なにせ、秩序側に捕まって絶体絶命の危機だったのにも関わらず、見事逃げ果せたばかりか、古代文明の遺産である特殊な
きっかけは、投獄され処刑されるのを待つばかりであった
邪神の導きによるいくつかの偶然と幸運により、彼は見事逃げ出すことに成功したのだった。
そして、託宣の通りに古代遺跡に隠された魔道具を手に入れ、その力でまんまと守護者である特殊な
捕まった当初は下手を打ったと思ったものだが、この
――――しかし、その前に一度くらいは、こいつの力を試しておきたい。
守護者として用いるためか、明らかに普通ではない
折角、手に入った力を自由気ままに使えないというのは、秩序に属する者達を嬲ることが好きなその
だが、自身が脱獄した身の上である上に、主戦力である
その場合、自分に待っているのは死だけだろう。仮に自分だけ運良く逃げ果せたとしても、元より邪神の導きで手に入った力である
結局のところ、混沌の軍勢に合流することは既定路線であり、
それでも尚、己を捕まえた連中に
許容出来るからと言っても、恨みは消えるわけではないのだから。理屈ではないのだ、感情というものは……。
そんなわけで、
人気の全くない荒野を一人で行く見慣れない格好をした
その様は、
やはり、己は最高についていると彼が思ったのも、無理はないだろう。思わず、自身の欲望を満たしてくれる神の導きに、これ以上ない感謝を捧げた程であったから、その喜び様は筆舌に尽くしがたい。
しかし、
「あの
その叫びと共に左手に嵌められた腕輪が輝き、古代言語以外では本来意思疎通ができないはずの特別製の
本来の主でない上に、共通語で告げられた命令だと言うのに、
当然ながら、いくら見かけよりも俊敏であるといっても、5メートル近い巨体の接近を男が見逃すはずもなく、背後から近づく
というか、むしろ、男、いや、その侍は、
「<これはまさかゴーレムというやつか?随分、ファンタジーな世界に来てしまったようだな……。>」
確かに見た目よりは素早いし、その頑丈な巨体と重量は脅威ではある。
「<鬼よりは遙かに遅いし、お前以上に大きい奴ともやり合ったことはある>」
しかし、侍にはなんの脅威にもならず、振り降ろされた超重量の拳を難なく躱してみせた。
それも当然、鬼殺の剣士たる侍がこれまで斬り殺してきた化物である<鬼>は、それ以上のスピードと膂力を誇るものは珍しくなかったし、肉体を巨大化させるなんていうものは当然の如く備えている基本能力でしかないのだから。
「<ちょうどいい、お前には試しに付き合ってもらおうか>」
それどころか、侍は自身の動作確認に
それはけして大言壮語などではない。実際に、一分間疲れ知らずの
当然ながら、これに苛立ったのは、この攻防の唯一の観客であり仕掛け人である
あっさり殺せると思っていたのに、結果は彼の想像の真逆。しかも、腕輪の効果で、侍の日本語の内容すら理解してしまったので、彼は怒り心頭であった。
「なにをしている、さっさと殺せ!」
命令者である
しかし、それはどうしようもなく侍にあることを教えていた。
「<ああ、やっぱりアレが操ってるのか?いや、操るというよりは命令しているだけか。血鬼術――――いや、魔法かな?>」
侍も別に遊んでいたわけではない。自分の肉体の現状を把握する為に動作確認は絶対に必要なことであったし、この世界において戦闘能力の変化しているかも把握する必要があった。
そして、何より重要なのは襲撃者の意図の把握だ。己が誰かの領域に入り込んだ結果、
まあ、それでもいきなり殺しにくるのはどうかと思うが、武装した不審人物への対処としては、そう責められたものではない。
故に、あえて抜かずに回避に徹して、相手の様子をうかがっていたのだ。
「<警告も勧告も未だなしに加えあの表情、今の叫びの内容。どう考えても、善人とかじゃないな>」
本来なら、
「<石だから斬れないとでも思っているのか?岩切など最終選別をくぐり抜けた一般隊士なら誰でも出来る>」
そう言うや否や、一息深く息を吸い込んだ侍は、神速とも言うべきスピードで
基本的に、人相手に呼吸は御法度というのが侍の認識であるが、相手が人間ではなく魔法を使うともなれば遠慮は無用である。
《雲の呼吸 壱ノ型 驟雨》
驟雨は、《雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃》の構えが必要といった部分を侍なりに改良したもので、水の呼吸の特徴である歩法をヒントに、独自の歩法を組み合わせることで、構えをとることなく神速の抜刀を可能にするというものだ。その分、助走距離を必要とする型になってしまったが、構えなくて良いという長所に加え、重ねた踏み込みと歩法による加速は霹靂一閃を凌ぐ。
雲の呼吸において最速を誇るこの技は、相手に何もさせずに首を刎ねることを主眼とする奇襲に特化させた技だ。
侍は魔法使いとおぼしき人外である
故に、その結果は当然だった。
突然、目の前に現れた侍に驚愕の言葉をあげることすらも許されず、
何が起こったのか、
いつの間にか、
侍が己の計算違いに気づいたのは、
背後から近づいてくる気配に目をやれば、そこには達磨にしたはずの
――――確かに四肢を切り落としたはず……。まさか再生したのか?
そう思って、
「<確かめてみるか>」
侍が観察に徹する中で、双腕を失った
すると、なんということだろう、完全に切断したはずの左腕が浮き上がり、切断面に嵌まったではないか。わざと切り落とさなかった右腕などは、自重に負けて落ちることもなくあっさりと切断面が結合した。
「<少し面倒ではあるな。まあ、いつものことか>」
通常ならば、脅威であろう自らの肉体を回復させる能力を持つ敵というのも、侍にとっては馴染み深いものでしかない。
鬼と違って、明確な弱点は分かってはいないが、急所である首を守るために小細工する鬼は珍しくない。
故に、やることはいつもと何らかわりはない。
《雲の呼吸 弐ノ型 宇迦之御魂》
五連撃である《雷の呼吸 弐ノ型 稲魂》を、独自の歩法と併せて九連撃へと昇華させた技。
神速の九連撃は、たちまちに
即ち、頭、首、左腕、右腕、左足、右足、左上半身、右上半身、左下半身、右下半身と言う風にだ。
そして、侍はまた観察する。どこを核に再生するのか、それともしないのかを……。
果たして、十分割されて尚、
多少の時間はかかったとはいえ、驚くべき現象であった。
しかし、完全にその種は割れていた。侍の目には、ハッキリと右上半身を中心に結合していく様が映っていたからだ。
故に、結合するや否や、結合の核となる右上半身を再び切り離し、中空に浮いたそれに間髪入れずに技を放つ。
《雷の呼吸 肆ノ型 遠雷》
本来、使い手が見えなくなる程の高密度の斬撃を周囲に飛ばす中距離用の技だが、対象と接近した状態で使えば――――。
その答えは、
結合の核があったと思しき右上半身は粉微塵になっていた。
「<斬滅完了>」
その呟きともに響いた納刀の音が滅びを告げたかのように、
鬼鬼コソコソ話
作中の<>がついているのは、日本語で喋っているということを表しています。
雲の呼吸は、雷の呼吸をベースに、水の呼吸の変幻自在さ、特に歩法に着想をえて編み出された呼吸です。
原作者さんのWeb公開シナリオやTRPGのシナリオ使ってもいいかな?
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OKOK、好きにやれ
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Web公開だけならOK
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TRPGシナリオだけならOK
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甘えんな!ネタバレとか許されざるよ