はい、アストグリフゲットです。
よかったよかった。
え? どうやったかですって?
今回は食料で釣ればなんでもいうことを聞いてくれる女性がいますからね。
具体的には、まず軽い食事を渡して、会話が出来るようになったら、彼女が閉じ込められる原因となった黒幕の話をして、3日間放置して、食料を持って彼女に会って、食事が欲しければ俺の言うことを聞け、と言って、ここでは断られますが、食料を渡さずに帰って、5日間あけてまた来れば結婚してくれます。
いやー、優しい人です、こんな自分と結婚してくれるプレイヤーがいるとは! 感謝ですね、全く。
結婚するとその相手と自分のアイテムストレージが共有化されます。
なので、自分のアイテムストレージ内にあるアストグリフを彼女は取り出せるわけです。
で、その女性にアストグリフを取り出してもらって、即離婚してからアストグリフと食料を交換しました。
この時、アイテムストレージ内に転移結晶があったら逃げられるので、絶対に持ち込まないようにしましょう。
自分はアストグリフが欲しい、彼女は食料が欲しい、まさにwin-winの関係ですね。
この女性は普通に口説いても攻略不可能でしたが、こうやって、脅して、餌を与えて、ゆっくり調教していくと攻略できます。
まあ、攻略後も油断してると逃げられてしまいますが。
勿論今回はそんな時間はないので攻略しません、このまま放置です。
よかったよかった。
アストグリフの性能は、とても自分に合っています。自分の専用装備といっても過言ではないレベルです。
まず、長さは少し長めの片手剣といっても通じる長さで、重さは性能の割にはかなり軽いです。
一応今の自分でもギリギリ扱い切れる程度の重さです。
自分レベルアップボーナスが振れないので、例えばキリトさんのエリュシデータとかダークリパルサーとか手に入れても全く筋力値が足りず扱いきれません。
それなのにもかかわらず、アストグリフは他の75層までで手に入るどの片手剣よりも攻撃力が高いです。
まあ、アストグリフはカテゴリー的には両手剣ですし、レアモンスターのレアドロップで出てくる武器なので当然ですね。
リーチが短いのは両手剣にしてはデメリットでしょうが、それが逆に自分が片手剣として扱っていても違和感をいだかせません。
他人からはアストグリフは片手剣と見てもらえます。
自分ソードスキル使えないので、両手剣を片手剣として扱ってもなんの問題もないわけです。
つまりこの武器が75層までで自分が扱える最強装備ということです。
勝ったな。
さて、街に帰りましょうか。
あー! いける! これは絶対行ける! やっと! やっとクリアが見えてきた!
よし! 今回もう行けるだろこれ! 逆に行けない可能性ある? 無いよな!?
うっし! 気合い入れ直しましょう!
はい、街まで戻ってきました。
話は変わりますが、最近、ふと思うことがあるんですよ。
自分、サツキさんに好かれてね? って。
弟としてじゃなくて、異性として。
これは仮説なのですが、自分今までよりもサツキさんの好感度は稼げている気がするんですよ。
で、サツキさん行動が結構変化してるじゃ無いですか。
それって自分を好きだから、とかなんじゃないかなーって。
だってめちゃくちゃ心配してきますし、お化けが出る階層では必ず一緒に寝ようと誘ってきますし、その時一緒にお風呂に入ろうって誘ってきましたからね。
これは誘ってるのかな?
え? その時はどうしたかって? そりゃ自分RTA中ですから、ね。RTA中にタイムの無駄遣いなんてする奴いるはずないじゃないですか。
皆さんのご想像にお任せします。
いやでも、自分絶対サツキさんに好かれてるよ! 間違いないってこれ!
……いや、わかる落ち着け、分かってるから! それは自分の勘違いだって分かってるから!
思春期とかとうの昔に通り過ぎてるけど、思春期特有のイタい勘違いってのは分かってるから!
サツキさんは自分のことを単なる弟としか思ってないなんてよく理解できてるから!
でもたまには夢見たって良いじゃないですか!? 悪いですか!?
いやー、本当に好かれてたらどうしよっかなー! だってサツキさんと付き合ったら攻略ペースが落ちるしなー!
仕方ないから断るしかないか! いやー、モテる男は辛いねぇ!
さて、で、サツキさんの位置を知るのは案外簡単です。
サツキさんは女性で美人で攻略組で巨乳でと、そりゃもう超有名人ですよ。
アスナさんと同等くらいの知名度を持っていますからね。
サツキさんを知らない人とかもうプレイヤーにはいないんじゃないかってレベルです。
なので、サツキさんが住んでいる街を適当にうろついておけば、色々な人がサツキさんについて話しているので、それで大体どこにいるかが分かったりします。
さーて、サツキさんはどこにいるかなー?
「おいおい! 聞いてくれよ! サツキさんが! さっき!」
「何だ? そんなに慌てて、どうした?」
お、いきなりサツキさんの話をしている2人組を発見しました。
ちょっと聞いていきましょう。
「俺、俺見ちまったんだよ!」
「何見たんだよ?」
「俺、さっきアイツがやってる雑貨屋で、サツキさんを見たんだよ!」
お、サツキさんは今どこかの雑貨屋にいると。
情報が出てくるのが早いですね。
さっきって言ってるぐらいですから、恐らくこの街の雑貨屋ですかね?
で、アイツがやってるっていう発言から、NPCではなく、プレイヤーの雑貨屋ということはわかります。
ですが、確か今の時期は、この街にはプレイヤーの雑貨は2つあったはずです。どっちですかね?
えっと、今話している彼等は、確かクロードさんとメフィストさんでしたっけ?
で、この街の雑貨屋さんは、たしかカミュさんとフレデリックさんがやっていたはずで、この2人の関係者となると、……えっと、カミュさんかな?
てことは、恐らく西の雑貨屋ですね。
では、まだサツキさんがその雑貨屋にいるかもしれないので、そこに向かいますか。
「それがどうした? 何も慌てることじゃないだろう?」
「そ、それがな! 1人じゃなかったんだって!」
ん?
「男連れてたんだよ! しかも結構仲よさそうなのな!」
……え?
「お前そういう話好きだよな、どうせあれだろ、その男は同じギルメンとかなんだろ?」
「違うって! ……良いか、よく聞け、相手の男はな、あのブラッキーさんなんだよ!」
……え? ブラッキー? ……キリト?
え? ……ええええええええええ!!??!?!?
ちょちょちょちょちょちょちょちょ、ちょっ待てよ! き、キリトと2人で買い物? デート? 親しそうだった?
ギャァァァァァァァ!!!!
ダメだって! それだけはダメだって! キリトと2人っきりとか、すぐにサツキさんキリトに攻略されちゃうって! サツキさん付き合ったら攻略速度落ちるし! キリトさんがアスナさん以外と付き合ったら茅場倒してくれなくなって、ギャァァァァァァァ!!!
「い、いや、でもよ? ブラッキーさんも攻略組だろ? だから攻略に必要なものを買いに来てたって可能性の方が高いだろう?」
そ、そうだ! それだれそれに違いない!
「いーや違うね! だってサツキさんがあの雑貨屋で買ってたのは補正がほとんど何もないネックレスだぜ? そんなもの攻略には必要ないだろう? しかもサツキさん、そのネックレスを見ながら微笑んでたんだが、あれ、完全に惚れた女の顔だったぜ?」
ギャァァァァァァァ!
なんで!? いつの間に!? サツキさん、自分に惚れてたんとちゃうんか!?
キリトォォォォ!! 勝手にフラグ立ててんジャネェェェェ!! オメェにはアスナさんっていう嫁がいんだろうが! おいやめろくださいお願いしますからキリト様ぁ! 今回こそいけそうやって言ったばかりじゃないですか!
サツキさんが自分に惚れるわけなかったんや、自意識過剰、勘違い乙?
ああそうですよ! 自分の痛い勘違いでしたよ! 悪かったですね!
お、おおおおお、おち、おつ、落ち着け、だ、だだだだい、大丈夫、ま、まだ付き合ってると、き、決まったわけでは、な、ないは、無いはず、だ。
い、いい、急いで、か、かく、に、確認を。
はい、今西の雑貨屋に向かっている途中です。
自分、信じてたんです、さっきの彼等の話は何かの間違いで、サツキさんはキリトと付き合ってはいないって。
でも、今自分の目の前にサツキさんとキリトさんがいるんですよねぇ。
しかもまあ随分と楽しそうに話していますね。
「・・くんのプ・ゼン・え・び、・つだ・てくれ・ありが・うござ・ました」
うーん、ここからでは会話はよく聞こえませんね。
「いや、・・ちこそ」
もう少し近寄りますかね?
でもキリトにバレそう、むしろもうバレてそう。
一応周りにはたくさん人はいますし、目線も視界の隅ギリギリで2人の姿を捉えるようにしているのでバレてはいないと思うのですが。
「・・くん、き・いっ・て・・ます・・?」
「ああ、きっと・・いる・ずさ」
うーん、なんの話をしているのでしょうか?
「サツキさんは・・・・のこと・好き・・か?」
お? 今何かキリトさんがサツキさんに聞いていましたね。
何かのことが好きかと。
「もち・ん、・・くん・こと・、大好きです、キ・トくんは・・く・のこと、嫌いな・ですか?」
「いや、あー、なんていうか」
……ん?
ちょっと待ってね、さっきの会話……もしかして、
「サツキさんは俺のことが好きなのか?」
「もちろん、キリトくんのことが大好きです、キリトくんはわたくしのこと、嫌いなのですか」
って話してた?
……え? 今の告白イベント?
まって、ねぇ待って! 待ってヨォォォオォ!!! ちょっとマジで勘弁してくださいって!
これキリトさんに返事させたらおしまいじゃね!? 待て待て待て待て待て!
「サツキ!」
「え!? ひ、ヒー君!? ど、どうしたのですか?」
と、とりあえず、サツキさんをキリトさんから引き離さないと!
「ちょっとこい!」
と、とりあえず人気のない路地裏に連れ込みました。
「あ、あの、ヒー君? もしかして、先ほどの話、き、聞いていたのでしょうか」
サツキさんは顔を赤らめています。
あー、これはキリトさんへの告白を聞かれていて気恥ずかしく思ってるやつだ。
サツキさんが自分を好きかもしれないというのは、完全な自分の妄想ということが証明されてしまいました。
……ちくしょう、いやそんなことより!
「ああ、聞いていた」
バッチリ、キリトさんへの告白は聞かせていただきました。
でも、まだ2人は付き合ってはいないかもしれない!
だってさっきのキリトさんの反応は、煮え切らないものでしたから!
「そ、そう、ですか、あ、あの!」
きっと、まだサツキさんの一方通行なんだ! そうに違いない! 頼む! そうであってくれ!
「キリトとは、その、どう言う、関係だ?」
「……え?」
「キリトのことをどう、思っているんだ?」
「えっと?」
遠回しに言っても伝わりませんか。
なら直で聞きましょう。
「キリトと、付き合っているのか?」
「えっと? 私が、ですか?」
ん? なぜかサツキさんは困惑していますね?
どう言うことでしょうか?
「さっき、キリトと楽しそうに一緒に話していただろう? だから、付き合っているのか、と」
「いいえ? なぜ私がキリト君とお付き合いしなければならないのでしょうか?」
……え? マジで?
「ほ、本当か!? キリトとは付き合ってないんだな!?」
「ええ、私は好きでもない殿方とお付き合いする気はありませんから」
「……そう、か、良かった、本当に」
ああああああああ!!! 良かったぁぁぁぁぁ!!! 気のせいだったよぉおおおおおお!!!
マジで焦った! マジでリセット覚悟した! あー! こっわ! マジこわっ! そこらのホラーよりよっぽど肝が冷えましたよ! マジで!
これだからサツキさんルートは怖いんですよ! あっぶねぇぇぇ!!
セーフ! ギリギリセーフ!
「それだけだ、じゃあな」
セーフセーフ!
「嫉妬して、くださったのですか? ……ふふ」