翌日。放課後になって俺は職員室に来ていた。
「失礼します。日下部先生はいらっしゃいますか」
表記にあった顧問の教師を呼ぶ。体験入部の際には顔を見たことがないのでその場で聞くしかない。
少し待つと、こちらに一人歩いてきた。
「少し待たせたね。それで要件は」
「入部届です。サッカー部の顧問で合ってますよね?」
「……なるほど、受け取ろう。頑張るように」
入部届を渡すと少しだけ何かを考え、すぐに戻ろうとする。
「失礼します!」
「失礼します」
その時、職員室に大きな声が響く。中々にうるさい。
そちらを見ると、紺野と長月がこちらに向かってきていた。
「おう隼人。先来てたのか! 顧問の先生誰か分かるか?」
「……日下部先生だ。奥の年を取ってる人」
「サンキュー。日下部先生はいらっしゃいますかー!」
聞いといて呼ぶのかよ。
長月はこっちから行こうとしていたらしく、若干驚いている。
取り敢えず、俺は出し終わっているので外に出ておく。
また少し待つと、二人が職員室から出てくる。どうやら出し終わったようだ。
「お、なんだ隼人。待っててくれたのか?」
「まあ、一応」
三人で帰る。長月から聞いた話では今日はサッカー部はないらしい。
今日の夜はカレーが残っているので問題はないし、一人で練習でもしてようか。
「──なあ! ちょっとサッカーして行かね?」
そんなことを考えていた時、紺野が唐突に言ってくる。
「いいですね。けど、ボールは?」
「へっへー。こんなこともあろうかとっ!」
紺野が楽しそうに鞄からボールを出す。……なんで入ってるの? 教科書はどうしたの?
「結城くんもやっていきますよね?」
「ああ。やってくよ」
長月が聞いてくるのでやると伝える。自主練はまた他の時間でやればいいだけだし。
それよりも、こいつらがどれくらいやれるかを少し知りたい。
先輩がどのくらいなのかはまだわからないが、こいつらのレベルを平均に考えれば大丈夫だろう。
「っしゃいくぞー!」
アップがてら簡単にボールを回す。次第に小技を足したり、パスの今日を大きくしたりしていく。
蹴りながら二人を観察する。
二人ともミスをすることなく相手にパスをできている。要所に混ぜる小技も無理なくこなしているところを見えるので中々上手いと思う。
「──なあ、そういえば二人ってポジション何処なんだ?」
「僕はフォワードですね。紺野君は?」
「俺はキーパー! 隼人は?」
「キーパー以外ならどこでも」
俺の言葉に二人は少し驚いた顔をしている。
まあ大体の人は攻めたいか守りたいかぐらいかは決めてからサッカーをするのだろう。
けど、俺は両方できる。チームが弱かった時、俺がなんでも出来なくては勝てないだろうから──まあ流石にキーパーは出来るとは言えないのだが。
「ふーん。まあ、三人ともレギュラーになれたらいいよな!」
「──そう、ですね!」
長月がシュートする。紺野は勢いのあるそれの正面に移動し、上手く受け止める。
止めて満足そうな紺野はボールを長月に返す。
「良いシュートだな! そろそろ体もあったまってきたし技使っても良いぜ!」
「そうですか! ──ならっ!」
その言葉に火がついたのか、長月が動く。
バックスピンを掛けるようにに軽く上げ、その回転と共にボールに電気が集まってくる。
「──ショットプラズマ!」
その雷弾をゴールめがけて蹴り込む。
「──よしっ!」
そのシュートに楽しくなったのかとても楽しそうな紺野。
手に力を込めているのか、赤い火花が飛び散っている。
「ボムキャッチ!」
火花が出ている方の手とボールが接触した時、その掌が強く爆破し、ボールの勢いが完全に殺される。
それを上手くキャッチし完全に止めた紺野。
「──やりますね。紺野君」
「すっげえシュートだな! 危なかったぜ!」
どちらもが楽しそうにお互いを褒め合う。
なぜ長月は楽しそうなのだろう。シュートを止められたら悔しいだけじゃないのか。
そんなもやもやが心に積もる。
そんな俺の足元にボールがコロコロと転がってくる。
「隼人! 次はお前が打ってこいよ!」
こちらに大声であるシュートを打てと言ってくる紺野。
ちょうどこのもやもやをどうにかしたいと思っていた。全力でボールを蹴れば落ち着くだろうか。
「──ソニックブラストっ!」
思いっきり力を込めゴールめがけて蹴り込む。
そのシュートに紺野は反応することができず、そのまま横を突き抜ける。
「──すっげ。すっげえよ隼人!」
「なんて速いシュート。これに反応するのは難しいでしょうね」
感心してくる二人。まあ当たり前だ。
今の必殺技は何よりも速度を優先して作り上げた技。俺のコントロールでこれを使えば、破れないキーパーなんていないと思うし。
「これならまじでスタメン狙えそうだな! いやー、部活が楽しみだ!」
本当に嬉しそうに喜ぶ紺野。確かにこの二人はレベルは高いと思うし、並レベルの相手なら勝てるだろう。
それでも油断するつもりはない。先輩達が弱くて使い物にならないかもしれない。俺が負傷してしまうかもしれない。
不安は多い。楽しみなど、感じるはずもない。
「──おっ、そういえばもうこんな時間か」
それからしばらくして、紺野が公園にある古ぼけた時計を見て言う。あれが合っているのかは不安だったので自分の時計を見てみるとそう変わりはない時間を指し示していた。
「そろそろ帰りましょうか。明日から部活も始まりますし」
「そうだな! 腹減ってきたし!」
お腹をさすりながら空腹を訴える紺野。俺も一回帰ったほうがいいか。姉貴が余計な心配しそうだし。
荷物を取り、公園を出る俺ら。流石にここら辺の道も一ヶ月したら慣れてきた。
「じゃあ、また明日」
「おう! じゃーなー」
「まあ明日。結城君」
紺野達と別れ、走って家に帰る。明日はっきりする。あのサッカー部がどこまでできるのか。
少しだけ、ほんの少しだけ明日の部活が楽しみになった。
当時のオリオンで萎えたため。アレスがあんま好きになれなかったから書こうと思ったのにね。
イナイレはまた挑戦してみたい。