SAOメインメニュー縛りRTA   作:アルシャ

37 / 47
第37話 VSキリト

 さて、なぜユニークスキルを持っているなどという嘘をついたかと言いますと、短期決戦を誘うためです。

 

 まず、キリトさん相手に普通に戦っても勝てるわけがありません。

 敏捷と、特に筋力値が違いすぎますからね。

 

 なので、武器で防御などができません。

 一応完璧にタイミングを掴めば1本ならある程度軌道をそらすことはできますが、キリトさんは二刀流なんでね。

 

 つまり攻撃を避けながら戦うしかないのですが、二刀流を無作為に振られ続けたら、避けられるはずがありません。

 

 だからと言って、まともに戦わず、卑怯な不意打ちなどで勝ったとしても、おそらく条件を満たせないでしょう。

 

 だからこその、先ほどのハッタリです。

 

 キリトさんの知らない、強力なユニークスキルを持っていると言っておけば、キリトさんの選択肢は狭まります。

 様子見か、短期決戦か。

 

 で、今現在自分のHPはマックスです。

 先程のボス戦で何もしてませんからね。

 で、キリトさんはポーションで少し回復したため、イエローゾーン、と言った具合です。

 

 既にキリトさんのHPは半分以下です。

 なので、様子見をしてくることはないと読みます。

 あれだけ挑発もしましたし、自分に対して怒り心頭のはずですから。

 

 だからこそ、キリトさんが短期決戦を挑もうとしてくるはずです。

 

 では、何をしてくるか。

 当然、自分が一番自信を持っていることをやってくるに違いありません。

 それにより、VSキリト戦での条件を満たせるはずです。

 なので、とにかく先ずはそれを誘うことから始めます。

 

 それをやってくれなければ、条件付きでの勝利確率なんて数パーセント、いや、ほぼ0です。

 

 ……頼むよー、キリトさーん。

 

 はい、あと5秒でデュエルが開始です。

 

 なので、それを誘う意味も込めて、 右手で持ったアストグリフを天高く真上にあげ、棒立ちしておきます。

 

 はい、デュエル開始です。

 

「……殺す!」

 

 おー、怖っ。

 キリトさんが一直線に近寄ってきましたが、まだ自分は動きません。アストグリフを天高く持ち上げながらの棒立ちです。

 

 まだです、まだ。

 完全に今自分は無防備です。

 

 はい、ここで、ニヤッと笑いながら、

 

「私の勝ちだ」

 

 と言えば、頼む! こい! 

 

 キタッ! キリトさんの最終奥義! 二刀流48連撃技、ジ・イクリプス! 

 

 キリトさんは戦闘中でも相手の表情をよく見ています。

 だから、あそこでニヤッと笑い、意味深なセリフを呟いた自分が、キリトさんの知らないヤバいことをやると、キリトさんは錯覚したはずです。

 

 なので、キリトさんの思考を、

 

 何かをやらせる前に押し切る! 

 

 と言った風に誘導して、自分が一番自信を持っているであろうソードスキルを使わせるように誘導しました。

 

 よし! 第一関門突破ぁ! 

 

 キリトさんはおそらく、キバオウさんとの訓練で、緩急やら軌道変化を身につけているはずですから、たとえ自分にスキルの軌道を知られていても、押し切れると判断したのではないでしょうか。

 

 ヒースクリフの絶対防御もそれでおそらく押し切ったのでしょうからね。

 

 さあ、いまからキリトさんの緩急やらスキル範囲内での軌道変化を織り交ぜた48連撃を、全てかわします。

 

 これ、一撃でもクリンヒットしてしまえば、大体その後の攻撃もまとめて当たるため、簡単にHPが消し飛びます。

 なので、クリンヒットだけは避けて、カスあたりは許容して、HPが0にならなければ、自分の勝利、クリンヒットを受ける、もしくはカスあたりでもHPを削り切られれば、自分の敗北です。

 

 ここからは全て先読み、キリトさんの思考をトレースしていきます。

 

 ジ・イクリプスの軌道は当然全て覚えていますが、見てからの回避は間に合いません。

 キリトさんは超反応持ちなので、見てから回避しようとしても、それに合わせてくることでしょう。

 

 なので完全に、軌道変化と緩急、速度の緩むタイミング、急速に速度を上げるタイミング、そして、キリトさんの超反応をまとめて織り込んで、キリトさんの思考を完全に読み切らなければ負けです。

 

 48連撃って……長すぎでは? 無理ゲーが過ぎますね。

 

 はい、……次……よし……んん……こっちか!? ……セーフ……後ろに……追ってくるから……はい……ここで違和感を……はい……表情が強張った……キリトさん自分のブラフに気づいて……ここで……っ!? ヤバっ! ……あっぶっ! ……大丈夫、……よし……よし! 

 

 避け切ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! あーぶねぇぇぇぇぇ!! HPギリッギリー! レッドゾーンまで削られたぁぁぁ!! でも勝ったぁぁ!? うっそだろ!? 

 え!? まじ!? 嘘だろおい!? リセットなってない!? 避けきったの!? まじでぇ!? 

 

 途中何度か危ない場面はありましたが、ギリギリクリンヒットにはならずノックバックが発生しなかったので、助かりました。

 

 キリトさんは途中で、自分の意図に気がついていました。

 おそらく、自分がユニークスキルを持っていないこと、もしくは持っていてもこの戦いでは使う気がなかった、ということにすら気づいていたでしょう。

 

 だって、キリトさんがジ・イクリプスを発動した後はもう自分、ユニークスキルを使用するそぶりすら一切見せず、超真剣に避け続けていただけですからね。

 

 だからキリトさんは、自分の狙いがキリトさんの大技のスキルを誘って、スキルの技後硬直で確実に勝負を決める、というものだと途中で気がついたと思います。

 

 その時、自分はキリトさんが焦って、斬撃の速度を速くすると思ったのですが、そこでまさか低速にするとは、あの時完全に裏をかかれました。

 

 でもギリギリクリンヒットにはならなかったです。

 

 多分後数ミリズレていればクリンヒット判定になっていたと思います。

 あと、読み違えたのが、低速で本当に助かりました。

 

 高速を読み違えたなら、気がついたら既に切られていた、という状況になりますからね。

 あっぶなかったー、完全に今回は運がこちらの味方をしてくれていましたね。

 

 でも? 勝ちは勝ちですから? まっ、自分にかかればこの程度、余裕だったかなー? ラークショォォー! これも自分の実力ってやつ? 対人戦特化型キリトさん? 大したことないねぇ! っぱ自分が最強っしょ! 

 

 と、油断してると死にかねません、マジで。

 ここで、キリトさんがもしかしたらジ・イクリプスの技後硬直無視なんていうチートをしてくる可能性があるのでね。

 

 では、早々に腰につけたナイフをキリトさんに突き刺します。

 

 このナイフ、例のレベル5麻痺毒のナイフです。

 

 今回のボス戦は麻痺や毒などの状態異常にしてくるボスではなかったので、耐毒、耐麻痺ポーションをキリトさんは事前に飲んでいません。

 初めに飲んでいたとしても、既に効果は切れています。

 

 なので、麻痺毒が入ります。

 はい、キリトさんは麻痺により、地面に倒れました。

 

 よっしゃぁぁぁぁああー!!!! 

 

 正直無理だと思ってました。

 でもこれで第2関門突破! 

 

 しゃあー! 多分100回やって1回くらいの成功率引いてやったぜオラァ! 

 

 でも、本当の本番はここからです! 

 ……なんで本番前から難易度ベリーハードなんですかねぇ? 

 

 さて、では、みんなを誘うために、アストグリフを振り上げましょう。

 そして、

 

「さようなら、キリト君」

 

 こうすると、

 

「だめぇぇぇー!!」

 

「「「「「キリトォォ────!!」」」」」

 

 周りで見ていた方々が、一斉に武器を抜いてこちらに走ってきました。

 

 当然ですよね、皆さんは麻痺しているわけでもありませんし、もうキリトさんが麻痺った段階で、キリトさんの勝利の確率はほぼ消えましたから。

 

 キリトさんの勝利が消えたということは、もうここでゲームクリアにはならないということです。

 つまり、デュエルの邪魔をしたらゲームクリアにはならない、という自分が言った脅しの効果がここで消えます。

 

 だからこそ、キリトさんを助けるために殆どの攻略組の方々は飛び込んできます。

 

 今回、攻略組のメンバーをほぼ固定しており、ここにいる攻略組の団結力はかなり高いです。

 そしてキリトさんは、沢山の危機を救って来ています。

 

 つまり、実際にキリトさんに命を救われたことがある方が大半を占めるこの攻略組で、ベータテスターとの確執が薄い今回、キリトさんがみんなから慕われていないわけがないんです。

 

 だからこそ、キリトさんが自分とのデュエルを受けるといった時、強烈な反対がなかったということでもあります。

 キリトさんならやってくれると、みんな信じていたのでしょう。

 

 少し話がずれましたが、まあ、簡潔に言えば、攻略組からキリトさんへの信頼度、好感度はかなりのもの、ここで助けに入らないわけがないんですよね。

 

 一部を除いて、ね。

 

 まあ、サツキさんは自我崩壊しているっぽいんで来ないとは思いますが。

 あともう一人は……。

 

 さて、で、誰が一番最初に来るかと言えば、当然アスナさんです。

 

 アスナさんは、自分とキリトさんの間に入る、ではなく、自分を攻撃して来るでしょう。

 キリトさんと同様に、ボス戦後武器をしまっていないのは見ていますし、何より、攻撃して自分を吹き飛ばした方が体を自分とキリトさんとの間に入れるより早いですから。

 

 計画通り! 

 

「っ! アスナ、だめだ!」

 

 あ、キリトさん、自分の狙いが初めからアスナさんだということに思い至ったっぽいですね、さすがの直感力。

 

 でも、キリトさんは麻痺していて、囁き声しか出せませんし、何より、キリトさんが止めても、キリトさんの危機にアスナさんが飛び込んで来ないはずがありません。

 

 さて! ここで現在の立ち位置を確認しましょう。

 

 始め、自分はキリトさんとヒースクリフの間にいました。

 で、アスナさんはキリトさんのそばにいました。

 

 つまり、現在、アスナさんとヒースクリフの間に自分がいることになります。

 

 で、アスナさんの武器は細剣、攻撃は突き。

 

 だから、自分を突いて来たアスナさんの攻撃を避け、アスナさんの腕を切り飛ばせば? 

 

 ザシュッと。

 

 はい、その腕は、細剣と共にヒースクリフさんの方向に飛んでいきます。

 細剣は要求筋力値が低く設定されている武器です。

 つまり、自分にも扱える武器、ということになります。

 

 ここに、全ての条件が揃いました。

 

 キリトさんという勇者に、完全勝利をして! 一部の攻略組以外がキリトさんを助けに動く状況を作り出し! アスナさんの腕をヒースクリフの方向に飛ばし! その細剣を掴み! 攻略組を掻い潜り! 

 

 擬似的な二刀流で! ヒースクリフの守りを貫く! 

 

「見つけたぁぁぁ!!! 茅場ぁぁぁぁ!!!」

 

 キリトさんの動きを思い出せ! 

 

 一度でいい、ヒースクリフの鉄壁の守りを超える! 

 

 キィィーン! 

 

 [Immortal Object]

 

 ……超えた、第3関門突破! 

 

 次!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。