魔王と救世の絆   作:インク切れ

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第5話 自信家な実力者

「出て来い、ジュプトル!」

スグリが二体目に繰り出したのは、緑色の二足歩行のトカゲのようなポケモンだ。トカゲといってもリオルよりも大きなポケモンで、頭や腕からは葉が生えている。

 

『information

 ジュプトル 森トカゲポケモン

 森の中では枝から枝へ身軽に飛び回り

 地上でも動きは素早い。太腿の筋肉が

 驚異的な瞬発力と跳躍力を生み出す。』

 

「ジュプトル……進化系ポケモンか……!」

種にもよるが、ポケモンは進化する生き物だ。

進化の方法もポケモンによって異なるものの、基本的には経験を積み力を高めて進化するものが多い。

つまり、スグリの持つこのジュプトルは普通のポケモンよりもより多くの経験を積んでいる、と考えられる。

「自慢じゃないけどオレのジュプトルは強いよ? カザハナジムを突破した時はまだキモリだったけど、その頃からブイゼルたちより強かったしね」

スグリの言う通り、目の前のジュプトルは明らかに強そうだ。そもそも、進化を遂げているのがその証だろう。

「だけど、可能性はゼロじゃないよね。逆に言えば、そのジュプトルを倒すことができたら僕たちもきっとジムリーダーに勝てるってことだ。頑張るよ、リオル! まずは電光石火だ!」

ハルの言葉に応えて頷き、リオルが飛び出す。

しかし、

「ジュプトル、電光石火!」

同時にジュプトルも動き出すが、その速度は桁違い。リオルよりもずっと速いスピードで一瞬のうちに突貫し、リオルを跳ね飛ばした。

「タネマシンガン!」

続けざまにジュプトルは口から無数の種を機関銃が如く連射する。

一発一発の威力は控えめだが、それが無数に叩きつけられるのでなかなか痛い。

「リオル、大丈夫!?」

無数の種を打ち付けられたリオルだが、体勢を整えると自分の頰を叩いて気合を入れ直し、頷く。

「よし、リオル、反撃するよ! 岩砕き!」

拳を強く握りしめ、リオルが地を蹴って飛び出す。

ジュプトルとの距離を詰め、拳を突き出そうとするが、

「遅い遅い、燕返し!」

既にジュプトルはそこにはおらず、リオルの上空へと飛び上がっていた。

刀の刀身が如く白く輝く腕の一撃がリオルを直撃する。燕返しは飛行タイプの技、リオルに効果は抜群だ。

「さらに二度蹴り!」

ぐらりと体が傾いたリオルに対し、ジュプトルは素早く二発の蹴りを食らわせ、リオルをハルの元まで蹴り飛ばした。

「くっ……強い……! リオル、発勁!」

「させないさ、タネマシンガン!」

リオルの右手の空気が渦巻き、青い波導が腕を纏う。

しかしそれと同時に、ジュプトルも再び無数の種を乱射する。

リオルの拳の一撃は種の弾幕に阻まれ、ジュプトルには届かず、

「今だジュプトル、燕返し!」

リオルの波導が弱まった瞬間を狙い、ジュプトルは一気にリオルへ接近する。白く輝く右足を振り上げ、リオルを宙へ蹴り上げる。

「まずいっ……リオル、真空波!」

「とどめ! ジュプトル、タネマシンガン!」

咄嗟に右拳を振り抜くリオルだが、不安定な体勢で狙いが定まらない。

真空波はジュプトルのすぐ横を掠め、その直後、ジュプトルの放つ無数の種の弾丸がリオルを捉えた。

「ああっ、リオル!」

蜂の巣にされたリオルが、ドサリと地面に落ちる。

そのまま目を回し、戦闘不能となってしまった。

 

 

 

「よしよし、好調好調。ジュプトルもよく頑張った、戻ってていいよ」

バトルが終わった後、ジュプトルの頭を撫でてボールへと戻し、スグリはハルの近くへ歩み寄ってくる。

「す、すごいねスグリ君。全然敵わなかったよ……」

「ハル君、オレに負けたからって落ち込む必要ないよ。自分で言うのもなんだけど、オレって強いしさ」

いかにも自信家な発言だが、実際にスグリはかなり強かった。ハルと違ってトレーナーになってから一週間経っているとはいえ、新人トレーナーとは思えないほどの強さだった。ジュプトル、ブイゼル共にポケモンの行動前後の隙が少なく、動きも機敏。さらにトレーナーの指示も的確。ポケモンだけでなく、スグリのトレーナーとしての腕前も優秀に感じられた。実際、リオルはジュプトルに対して一撃も攻撃を当てられず一方的にやられてしまったのだから。

「それに、ハル君もまあまあ強かったよ? まだトレーナーになって二日目って聞いたから、ブイゼル一匹でサクッと決めるつもりだったし」

「あ、あはは……ありがとう……」

褒められたこと自体は嬉しいことなのだが、その評価のレベルを聞くとちょっと複雑な気持ちになる。そこまで低く見られていたのだろうか。

さーて、とスグリは大きく伸びをし、

「オレはもうちょっとここでバトルしていくけど、ハル君は明日ジム戦に行くんだよね? だったら今日はこの辺にしとけば? ポケモンの調整もしてあげないといけないでしょ」

「うん、そうするよ。っていうか、ポケモンバトルって疲れるね……何戦もするとくたくただよ……」

ふう、と息を吐くハル。スグリはそんなハルの様子を見て悪戯っぽい笑みを浮かべると、じゃあね、と手を振り、他のトレーナーとバトルしに行ってしまった。

 

 

 

ポケモンセンター一階でリオルとヤヤコマを回復させていると、サヤナが帰ってきた。

「ハル! あの花屋さん、やっぱりポケモンジムだったよ!」

「あ、本当にジムだったんだ。ジム戦はどうだった?」

「それがねー」

むー、とサヤナは唇を尖らせ、

「ジムリーダーの人、すんごい強かったの! 一匹目のポケモンは倒せたんだけど、二匹目にコフキムシとアチャモ、どっちも倒されちゃった」

どうやら、サヤナは負けてしまったらしい。

「そっか……残念だったね」

「ハルも明日挑むんだよね? 気をつけて頑張ってね。やっぱりジムリーダーって強いよ……」

分かりやすく落ち込むサヤナだが、

「だから、明日は近くにある林で特訓するの! そこの野生ポケモンは今日通ってきた道路のポケモンよりちょっと強いみたいだし、トレーナーの特訓の穴場にもなってるんだって! 行くっきゃないね!」

すぐに顔を上げて笑顔になる。切り替えも早い。

「そのついでに、新しいポケモンも捕まえちゃうかも!? それじゃハル、私もう少し地下の部屋で特訓してくるね!」

笑顔で手を振り、サヤナはポケモンを回復させた後、すぐに地下の交流場へ下りていった。ハルと違って疲れ知らずだ。

しかし、トレーナーになりたての時とはいえ自分に勝ったサヤナもジムリーダーに負けてしまったという。気を引き締めて挑まなければ。

「とりあえず、今日はゆっくり休もうかな。明日に備えて、早めに寝ることにしよう」

こうして、ハルの一日が終了する。明日は、いよいよ初めてのジム戦だ。

 

 

 

翌日。

「うわ、思ったより大きい……」

ハルは地図に載っている花屋――ジムを訪れていた。

予想していたよりも大きな建物だ。ただ、やはりジムという感じはしない。というか、普通に一般客が花を買いに来ている。

「……」

建物の前でハルが呆然と立ち尽くしていると、

「おや、どうしたんだいお兄ちゃん。気になる女の子に花でもプレゼントかい?」

店の中から、優しそうな表情の大柄な男性が出てきた。

「えっ? いや、ここがジムだと聞いたので、挑戦に……」

突然変なことを言われたので戸惑いつつも、ハルはそう返す。

すると男性は、なるほど、と納得したような表情を浮かべ、

「お前さんポケモントレーナーかい。まだ若いのに頑張るねえ。よし、それじゃちょっと待っとくれ。おーい、イチイちゃーん!」

店の方を振り返り、人の名前を呼ぶ。

しばらくして、

「お待たせしました。クネニさん、お呼びですか?」

店の奥から、女の人が出てきた。

桜の花びらが描かれた桃色のワンピースを着た女性だ。ピンクのロングヘアーに、赤い木の実のような髪留めを差している。歳は二十歳前後くらいだろうか。

「イチイちゃん、この男の子がジムへ挑戦だそうだ。お得意様は僕が代わりに接客しておくから、ジム戦をしてあげてくれ」

「了解しました」

クネニと呼ばれたこの大柄な男性は花屋の店長なのだろうか。そしておそらく、この女性がジムリーダーだ。

男性にぺこりと頭を下げると、女性はハルの方に向き直る。

「それでは、ついてきてくださいね」

女性に連れられ、ハルは店の奥へと進んでいく。

外からは見えない店の奥には、花を育てている庭のようなスペースがあり、その真ん中に、芝生と砂地で構成されたバトルフィールドがあった。

「それでは、挑戦者さん。貴方のお名前は?」

「はい、ハルといいます」

「ハル君……いいお名前ですわね。では私も自己紹介を。私はこのシュンインシティジムのジムリーダー、イチイ。以後よろしくお願いしますわ」

その女性、イチイは、上品な口調で名乗る。

 

『information

 ジムリーダー イチイ

 専門:草タイプ

 肩書き:新緑の導き手(グリーンズアライズ)

 花屋では:看板娘』

 

「この時期は多くの新米トレーナーさんが旅に出る時期ですの。貴方のような若い挑戦者の方々が多くて、私もフレッシュな気持ちでジム戦が出来ますわ」

柔和な笑みを浮かべ、イチイはモンスターボールを手に取る。

「とはいえ、勝負は勝負。ジムリーダーとして、貴方の力、試させていただきますわ。さあ、それでは早速始めますわよ」

「……はい! よろしくお願いします!」

緊張を振り払い、気を引き締め、ハルもボールを取り出し、握る手に力を込める。

ハルの初めてとなるジム戦が、いよいよ幕を開ける。

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