※怪物の強さを知りたいという声がありましたが、知りたければゴブスレTRPGを買うのだ!
TRPGには怪物の詳細能力載っていますが、流石にそれを書くわけにはいけませんし、大体の強さの目安だけ。
レベル
人喰鬼>石の魔神>小鬼英雄
但し、石の魔神は特殊能力持ちで二回攻撃してきます。
34回も2D6振れば、クリティカル2回くらいでるんやなって。
でも、仲間判定は1回も出ないとか、どういうこと!
「この世界に来て、もう一年か。時が経つのは早いものだ……」
気づけば、侍が四方世界に来てから、すでに一年余りが経過しようとしていた。
思えば色んな事があった。あの護衛依頼を経て青玉等級に上がり、その二ヶ月後に翠玉等級、さらに三ヶ月を経て紅玉等級に。
そして、すでに紅玉等級になってから半年余り、光陰矢の如しとは言うが、時の経つのは本当に早いものだと実感する。
すでに言語や慣習の習得を終え、文字の読み書きも難なくこなせるようにはなっている。
お陰で元の世界に戻ることをはじめとした種々の情報収集は捗った。帰還の方法は未だ見つかっていないが、依頼をこなす傍らで調査した結果、古代魔法文明に異世界に渡る手がかりがあることはつかんだ。
他に可能性があるとすれば、魔法や奇跡だろうと当たりをつけていた。生憎と彼には一切使えなかったが……。
「現状で可能性が最も高いのは、
冒険者として、すでに第五位紅玉等級と、中堅最上位まで到った侍だったが、未だ
自分が使えない以上、魔法使いの仲間が必要なのだが、彼に合わせられる魔法使いなどまずいない。
今までも、在野の魔法使いと臨時に組んだことは何度かあったが、彼の動きに付いてこられる者は一人としていなかった。
侍と組みたいと言ってくる者は、魔法使いに限らず多くの冒険者がいたが、彼の実力を目の当たりにして、身を退く者が殆どであり、そうでない者は端から寄生目的であったり、彼の持つ財産(日輪刀など)を目的とする者ばかりで、組むに値しなかった。
「もう青田買いして、一から育てるしかないか?いや、そもそも育てたところで遺失魔法を使えるようになるとは限らん。
そもそも、遺失魔法をどうやって覚えるという問題もある。まだ、その効果がある魔法の道具を探した方が可能性が高そうだ」
魔術師の極みに達すれば、
魔法を全く使うことのできない侍に、魔術師の才を見抜くなど無理難題もいいところなのだから、青田買いも一か八かの賭けにしからならない。
なんとも頭の痛い現実だった。
「まあ、帰ったところですでに後任がいるだろうが……」
己一人が欠けたところで、鬼殺隊が潰れることはない。そんな柔な組織ではないし、すぐに次の柱が立つであろうから。
平安の世から連綿と続く鬼殺の刃は、いつか必ず鬼舞辻無惨に届くと、侍は確信している。
そういう意味では、無理に戻る必要はないが、友や仲間の力になれないのは歯がゆかった。
――――せめて、魔法の武具や道具だけでも送ってやれれば……。
四方世界には、侍が思ってもみなかった便利な物が沢山ある。全てではないにしても、幾つかだけでも送れれば、どれだけ鬼殺の手助けとなることか。
そう思うと、やはり帰還の術を探すことは、諦めきれないものがあった。
――――とはいえ、彼女達を見捨てるわけにもいかんのが、難しいところだ。
同居して一年も経つのだ。鬼殺隊の柱として活動した結果、色々擦り切れていた侍であっても、それなりに情は移るというものだ。
彼があの滅んだ村で救った三姉妹の傷は、時間という薬を以てしても未だその傷は癒えていなかった。
無論、何の変化もなかったわけではない。長女は他者に触れるようにはなったし、次女は怯えを隠して地母神の神殿に通うようになった。三女は、何を思ったのか「冒険者になる!」と言いだし、戦女神の神殿に入り浸るようになってしまった。
――――いずれにせよ、彼女達が前に歩き出せたのは悪いことではない。
侍としても、色々思うところはあるが、三姉妹の変化は喜ばしいものであることには違いない。
――――牧場の娘は、未だ引きこもり同然だと聞いたからな。
侍も後から聞いた話だが、村の滅びを運良く逃れた者が、この街の郊外にある牧場主の姪だ。
彼女はちょうどこちらに来ていた為に穢されることこそなかったものの、それ以外の全てを失った。今ではかつての明るさが嘘のような陰気な様子だという。彼女と親しかったある姉弟の姉と親友であった長女はそう語った。
会わなくて良いのかと尋ねたが、お互いの為にならないだろうというのが、叔父である牧場主と長女の結論であった。少なくとも、もう少し時間をおいて傷が癒え、純粋に互いの無事を喜べるようになるまでは。
――――人間は感情の生き物であり、この手の遺族というのはえてして理不尽なものだからな。
侍も、鬼殺隊として、鬼の被害者遺族に理不尽な感情をぶつけられたのは一度や二度ではない。
人間の感情は、そう簡単に割り切れるほど、単純なものではないのだから。
そういう意味では、両者の結論が間違っているとは思わない。
――――しかし、折角の数少ない同郷の人間。いつか、手を取り合えると良いが……。
侍は、三姉妹のためにも、その日が来ることを願ってやまなかった。
「『鬼斬り』さん、鑑定出来ました」
たまの休養日ということで、珍しく依頼を請けていない『鬼斬り』の家に、諸々の事情から彼専用の受付嬢と化している冒険者ギルドの監督官である女性は訪れていた。
彼女と『鬼斬り』の付き合いは長く、業務外での付き合いもそれなりにあるようになっている。
というか、彼女は長女と茶飲み友達であり、『鬼斬り』に用がなくとも、度々この家を訪れている。必然家主にして、長女の主人である『鬼斬り』との交流機会も増す。
こうして、個人的な頼み事をされる程度には、彼女は『鬼斬り』からの信用を獲得していた。
「そうか。で、どうだった?」
休日の『鬼斬り』は、平時より気安く常在戦場といった雰囲気が薄まっているように思う。
服装も当初の見慣れぬ特徴的なものではなく、こちらのものになっており、大分こちらに馴染んできたように思う。
強いて言うなら、デザインはともかく、生地と仕立ての良さは、冒険者が着るようなレベルのものでないのが気になるところだろう。
「どこでこんな貴重なものを手に入れたんです?指輪もそうですけど、特にこの腕輪は尋常じゃないですよ」
今回、『鬼斬り』から鑑定を頼まれたのは、これまでの冒険の過程で得たという魔法の道具と思われる一つの腕輪と三種類の指輪だ。
全て『
「指輪は、右から《
腕輪の方は、正直驚きでした。聞いていた話であれば、《
あっ、いずれも呪いとかはかかってはないですし、使用することで悪影響とかもないです」
真言呪文の効果を付与した物ならともかく、祖竜術の再現した物となると監督官も記憶にない。
一級の宝物であるのは間違いなく、存在を知れば好事家は勿論、学院からも垂涎の的だろう。
――――ギルドを通さず、私に個人的に依頼したいと言ってきたから、何かと思ったけどこういうことか……。
至高神の神官でもある監督官は、《鑑定》の奇跡を授かっている。
《
普通ならば、一冒険者の頼みなどで、易々と行使するものではないのだが……。
――――でも、『鬼斬り』さんだからなー。この人、銀どころか金を確実視されている人だし。
今や、中堅最上位の紅玉等級まで上り詰めた『鬼斬り』は、その異例な昇格スピードととんでもない戦闘速度から、『最速の剣士』とか『雷閃』とも呼ばれる時の人だ。
それでも、流石に急ぎであれば引き受けなかっただろうが、一ヶ月という長期の期限であり、日々の業務が終わった後で奇跡の行使回数が残っている時にやればいいと緩いものであった。
個人的な友誼もあるし、これまで担当として散々世話を焼かされ、ギルド職員では最も付き合いが深い自覚があるだけに、断る気は起きなかった。
「そうか、
ありがとう、無理を聞いてくれて本当に助かった。些少だが、これは報酬だ、確認してくれ」
石巨兵の件は、監督官も初耳であった。後で問い詰めてやろうと、彼女は心に決めた。
一方で、テーブルの上に無造作に載せられたあらかじめ用意されていたであろう袋から、金貨が顔を覗かせたことに目を剥いた。
「ちょっと、多すぎじゃないですか?奇跡の安売りはしませんけど、適正以上の額をもらうのも問題なんですから」
ぱっと見て、金貨100枚はあるのではないだろうか?
金貨100枚もあれば、今回鑑定した指輪と同様に《呼気》の効果がある水中呼吸の指輪が2個買えてしまうのだから、流石にもらいすぎだと言いたくもなる。
「ギルドを通さずの個人依頼、かつ貴重な奇跡の複数回行使。妥当な相場であると思うが?」
「それは……ああ、口止め料も込みってことですね!」
監督官は、自分なりに納得できる理由を見出す。
確かに、この腕輪を他にもらさず黙っていろという意味合いも含んでいるなら、この額も納得であると彼女は思った。
「いや、正当な働きの対価だが?そもそも、貴女は余所に漏らさないだろう」
「――――」
監督官を信用していると当然のことのように語る『鬼斬り』に、彼女は思わず言葉を失った。
――――こういうことを平然と言うから、この人はずるいわよね!
内心でキシャーと威嚇の唸りを上がるが、当然ながら目の前の『鬼斬り』には届かない。
口説いているつもりはないのだろうし、その意図がないのも分かる。
しかしだ、彼女ですらグラッとくる言葉を唐突に不意打ちで口に出すのは、本当に勘弁して欲しかった。
「どうした?」
「なんでもないです!報酬はありがたく頂きます!」
もうこうなったら、ここをさっさと去ろうと決意して、監督官は報酬の入った袋を持ち上げる。
流石に金貨100枚となればズシリと重いが、ギルド職員としてこの程度は慣れっこである。体勢を崩すことなく踵を返す。
「おや、ゆっくりしていかないのか?彼女は、まだ戻って来てないぞ」
本来ならば、この後長女と茶飲み話をする予定であったが、今の精神状態ではまずいと監督官は判断したのだ。
「またの機会にします。彼女には謝っておいて下さい」
「そら、構わないが本当にいいのか?風呂にも入っていかなくて?」
監督官は「うっ」と呻いて、足が止まる。この家、なんと風呂が備え付けられているのだ。それも全身入浴できるやつが。
元はなかったらしいが、『鬼斬り』が大枚はたいて後付けしたらしい。結果的に借家であったのに、買い取る羽目になったとか聞いた時は、本気で呆れたものである。
――――なんというか、ずれているんですよね。最初の大きな買い物が、《
何に使うのだと聞いたら、浴槽の水の浄化に使うのだと聞いた時は、本当に頭が痛くなった。
――――お風呂に入らないのが耐えられないって、やっぱりどこかの貴族様だったのかしら?
などと、その当時は考えを巡らせたものだが、この家に訪れた時に入浴するのが密かな楽しみになっている現状の彼女にはどうこう言う資格はないだろう。
――――ああ、入っていきたい。で、でも!
凄まじく内心で葛藤する監督官。
しかし、ここでこの誘惑に負けるのは、色々駄目な気がする。
「いいんです!今日は帰ります!また、来ますから!」
監督官は最後まで意地を通し、長女が帰ってきてなし崩し的に帰れなくなる前に、見事に虎口を脱した。
ただ、その帰還の足が、どうしようもなく重いものになってしまったのは、美を追究する女としての宿業だったのかもしれない。
鬼鬼コソコソ話
雲柱さんは、ゴブスレ原作は知りません。どちらかというと、伝奇ものとか歴史ものが好きだったようです。また、ゴブスレさんみたく小鬼退治ばかりしているわけでもありません。基本的に依頼を選ばないだけです。
因みにつけている防具は、鉢金に手甲と鎖帷子だけ。死にたくないので、鬼殺隊では重装備な方。ただ、それでも動きを阻害したら意味がないので、影響がでない最低限かつ特注品を使っています。自分ではメンテしかできないので、壊したらどうしようと内心戦々恐々としていたり。