21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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話数が増えてきたので適当に章を追加しました。


129.風牙の忍び(ステルスアクション)<3>

『手に汗握る展開だった』『ドジっ子ヨシちゃん』『あのうっかりは珍しかったな。普段は堅実なプレイやっているのに』『忍具がいろいろ見られて配信的においしかったのでは?』

 

 ステージクリア後に転送された夜の草原。そこで、視聴者達と先ほどのチュートリアルステージを振り返っていた。

 相手に発見されてしまったのは完全に俺の落ち度だが、あの土蔵は鍵を外してかんぬきを抜いて中に入っていたのだ。窓から逃げても、どのみち俺が侵入したことは、バレていたのではないかとも思う。チュートリアルだから、練習用にそういうシチュも用意してくれそうだからな。

 今回のステージ評価は隠密という項目が×になっており、良という判定を食らってしまったわけだが、いるのがバレても姿を見つけられなければ隠密は○になるのだろうか?

 

「ところで、良ってどれくらいの評価判定だったんだ? こういうのはAとかBのアルファベットで示すのが、21世紀じゃ一般的だったから、よくわからん」

 

 俺がそう言うと、ヒスイさんの声が届いた。

 

『秀、優、良、可の順ですね。証文を燃やしてしまったり、捕らえられたり、殺されたりして任務を失敗した場合は、不可となります』

 

「大学の成績かよ」

 

 さて、そろそろゲームを先に進めていくか。

『ここまでの話の進行を記録しますか?』との画面が表示されているので、『はい』を選んでセーブをしておく。

 

 すると、草原に一人の忍者が足を忍ばせてやってきた。

 オープニングで主人公キヨコと戦っていた男忍者だ。

 

『高利貸しの件、よくやったようだな。これで国外に人が売られていくこともなくなるだろう』

 

「あの高利貸し、やっぱり人身売買していたのかよ。しかも国外って……」

 

 作中の時代が江戸か戦国かは知らんが、闇が深そうな設定出しやがって。

 

『さて、次の任務だ。これが指令書だ』

 

 男忍者が巻物を俺に渡してくる。俺はそれを受け取り、巻物を開いた。

 

「なるほど……達筆すぎて読めねえ!」

 

『自動翻訳もされてないな』『つまり読む必要はないんじゃね?』『どうせナレーションさんがまた指示出してくれるよ』『ゲーム製作者の人、これ読める人が読めば内容判るように書いたのかな……』

 

 俺は巻物を閉じ、男忍者の方を見る。

 

『今回の任務は、私腹を肥やす代官の暗殺だ。悪徳商人と手を組み、その悪行を見逃し、多額の賄賂を受け取っておる。これはもはや矯正が不可能であり、殺めるしか手立てがないと判断された。悪人に天誅を下すのだ』

 

「善なる忍者なのに、暗殺するのかよ!」

 

『では、頼んだぞ』

 

 男忍者がそう言って俺を送り出そうとしてきたので、俺は素直に従って、町の方へと向かおうとする。

 

『待て』

 

 だが、男忍者がそれを止めてきた。

 

「まだ何か?」

 

『指令書を返すのだ。それを持ったままお前が捕まると、風牙の関与が知れてしまう。今の藩主に、風牙の暗躍を知られるわけにはいかん』

 

「んん? 風牙忍者って、大名とか藩主の手下じゃないのか?」

 

 俺は、そんな疑問を持ちながら巻物を返却する。

 そして、男忍者は巻物を懐に収めると、その場から去っていった。

 

「答えはなしか……会話できるほどのAIは積んでいないのかねぇ」

 

 そんなことをぼやきながら、俺は町の方角に向けて走り始めた。

 すると、すぐさま背景が切り替わり、町中に瞬間移動した。高い塀に囲まれた大きな武家屋敷の前だ。

 

『任務の弐 悪代官を暗殺せよ!』

 

「ふむ。悪代官ね。悪徳商人に黄金色(こがねいろ)のお菓子を貰って、『おぬしも(わる)よのう』『いえいえ、お代官様ほどでは』みたいなやりとりでも見られるかな?」

 

『何それ』『ニホン国区の過去を題材にしたドラマで定番のやりとりだな』『町民に紛れたお偉いさんに成敗されちゃうやつ』『それは見たことないけど、なんとなく理解した』

 

 時代劇テンプレ、未来人に通じるのかよ。

 俺は武家屋敷の中に思いをはせ……そしてふと、関係ないことを思いついた。

 

「これ、侵入しないで町の外に出たらどうなるんだろう?」

 

『どうなるって……どうなる?』『任務失敗するのではないですか』『普通に見えない壁で進めなくなっているのでは』『ヨシちゃん、ちょっと試してみてよ』

 

 よしきた。

 俺は、武家屋敷に背を向け、全力で駆け出した。すると、十秒もしないうちに、勝手に足が止まる。

 そして、視界に文字が表示された。

 

『このまま進むとあなたは抜け忍となります。それでも進みますか?』

 

「おおっ! 抜け忍になるのか! やってみよう!」

 

 俺は止まった足を再度動かし、前へと進む。

 すると、視界がだんだん暗くなっていき、気がつくと俺は先ほどの草原に移動していた。

 

『キヨコよ、なぜ裏切った!』

 

 と、男忍者の声が聞こえる。

 その方角を見ると、男忍者がクナイを構えてこちらをにらんでいた。

 さらに、二人の忍者がその後ろで忍者刀と鎖鎌を持って、臨戦態勢に入っていた。

 

『抜け忍は抹殺するのが、風牙のおきてだ。覚悟しろ!』

 

 おお、この展開、キューブくんの名前の元ネタのゲームで見たことあるぞ。

 抜け忍は、元いた集団から追っ手がかかり、血で血を洗う闘争が繰り返されるのだよな!

 

 俺は、テンションを上げて背中から忍者刀を抜き、構えた。

 さあ、戦闘だ!

 

『ふん!』

 

 忍者の一人が、鎖鎌の分銅をこちら目がけて投げつけてくる。俺はそれを回避し、鎖鎌の忍者に素早く近づいた。

 相手は鎌でこちらを斬りつけようとしてくるが、それもかわして忍者刀で腹を斬りつけた。鎖帷子(くさりかたびら)でも着込んでいるのか、手に返ってきた感触は鈍い。

 ならば、と俺は忍者刀で相手の首をかき切った。血の代わりに、白いポリゴンの欠片が派手に飛び散る。そして、鎖鎌の忍者はその場に倒れた。

 

「あれ? 一発で死んだぞ?」

 

『ヨシちゃん聞いてくれ。人は刃物で切られたら死ぬ』『HP(ヒットポイント)制じゃないのな』『これは、任務中も背後から一撃死を狙えるな』『つまりヨシちゃんも一発食らったら死ぬんじゃね?』

 

 おおう、それは厳しいな。まあ、ステルスゲームなら、その仕様はそれっぽいとも言える。

 そんなコメントのやりとりの最中にも、背後から忍者刀の忍者が近づこうとしていたので、俺はとっさに懐から手裏剣を抜き、投げつけた。

 手裏剣が相手の肩口に命中する。忍者刀を取り落とした相手に俺は走りより、眼孔に忍者刀を突き刺した。目からポリゴンの欠片を吹き出しながら、相手は倒れる。よし、後は男忍者一人を残すのみだ。

 

『やはりこやつらでは敵わぬか……だが、命を()してもお前を止めてみせる!』

 

「お前には無理だよ」

 

 俺は男忍者に近づき、一刀のもとに斬り捨てた。

 倒れる男忍者。だが、彼は地に伏せながらも、指の先に火を灯し、その火を自らの腹に押し当てた。

 

「あっ、やべえ!」

 

『キヨコよ、さらばだ!』

 

 男忍者を中心に大爆発が起きる。

 

『ヨ、ヨシちゃーん!』『まさかの腹マイト』『あっぱれ!』『ヨシちゃん死んだか!?』

 

「生きてるよ! あぶねー、前の任務で、アシスト動作一通り確認しておいてよかった!」

 

 俺は一番速く動けるアシスト動作で、とっさに男忍者の自爆攻撃から距離を取っていた。

 予想外の攻撃にあせったが、なんとか対処できたぞ。

 

 倒れる忍者三人を見下ろしていると、ナレーションが流れる。

 

『追っ手を撃退し、双子の兄をその手で殺めたキヨコは、やがて悪の忍者に堕ちていくのであった……』

 

 そして背景が切り替わり、タイトル画面に戻った。

 俺はキヨコの身体から抜け出しており、元のミドリシリーズのアバターとなっている。背景では、男忍者とキヨコがまたクナイで攻撃を交わしている。

 

「ゲームクリアおめでとうございます」

 

 姿を現したヒスイさんが、そんなことを言ってくる。

 

「いやまあ、これもゲームクリアのうちに入るのか? こういうゲーム途中で脇道にそれた結果ゲームが終わるやつ、結構好きだけどさ」

 

 RPGの負けイベントに勝った結果、シナリオから外れたその後の主人公の活躍がナレーションで語られて、タイトル画面に戻ったこともあったな。

 

「まあ、気を取り直してセーブしたところからやり直すか」

 

 メニューから『つづきから』を選択し、再び男忍者から指令を受けるところから始める。

 そして、俺はまたキヨコの姿で武家屋敷の前に立っていた。相変わらず、夜空には強く輝く月が昇っている。

 

『任務の弐 悪代官を暗殺せよ!』

 

 武家屋敷の周りをぐるりと巡り、門に近寄る。

 門の前では、二人の門番が長い木の棒を持って警戒を強めている。

 

 それを見た俺は、思わず笑みを浮かべた。

 

「どうやって屋敷に侵入するかなんだけどさ。さっきの戦いでテンションが上がったので……」

 

 俺は、背中に手を回し、背負っていた忍者刀を鞘から引き抜く。

 

「正面突破するぞ! 皆殺しじゃー!」

 

『ヨシちゃんマジか!』『ステルスアクションどこいった!』『やっぱりゴリラにステルスゲーは無理だったんだ』『討ち入りだー!』

 

 視聴者のそんなコメントを聞きながら、俺は忍者刀を振りかぶり、二人の門番に正面から躍りかかっていくのであった。

 

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