さて、キバオウさんとの決闘が終わったので、とりあえず確認いたしましょう。
何をって? アルゴさんのことをですよ。
今、十中八九アルゴさんにつけられています。
なぜかと言うと、あれだけキリトさんに疑われていたからです。
キリトさんはある一定以上自分を疑ってきた場合、アルゴさんに条件付きの調査依頼を出します。
その条件とは、自分の情報を欲しがっていることを誰にも知らせないで欲しいと言うものです。
通常のアルゴさんなら、自分に対して、
「ヒー坊の情報を欲しがっている奴がいるけど名前を買うカ?」
的なことを知らせてくれます。まあ、自分はコル払えないので、元々その情報を買うことはできませんが、誰かが自分を探っていると言うことはわかるわけです。
ですがキリトさんや一部のかなりお得意様に対してだけ、アルゴは商売のルールを曲げます。
売れる情報はなんでも売るアルゴさんでも、友人は売らないわけです。
で、この状態の場合、自分の場所を特定された後はしばらく追跡されることになります。
だいたい街中に3時間いると、ほとんどの確率でアルゴさんに情報が伝わって追跡されます。
で、今回はデュエルで居場所が分かっているので、キリトさんからの依頼がある場合や疑われている場合はほぼ確定で追跡してきます。
一応転移門を使って、すぐに2度転移したり、転移結晶を無駄遣いすれば撒くことは可能ですが、今回は一応追跡されているか確認したいため、振り切ることなく砂漠のある層に転移して、現在つけられているかを確認しておきましょう。
はい、現在砂漠マップです。
ここ、隠蔽をしていても足跡がしばらく残るため、誰かに追跡されているかを確認するのに使えます。
もちろん、アルゴさんではない他のプレイヤーもうろついていますので、足跡が複数あるのですが、自分はアルゴさんとキリトさんの歩幅と足の大きさは完全に覚えているので、無数の足跡からでも見つけられます。
さて、つけられているかなー?
最初に通ったところを数時間後にもう一度通りがかり、増えている足跡の中からアルゴさんかキリトさんの足跡に当てはまるものがあるか確認しましょう。
これ、足跡をガン見して調べてはいけません。
そうするとそれ以降、アルゴさんは靴のサイズを変えて、歩幅を意図的にずらしてきます。
どうしてもアルゴさんが付いてきていてはまずい時に、またこの方法でつけられているかを確認するので、ここで警戒はさせてはいけません。
ふむ、やっぱりアルゴさん、隠蔽でついてきていますね、アルゴさんの足跡が残っています。
これはしばらく悪いことを控えましょうか。
まあ、だいたい必要な処理などはもう終わってるので、しばらくは大丈夫ですかね。
では、しばらくはおとなしく通常プレイを頑張りましょう。
はい、現在40層までやって参りました。
当然もう死んだ目状態は解除しています。
死んだ目状態の時にサツキさんに絡まれたりはしましたが、他には何事もなかったので、ここしばらくはずーっとぼーっとプレイしていました。
特に大きな変化はなかったのでね。
あー、でもなぜか今回キバオウさんの成長速度がいつもよりほんの少し早いんですよね。
それと、キリトさんのレベルもすこし低いです。
まあ、誤差の範囲内なので、あまり気にしなくてもいいですが。
キリトさんのレベルが低いのは攻略ペースがかなりいいからっていうのもありますしね。
それにしても、いつもより低いようなって気はしますが、まあ大丈夫でしょう。
現在はまだレッドギルド、ラフィンコフィン、ラフコフは結成されていません。
あー違うな、ラフコフのメンバーはだいぶ集まってきてはいますが、まだ表には出てきていません。
彼らのギルドは、自分が何もしなければゲーム開始1年後の大晦日に表に出てきます。
階層でいうとちょうど50層あたりですね。
ラフコフは、フィールドの観光スポットで野外パーティ楽しんでいた小規模ギルドを全滅させる劇的デビューを果たします。
しかし、それ以前からレッドプレイヤーというのは現れます。
睡眠PKは、大晦日の数ヶ月前、秋口あたりで手口が一般にも広がります。
階層でいうとちょうどこの40層を少し過ぎたくらいですね。
今回は攻略ペースが早く、まだ夏場ではありますが、もう40層なので、そろそろ睡眠PKでの被害者が表に出てき始めます。
で、この40層が解放されて4日後、つまり今日、体感9割くらいでとあるレアアイテムが手に入るイベントが起こります。
そのレアアイテムは、もう既に手に入る可能性があるため、自力で2つ入手できていれば回廊結晶が手に入るのですが、今回は1つしか手に入らなかったので、レアアイテムをとります。
今回、そのレアアイテムをドロップするレアモンスターが全然目の前に現れてくれませんでした。
すこし離れたところに出てきたことは何度かあったのですが、そのモンスター、小さくて全身真っ黒で、なによりとにかく素早くて、自分の敏捷では接近して倒すことは不可能なので、いつも武器を投げて倒しているのですが、今回は投げた武器が一度しか当たらず、他は全て逃げられてしまったため、必須級レアアイテムが今だに1つしか手に入っていません。
なので、このイベントに期待しています。
絶対に2つ欲しいアイテムですから。
ほんと、あのレアモンスター嫌なんですよね。
かなりいいアイテム落とすのに、全然攻撃が当たらずに逃げられますから。
HPも耐久もまるでないので、1度でも攻撃が当たりさえすれば倒せるのですがね。
まあ、9割くらいの確率でここでもう一つ手に入るので、今回はかなりそれに期待しています。
因みに、小さくて黒くて素早い、で、Gを連想された方がいるかもしれませんが、そのモンスターはトカゲです。
では、まずは誰にもつけられていないかを確認した後、圏外のとある場所で待ちます。
さーて、今回は来てくれるかな?
……来ましたね。よし! 良かった! マジで! ぁぁぁぁ良かったぁぁぁぁ!
9割引けましたね。
目の前に1人のオレンジプレイヤーが現れました。
もうすでにそのレアアイテムを2つ手に入れている場合は、ここでこの男をコロッとします。
何故なら回廊結晶が手に入るのでね。
その回廊結晶は、既に転移地点が登録されてしまっています。
ですが、その転移地点はとある宿屋の一室に登録されているので、そこに不要なプレイヤーを誘導すればまだ使えますから。
「コリドー・オープン」
いーなー回廊結晶、ほんと回廊結晶はいくらでも欲しいですよ。
で、そのゲートにオレンジプレイヤーが入っていきました。
そして、数十秒後男女2人の人間が戻って来ました。
1人は眠ったままストレッチャーで運ばれていますがね。
彼女の名前はグリセルダさん、ギルド黄金林檎のギルドマスターです。
はい、今自分が隠れている近くでオレンジプレイヤーはグリセルダさんをストレッチャーから降ろしました。
そして、武器を取り出して、サクッと突き立てようとしています。
では、止めに入りましょう。
自分、聖人君子ですから。
目の前で人が殺されそうになっているのに、見捨てるなんて出来るはずもありません。
助けないわけにはいきませんよね?
ではでは、できるだけ音を立てずにオレンジプレイヤーの背後に速攻で近寄って、首チョンパっと。
圧倒的レベル差によるクリティカル大ダメージ、まあレベルの低いこのオレンジプレイヤーが自分の攻撃に耐えられるはずがありませんよね。
一撃でさようならーとなります。
オレンジプレイヤーには人権がありませんから、コロッとされても文句はありませんよね?
いやー、人を守るのは気持ちいいですね!
じゃあ、グリセルダさんを守った報酬として、彼女からとあるレアアイテムを頂きましょう。
彼女の指を動かしてウィンドウの可視化、そしてアイテムストレージからとある指輪をオブジェクト化っと。
はいゲット! いやっふー!
なんと! この指輪、敏捷が20も上がる素晴らしい装備品です!
いやー、人助けして、いい装備品も手に入って、今日はいいことずくめですね!
指輪は片手に1つずつ、つまり2つしか装備できません。
もし、10本全ての指に指輪を装備できるのなら、この指輪をあと8個粘って、敏捷を200上げるのですがね、残念。
まあ、これで合計敏捷40上昇なので、いいですがね。
さて、もうグリセルダさんは用済みなので、そのままさよならします。
他のアイテムやコルも欲しいところではあるのですが、昔それをやっていて目を覚まされた時があったので、ここでさよならします。
彼女はわざわざコロッとする必要はありません。
ここのモンスターに殺されるか生き残るかとかは、もうどうでもいいです。
何故なら、もう直ぐに睡眠PKが自然と一般に広まってしまうので、ここで彼女が生きていても死んでも自分には関係ありませんから。
いやー、敏捷がここまで早くなるといいですね。なかなかに楽しいです。
今! 自分は風になっている! ヒュー!
因みに、何故グリセルダさんが殺されそうになっていたかと言いますと、まあ痴情のもつれ的なやつです。
彼女と結婚しているグリムロックさんという方がいるのですが、その方がオレンジプレイヤーに依頼してグリセルダさんを殺してもらおうとしていました。
回廊結晶はギルドメンバーに頼んで宿屋の部屋に転移地点を登録してもらって、それをオレンジプレイヤーに渡したそうです。
グリセルダさんとグリムロックさんは、リアルでも夫婦らしいのですが、グリセルダさんはこのゲームをやって変わっていき、その変化に耐えられなかったグリムロックさんが、彼女は永遠に私のものだ! 的な感じで殺してもらおうとしていたそうです。
ヤンデレかな? 男のヤンデレとか、興味ないですね。
まあ、リア充には是非とも爆発してもらいたいものですが。