はい、今自分、沢山の人に囲まれています。
攻略組の皆さんは勿論のこと、その他のプレイヤーも多数います。
これは、逃げられませんね。
「何でや!」
キバオウさんが、真っ直ぐこちらを睨みつけてきます。
「何でこないなことしたんや!」
「……それは、すまない」
「何が目的や!? 金か! 金なんか!」
そうです。
あ、いや。
「違う」
勿論お金もありますが、お金だけの為にこんなことしませんよ。
もっと色々あります。
「ジブン、許されると思っとるんか? わいが許すと、本気で思っとるんか!?」
「それは」
「やってええことと、悪いことがあるやろがい!」
「本当に、すまない」
「っ、なぁ、何でや、返答次第によっちゃ、許さへんで」
キバオウさん、ガチギレです。
「それは……」
「っ! もうええわ!」
キバオウさんが武器を抜きました。
「やったる、やったろうやないかい! 覚悟しいや!」
キバオウさんからデュエルの申請が送られてきました。
キバオウさん、完全にこちらを殺る気で睨んできています。
間違いありません、目を見ればわかります。
これは、あれですあれ。
おこなの? 激おこなの? 激おこぷんぷん丸なの? ムカ着火ファイヤーなの? カム着火インフェルノォォォォオオウなの? 激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームなの?
ってやつですね。
何でしたっけ、これ? 何かの6段活用でしたっけ?
「早よしんかい!」
「ああ」
キバオウさんからのデュエル申請を受けましょう。
デュエルは受けると開始前に60秒の猶予時間があります。
「弁明すんなら今のうちやで」
「すなまかった」
「すまなかったやないやろ! わいの気持ち、考えたことあるんか!?」
ないです。
「っ! まあええわ、うだうだ言うててもしゃーない、ヤるで」
殺る気満々ですね。
キバオウさん敵対ルートはこれがあるから嫌なんですよね。
「やっちまえ! キバオウ!」
「負けんじゃねぇぞ!」
キバオウさんに、野太い声援が送られています。
「俺はあんたに1万コルかけてんだからなー!」
「俺は3万コルだ!」
「俺は全財産かけてんだ! 負けんじゃねぇぞ! ……10コルだが」
キバオウさん、なかなか応援されてますね。
「ヒー君! がんばってくださーい!」
「さあ! 遂にこの時がやって参りました! みなさんお待ちかね、第一回キバオウvsヒャッカ君の決闘です! 司会は私、ドラゴンテイマーのシリカと!」
「鼠のアルゴがお送りするヨ」
「そして! 何と今回! あの攻略組の中でもNo.1の実力を持っていると噂の、あの方が解説席に来てくださっています! ブラッキーこと、キリトさんです! どうぞ!」
「……何で俺がこんなこと」
「キー坊、早く自己紹介しナ」
「……キリトです、よろしく」
「「「「「おおおおおお!!!!!」」」」」
「な、なんだ!?」
「みなさん知っての通り! キリトさんは第一層フロアボス攻略の際、βテスターに対する風当たりがとても強かったにもかかわらず、崩壊しかけた戦線を支える為、βテスト時代の知識を惜しみなく披露して見事ボス攻略を死者ゼロに抑えた立役者です!」
「いや、俺はそんな」
「またまた御謙遜を〜、サツキ様がおっしゃっていましたよ、キリトさんがいなければ、ヒャッカ君は危なかったと、ヒャッカ君もキリトさんのことを命の恩人と言っていましたし」
「え?」
「おおっと! もう直ぐ決闘が始まります! 解説のキリトさん! どちらが勝つと思いますか! やっぱり、キバオウさんでしょうか? いくらヒャッカ君が小さな英雄とはいえ、あれだけの体格差がありますし、何より、ヒャッカ君はソードスキルを使えないようですからね」
「いや、勝つのはヒャッカだ」
「おおっと!? 解説のキリトさん、まさかの断言! その根拠は?」
「実際にヒャッカの実力を知っている攻略組の奴らは、ほぼ全員ヒャッカに賭けている、それが根拠じゃ薄いか?」
「そうなのですか!? 因みに、もう賭ける対象の変更はできませんので、ご容赦くださいね!」
「キバオウに賭けた奴ハ、残念だったナ」
「さぁ! デュエルが今始まりました! おおっと!? どう言うことでしょう? 両者全く動きません! これは、素人にはわからない高度な駆け引きというやつなのでしょうか!? 解説のキリトさん!」
「いや、あれは単にヒャッカがいまだに武器を抜いていないから、キバオウが攻めていないだけだろう、キバオウはプライドが高いからな」
はい、キバオウさんとの決闘です。
キバオウさん敵対ルートに入ると、キバオウさんから決闘をふっかけられます。
その時の様子がこちら。
「おいガキ! ジブンいつまでソードスキル使わん気や!」
「それは……俺は」
「事情があるのは分かっとる」
「……ああ、そうだ」
「ジブンの気持ちが分かるとは言わへん、わいにはその感覚がわからへんからな、せやけど、ソードスキルが強力なことはジブンも分かっとる事やろ」
「そうだ」
「なら、いつまでも逃げてへんで、克服せなあかんのとちゃうんか! いつか、ジブンがソードスキル使えへんかったから誰かが死んだ、なんて事になったらどないするんや! 誰よりも後悔するのはジブンやで! 使えるものは何だって使わへんと、このゲームの攻略なんて夢のまた夢やぞ!」
「……だが、俺はまだ戦えている」
「分かっとるわ、ジブンが強いっちゅうことくらい、せやけどな! ……やめや、もうええわ、言葉での説得なんてわいには似合わへん、はぁ……決闘や」
「何?」
「わいと決闘しぃ! そんで、ジブンにソードスキルの強さっちゅうもんを叩き込んだるわ! もしわいが勝ったら、無理やりにでもソードスキル使うてもらうで!」
ってことがありまして、その日は決闘の日付と場所を伝えて別れました。
で、キバオウさんに何も告げずにその場所に人を呼び込んでおおごとにしたら、キバオウさんにキレられたわけです。
このデュエル、負けたらリセットです。
縛りプレイがキバオウにバレてしまうので。
しかも、これ以降自分が負けるか、キバオウさんが攻略組からいなくなるまで週に1回必ずデュエルをやることになります。
はじめの1年は、ギリギリ勝てます。
ですが、2年目になるとかなり厳しくなってきます。
因みに、キバオウさんには、敵対ルートともう一つ、通常ルートがあって、それぞれ能力が特化する方向が違います。
通常ルートキバオウさんは、全体指揮特化型キバオウさんです。
キバオウさんは、ディアベルさんのギルドの副リーダーなのですが、ディアベルさんがボス戦では前線で戦いたい人、というよりラストアタックが欲しいざむらい、あ、ナイトか、ラストアタックボーナス取らナイトです。
なのでディアベルさんは、ボスを攻撃している最中の全体指揮を任せられる人間を育てようとします。
それで、白羽の矢が立つのがキバオウさんです。
ま、ディアベルさんにはラストアタックボーナスは一切取らせませんが。
そして後々は、リーダーのディアベルさんは指揮ではなくアタッカーメインになって、副リーダーのキバオウさんが完全に指揮官になります。
それが全体指揮特化型キバオウさん。
そして、今回の敵対ルートのキバオウさんは、対人戦特化型キバオウさんです。
この対人戦特化型キバオウさんは、対人戦闘の鬼、いや、王です、マジヤバイです。
どれぐらいヤバイかと言いますと、二刀流キリトにも、神聖剣ヒースクリフにも片手剣で勝った、といえば分かるでしょうか。
流石に正体がバレた超本気ヒースクリフを相手にしたらわかりませんが、強くなりすぎます。
そしてこの対人戦特化型キバオウさんは、ソードスキルを使ってくるボスにもかなり強いです。
ずっと自分と決闘しているせいで、そんな化け物になります。
キバオウさんは隠れた努力家です。
全体指揮特化型キバオウさんの時は、ディアベルさんから指揮の取り方等を直接指導してもらって、夜パーティメンバーが寝静まった後に、アルゴさんから取り寄せた指揮に関する本をずっと読んでいます。
対人特化型キバオウさんの時は、夜、パーティメンバーが寝静まった後、アルゴさんから取り寄せた今現在判明しているソードスキルの技名、モーションの起こり、軌道、威力、基本的な硬直時間などを全て頭に叩き込んで、日夜イメージトレーニングを欠かしません。
相手がこのソードスキルを使ってきたら、どう対応するか、どうすれば有利を取れるかを日夜研究し続けています。
自分はソードスキルを使わないんだから無駄じゃない? とは思うかもしれませんが、ソードスキルの強さを自分に教えることを目標にしているため、ソードスキルは全て知っとかなあかん! って感じで頑張っているんですよね。
そのおかげで後々は対人戦の王に。
どちらのルートにも、メリットデメリットが存在します。
まず、敵対ルートキバオウさんのメリットは、亜人型ボスの攻略がかなり楽になることですね。
ソードスキルを使ってくるボスはかなり辛いです。
でもその辛さが、このキバオウさんがいるだけでだいぶ楽になるという大きなメリットが存在します。
次にデメリットなのですが、毎週1決闘分の時間が奪われることと、縛りバレの危険性がかなり高まる事です。
これ以降、迷宮区でキバオウさんと会うと、もともといたパーティから離れて自分の後ろをずっと付いてくるようになります。
そして、自分の一挙手一投足をずぅーっと観察して来ます。
自分がどうやって体を動かしているのか、剣を振る時はどうやって振っているのか、武器に体重を乗せるやり方や、体勢を崩した状態からの攻撃方法などなど、つぶさに観察されます。
そして、それを生かして決闘の時、自分の動きを読もうとしたり、キバオウさんが自らの動きに取り入れたりしてきます。
もう分かっているとは思いますが、ずーっと観察されるので、これと、決闘での敗北によって、何度も縛りバレが起こりました。
次、全体特化型キバオウさんのメリットは、まず決闘をふっかけてこないので、時間が奪われることがありません。
それに縛りバレの危険性も少なくなります。
デメリットは、ソードスキルを使うボスが厳しくなることです。
「いつまでぼーっとしとるんや! はよ剣抜かんかい! もう決闘は始まっとるで!」
「こないのか? 先手は譲るぞ? どこからでもかかってこい」