SAOメインメニュー縛りRTA   作:アルシャ

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第7話 キバオウ

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

 キタ──────!!! 

 キバオウさ────ん!!! サボテン頭のキバオウさ────ん!! 

 

「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな」

 

「こいつっていうのは何かな? まあなんにせよ、意見は大歓迎さ、でも、発言するなら一応名乗ってもらいたいな」

 

「……フン、わいは」

 

 長いのでカット。

 

 簡単に言うと、

 βテスターは今まで死んだ500人に詫び入れろ! 

 9000人の初心者を見捨てて自分達だけ上手い狩り場やボロいクエスト独り占めしやがって! 

 土下座して溜め込んだ金やらアイテムをこの作戦の為に吐き出せ! 

 

 という事です。

 

 ではでは、キバオウさんの前に行きましょう。

 

「君は……」

 

 あ、ディアベルさんお久しぶりです。

 軽く頭を下げておきましょう。

 

 自分、実はディアベルさんと20日ほど前に会ってるんですよね。

 いやー、あの時はマジでやらかしました。

 

 あのやらかしのせいで攻略組内の評判が足りなさそうになったから、もういっそのことサツキさんを入れよう、と言うことにしたんですよね。

 

 元々本来は、攻略組の人を無理矢理危機に陥らせて、そこに助けに入ると言うマッチポンプで攻略組全体からの評判を稼ぐ予定でした。

 

 それなのに、一番初めのターゲット、しかも一番重要なディアベルさんでマッチポンプ失敗するというやらかしをしてしまったので、急遽サツキさんと言うジョーカーを使うことにしたわけです。

 

 サツキさんを使わなければ、本来ならあと1レベルは確実に上げれていたんですがね。

 後攻略組の経験値分散も1人分抑えられましたし。

 

 まあ、士気の面では圧倒的にサツキさんがいた方がいいので、サツキさんに恋人さえできなければ大丈夫でしょう。

 

 やらかしの件の詳しい話はまたいずれ。

 

「ん? 何や? 何でガキがここに混ざっとんのや?」

 

「俺はガキじゃない、βテスターだ」

 

 どストレートに正体をバラしましょう。

 あたりがざわつき始めましたね。

 

 因みに今、嘘をつきました。

 自分、βテスターではありません。

 でも、βテスターと言っておいた方が不自然ではない為、自分はβテスターを名乗ります。

 

 βテストは、何をどうしようがやれませんでした。

 応募時期をずらそうが、何度応募しようが、何度リセットしようが絶対に当選しませんでした。

 もし近くにβテストに当選した人がいたら、最悪盗んででもやろうとしたのですが、残念ながら誰一人として当選していませんでしたので、不可能です。

 

 ズルはダメという事ですね。

 

「こ、こないなガキが、βテスターやって!?」

 

「ガキじゃない……すまなかった、その500人が死んだのは、助けられなかったのは、俺のせいだ、謝罪する、ボス攻略のために、コルやアイテムも渡そう」

 

 orz

 

 ここでしっかりと土下座して、キチンと形だけの謝罪をしましょう。

 心底後悔しているように、しっかりと見せかけましょう。

 

 因みに、アイテムとコルは吐き出せません。

 アイテムストレージが開けませんから。

 

 でも大丈夫です。

 

 このままこうしていれば、周りの人達が、

 

「あんな小さな子から奪うのは」「子供をいじめて……」「おいおい」「いや、ガキ相手にそれは無いだろう」

 

 とか、そんな空気になるので、流石のキバオウさんでも、空気を読んで勝手に引き下がってくれます。

 

 これは、別にやらなくても構いません、様子見しているだけでもいいです。

 でも、やると少しだけ評判が高まり、βテスターとビギナーの溝が少し縮まります。

 なので、やれる時はやった方がいいです。

 

 ……ん? やれる時? あれ、やれない時ってあったっけ? 

 

「待ってください!」

 

 ……あ、やば、忘れてた! そうじゃん、今回サツキさんいるじゃん! 

 やべぇぇぇぇ!!! 

 完全に忘れてた! 

 

「彼は、ヒー君は誰も見捨ててなんていません!」

 

 すみません、沢山の人を見捨ててます。

 

「むしろヒー君おかげで助かった人は沢山います!」

 

 やば、どうしよう。

 これが有能だったら、

 

 止めに入ろうとはしたが、周りの空気が明らかにヒャッカの味方だったからな! 少し様子を見させて貰った! 勿論これでもキバオウが引かなければ割って入る予定だったぞ! 

 

 って感じで見守ってくれてたんですよね。

 

 サツキさんも好感度が低ければある程度様子見に徹しているのですが、今回高かったから! 

 

「な、なんや、いきなり、誰やあんた」

 

「私はサツキと申します、そして、ヒー君はあの、小さな英雄です!」

 

 ざわざわ

 

「あれが」「おい、まじかよ」「思ってたよりちっさ」「え? あんなガキが? マジで?」「嘘だろ、おい」

 

「本当です、現に私も一度、ヒー君によって命を救われました」

 

 待って、ねぇ待って、大丈夫だから! このまま行けばキバオウさん空気読んで勝手に引き下がってくれるから! やめて! 余計なことしないで! 

 

「余計なことは」

 

「ヒー君は少し黙っていてください」

 

 くっ、やばい、もう止められる気がしない、マジどうしよう。

 

 このままだとキバオウ敵対ルート入っちゃうよ! 

 キバオウさん、縛りバレ発覚第3位の実力を遺憾なく発揮してきちゃうよ! 

 

 いや、落ち着け、まだ巻き返せる。

 

 確かこの後サツキさんは、「ヒー君は私の可愛い弟のようなものです」的なことを言うはずなので、そこでなんとか割って入ってキバオウさんの意見を肯定しましょう。

 

 それ以上先を言わせるとキバオウさんも引くに引けなくなってしまいますから。

 

 味方をしてくれるのは嬉しいが、自分がはじまりの街からすぐにいなくなったのは事実だから、キバオウさんの言っていることは正しい。

 悪いのは俺で、キバオウさんは当然のことを言っているだけだ。

 現にキバオウさんはアイテムを寄越せではなく、ボス攻略のために吐き出せと言っているではないか。

 私利私欲のためではなく、SAO攻略の事を真に考えている証拠だ。

 

 的な事を言って、何とか誤魔化そう! 

 

「ヒー君は私の可愛い弟です」

 

 ……あれ? 今何かセリフが変じゃなかったか? 

 

 ……え? なんで? いつの間に自分、サツキさんの弟になったの? 

 弟のようなものでしょ!? ようなものが抜けてるよ!? 

 

「私の大切な家族に手を出すなら、誰であろうと容赦いたしません、全勢力を以て叩き潰して差し上げます」

 

 ってかもう先のセリフまで言ってるってかまた少し変わってるよ! 

 驚きのあまり割って入れなかったよ! 

 

「せ、せやかて、こいつがβテスターやって事実は変わらへん! こいつらがビギナーを見捨てへんかったら死なずに済んだ500人や! しかもただの500ちゃうで、ほとんど全部が、他のMMOじゃトップ張ってたベテランやったんやぞ! こいつらがちゃんと情報やらアイテムやら金やら分け合うとったら、今頃ここにはこの十倍の人数が……ちゃう、今頃は2層やら3層まで突破できとったに違いないんや!!」

 

 ぎゃー! もうダメだー! 絶対に目の敵にされたー! 

 

 因みに、キバオウさんの言っていることも一応間違いではないです。

 死んだ500の中には、脅そうが、死を間近にしようが心が折れず、攻略組を目指し続ける、他のMMOではトップクラスのベテランも結構います。

 

 正直邪魔です。

 と言うか攻略組はもう人数がいっぱいいっぱいなので助けませんでした。

 人が増えると経験値が分散されますからね。

 

 いらないです。

 

「発言いいか?」

 

 デカァァァァイ! 

 エギルさん、デカイよ、デカすぎるよ。

 エギルさんが座っていても目線が合うくらいデカイよ。

 

 エギルさんはスキンヘッドでチョコレート色の肌をした筋肉ゴリゴリマッチョマンです。

 そんな人が立ち上がるとね、もう、威圧感がね。

 

 身長も190ほどもありますから、何と自分との身長差60センチ以上! 

 60センチって分かりますか? 

 30センチものさし2本、じゃ分かりづらいですね。

 

 京都に売ってるお土産の木刀って長いのと短いのがあるじゃないですか。

 あの短い木刀が56センチです。

 それを頭の上に乗せてみれば、約60センチ差の身長がどれだけあるかわかると思います。

 長い方は100センチくらいですね。

 

「俺の名前はエギルだ、キバオウさん、あんたはそう言うが、金やアイテムはともかく、情報はあったと思うぞ」

 

 あの情報、当然全て覚えているので貰ってないんですよね。

 道具屋さんで0コルで買えるので、買えはするのですが、その時間が勿体無いので。

 

「このガイドブック、あんただって貰っただろう。ホルンカやメダイの道具屋で無料配布して……」

 

 いやー、エギルさん助かりますわー。

 でも、もうキバオウさんに目の敵にされている事実は変わらないんですよね……

 

 ま、まあ、バレなければ何の問題もありませんからね。

 

 確かに、キバオウさんはこれから色々としつこく付きまとってくるようになって、縛りバレの危険性がクッソ高くはなりましたが、言ってしまえばそれだけですから。

 

 大丈夫、大丈夫です。

 

「……オレは思っているんだがな、少なくとも、こんな小さな子供を吊るし上げるために集まったわけじゃないだろう」

 

 エギルさんカッケー! 

 頭は丸いけど、エギル△! 

 

「俺は子供じゃない」

 

「キバオウさん、君の言うことも理解はできるよ」

 

 ディアベルさんにスルーされました。

 

「オレだって右も左も解らないフィールドを、何度も死にそうになりながらここまで辿り着いたわけだからさ……」

 

 はいダウト。

 

 オレ……オレ知ってる!! こいつは、元ベータテスターだ!! だから旨いクエとか狩場とか全部知ってるんだ!! 知ってて隠してるんだ!! 

 

 ボスの攻撃パターンは知らなかったようですが。

 

「……どうしても元テスターとは一緒に戦えない、って人は、残念だけど抜けてくれて構わないよ、ボス戦ではチームワークが何より大事だからさ」

 

「……ええわ、ここはあんさんに従うといたる、でもな、ボス戦が終わったら、キッチリ白黒つけさしてもらうで」

 

 キバオウさん、そんな強面な顔で、こんないたいけな少年を睨まないでくださいよ。

 怖くて泣いちゃうよ? 子供の涙は強いよ? 

 

 周囲をみんな味方にできますからね。

 子供と戦うと痛い目を見るよー? 

 

 まあ、キバオウさんには何度も痛い目にあわされているんですが。

 

 やっばいなー、まだリセットするほどではありませんが、リセットの危険性が今回かなり高いですね。

 

 いつもはもう少し安全なんですがねぇ。

 でも、まだリカバリーが効くやらかししかしてませんから、全然大丈夫です。

 何の問題もありません。

 

 この後は、あんたはβテスターなんだから、ボスについて話せと言われます。

 

 ですが、ベータ時代と変更があった場合、ここでの話が無駄になるから、せめてボス部屋を発見して、ボスの容貌が変わっていなければ、その時にベータ時代の話はする、現に、細かいところが既にベータ時代とは違っているからボスが変わっていないとは言い切れない、的なことを言いました。

 

 ベータ時代からボスが丸ごと、乃至は細部が変更されている可能性もあり、ベータ時代の情報を元に作戦を立てて、いざ突入したらボスの外見も攻撃パターンも違っていました。

 となると、混乱のあまり壊滅の恐れがあるから、と。

 

 まぁ実際は時間の無駄なので語りたくないだけですが。

 

 それに、その頃にはアルゴが攻略本を作ってくださいますから。


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