早くも弱みを握られてしまったものだが、それよりも今はだお竜人とツノだおさんが気まずい空気にならないかを考えるべきだ。オレらがいつも通りの感じでガチャリとドアを開けると、「はい、待ってましたよ」という顔をして仁王立ち状態のツノだおさんが立っていた。
たぶんオレら2人とも少し引いた。
「やあやあ、話はわかってるよ、君が例の…」
「だお竜人だ」
「だお竜人くんね、僕はツノだおさん、さんm(」
「その辺の話はだおから聞いている。だから必要なことだけを喋ってくれ。」
…なんだかめんどくさそうにしている。まるで面接してるときの自分を見ているようだった。それからもしばらく質疑応答は続いたけど、だお竜人の返しの9割は「もう聞いている」だった。ツノだおさんがぷるぷるしながら涙目でいたのはちょっと笑いそうになった。
だが、「だお竜人はこの危険な仕事ができるレベルの戦闘能力を持っているのか」という
質問で事務所内の空気が少し変わった気がした。確かにだお竜人は見た目こそまあ強そうに見えるけど、実際のことは本人しかわからない。少し間が相手から話は再開した。
「で、結局のところ君は相応の強さはあるの?」
「舐めたこと抜かしやがって。自信があるからここに入りたいって思う訳だろ?」
「ぐっ…。で、でも口だけならどんなことだって言えるじゃないか!」
「おいおい、仕事の面接でこんなウソ言えるはずないだろ」
だお竜人がそう言うとツノだおさんが台パンしてこう言った。
「ああ分かったよ!そんな大口叩けるんだったらこの事務所をぶっ壊してみなよ!そんな態度を取るってことは、そこまでの自信があるんだろう!?もし壊せなかったら君をここの一員とは絶対認めないからね!」
この時のツノだおさんはとても怖かった。オレが恐る恐るだお竜人の方を見ると、余裕そうな表情で「いいぜ」と言った。ツノだおさんの長文に対してだお竜人のたった3文字の返答。ずっとこの状況を見ていて思ったのが命の危険だ。なにやってんのツノだおさん。バカなのかな?結局オレたち3人は事務所の外に出て事務所をぶっ壊せるかを試すことになった。ツノだおさんは絶対無理だろうという顔をしているが、だお竜人は相変わらず余裕の表情を浮かべている。ちなみに連続攻撃はなしらしい。
テスト(?)が始まると、だお竜人は空高く飛んだ。ちょうど事務所の真上あたりでストップ。そこでだお竜人は両腕を空に向けた。ツノだおさんは「きっとあそこから無理ですって言って謝るよ」と聞こえないように煽っている。なんでこんなに仲悪いんだろうなと思っていると、突如だお竜人の頭上に巨大な球体が出現した。バチバチ言っているのでおそらく自分のパワーで出したんだと思う。その球体を見たツノだおさんはだお竜人に向かって必死で首を横に振っていた。イマイチ意味がわからなかったのでオレは逆に(ない)首を縦に振った。それに気づいたであろうだお竜人はオレの方をみてうなずいた。
そして球体は事務所に向かってゆっくりと落ちていった。
次の日、ツノだおさんに改修の請求書が来ていた。