断はできないのだが。

あとは、

「ヒノヤコマ、相手は羽ばたきで砂を巻き上げて砂の壁を作ってくる。巻き込まれないように気をつけてね」

上空からの攻撃が通るとはいえ、フライゴンの最大の武器である砂嵐の壁。これだけは気をつけなければならない。

ヒノヤコマはハルの方へ振り返り頷くと、気合を入れて甲高く鳴く。

「なるほど、空を飛べるヒノヤコマを持っていたのか。しかし、俺のフライゴンにどこまで対応できるかな」

「僕のヒノヤコマなら、必ずやってくれますよ。よし、ヒノヤコマ、まずはニトロチャージ!」

ヒノヤコマが力強く鳴くと、その身が炎に包まれる。

そのままヒノヤコマは炎の弾丸のように勢いよく飛び出す。

「フライゴン、防御だ」

フライゴンは再び大きく羽ばたき、風に砂を乗せて周囲に砂の壁を作り上げる。

「ヒノヤコマ、急上昇!」

しかし砂の壁にぶつかる直前、ヒノヤコマはほぼ直角に急上昇。

そのままフライゴンの真上から炎を纏ったまま急降下し、フライゴンを突き飛ばす。

「もう一度ニトロチャージだ!」

「それならば、ドラゴンビート!」

ニトロチャージを直撃させ、スピードが上昇。再びヒノヤコマは炎を纏ったままフライゴンへと向かっていく。

対するフライゴンは既に体勢を立て直しており、巨大な翅を力強く羽ばたかせ、美しい歌声のような音波を放つ。

音波がヒノヤコマを捉え、その身を纏う炎は一瞬のうちに引き剥がされてしまう。

「虫のさざめき!」

「疾風突き!」

さらにフライゴンが翅を振動させるが、ヒノヤコマは嘴を突き出すと、翼を折りたたんで高速で突撃する。

衝撃波が放たれるよりも早く、ヒノヤコマがフライゴンの腹部へと突っ込み、再びフライゴンを突き飛ばした。

「よし、いいぞ! ヒノヤコマ、アクロバット!」

さらにヒノヤコマは軽快かつ不規則な動きで、一気にフライゴンへと突っ込んでいく。

懐へと飛び込み、翼を振るってフライゴンへと叩きつける。

しかし。

「安易に近づき過ぎだ。ギガドレイン!」

翼を打ち据える直前、フライゴンの長い尻尾が淡い光を帯び、触手のように瞬く間にヒノヤコマへとまとわりつく。

そのままヒノヤコマを締め上げ、体力を吸い始める。

「しまった……! ヒノヤコマ!」

ギガドレインは草タイプの技なので、ダメージ自体はあまりない。

だが問題は完全に拘束されてしまったことだ。フライゴンの尻尾は強靭で、さらに少しずつではあるが体力を蝕まれているので、簡単には抜け出せない。

「フライゴン、ドラゴンビート!」

フライゴンが巨大な翅を羽ばたかせると、砂が巻き上がると共に美しい歌声のような音波がヒノヤコマを襲う。

さらに、羽ばたきによって風が砂を乗せて巻き上がり、フライゴンの周囲に砂風の壁が発生する。

「投げ捨てろ」

締め上げられて体力を吸い取られ、ぐったりしたままのヒノヤコマを、フライゴンは尻尾を振り払って砂の風の中へと放り捨てる。

砂の風に投げ込まれ、ヒノヤコマは風に巻き込まれて大きく吹き飛ばされてしまう。

「ヒノヤコマ!?」

砂風を浴びて吹き飛ばされ、ヒノヤコマが岩場に激突する。

まだ起き上がろうとしているが、大ダメージに変わりはない。

「こんなものか……フライゴン、ドラゴンビート!」

フライゴンが巨大な翅を羽ばたかせ、歌声の如く美しい音波と共に衝撃波を飛ばす。

美しくかつ勇ましい歌姫の歌声が、ヒノヤコマへ迫る。

その刹那。

 

紅蓮の光が、ヒノヤコマから迸る。

轟音と共に、その体が炎に包まれた。

 

「えっ……!?」

「なにっ……?」

ハルだけでなく、ワダンも驚きの表情を見せる。

炎に包まれ、その中でヒノヤコマを覆う紅蓮の光は青く激しい光に変化し、その姿を変えていく。

体は一回り大きくなり、空を駆ける翼はさらに大きく、頑丈にその形を変えていく。

姿を変えたヒノヤコマが、翼を大きく広げる。

気高く力強い啼き声と共に、炎の中から紅蓮の鳥ポケモンが飛翔する。

 

『information

 ファイアロー 烈火ポケモン

 羽の隙間から火の粉を吹き出し

 赤い残光と共に空を駆け抜ける。

 飛行速度は実に時速500キロ。』

 

「ヒノヤコマ、いや、ファイアロー……! すごい、進化したんだ!」

図鑑で確認すれば、新しい強力な技を覚えていた。

「よし……! ファイアロー! 進化した君の力を、ワダンさんに見せてやろう!」

感激するハルに呼応してハルの頭上を飛び回っていたファイアローだが、その一言ですぐさま戦闘モードに戻り、ハルの言葉に頷いて再び鋭い啼き声を上げる。

「ここで進化するとはな……だが、俺のフライゴンの砂嵐の壁を打ち破ることができるかな」

「ええ、打ち破ってみせます! ファイアロー、ニトロチャージ!」

ファイアローが一声上げるとその身が紅蓮の炎に包まれ、弾丸の如く飛び出していく。

「そう来なくてはな! フライゴン、防御だ!」

対するフライゴンは翅を羽ばたかせ、砂を巻き上げる。

だが、砂嵐の壁が作り上げられるよりも早く、ファイアローはフライゴンの懐まで一気に潜り込み、フライゴンを突き飛ばしていた。

「すごい……速い!」

「なにっ……!? ならばフライゴン、ドラゴンビート!」

突き飛ばされたフライゴンは巨大な翅を羽ばたかせ、美しい羽音と共に音波を放射する。

対して、ファイアローが大きく翼を広げる。

「新しい技、使いたいんだね! 分かったよ、正面突破だ! ファイアロー、ブレイブバード!」

ファイアローの体が、青い炎の如き激しいオーラに包まれる。

翼を広げて猛スピードで飛翔、正面から音波をぶち抜いて突き進み、ファイアローの捨て身の一撃がフライゴンを貫いた。

甲高い悲鳴と共にフライゴンが吹き飛ばされる。

勢いよく地面に叩き落とされ、床に激突してそのまま動かなくなった。

「フライゴン、戦闘不能! ファイアローの勝利です」

難敵フライゴンを撃墜し、ファイアローは翼を大きく広げて鋭い咆哮を上げる。

「よっし! いいぞ、ファイアロー!」

これで、ワダンのポケモンは遂に残り一匹となった。

「フライゴン、戻れ」

倒れたフライゴンをボールへと戻し、ワダンは最後のボールを取り出す。

見覚えのあるボールだった。繰り出されるより前に、ハルにはワダンの最後の一手になにが出てくるか分かった。

「っ、そのボールは……!」

「その顔は、分かっている顔だな。その通り、俺の最後のポケモンは、こいつだ」

ハルの予想通り。

ワダンの手にしたボールから、因縁の相手が姿を現す。

 

「出番だ、バクーダ!」

 

ワダンの最後のポケモンは、前回のジム戦でハルを敗北へと追いやった、あのバクーダだ。

「来たか、バクーダ……! やっぱりこいつが一番強かったのか」

一週間前、ワルビルとルカリオを瞬く間に戦闘不能に追い込んだ強敵。

しかし、今のハルは一週間前とは違う。

今度こそこのバクーダを倒し、ワダンに勝利して、ジムバッジを手に入れてみせる。

「ファイアロー、行くよ! ブレイブバード!」

ブレイブバードが啼き声を上げると、再びその体を激しい青のオーラが覆う。

そのままミサイルのように、ファイアローは超高速でバクーダへと突っ込んでいく。

「バクーダ、火炎放射!」

対するバクーダは背中の火口から上空に灼熱の業火を打ち上げる。

その後、バクーダはファイアローの突貫をまともに受け、痛みを表情に表す。

だが、攻撃を終えたファイアローへ、上空から炎の雨が襲い来る。

「ファイアロー、アクロバットだ! 全弾回避!」

空中を舞い踊るように飛び回り、ファイアローは炎の雨を次々と躱していく。

躱しながらバクーダとの距離を詰め、翼を思い切り振り下ろす。

だが。

「バクーダ、ダイヤブラスト!」

その直後、バクーダの周囲の空気が突如爆発を起こし、青白く煌めく爆風が迸る。

「しまった……ファイアロー!」

ダイヤブラストは岩タイプの技。炎と飛行タイプを併せ持つファイアローには二重に効果抜群であり、さすがに耐え切ることはできなかった。

「ファイアロー、戦闘不能! バクーダの勝利です」

地に落ちて目を回し、ここで戦闘不能となってしまう。

「ファイアロー、よく頑張ってくれたね。フライゴンを突破できたのは君のおかげだよ」

ハルは倒れたファイアローを労い、その嘴を撫でる。

「大丈夫。後は僕とルカリオに任せておいて」

ファイアローを戻すと、ハルは最後の一つとなったボールを手に取る。

これで最後だ。成長した力を、今こそ見せる時。

「さあ、君の出番だ! 出てきて、ルカリオ!」

ハルの最後のポケモンは、勿論エースのルカリオ。最初にメガシンカを遂げてそのまま、メガルカリオの姿だ。

「ルカリオ、今こそリベンジを果たす時だよ。一緒に、このバクーダを倒そう」

ハルの言葉に、ルカリオは静かに頷き、両手から青い波導を生み出す。気合は十分だ。

「さあ、一週間で本当にお前が正しい方向に変わったのであれば、このバクーダにその成果を叩き込んでみろ。一週間前の実力に加えてただの付け焼き刃程度では、到底このバクーダを倒すには至らんぞ」

「望むところです! ルカリオ、行くぞ!」

ハルの力強い返事に合わせ、ルカリオも右腕をバクーダに向けて突き出す。

「波導弾!」

ルカリオの掌から、青い波導が噴き出す。

その波導を凝縮させて念弾を作り上げ、バクーダへ向けて一直線に放出する。

「バクーダ、火炎放射!」

バクーダは大きく息を吸い込み、灼熱の炎を噴き出す。

波導の念弾と灼熱の炎が激突。だが次第に波導の念弾が炎を押して突き進み、遂には炎を貫き、バクーダの額へと直撃した。

「……なるほど。特訓の成果は本物、ということか」

それを見てワダンは呟く。そしてほんの少し、ほんの少しだけ、僅かな笑みを浮かべる。

「その実力があるならば、俺とこいつも手加減無しで大丈夫だろう」

なにやら意味ありげな様子で語るワダン。

「一週間前に言ったな。メガシンカとは強大かつ単純な力。ポケモンとの間に絆があれば扱えると。だがその真の力は、それを正しく理解していなければ発揮されない」

「……まさか」

瞬間的に。

この後何が起こるかが、ハルには分かってしまう。

「そのまさかだ。メガシンカの力、扱えるのはお前とお前のポケモンだけじゃあない。それを見せてやろう」

そう言って、ワダンは外れていたコートの一番上のボタンを締める。

いや、違う。

ボタンの代わりに付けられているそれは、紛れもなくキーストーンだった。

 

「貴様の目の前にそびえ立つ、高い壁となろう! バクーダ、メガシンカ!」

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