次の日の夜、悠時は本来の力を自身の中に戻した後、一人駒王学園の向かおうとする。
「悠時・・・」
「大丈夫だ、雪菜。さっさと終わらせて帰ってくるから。・・・・ウォズ、雪菜を任せた」
「了解した」
悠時の頼みを了承するウォズ。それを聞き届けた悠時はライドストライカーを走らせる。
「悠時・・」
「心配かな?我が魔王が」
「ウォズは心配じゃないの?」
「全くね。なぜなら彼は究極の時の王者にして、我が魔王なのだから」
・・・・・・・・
駒王学園に向けてライドストライカーを走らせる悠時。彼の視界に学園が目に入ると同時に、学園に結界が張られる。
「結界?・・・・どうやら、コカビエルの言う通りに事が進んでいるようだな」
ライドストライカーのスピードを上げる悠時。やがて見えてきた校門の前には、制服を男女が何人か屯っていた。
「会長!誰か来ます!!」
「そこのバイク、止まりなさい!」
その内の一人、眼鏡をかけた会長と呼ばれた少女が手を広げ、止まるように指示を出してくる。悠時はそれをガン無視し、灰色のオーロラを出現させてその中に入っていく。
「消えた・・?」
「会長!ご無事ですか!?」
「えぇ・・・・とにかく、リアスに連絡を」
彼女は悠時が消えた一点を見つめたが、そこには何も残ってなく念のために中で戦っているリアスへと連絡を入れようとする。だが、彼女が中に連絡を入れる時には、悠時は結界内への進入を果たしていた。
「結界内に侵入完了・・・便利だねぇ、このオーロラ」
灰色のオーロラを通過した悠時は何も問題無く結界内に侵入し、今は校舎裏から戦いが行われている校庭の方を確認する。宙にはコカビエルが、地上では怪しく光る魔法陣に何かをしている老人、先日逃したフリードと三つ首の獣、そしてそれらと戦うグレモリー眷属とゼノヴィアの姿。
(前に戦った時よりも人が増えているな・・・・とは言っても、あの三つ首程度に苦戦してんじゃコカビエルを相手になんてできねぇな)
『牙王!』
初めてグレモリー眷属と遭遇していた時に使用していた牙王ウォッチを起動し、マスターパスを放り投げる。
「変身」
『ガオウフォーム!』
仮面ライダー牙王へと変身を遂げた悠時は、再びマスターパスをベルトにセタッチし、グレモリー眷属達と戦っている三つ首の獣一体に向けて飛び上がる。
『フルチャージ!』
「はっ!」
エネルギーが溜まった右足は三つ首の獣一体を貫き、獣は血を吹き出して倒れ伏した。
「な、なんだぁ!?」
「今のは・・・」
「まさか・・」
突然の事態に、グレモリー眷属全員が固まる。獣が倒れた事によって生じた砂煙が晴れていき、牙王の姿がはっきりと確認できる。
「なっ!?」
「あいつは・・・・」
「誰だ?」
グレモリー眷属のほとんどが驚愕し、新たに加わったメンバーは首を傾げる。特にリアスは存在しないはずの者を見ている目をしている。
「よぉ、コカビエル。昨日ぶりだな」
「貴様・・・あの人間か。姿が違うな」
「当たり前だ。すでにバレてる力で来ても意味がないだろう?・・・・・・あぁ、そういやあいつらには見せてたっけか?」
牙王は振り返り、グレモリー眷属を見渡す。その一言から、グレモリー眷属は牙王が以前戦った人物と同一人物である事を悟る。
「どういう・・・・事・・?」
「あ?なんか言ったか?」
「なんで生きてるのよ・・・・あの時、滅びの魔力であなたは消し飛んだはずじゃ・・・!!」
「は?・・・・・・・あ、あぁ、そういやお前そんな事してたな、忘れたわ」
リアスが言った事をあたかも今思い出したように言う牙王。本当に忘れていたわけではないが、牙王はわざと今まで忘れていたと装ってリアスを煽る。
(あん時から少しは成長したのかな?)
少しは管理人として以前よりも成長している事を祈ってわざと煽ったのだが、それはすぐに裏切られる。
「どこまでもふざけて・・・まさか、あなた堕天使の仲間ね?」
「・・・・は?」
「そうよ、そうだわ!あの時私達と戦ったのは事前に手の内を知っておくためね!」
(・・・・何言ってんだこいつ?)
突如理解不能な事を言い始めたリアスに、牙王・・・悠時はマスクの下で冷ややかな視線を送る。良くなってるどころか、むしろ酷くなっているのではないか。
「そういえば昨日、コカビエル達と会っていたらしいわね?つまりあなた達は共同関係にいるんでしょ!!」
「・・・・・」
開いた口が塞がらない悠時。コカビエルでさえも何言ってんだこいつみたいな顔をしていた。そこに、唯一事情を知らないであろう、左手に赤い籠手をつけた男・・・赤龍帝『
「あ、あの部長・・あいつは一体・・・?」
「詳しい事は分からないわ。でも、私達の敵であるのは間違いないわよ!!」
「そうなんですか!?よ〜し、任せてください部長!この俺があいつを倒してやります!!」
「そうね、今代の赤龍帝であるあなたの力、思い知らせてやりなさい!!」
「はい!!」
『BOOST!』
神器『
「おりゃ!!」
「・・・・・」
牙王はそれを避けも防御もせずに受け止める。イッセーは自分相手に何もできなかったと思い込んで笑みを浮かべるが、実際は全く効いていなかった。イッセー自身がグレモリー眷属になったのもつい最近であり、赤龍帝と分かったのもほぼ同時期だった。まだそこまでの力が無い彼の力が倍加されても、牙王には全く効かない。効くはずが無い。
「・・・・・」
「うぉ!?」
牙王は無言のまま籠手を掴み、そのまま投げ飛ばす。そして興味が失ったかのようにコカビエルへと視線を戻した。
「はぁ・・・・なんであんな馬鹿なんだが」
「全くだ、しかも俺の楽しみを奪おうとするんだからな。だが俺が戦う前に・・・バルパー、できたか?」
コカビエルがそう言うと、地上で何かをしていた老人『バルパー・ガリレイ』が答える。その手元には一本の剣が浮かんでいた。
「あぁ、完成している・・・一本は壊されたが、盗んだ二本のエクスカリバーとあの女から奪ったエクスカリバー、計三本のエクスカリバーを一本に統合した。これで下の術式も完成、後二十分もしない内にこの街は崩壊するだろう」
「・・・なんだと?」
この街の崩壊、その言葉を聞いた瞬間、牙王が殺気を放つ。コカビエルはそれを愉快そうに笑う。
「くっくっく、最後の余興だな。フリード、その聖剣を使って戦ってみろ」
「アイアイサー!」
コカビエルに言われ、フリードは一本に統合されたエクスカリバーを掴む。牙王はそれを見てベルトについているガオウガッシャーを連結させるが、その前に木場が前に躍り出る。
「はぁ!!」
「おいおい、今は悪魔には興味ないんだよ!てめーよりもあの仮面野郎をチョンパしたくてさ〜!」
木場が持つ剣・・・魔剣はフリードの持つエクスカリバーに砕かれる。
「っ!」
「くっ・!」
「まぁまずは一人目ってね!!」
フリードの持つエクスカリバーが木場の首目掛けて振り下ろされる。だが、その前に牙王が木場を掴んで後ろに放り投げ、ガオウガッシャーでエクスカリバーを受け止める。
「うぉ!?まさかそっちから来てくれるとはねぇ!!リベンジさせて貰っちゃいますよ〜!」
「できるならな」
ガオウガッシャーでエクスカリバーを弾く。エクスカリバーで再び向かってくるのを受け止め、時には回避し、お互い斬りつけ合う。フリードはエクスカリバーの能力を使って幻影を見せたり、透明にして刀身を見えなくする。牙王はそれを気配で読み取り、受け止める。何度か繰り返していると、木場が割り込んでくる。
「どいてくれ!これは僕が・・!!」
「お前は邪魔だ、見てろ」
エクスカリバーを破壊しようとする木場だが、牙王からしたら邪魔でしか無く、蹴り飛ばされる。
「お前とエクスカリバー・・・いや、聖剣か・・・の間に何があったのかは知らねぇ。だがな、今はお前の個人的な理由に付き合う暇なんかねぇんだよ。大人しくしてろ」
「うるさい!!僕はなんとしてでもあの聖剣を破壊し、みんなの仇を取らなくちゃいけないんだ!!」
「・・・・仇、か・・・・」
牙王の脳裏にかつての記憶が蘇る。絶対の力を使い、親友の命を奪った存在を倒した時を。
「・・・・」
牙王はすぐにその記憶を心の奥底に仕舞い込み、マスターパスを取り出す。
「・・だったら、その仇ってやつを俺が食ってやるよ」
『フルチャージ!』
マスターパスを翳して放り投げ、エネルギーが溜まるガオウガッシャーを後ろから攻撃してきたフリードの持つエクスカリバーにぶつける。すぐにエクスカリバーの刀身にヒビが伝わっていき、最後には粉々に砕け散った。
「ぎょええぇぇぇえええ!?」
「そ、そんな・・・・・」
「え、エクスカリバーが・・・私の人生を捧げた研究が・・・・」
エクスカリバーが破壊された事に、フリードは驚愕し、木場とバルパーは落胆する。バルパーはそのまま放心状態となったが、木場は怒りを込めた視線を牙王にぶつける。
「よくも・・・よくも聖剣を・・!あれは、僕が破壊しなければいけないものだったのに!!」
「だから言っただろ、お前の個人的な理由に付き合う暇なんかねぇって」
「お前ぇ・・!!」
木場は立ち上がり、牙王の胸ぐらを掴む。次の瞬間、木場は牙王に蹴り飛ばされ、その場所に光の槍が突き刺さった。
「ふん、悪魔をかばったか。惜しいな、そんな奴を庇わなければまだ生きてられたものを・・・」
光の槍を投げた張本人、コカビエルはどこか憐むような視線を砂煙が舞っている場所へ送る。木場はもし自分が蹴り飛ばされていなかったらと想像し、ゾッとする。
「所詮は人間、この程度の存在だったか。ま、なかなかの余興にはなったな。おい、赤龍帝!貴様の力をリアス・グレモリーに譲渡しろ。それならば多少俺にも・・・・」
瞬間、空気が変わる。全てを飲み込むような圧倒的な力の気配。リアス達はともかく、聖書に名を刻まれるような存在であるコカビエルでさえも感じたことがないオーラ。先ほどまでこの場の頂点に君臨していたのはコカビエルだったが、その立場はすでに別の者に移された。
「な、なんだ・・この気配は・・・!」
コカビエルは急ぎ視線を移す。グレモリー眷属に向けていたその目を砂煙の方へと。そして、この圧倒的な気配の持ち主を見つける。
未だ晴れぬ砂煙の中、赤い『ライダー』の文字が光輝いていた。
ついに登場・・!(まだだけど)
次回は存分に力を奮ってもらいましょうね〜♪