さて、ではサツキさんと合流して、ボス戦に戻りましょう。
はい、戻ってまいりました。
では、ディアベルさんに頑張って働いてもらって、自分はゆっくり休ませてもらいましょう。
いやー、他人が頑張っているのを横目に惰眠をむさぼる、これほどの贅沢はありませんね!
頑張ってください! ディアベルさん!
では、お休みなさい。
……は、い、あ、たまが、まわら、ない、です。
ね、おき、つら、い。
う、ああ。
バシン!
……はい、目が覚めました。
ボスに強烈な一撃をもらいました。
このボス攻撃力が低いので、助かりましたね。
では、ポーションを飲んで戦闘再開です。
はい勝利。
時間はかかりますが、このボス戦で負けることはありませんからね。
はい、では、ここから、キリトさんの動向に気をつけましょう。
キリトさんのギルド、キリトさんがボス攻略中に崩壊してしまっていますからね。
でもこのイベントをやっているのとやっていないのとでは、キリトさんの最終的な強さがかなり違ってしまいます。
なので必要なイベントです。
波乱万丈なほうが成長する、さすが主人公って感じですね。
死んでいない人が1人いますが、1ヶ月以上アルゴの情報屋ギルドが全勢力をかけても見つけられないとなると、もう何かしらのバグで線が引かれてないだけだとか、変な次元の裂け目に落ちたとか、とにかく諦めろと、周囲から言われるようになります。
でも、キリトだけは諦めません。
探し続けることはしませんが、最前線で戦いながらも、彼女の生存を信じています。
しかしそれも次のクリスマスまでです。
そこでしっかりと心の中で決別してくれるので、なんの問題もありません。
で、ここなんですけど、今現在キリトさんにどれだけ疑われているかがわかるポイントでもあります。
ボス戦後、ギルドメンバーがほとんど死んでいるとわかった時、キリトが真っ先に自分に、先ほどのボス戦の途中で部屋を抜けだした時に、何をしていたかを確認に来た場合、もうかなり何かしら疑われています。
マジでギリギリです。
で、数時間後に確認して来たら、ある程度疑われています。
で、1日後以降確認された場合、ほぼ疑われていません。
今回は大丈夫です。
キリトに疑われる致命的なミスは何一つやっていませんから。
ボス戦とかでいい動きをしていますが、最初っから変に疑われてさえいなければ、その程度の違和感は問題ありません。
その違和感を解消するための自分のキャラクター設定はちょいちょい小出しにしていますからね。
アバターも作り物って感じではないですし、今回は完璧です。
なので、キリトと会うのは1日後以降に、
「ヒャッカ!」
……あれ? キリトさん? うっそだろおい!?
速攻話しかけて来たよ!
疑われてる!? めっちゃ疑われてるやん!? なんで!?
ま、まて、落ち着け、他の用事かもしれない。
そうだよ、何か用事があったんだ、疑われているわけじゃない。
落ち着こう、大丈夫だ。
「どうしたんだ、そんなに慌てて?」
「さっきのボス戦を抜け出した時、何をしていた?」
ぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!!! 完っ全に疑われてるぅぅぅぅぅ!!
なんで!? あり得ないって!? どういうことだってばよ!?
なんでいつの間にこんなに疑われているんだって!? なんも今回悪くなかったでしょ!? どうして!?
やっべっぞ!
……さて、本気で行きますか。
なぜか疑われていますが、ここ、まだ挽回できます。
ですが全力の演技が必要です。
キリトのハイパーセンスを完全に騙しきる演技が。
ここはふざけられる場所じゃありません、マジでいきましょう。
「なにって、はじまりの街に戻ってシリカと打ち合わせをしていただけだが? 週一で行なっているキバオウとの決闘の打ち合わせだ」
「それ以外には?」
「それ以外? あとはポーションを買ったりしたが……えっと、なにが聞きたいんだ?」
「……いや、なんでもない」
「待て!」
キリトはこれで帰ろうとしますが、ここは絶対に帰してはなりません。
疑われたままですと、どこかで見かけられたら必ず隠蔽してついてくるようになります。
その時の、キリトの高度な隠蔽には絶対に気づけないので、もしそこでオレンジプレイヤーを餌にしていたり、堕落した攻略組をちょめちょめするとお終いです。
……ほんと隠蔽大っ嫌いです。
アルゴもキリトもこれがあるから辛いんですよね。
なのでこの2人には絶対に疑われたらダメなのに。
話が逸れましたね。
「キリト、何があった?」
「……」
「いつもと明らかに様子が違うぞ、キリト、何があったのか俺に話してくれないか?」
「お前に話すことじゃない」
「俺たちは、同じ攻略組の仲間だろう?」
「お前は! ……すまない」
ひゃぁぁぁあ!!!! めっちゃ疑われてるやん!
「……俺に出来ることがあれば全力で協力する、今のお前を、放っては置けない、頼む、教えてくれ」
「……」
とりあえず、ここからは黙っておきます。
「……」
「……ギルドの、みんなが……」
「……」
「ボス戦の後、誰も、いなかったんだ、宿にも、ギルドホームにも、何処にも」
「……」
「メッセージすら、返信がなくて……はじめはみんなで迷宮区に行っているんだと思った、だけど、強烈に嫌な予感がして、黒鉄宮の石碑を見に行ったんだ……そしたら、ケイタも、テツオも、ササマルも、ダッカーも……横線が」
「……まさ、か」
「ああ、俺たちが、ボス戦をしている最中に……」
「……ぁ、ぁぁ」
「死・は・・・だから・・くモ・・タ・・・・」
「……ぁ、ぉ、俺の、俺、俺が」
「俺・・・な・だ・・て・・か・・・れ・せ・だ、でも! ・・・ま・生き・・・」
「……お、れの、せいで……」
「だか・・・ッカ! ヒャ・・ど・し・?」
「俺が、俺がキリトをボス戦に誘ったから、ぁ、あああ! ぼく、僕のせいで……ひ、人が、しん、だ、あ、ぁぁぁ」
「ヒ・・・、おいヒャッカ!」
「僕は、また人を、ぁぁぁ!」
「……また?」
「……ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「お、おい! どうしたヒャッカ! 落ち着けって!」
「ヒッ! ごめんなさいおとうさんおかあさんごめんなさいごめんなさいふできなこどもでごめんなさいのぞまれていなくてごめんなさいいうことまもれなくてごめんなさいよわくてごめんなさいすぐできなくてごめんなさいないてごめんなさいうるさくてごめんなさいすぐたてなくてごめんなさいうでがおれてごめんなさいあしがはずれてごめんなさいめでおえなくてごめんなさいいらないこでごめんなさいうまれてきてごめんなさいしんでいなくてごめんなさいいきていてごめんなさい」
「おいヒャッカ!」
「おとうさんおかあさんを、ころしちゃって、ごめんなさい」
「っ!?」
「……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
……
はい。
ふぅー、疲れました。
多分これで騙せたと思います。
これによって、キリトさんからの疑いはかなり晴れます。
さて、ここからは死んだ目をして自分の命なんてどうでもいいという演技をしながら攻略を頑張っていきましょう。
死んだ目はずっと練習してきましたから、もうバッチリです。
たとえ叫びながらでも、笑いながらでも、ずっと死んだ目をしていられます。
世界死んだ目大会とかあったら間違いなく優勝できる自信があります。
自分の誇れる特技の一つですね。
当然のことですが自分の命は大切です。死んだらリセットなので。
でも、疑いを晴らすにはこれくらいやらないといけないので、HPが赤くなってもこれ以降はボスに突撃したり、HPを回復しないで戦ったりします。
他人に指摘されたら、ああ、見ていなかった等と言い、ポーションを飲んですぐ突撃したりしましょう。
ポーションはじわじわとゆっくり回復していくので、飲んですぐにはそれほどHPは回復しません。
でもだからこそ、自分の命をどうとも思っていない演技ができるわけです。
それにしても、なんでここまでキリトさんに疑われていたのでしょうか?
誰かをちょめちょめしている最中などの致命的なものを見られていたら、もうすでに攻略組から追い出されるか、周囲から断罪されているはずなので、まだ何かしらの疑惑という段階なのですが。
縛りプレイをしているんじゃないか疑惑ではないです。
縛りプレイをしているかもしれないからお前がケイタたちを殺したのか!?
とはなりませんからね。
恐らくレッドプレイヤー疑惑を持たれているのでしょう。
まずいですね、ある程度疑惑は晴れたとはいえ、これ以降容易にそれらを行うのはリスクが高そうです。
残念。
ま、まだやるんですがね。
さて、そろそろ25層が近づいてきましたね。
今、攻略速度は少し落ちてきています。
とはいえほんの少し程度なので、現状はまだ大丈夫ですが。
現状、攻略組はディアベルさんのギルド1強状態です。
ここまではこの状態の方が早いのですが、これ以降このままの状態ではペースは下がる一方となります。
そろそろもう一つ、ヒースクリフのギルド、血盟騎士団に頑張ってもらいましょうか。
この段階で2強状態にすれば、落ちてきているペースが戻るのでね。
で、ディアベルさんの支持基盤は現状かなり盤石なのですが、25層のボス戦で何人か死ぬので、そこで支持基盤がかなり揺らぎます。
そこに、実はディアベルさんはβテスターだったとか、指揮を他人に任せて攻撃に出てるのはラストアタックボーナスが欲しいからで、現にボスのHPがかなり低い時によくボスを攻撃しに行っているとか、ディアベルさん、実はリアルでは禿げているらしいとか、実はあの顔リアルで整形したらしいぞ、とか、外見は爽やかだけど、部屋の中はゴミ屋敷らしいとか、とにかく色々な噂を流しまして、ディアベルさんのネガティブキャンペーンを開始いたします。
噂を流してくれるのは、最初に助けた人の中で、かなり自分のことを神格化していて、とっても口が軽い人に任せます。
その人に、俺が言ったことは内緒にして欲しいが、どうやらディアベルさんは……とかの話をすると、すぐにプレイヤー全体に伝わって、しかも自分が噂の発生源ということを決して話さないでくれます。いい人ですね。
もちろん、もう時間が経っているせいで、βテスターとの確執とかはほとんどのプレイヤーは抱えていませんし、実際に禿げているかなんて全く知りませんが、これを行うとディアベルさんのギルドの数名がギルドを抜けてフリーになります。
そこをすかさずヒースクリフがギルドに勧誘するので、これで血盟騎士団とディアベルのギルドの戦力が、だいたい横並びになります。
ディアベルさんのギルドの主力の1人、キバオウさんも血盟騎士団に所属することになりますからね。
キバオウさんが赤と白の派手な制服を着ているのは、ちょっと面白いです。
この状態だと、落ちて来るペースが回復します。
ではでは、25層のボス戦が終わったら、有る事無い事たくさん話しましょうか。
これ、とっても楽しいです。
なので時が来たら、死んだ目をしながら楽しみましょうか。