少し走りようやく家に到着する。
そこまで大きくないが綺麗な一軒家。今の住んでいる家である。
父の弟である叔父さんの持っている家で住まわせてもらっているのでとても感謝している。
「ただいまー」
鍵を開け家に入る。中も綺麗な玄関。自分の部屋に鞄を置きリビングへ行く。
リビングには明かりがついていてソファには姉が寝ていた。
姉に関してはいつものことなので気にしない。
キッチンで冷蔵庫を開ける。買い物は済ませたのは本当らしく食品とプリンが入っている。
(相変わらずのプリン)
姉はプリンが好きなのは知っているがこうも連続で買ってきて飽きないのか疑問ではあるがまあそれはいい。
とりあえず、適当に食品を出し切り分ける。米は研がれているので問題無い。
野菜を鍋で炒め、煮込む。そして十分煮たらルーを入れて蓋をする。これでよし。
「んん? ああっ、帰ったの?」
「ただいま姉貴。もうすぐできるよ」
「んー」
寝ぼけているようで瞼をこすりながらソファに座り直す姉。
学校のワイシャツを着たまま寝ていた姉。寝るのは構わないのだが、そのだらしない格好を少しはどうにかしてほしいと思いながら準備を進める。
完成したカレーを皿に盛り付け、皿をテーブルに並べる。
姉がこっちの椅子に座る。
「んじゃいただきます」
「いただきます」
早速カレーを食べ始める。いつもよりお腹が減っていたのかただのカレーなのに妙に美味しく感じる。
姉が作ったわけでもないのに不思議だ。
「なあー。今日遅かったなー」
「ん? ああっ。部活の体験」
「ふーん。やっぱサッカー?」
「ああ」
今日遅くなった理由を話す。姉は適当に頷きながらカレーを食べ進める。
「――ねえ。やっぱり、サッカーする理由は変わらないの?」
「……ああ。……変わらないよ」
「……そっか」
一旦話が止まり静かに食事が進む。
姉は俺がサッカーをするのに反対しているわけではない。けれど、この理由でサッカーをしていると言うと少し悲しそうな顔をする。
それがよくわからない。姉だって俺たちを捨てた両親が憎いはずだ。なのに、何でだろう。
「――ごちそうさま。さて、プリン食べよう!」
姉が皿を持ってテーブルを立つ。洗い場に皿を置き、冷蔵庫からプリンを取り出しこっちに戻ってくる。
「……姉貴。プリンそんなに食って飽きないのか?」
「全然! それに、これは前のと違うのだ!」
俺の問いにものすごくうっきうきでプリンのラベルを見せつけてくる姉貴。ラベルにはネオ塩ミルク味と書いてあり、確かに違う物だとは思う。
「……美味しいのかそれ」
「ん? はいあーん」
疑問に思い聞いてみるとスプーンをこちらに差し出す姉貴。一瞬躊躇ったが、白いそれを口に入れるとなんともいえない味が口に広がる。
「……微妙」
「そう? 残念」
残念そうな顔をしながらはむはむと食べるのを続ける姉。
プリン一つで幸せそうになれる姉が非常にうらやましくなるがこれもいつものこと。気にすることはない。
「ごちそうさま。風呂先入るよ」
「おっけー。皿洗っておくねー」
皿を洗い場に置き部屋に戻る。自室で着替えを用意し、風呂場へ向かう。
体を洗い、湯船につかる。
そこまで広くないお風呂だが、ここに来る前はシャワーだけなのが当たり前だったのを考えるとだいぶ豪勢だ。
「――はあっ」
今日一日を思い返す。新しい学校。新しいクラス。紺野新や長月一馬などのクラスメイト。――そして、サッカー部。
別に練習量は問題無い。俺はついて行けるから問題無いし、仮にあれが新人の選定ならばあそこまでは厳しくはならないと思う。
問題は、帰りが若干遅くなるという点。あの姉ならば家事を優先してやると言ってくれるかも知れないが、あまり姉に負担を掛けたくはない。
「……やるしかない、か」
拳をぎゅっと握る。そうだ。やるしかないのだ。
例えサッカーが楽しくなくとも。己の目的を果たすまでは絶対に。
お風呂を上がる時にはもう、迷いは幾分か消えていた。