SAOメインメニュー縛りRTA   作:アルシャ

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第39話 VS茅場

 いやー、勝ったな、ここで負ける要素が何もないですよ! 

 この流れでどうやったら負けるのか逆に知りたいくらいですわー! 

 

 じゃあ、勝った後のこととかも考えておきましょうか! 

 とは言っても、勝てば終了なんですがね! 

 

 でも茅場さんは魔王で、自分が勇者な訳ですから、ちょっと勇者らしい行動を心がけておいたほうがいいかもしれませんね。

 やっぱり茅場さんは勇者を求めていると思うんですよ。

 

 で、もしかしたら、茅場さんは、自分が親切な女性に対して行なっていたことや、レッド、オレンジプレイヤーからコルを強制徴収して口封じしていたことを知られていない可能性だってあるわけですよ。

 

 なので、ここで油断して自分の本性を見抜かれて、やっぱりゲームクリア無しねー、君は勇者っぽくないからー、とか言われて第100層に茅場さんが引きこもってしまったら最悪ですから、勇者らしい行動を心がけましょう。

 

 ま、勝ちは確定なんでね! 

 でも勇者らしい行動? 

 

 ……キリトさんの真似をすればいいのか! 

 よし! 

 

「キバオウ、さっきはすまなかった」

 

「っ! 謝る必要あらへん! わいは信じてたで! ヒャッカはヒャッカやって!」

 

「お前がデュエルを挑んで来てくれたおかげで俺は強くなれた、その恩はここでの勝利で、ゲームクリアで必ず返す……本当にありがとう」

 

「そうや! ヒャッカの実力はわいが一番よう知っとるんや! 負けへん! 負けるはずがあらへん! 勝って来いや!」

 

「ああ、勝つよ……サツキさん、さっきは……サツキさん?」

 

「ヒー君は、ヒー君、嘘、あれは偽物、偽物……なら、本物は? ヒー君? どこ? ヒー君? いや、私が、人を、こ、ころ、違う、でも、ヒー君……助けて……ヒー君……あ、ああ、ヒー君、嫌っ、ヒー君ヒー君」

 

 サツキさんこれまでの話なーんにも聞いてねぇーやー。

 まーだ精神崩壊して完全に上の空ですよこれ。

 

 放置してぇ、もうそのまま茅場と戦ってエンディング行きたいなぁ。

 

 でも茅場さん、こっち見てるんすよ。

 だからここで放置して、

「なるほど君には勇者の資格はないな、では、第100層でまた会おう」

 とか言われたら最悪だから、声かけないとなぁ。

 

 とりあえずまずは正気に戻しましょう。

 

「サツキ!」

 

 肩を掴んで無理やりこちらに振り向かせます。

 女性にこんなことをすれば当然……あれ? 

 

 ……ハラスメントコード押さないよね? 

 そんな空気の読めない真似、しないよね? 

 

 やらかした? 自分? 

 

 さ、サツキさんが、そ、そんな真似しないでしょ! 

 でも今サツキさん、精神的に不安定な状態ですよね? しかも多分サツキさんの認識では、自分=茅場になってるっぽいですし。

 

 ここでハラスメントコード食らって黒鉄宮に強制転移させられたら……うっわ、この場の空気すごいことになりそうですね。

 

 見たい! でもやったら自分黒鉄宮に送られるから見れない! 

 残念! 

 

「聞いてくれ、俺はいつも、サツキに助けられて来た、体も、心も、サツキがいなかったら、俺はもうとっくに死んでいたか、心が折れて立ち上がれなくなっていた、本当に、ここまで来れたのはサツキがいてくれたからだ、だからこそサツキだけはなんとしてでもリアルに返す、ここで茅場を倒してな……サツキ、ここで見守っていてくれ」

 

「……え? ……ヒー、君?」

 

「さようなら、お姉ちゃん」

 

「……本、物? あ、れ? 体が、動かな、い?」

 

「さぁ、やろうか」

 

「ああ」

 

 茅場さんは、ここで二人のHP残量をレッドゾーンギリギリ手前、強攻撃のクリンヒット1発で決着がつく量に調節してくれます。

 

 そして、不死属性を解除して床に突き立てた長剣を抜き、十字盾の後ろに構えました。

 

 いやー、HPゲージを調整してくれる茅場さんマジ公平ですよ。

 自分はキリトさんとHP差が2倍以上の状態で戦いましたからね。

 

 自分との格の違いを見せていくぅー! 

 

「最後に一ついいかな?」

 

「……なんだ?」

 

「君は何故、レベルアップボーナスの割り振りをしていないんだい?」

 

 ああ、当然それは茅場さん分かってますよねぇー。

 他人のステータスを無断で覗き見るなんて! キャー! 

 

 大変だ大変だ大変だー! 

 変態だ変態だ変態だー! 

 

「ソードスキルを使わない理由は聞かせてもらったよ、だけど、レベルアップボーナスを割り振らない理由が何度考えても分からなくてね、何か理由があるのかい?」

 

「……割り振らない? 違う、割り振れ無いんだよ!」

 

 ほんとふざけやがって、メインメニューさえ使えたらこんな苦労することなんてなかったのに! 

 

「割り振れ無い? どういうことだい?」

 

「いいだろう、そんな些細なこと、さぁ、やるぞ……ただ、どうしても知りたいっていうのなら、きっと」

 

 お前が知りたいと願うなら。

 

「優しい優しい、運命と時の女神が教えてくれるさ!」

 

 戦闘開始! 

 

 何故ここまで自分が勝利を確信していたと思いますか? 

 自分がただ油断していただけとか思っていませんか? 

 

 違うんですよねぇ、この戦いで、自分が負ける訳がないんですよ。

 

 確かに? 自分はマジモードの茅場さんとは戦ったことはありません、ですが、ヒースクリフとは何度も戦ったことがあります。

 

 それに、キリトさんと茅場さんの本気バトルは数え切れないほど見てきました。

 

 だから動きのくせとかは完全に把握してるんですよ。

 

 それに、今の自分の装備、わかりますか? 

 アストグリフとアスナさんの細剣、つまり二刀流です。

 

 自分が一番得意なのは、二刀流です。

 普段使いは縛りバレが怖いので出来ませんが、何度でも言いましょう! 自分の一番得意なものは二刀流です! 

 

 この世界に来て二刀流を練習しない訳がないんだよなぁ。

 まぁ、すぐにメインメニューが使えなくて絶望しましたが。

 

 でも、二刀流はロマンですよね! 

 だからキリトさんより二刀流の扱いはギリギリ上手い自信があります。

 自分とキリトさんとでは、練習年数が桁違いですからね! 

 ……それで何でギリギリなんですかねぇ? 

 ま、いいや。

 

 そして! 茅場さんは舐めプなのか公平性を重んじているのかは分かりませんが、両者のHPを毎回必ずレッドゾーンギリギリ手前に調整します。

 

 つまり1撃か2撃与えればいいだけの簡単なデュエルです! 

 この勝負、負けるわけないんだよなぁ。

 というわけで! さっさと終わらせましょう! 

 

 おぅるぁ!! こ・れ・で! 終わり! 

 

 キィーン! 

 

 ……あれ? 

 防がれました。

 

 ……ま、まあ、たまにはこういったことも起こり得ますよね。

 ふ、偶然自分の攻撃を防いだからって、いい気になるなよ茅場ぁ! 

 

 右、左から、ここで! 

 

 キィーン! 

 

 防がれました、

 

 シュッ! 

 

 危な! 今死にかけた! 目の前を剣が掠めて行ったよ!? 本当に死にかけたよ!? 

 

 こ、これがダメなら! これならどうだ! 

 

 キィーン! キィーン! 

 

 シュッ! シュッ! 

 

 キィーン! 

 

 シュッ! シュッ! 

 

 シュッ! シュッ! 

 

 シュッ! シュッ! 

 

 ……強っ。

 

 ば、馬鹿な!? ありえない!? 自分は勇者だぞ!? 勇者が魔王に負ける訳ないんだ! 何かの間違いだ! 

 てか動きが違うし!? いつもよりめっちゃ強くなってるし!? 

 何この茅場!? 

 

 神聖剣は盾にも攻撃判定があるため、攻撃を防がれるたびに自分のHPがどんどん減っていってます。

 自分には武器防御スキルありませんからね。

 

 ……やっば、これ勝てなくね? え!? なんでこんなに強いの!? おかしいよ! ゲームバランス狂ってるよ! こんなラスボス誰も倒せないよ!? 

 なんで茅場も強化されてるんだよぉぉぉぉ!!! 

 

 ……あ、キリトさんが茅場を倒したからか。

 

 それでみんなが古い伝説古い伝説、って煽ったから、キリトさんに勝つため、そして新たな伝説を築き上げるために、茅場さん、隠れて猛特訓とかしてたのかな? 

 

 めっちゃ古いこと気にしてましたからね、茅場さん。

 

 ……うっそだろ。

 キリトォォォォォ!! 本当なんてことしてくれてんだぁぁぁぁぁぁ!!! 

 

 やめて! 殺さないで! もうすぐクリアなのに! 

 こんな希望を持たせておいて絶望に叩き落とすなんて趣味が悪いぞ! 茅場ぁ! リセットは嫌だぁぁぁぁぁぁ!! 

 

 お願いします! 茅場様ぁ! どうか手加減してください! 親切な女性が主演女優の超大作映像、[君の縄]をあげますから! どうか! 

 って、ああああああああ!!! 挑発のためにキリトさんに投げ渡してたぁぁぁぁぁ!!!! 

 

 終わりだよー。

 

 

 ………………

 

 

 ヒー君が、戦っている、本物のヒー君が。

 私のために、私だけのために。

 

 なのに、私は何をしているの? 

 なんで、私の体は床に寝転がったまま、動かないの? 

 

 私は誓ったのに、何があっても、どんなことがあっても、ヒー君だけは必ず守ると。

 それなのに私は、また守られている。

 私はお姉ちゃんなんだから、ヒー君を守らないといけないのに。

 

 ……でも、体が動きません。

 

 私が強くなったのは、必死にレベルを上げたのは、ヒー君を、どんな脅威からでも必ず守り抜くためなのに。

 

 それなのに、それなのに! 私は! 

 

 ……動かない。動かない、私の体は、動かない。

 

 ……本当にそれでいいの? 

 

 ヒー君が、だんだんと、茅場に追い詰められて来ています。

 このままでは、このままでは! ヒー君は! 

 

 いや! 嫌! 絶対に嫌!! ここで寝ているわけには、いきません! 

 

 動いて! ヒー君を! ヒー君を守らなきゃ! 私が! どんな脅威からも! 必ず! 

 動いて、動いて! 動けぇぇぇぇ!!!! 

 

 ヒー君!!!!! 

 

 ヒー君を守れるなら、ヒー君を守ることができるのなら、この命! 惜しくはありません! 

 

 私は、茅場の凶刃にその身を晒し、そして……

 

 ザクッ! 

 

 ……私は、ヒー君を、まもれた、で、しょ……う、か……

 

「ヒー、君」

 

 ……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、盾ラッキー! 

 

 オラァ! 死ね茅場ぁ! 

 

 ザクッ! 

 

 っしゃぁぁぁ!!!!! 勝利ぃぃ!!! 自分の勝ちぃぃぃい!!!! 

 

 自分最強! 自分最強! 

 強化された茅場? よゆぅぅぅぅ──!! 

 

 いやー、ラスボス弱かったですねぇ、バランス調整ミスってますよ! ラスボス名乗るなら、もっと強くないと! ゲームマスター、しっかりしてくださいよ! 全く! 

 

 ……え? サツキさんがいなければ負けていたのは自分だろうって? 

 何言ってるんですか? 

 

 全て込み込みで自分の実力なんですから、自分が茅場に勝ったことは間違いないじゃないですか? 

 アストグリフがあったから勝ったとか、レア防具してるから勝ったとか、そう言った変な難癖と同じですよ? 

 

 勝ちは勝ち! 勝ったものが正義! 自分が正義! 

 

 正義! 正義! 正義は自分! フゥー! 

 

 っと、危ない危ない、ここで素直に喜ぶのは勇者らしくないですね。

 もしここではしゃいで、勇者にふさわしくない、と茅場さんに思われてゲームクリアを無効にされたら最悪ですから、形だけでも整えておきましょう。

 

「……何で、何で俺を庇ったんだ! サツキィィィ!!! あああああああああああああああああ!!!!」

 

 しゃぁぁぁああああああああああ!!! 勝ったああああああああああ!!! 

 

 ゲームはクリアされました──ゲームはクリアされました──ゲームは……


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