作品置場   作:ゴマ醤油

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ONE PIECE
後追いの世代


かつて、この世のすべてを手に入れた男──ゴールドロジャー。彼が死に際にはなった言葉は人々の心に火を付け一つの時代を作り上げた。

 それから時は流れ、海賊王の残した宝を求め多くの者が海に出る。

 

 世は大海賊時代。夢を追い、力を持って成り上がる戦乱の真っ只中である。

 

 

 偉大なる航路。春島。

 黄色の桜が空を覆い、鮮やかな赤色の水が流れる世にも珍しい島。人の気配を微塵にも感じさせない雄大な自然溢れるその島に、一隻の船が停泊していた。

 船に広げるは黒の髑髏。自由を示し、世界すら相手取る覚悟のあるものが掲げる信念の象徴。

 

 ──海賊。この海において最も多く海を渡る者達である。

 

 彼らは今、昼だというのに焚火を囲み酒を飲んでいる。肩を組み、共に語らいこの状況を楽しんでいる。

 そこから離れた所、その歓声が届かない且つ目に入る位置に二人の男がいた。

 片方は鮮やかな緑色の髪の男か女かもわからない曖昧な人。そして、月を見ながら一人で酒瓶に口を付ける男。

 

「──それで、あっちには参加しないのか?」

「……疲れた。馬鹿騒ぎはやりたいやつだけでやりゃいいさ」

「冷たいねぇ。そんなんだからクルーも集まんなかったんじゃない?」

 

 旧友のような気安さを漂わせる二人。海賊船の近くでなければただの親友同士で酒を交わしているだけの平和な光景である。

 

「……集まったのだからいいだろ」

「まあね。最悪二人でもなんとかしたしね。昔みたいに」

 

 海を二人で進むのはそんな簡単なことではない。

 ましてここは偉大なる航路。当たり前の様に竜巻が吹き乱れ、瞬く間に嵐がやってくるこの海を知るものであるならばそんな軽はずみなことは言えないはずである。

 けれど彼らは知っている。もっと激しい地獄のような場所を。この海が楽園に感じれるほどの恐ろしい世界を。

 

「……それで、どうするんだい。今が動き時であると思うんだけど」

「……」

 

 彼らのそばに置かれていた無数の紙に目を向ける。

 そこに書かれていたのは一つの時代の終わり。数多の海賊の中で頂点とされる男の死。もう二ヶ月近く経つというのに未だに世界で話題になる大ニュース。

 

 ──白ひげの死。海の皇帝、その一角が崩されたという前代未聞の通告である。

 

「大海賊白ひげは死んだ。僕としては、そろそろ新世界に戻るのもありだと思うんだけど」

「……まだ時期が早い。四皇に挑む、そこまでの力はまだ」

 

 緑色の人とは対称的に未だ決心の付かぬもう一人の男。

 無理もない。彼らは、彼はよく知っている。あの海に君臨する化物を。

 かつて、目の前にまで迫った死神よりも死に近い絶望に対向するには、今の自分たちではあまりにも小さく弱い。それを理解しているのだ。

 

「ふーん。……まあ、君に従うだけさ。他のやつにどういうかは知らないけどさ」

 

 緑髪の人はその言葉に特に驚くこともなくただ酒を煽りながら頷く。

 

「それで、具体的には?」

 

 隣に座りぐいっと距離を近づけ顔を覗き込む。

 普通の感性なら、どこか危ない感情を抱いてしまいそうになる程の美を漂わせる人だが生憎ずっと一緒にいた彼は特に気にすることなく言葉を続ける。

 

「同盟だ。四皇に楯突ける実力と芯を持った海賊と」

「零点。同盟なんて信用できない。それに、いるとは思えないね。こんな前半の海じゃ」

 

 緑髪の人が呆れるのも無理はない。

 カイドウ、ビッグマム、赤髪。白ひげ抜きにしても知らぬ者はいない海の皇帝達と正面からやろうとする馬鹿はいない。そんなのは勇気ではなく無謀。ただの蛮勇に等しい。

 

「赤旗、キャプテンキッド、死の外科医、魔術師、怪僧、ギャングベッジ……そして、黒ひげ。まさか、最近のルーキーと?」

「黒ひげ以外は候補ではある。……まあ、考え中だが」

 

 転がっている手配書を適当に拾い見る。

 そこに写る誰もが曲者。それぞれが野心を隠さずに突き進む新星。

 

「どれも良い噂は聞かないけど。……誰にするの?」

 

 それは心からの疑問であった。

 長年一緒にいる緑髪の人間は興味があった。この中から誰が選ばれるのかを。この未だ己を愉しませる彼がどういう相手となら最後に海の王を争いたいのかを。

 

「……こいつだ。こいつなら、きっと途中で折れるなんてないだろうさ」

「──ええっ??」

 

 少しだけ笑みを零しながら出してきたのは一枚の新聞。そこに書かれていたのは世間を賑わす問題児中の問題児。

 麦わら帽子がトレードマークの海賊。手配書の笑みが逆に彼の底知れなさを伺わせる。

 

「麦わらかぁ。いかれたルーキーだけど、なんでこいつなんだい?」

 

 緑髪の人間は珍しく真面目に質問していた。

 麦わらと言えば最近話題に事欠かないルーキー。政府の三大機関で大暴れし、先の戦争にも乗り込み引っかき回しその上天竜人まで殴り飛ばす無法人。

 神にまで手を掛ける正真正銘のいかれた海賊。まともな人間なら会いたくすらないだろう。

 

「何故って? そりゃ──」

「……ふふっ。んふふっ、ははははっ!!」

 

 緑髪の人間は思わず笑いが抑えきれなくなる。

 真面目面で語られたのはあまりにも馬鹿らしく、合理性のない理由。そんなのを当たり前の様に語られた日には思わず笑いもこぼれてしまうだろう。

 

「無論、あいつらが良いと言ったらだが」

「言うだろうさ。だって、そういう君にこそついていく愚か者達が乗っている船だろう?」

 

 そう。だからこそ、こんな馬鹿で愉しいやつにだからこそ集まったクルーなのだ。

 ならもっと、こいつがやりたいようにやるべきだ。だからこそ、楽しいのだから。

 

「でもどうなんだろうね? 彼は最近見ないよね? 死んじゃってたら」

「生きてるさ。だからこそ、俺らもやることをやる」

 

 男は立ち上がり、緑色の人間をはっきりと見据える。

 

「一年だ。戦えるやつの覇気を仕上げてからだ──」

「船長とラルさんっ! 海賊船が見えるですっ! 多分この島に泊まるですよっ!」

 

 騒ぎの方から駆け寄ってきた船員が敵襲を知らせてくる。

 せっかくの宴にもかかわらず空気の読めない奴らの来訪だが、伝えてきた船員以外は焦ることはない。

 

「何処のだ」

「あれはグリンデロー海賊団ですよっ! 虐殺好きのコリデーで有名なっ!」

 

 緑髪の人間と男が目を合わせる。

 言葉や覇気を通さずともどうするかは伝わる。それだけ長く一緒にやってきたのだ。

 

 宴の中心まで歩く。その姿を見て誰もが一旦止まり指示を待つ。

 並大抵の海賊なら誰か一人でも行けば解決するだろうが、それでも彼らは船長の言葉をただ待機している。

 

「野郎共。──戦闘準備だ」

『うぉおおおおお──!!』

 

 男の、いやこの荒くれ共の船長の一言で一気に場が活気ずく。

 先程までの宴とはまた違い、活気と共に燃え上がる情熱が感じながら、船員達は各々で戦闘体勢を迅速に整え始める。

 

「さあ相棒。いつも通りに食糧漁りを始めようぜ」

「うん。とっとと終わらせて魚以外も食べたいね」

 

 

 

 

 これは、海賊麦わらのルフィが世に戻るまでの二年間の間。大きく捻れ変わりゆく世界を駆ける最悪の世代の後に大きく世に知られる三人の海賊のうちの一人の物語。

 夢を追い、海賊王を目指し力を蓄えるとある海賊の話である。

 

 




 元々短編予定だった物。書こうと思ったけど気分が乗らなかったため没。まあこれは書きたくなったら掘り返すかも。
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