鬼滅から小鬼殺しへ   作:清流

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07:護衛依頼

 護衛依頼当日、待ち合わせ時間より早めにつくように家を出、すでに万事整えた隊商と門前で合流する。何気に侍が一番のりであった。

 

 「随分早いじゃないか……『鬼斬り』なんて呼ばれているから、もっとあれだと思ってたぜ」

 

 隊商の主である商人が破顔して、侍を迎える。

 侍が予想していたとおり、見たことのある顔だ。長女との契約の立会人になった商人で間違いない。

 

 「仕事である以上、万全を期すのは、当然のことだ」

 

 侍は、護衛の人数や積み荷の優先順位、壊れ物の有無などを聞き、いざという時の対応などを決める。彼からすれば、当然のことだった。

 

 「ああ、お前さんがこんなに早く昇格できたのに納得出来たぜ。連中にも、見習って欲しいところだな」

 

 時間ギリギリになって来た青玉等級の一党(パーティー)を遠目に見ながら、商人はどっちが等級上なのか分かったもんじゃないなと内心で独りごちた。

 

 「あんたが依頼人か。俺達一党が護衛に当たる。これでも青玉等級だ、安心してくれて良いぜ」

 

 別に間に合っていないわけではないので、商人は何も言わない。

 ただ、護衛の主力でありながら最後に来たこととか、何とも思わないのだろうか?

 

 「……ああ、任せたぜ」

 

 積み荷について詮索しないのはマナーだろうが、それでも確認すべきことはあるはずだ。侍との落差に商人はなんとも言えないものを感じた。

 

 「……お前は」

 

 侍は、その一党を見て瞠目した。これまた見覚えのある顔であった。

 それもそのはず、その青玉等級の一党は、ギルド内で己に絡んできたあの冒険者達だったのだ。

 

 「お前への指名依頼らしいが、等級は俺達の方が上だ。指揮には従って貰うぞ」

 

 等級でマウントをとり、得意げな一党のリーダーに内心で侍はげんなりする。

 化けの皮を剥がしてやると言わんばかりの一党のリーダーだったが、侍はどこ吹く風で、違うことを考えていた。

 

 ――――なるほど、冒険者ギルドもやってくれる。この連中と上手くやってみせろというわけだ。

 

 侍は、ギルド側があえてこの依頼をこの一党に斡旋した意図を正確に見抜いていた。

 

 ――――恐らく失敗すれば、当分昇格は見送りだろう。色んな意味で容赦がないな。恨まれるようなことは……いや、十分してるか。

 

 客観的に見れば、幾度も騒動を起こしている侍は、間違いなくトラブルメイカーだ。ギルド側に面倒をかけたことは幾度もある。

 考えてみれば、彼の時だけ受付嬢が特定個人に限定されていたり、昇格試験の際に支部長が直々に出張ったりするなど、色々ありえないことだらけである。

 それらも含め、異例の昇格スピードも併せれば、侍の昇格試験がからくなるのも当然と言えよう。

 

 ――――ううむ、もう少し自重すべきか?感覚の違いや価値観のすり合わせがまだ完全じゃないからな……。

 

 この一月で大分マシになったとはいえ、異邦人である侍にとって優先されるのは、言語の習得だった。

 

 ――――さっさと、腕輪の世話になっている現状から脱却せねばな。いつまでも分からないままは怖い。

 

 前世の知識で、RPGでは定番の呪いの装備や何らかの代償が必要なものとかも思い当たるだけに、現状効果以外何も分かっていないも同然の腕輪は、色々な意味で怖かった。

 

 「おい、聞いているのか!」

 

 自分達が上だとか、格の違いを教えるとかどうでもいいことを延々と喋っていたので、侍は聞き流してつらつらと考えごとをしていたのだが、流石に気づいたらしい。

 

 「聞いている。原則として指揮には従うが、判断が遅い場合はこちらで勝手に動く。異存はないな」

 

 「俺がお前より判断が遅いと 「積み荷の優先順位や壊れ物の有無、いざという時の動きの確認、これだけ必要なことの確認を怠る者が俺より判断能力が高いとでも?」……」

 

 侍の指摘に一党のリーダーは、黙るほかなかった。

 指摘されてみればその通りだからだ。積み荷はともかく、いつもなら優先順位と緊急時の動きの確認くらいはしていたはずだ。

 それがおざなりになっていたのは、気に入らない相手に指名依頼を出すような依頼人ということで、無意識の内にフィルターがかかっていたからにほかならない。

 こういう個人的な感情を仕事に多分に反映させてしまうのが彼の欠点であり、一年以上たっても青玉等級から昇格できない理由であった。

 

 「お前達が俺を嫌うのは構わん。

 だが、それを仕事に影響させるな。やるべきことをやれ」

 

 侍は、社会に出た以上、それは当然のことだと思っているので、容赦がなかった。

 仕事で金を貰う以上、好悪に関係なくその分の仕事はこなす。それがプロフェッショナルというものだと、彼は考えていたからだ。

 

 「ぐぬぬ、兎に角指揮には従って貰う!いいな!」

 

 だが、それを明らかに自分より年下、かつ等級でも格下の者に言われて、青玉リーダーに素直に受け容れられるはずもない。

 それができるなら、彼はとうに翠玉等級に昇格できたであろうから。

 彼に出来たのは、悔しげに唸り捨て台詞を吐き捨てることだけだった。

 

 「やれやれ、これは前途多難か」

 

 侍はこれからの旅路を思い、独りぼやいたのだった。

 

 

 

 

 

 『鬼斬り』が危惧したのとは裏腹に、往路では何のトラブルもなく水の街に着いた。

 魔神王が六英雄に倒されたと言っても、《混沌》の軍勢の残党は、今も活発に各地で蠢動しているのだ。

 故に、襲撃も予想されていたのだが一度もなく、それどころか野性動物とかち合うことすらなかったという、隊商の誰もが拍子抜けした程で安穏とした旅路であった。

 

 「何事もなかったのを喜ぶべき何だろうけどよ……。

 まさか、帰りもそうだなんてことはないだろうな」

 

 隊商の主たる商人は渋い顔だった。生粋の商人である彼からしてみれば、これで復路までとなれば、道中の護衛代は丸損に等しい。

 勿論、必要経費だと理解はしているが、ぼやくのはやめられなかった。

 こんなことがあるから、隊商を組めない零細商人が一か八かで、護衛なしで行商するなんて馬鹿な真似をするのだ。

 

 「積み荷も人員も無事なのだ。嘆くことはない。それに十分に元は取ったのだろう?

 それにまだ無事に帰り着いたわけではない。取らぬ狸の皮算用はやめるべきだな」

 

 そんな商人に諫めるように声をかけたのは、『鬼斬り』だった。

 

 「まあ、そうだな。確実に儲けを出すのが、一流の商人ってもんだ。

 それにしても、面白い言いまわしだな。なんとなく意味は分かるが……」

 

 「故郷でことわざと呼ばれる教訓のようなものだ。この場合の意味は、得ることが確定してもいないのに、得ることを前提にして計画するということだ」

 

 「間違っちゃいないが、仮にも依頼主にハッキリ言うな『鬼斬り』よ」

 

 「依頼主が誤っていれば、正すのも仕事の内だ」

 

 「お前さんは、大したタマだよ」

 

 直に話し合ってみて、こいつはでかくなると商人は確信する。

 

 ――――つくづく、あの嬢ちゃんの目は正しかったわけだ。尻馬に乗った形だが、ここで渡りをつけられたのは悪くない。

 

 『鬼斬り』との縁は、後々に大いに役立つと彼は予想していた。

 

 「まあ、帰りも頼むぜ『鬼斬り』」

 

 「ああ、お任せあれ」

 

 何ら気負うこともなく引き受ける『鬼斬り』に、商人は今回の商売の成功を確信したのだった。

 

 

 

 

 

 正直な話、今回の仕事は請けたこと自体が間違いだったと、一党の斥候を務める圃人(レーア)は思う。

 一党が青玉に昇格して以来、停滞していたのも事実だが、だからと言って、その鬱憤を他者にぶつけるのはどうかと思う。

 

 ――――それがよりによって『鬼斬り』なんて、一体何を考えているんだか……。

 

 新人が人喰鬼(オーガ)を単独で撃破したという噂を聞いた時は、斥候圃人だって眉唾物だって思ったし、売名のためのハッタリだと見ていた。

 

 しかし、実物に会った時、それが嘘でもなんでもないことに彼は気づいてしまった。

 実力を見抜けるような目は持っていなかったが、なんというか普通の冒険者とは雰囲気が違ったのだ。

 何より、ここまで彼を生き残らせてきた生存本能が言うのだ。こいつに喧嘩を売るな、死ぬぞと。

 

 だから、斥候圃人はリーダー達が突っかかった時も、真っ先に止めに入ったし、必死に宥めた。

 まあ、努力空しく結構な大事になってしまい、紅玉等級の一党とギルド職員が出張ることになったが……。

 

 ギルドにも贔屓だなんだと難癖をつけた挙げ句、ギルド内部で等級が下の冒険者に複数人で突っかかったのだから、罰則(ペナルティ)は避けられない。

 

 ――――こういう短絡的なことするから、昇格出来ないんだよねー。

 

 内心で呆れながら、一党の仲間達と共にギルド側の裁定を待った。

 意外なことに罰則はなかった。厳重注意を受けたくらいで、降格処分を受けたりという実害はなかった。

 それどころか、今回の護衛依頼を斡旋されたのだ。

 一党の仲間は喜んだ。護衛は実入りがいいし、顔を売るのに持って来いだからだ。

 

 だが、斥候圃人はその依頼にきな臭いものを感じていた。

 罰則を受けて然るべき場面で、斡旋された依頼なのだから当然だろう。

 彼以外に只人(ヒューム)の魔術師が待ったをかけたが、結局多数決で請ける方向に押し切られてしまった。

 

 案の定、それは件の『鬼斬り』へ指名依頼の他の護衛人員の募集依頼だった。

 リーダーは勿論、その内容に一党全員の顔が引きつったが、護衛と聞いて飛びついたのはこちらなのだ。今更、嫌とか言えるわけがない。

 何より、決定的な一言が叩きつけられた。これはボク達の翠玉等級昇格依頼であると。

 依頼達成数だけで言えば、昇格条件は満たしているはずなのに、青玉等級で停滞しているというのは、一党全員の共通認識だっただけに、それは美味しすぎる餌だった。

 唯一の頼みの綱である魔術師まで賛成にまわり、最早斥候圃人も反対出来る空気ではなくなってしまった。

 

 ――――蓋を開けてみれば、案の定だもんねー。

 

 待望の昇格を前に、一党は明らかに浮き足立っていた。いや、気持ちは分かる。分かるのだが……。

 リーダーなど、普段なら絶対にしないミスをしているし、等級でマウントをとりにいくなどみっともないことをしていた。

 

 そこへ行くと『鬼斬り』の対応は見事なもので、誰よりも早く来ていたことを皮切りに、隊商の詳細把握などやるべきことをやっていた。

 馬より速く走るとか、わけの分からないことをしていたりもしたが……。

 

 ――――全くどっちが等級上なのか、分かったもんじゃないよ。

 

 それでも、往路はなにもなかったので幸いだった。

 この時ばかりは、普段は神に祈らぬ斥候圃人も、心から神々に感謝したものだ。

 

 しかしながら、やはり常に幸運ばかりが続かないのが冒険というものだ。

 復路も半ば以上を消化し、後もう少しで目的地が見えてくるというところで、予期せぬ遭遇(ランダムエンカウント)ときた。

 蛇の目も、こんな場面では遠慮して欲しいと斥候圃人はぼやいた。

 

 

 

 

 

 

 「高速で接近してくる存在が5、そちらの斥候は確認できているか?」

 

 突然の『鬼斬り』の言葉に、斥候圃人は目を瞬いた。

 言っていることが本当なら、本職の自分は未だ確認出来ていないかったからだ。

 

 「いや、ボクはまだだね。方向は?」

 

 いい加減なことを言うなと一党のリーダーが言おうとしたが、斥候圃人は口を挟ませなかった。

 本当なら、そんなことを言っている場合ではないし、彼は『鬼斬り』の力量を一党でもっとも評価していたからだ。

 

 「西、あの林の方からだ」

 

 「土煙に……この音、来る!

 敵は騎兵!数は少なくとも5騎以上、こっちの足じゃ逃げられない!」

 

 地面に耳を当てたかと思うと、斥候圃人は即座に叫んだ。

 その叫びを肯定するかのように、西の林からそれは土煙と共に姿を現した。

 

 「なんだ、ありゃ?」

 

 「悪魔犬(ワーグ)小鬼(ゴブリン)共が乗っていますね。さしずめ、小鬼騎乗兵(ゴブリンライダー)といったところですか」

 

 リーダーの困惑に、魔術師が答える。

 小鬼騎乗兵、その名の通り襲い来る小鬼達は悪魔めいた巨大な犬に騎乗していた。

 

 「リーダー指示を。あいつら、想像以上に速い!」

 

 只人の神官が焦ったように声を上げるが、それもそのはず。彼らの予想を上回る凄まじい勢いで、小鬼達は迫っていた。

 

 「街も近い。当初の打ち合わせ通り、馬車は先に逃がす。

 魔法全使用許可。兎に角、連中の足を止めろ!残りは投石と矢で攻撃しろ!絶対に奴らの進路に出るな、騎兵突撃(チャージ)で吹き飛ばされるぞ!」

 

 「「「「了解」」」」

 

 流石に、青玉等級まで到った一党だけあって、一度戦闘となればその動きは迅速であった。

 

 魔術師の《火矢(ファイアボルト)》が、神官の《聖撃(ホーリー・スマイト)》が、先頭をかける二体の悪魔犬に直撃し、たまらず動きが鈍ったところで前衛二人の投石が直撃し、死亡。

 そのスピードのままに、騎乗していた小鬼を巻き込んで盛大に転がる。

 

 残るは三騎の内、一騎は斥候圃人が騎乗する小鬼を見事矢で射貫いていたが、悪魔犬はそのまま突っ込んできた。

 しかし、前衛二人は既に武器をメインのものに持ち替えており、悠々と迎撃してみせた。

 

 残る二騎をやったのは、『鬼斬り』であった。

 凄まじい速度で一騎ずつ肉薄し、反応させる暇も与えずに悪魔犬と小鬼の首を刎ねて見せた。

 余りの早業に、遠目では一瞬の内に、首がとんだようにしか見えなかった。

 

 「あいつ、やっぱりヤバイわ。人喰鬼、殺したのもふかしじゃないな」

 

 遠目に見ていた一党の自由騎士が言う。

 

 「ちっ、そんなことは分かってんだよ。だが、気にくわねえんだよ!」

 

 リーダーが、忌々しげに怒鳴り返す。

 

 「お気持ちは理解しますが、それを他者にぶつけるのはいかがなものかと」

 

 神官が諫める。

 とはいえ、僅か一ヶ月で、年下の新人に追いつかれそうになったことには、彼とて思うところはある。

 

 「『鬼斬り』とボク達じゃ色々違うんだから、しょうがないでしょ」

 

 斥候圃人が呆れたように言う。

 

 「お前達、そんなことを言っている場合か!恐らく、これは……遅かったか!」

 

 一人、現状を分析していた魔術師が警告の声を上げようとしたところで、逆側の林から逃がした馬車の進路を防ぐように、石塊の如き様相の魔神(デーモン)が小鬼達を引き連れて現れていた。

 

 「あれはまさか、石の魔神(ストーンデーモン)か?!陽動かよ!」

 

 「足の速い連中は、護衛を馬車から離すための囮役だったんでしょうね」

 

 自由騎士が相手の策を見抜き、神官が解説するが、後の祭りだ。

 いかに積み荷満載の馬車が鈍足とは言え、小鬼騎乗兵迎撃のために足を止めた一党とは、それなりの距離を隔てているのだから。

 それも、神官や魔術師の魔法が届かないだけの距離が空いてしまっている。

 

 「ちくしょー、間に合え!」

 

 必死の形相で走るリーダーは、石の魔神と目が合った気がした。

 そして、おかしくてたまらないという嘲笑をそれは浮かべているように見えた。

 

 最初に小鬼というのが、悪辣な罠であった。

 小鬼と見れば侮る冒険者に、早々見ない小鬼騎乗兵をぶつける。侮って小鬼騎乗兵にやられてくれれば、それはそれでよし。

 侮らずそれなりの労力を割けば、護衛の足は必然的に止まる。そして、街ほど近いこの場所なら、先に護衛対象を逃がしたくなるのは人情というものである。

 結果、ものの見事に石の魔神の目論見通りとなった。

 後は無防備になった連中を蹂躙し、兵力の逐次投入という愚を犯している一党を順次片付けるだけだ。

 

 しかし、何事にも想定外というものはあるものだ。

 護衛の中で唯一、小鬼騎乗兵迎撃後も気を抜かず、全力で馬車を追いかけていた男がいた。

 その男は、『鬼斬り』と呼ばれる冒険者であった。

 

 「ある程度、頭のまわる鬼ならやってきそうな手だな。まあ、こっちは人間じゃなくて、小鬼が手駒だが」

 

 多くの人間を喰った鬼と同様に、石の魔神とやらは酷く死の気配が濃い。

 

 ――――あれは相当に殺しているな。おかげで察知出来たんだが。

 

 自然、目が細まり、『鬼斬り』の中でスイッチが入れ替わる。

 あれは鬼と同様に人に仇なすものだ。人を嬲って殺す悪鬼の類だと。

 日輪刀に刻まれた『悪鬼滅殺』の理念は、今も『鬼斬り』の中で確かに息づいているのだ。

 

 ――――鬼は斬る!《雲の呼吸 壱ノ型 驟雨》

 

 助走距離が十分以上にとれているこの状況こそ、雲の呼吸が真価を発揮する状況に他ならない。

 連続して雷鳴の如く轟音が響く。

 その音こそが、只の人間が大地を蹴った音であるなど、誰が思おう。

 

 突然の雷鳴に、その知能の高さから注意を取られ、動きを止めてしまう石の魔神。

 それが致命的な隙となった。

 

 一党が必死の形相で走るその先で、石の魔神の首があっさり刎ねられた。

 それは冗談のような光景であった。強靱な外皮を持ち、その外皮を支える筋骨も強靱で、恐るべき敵である石の魔神が、一瞬にして命の灯火を吹き消されていたのだから。

 

 《水の呼吸 参ノ型 流流舞い》

 

 変化はそれだけに留まらない。

 石の魔神を先頭に、馬車へと殺到していた小鬼達は、例外なく首を刎ねられていた。

 大小鬼(ホブゴブリン)も含めた十数体の小鬼は、なんら隊商に被害を出すことは出来ず、その屍を晒したのだった。

 

 一党がようやく追いついた時、すでに戦闘は終了していた。

 隊商に所属する誰もが、新たに生まれた魔神殺し(デモンスレイヤー)に畏怖の目を向ける。

 油断なく周囲を睥睨しながら納刀する『鬼斬り』の背中に描かれた『滅』の一文字が、一党の目に焼き付く。

 彼らにその意味は理解出来ないが、なぜだか『鬼斬り』の有り様を示しているように思えた。

 

 「……ものが違うってのかよ!くそっ!」

 

 一党のリーダーは毒づき、今度こそ心の底から敗北を認めざるをえなかった。




鬼鬼コソコソ話
雲柱さんは、機動力においては柱随一。雲の呼吸が独特の歩法を極意としていることから、移動距離が半端ではない。善逸のような六連とか八連はできないが、足を犠牲に四連くらいならできる。雲柱さんの場合は、連続で出すのではなく、歩法で間を取って霹靂一閃を使うのが普通。

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