ウルシスの涙 序
人理継続保障機関フィニス・カルデア。今現在焼却されてしまった人理を取り戻すために日々戦うこの組織。藤丸立香はそんな組織で最後のマスターとして精一杯毎日を過ごしていた。
「あー、何しよー」
いつもの休息時間ならこうも暇を弄んではいない。彼が休みたくなくとも、突発的な特異点だったり召還されているサーヴァントだったりが休憩を許さないからだ。しかし、今日はロマンとダヴィンチちゃんの本気の注意で、とりあえずは接触してこないのだ。
「あっそうだ。図書館行こうか」
名案を思いつきばっと立ち上がる立香。
最近できた大図書館。そういえば|あの騒動以来あんまり行ってない気がするしちょうどいい。そこの司書である紫式部にお勧めでも聞いて読もう。
そう考え部屋を出る。エレベータに乗り、地下の図書館に到着する。
相変わらずの広さだと歩きながら思う。マシュが言うには空間が歪曲させているらしいのだが、どのくらい広いのか全く想像できないので迷子になりそうである。
少し歩くと受付らしき所でマシュと紫式部がいるのが見えた。どうやら何か話しているようだ。
図書館なのでなるべく小さな声で声を掛けてみる。
「マシュ。紫式部」
「あ、先輩。先輩も読書ですか?」
「うん。あんまりやることもなくてね」
立香は笑いながら笑顔のマシュに答える。
「ねえ紫式部。なにかおすすめの本ってあるかな?」
「おすすめですか? そうですね。マスターはどういったものを読みたいのですか?」
「どういう系かかー。うーん」
紫式部に聞かれて悩んでしまう立香。本を読もうと考えていただけで全く考えていなかった。
どうしようか。正直暇さえ凌げるのならなんでもいいのだ。
「あっ。読む本がないのでしたらこれなんてどうでしょうか? 先輩もこれなら読みやすいと思います」
おすすめで良いと紫式部に言おうとした時、マシュが持っている本をこちらに見せながら薦めてくる。
「マシュ。これは?」
「ルードナク物語。獣の勇者ルードの冒険譚です。このルードナク物語はどこから出てきたかはわからない。創造なのかも実際に起こったものなのかもはっきりとはしてないものなんです」
立香はその本を受け取る。ルードナク物語か。確か狼に育てられたルードが人の世界に出て多くを体験しいろいろやる話だった気がする。小学生の頃の読書感想文で読んだ気がする。
よし、これにしよう。せっかくマシュが薦めてくれたのだ。マシュにおすすめされる本は大体が満足できる本なので信頼できる。何よりマシュが推してくれたそれを読まないという事など考えられない。
「ありがとマシュ。部屋で読んでみるよ。借りてくね、紫式部」
「はい。マスター」
早速読んでみようと部屋に戻る。行きよりも早い時間で部屋に到着し、椅子に腰掛け本を開く。
昔一度読んだもの。子供版よりは詳しく書かれているだろうそれを読み始める。さて、どんな話だったか。
ページをめくる気分はかつての小学生時代とほとんど変わりなかった。