21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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151.最果ての迷宮(ローグライク)<7>

 メトロイドヴァニアとは?

 探索型の横スクロールアクションゲームのゲームジャンル名である。

 

 そのジャンル名の語源は、『メトロイド』というゲームと『Castle(キャッスル)vania(ヴァニア)』(原題は『悪魔城ドラキュラ』)というゲームから来ている。その二つのゲームは特徴に共通点が多かったため、ゲームタイトルを組み合わせてメトロイドヴァニアという言葉が生まれたわけだな。

 ちなみに俺は『悪魔城ドラキュラ』というタイトルに馴染みがあるので、英語版タイトルである『Castlevania』と言われても、いまいちピンとこない。

 

 それはさておいて、メトロイドヴァニアの最大の特徴として、サイドビューであることが挙げられる。

 サイドビュー。つまり、キャラクターを横からみた視点ってことだ。そして、そのサイドビューの状態で、上下左右にMAPを移動していく。サイドビューであるので、グラフィックが3Dであっても、上下左右つまりX軸とY軸の二次元的な動きしかできない。Z軸を足した三次元的な動きはできないのだ。

 

 他にメトロイドヴァニアの特徴として挙げられるのは、ジャンプだろうか。左右だけの動きではなく、上下方向への移動も含むのは、このジャンプの存在があるからだ。ジャンプで段差を登り、それぞれ違うルートを探索していくのである。

 そう、探索。複雑に分岐するMAPを探索していくのが、メトロイドヴァニアの楽しみの一つでもあるのだ。

 

 と、そんな説明を視聴者に向けてやってみた、ライブ配信五日目。

 視聴者からは『ローグライクはどうなったのか?』と抽出コメントが届くが、安心してほしい。今日も『最果ての迷宮』をプレイしていくぞ。

 

 というわけで、嫌というほど見た魔法工房に出現だ。服装は昨日のディアンドル姿のまま。

 

「じゃあ、ヒスイさん。今日やる迷宮の説明をお願い」

 

『はい。迷宮番号『50』。『悪魔城の迷宮』です』

 

 俺はそれを聞いて、早速『50』に転移門のダイヤルを合わせる。

 その間にも、ヒスイさんは説明を続ける。

 

『いわゆる、メトロイドヴァニアゲームに似たルールに支配された迷宮です。ターン制は撤廃され時間は常に流れ続け、行動にはシステムアシストが適用されており、アクション性が非常に高いヨシムネ様向けの迷宮となっています』

 

 俺は転移門のパネルに表示された迷宮の名前をじっと見つめた。メトロイドヴァニアで悪魔城って、そのまんまやんけ……。

 

『この迷宮のローグライク要素は、ランダム生成されるMAPです。悪魔城の中を探索し、最奥にいる悪魔王を倒し『悪魔城の鍵』を入手してください』

 

 あ、そこは吸血鬼じゃなくて悪魔王なのね。

 まあ、別にいいか。俺は詳細なルールを確認すると、転移門の中に飛び込んだ。

 

 そして、俺はうっそうとした森の中にいた。

 森の中には真っ直ぐと道が続いており、その道は2メートル×2メートルのマス目が存在した。マス目は前方向にしか伸びておらず、横方向には一切伸びていない。

 俺は試しに、横方向に移動してマス目から出ようとしたが、見えない壁にぶつかって移動はできなかった。

 

 いつの間にか手にしていた剣でその見えない壁を叩こうとするが、壁がなかったかのように剣が素通りした。

 

「なるほど、Z軸の移動は許さないが、剣を振るったときに見えない壁が邪魔になることはない、と。この方法で、旧来的なサイドビューの横スクロールアクションを表現しているわけだな」

 

『ソウルコネクトでのメトロイドヴァニアの一般的な光景だね』『メトロイドヴァニアは、人形操作型でしかプレイしたことないなぁ』『ターン制じゃないってことは、マス目はただの道を示すだけの目印かな?』『その幅があれば十分横方向の回避ができそうだな』

 

 人形操作型というのは、21世紀のころのゲームみたいに、コントローラー等で外部からキャラクターを動かす第三者視点のゲーム形式のことだな。

 

 さて、まだ試すことはある。俺は前方に向けて、アシスト動作で剣を振るった。

 すると、綺麗なエフェクトと共に、刃から前方1マス分ほどの衝撃波が飛んだ。どうやら、攻撃のリーチは長いようだ。

 ジャンプを試してみると、3メートルほどの高さまで跳んだ。このジャンプ力なら、敵を飛び越える定番のアクションも可能だろう。

 

 その後、俺はいくつかのアシスト動作を試し、操作の確認を終えた。

 おっと、最後にもう一つ試すことがあったんだ。

 

「ヒスイさん、ちょっと20マス分走るから、タイム計測してみて」

 

『了解しました』

 

 ヒスイさんの返答を聞いた俺は、前方に向けてダッシュした。

 20マス進んだところで止まる。

 

「じゃあ次、20マス分戻るから、そちらのタイムも計測で」

 

 そして俺は、前方ステップとスライディング、しゃがみ状態からの前方小ジャンプ、そしてまた前方ステップというアシスト動作のループで20マス分を駆け抜けた。

 

『えええ……』『何その動き』『キモい』『RTA勢の変態かよ!』『どうしちゃったの、ヨシちゃん』

 

「いや、メトロイドヴァニアといえば、複数のアクションを組み合わせた高速移動が定番でな……それこそ21世紀のRTAでは多用されていたな。ヒスイさん、どっちが速かった?」

 

『後者の方が速かったですね』

 

「おおー、RTAに使えそうな移動方法見つけたぞ! まあ、とっさの回避行動とか取れなくなりそうだから今回は使わないが……」

 

 俺がそう言うと、視聴者達から一斉に『使わないのかよ!』という突っ込みが返ってくる。いや、この移動方法をしながら敵を避けて駆け抜けるとか、俺には絶対無理だし……。

 

 さて、気を取り直して迷宮を攻略していこう。

 森の中を抜けると、巨大な城が前方に見えてきた。西洋風の苔むした城が、夜空に浮かぶ月の光に妖しく照らされている。

 

 城に近づくと、前方の地面が急に盛り上がる。ゾンビの出現だ!

 俺は剣でそれらを倒していく。ゾンビは一撃で倒せるようで、攻撃を受けて(ちり)となって消えていった。

 

 やがて、城門へと辿り着くと、城門は俺を歓迎するようにゆっくりと開いていく。

 俺はその城という名の迷宮に向けて、剣を構えながら進んでいくのであった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 城の中はとても広かった。いくつものルートに分岐し、どう進むか頭を悩ませてくる。

 さらには、残存HPが表示される中ボスも、専用BGMと共に多数待ち構えていた。そして、その中ボスを倒すと、オーブというアイテムを入手することができた。ヒスイさん曰く、このオーブをそろえないと最奥である謁見の間に続く扉が開かないらしい。結局MAPは、しらみつぶしに探すことになりそうだ。

 

 なお、ここまで一度も死んでいない。アシスト動作での回避行動が可能なら、俺はそうそう負けないのだ。

 

「しかし、この迷宮はアクション性が高いが、他の迷宮にはパズルゲーム的要素がある場所もあったりするんだろうな……100ある迷宮を全部クリアするには、あらゆるジャンルのゲームに精通している必要性がありそうだ」

 

『その通りです。ですから、今回ヨシムネ様にはこのゲームの完全クリアは、目指してもらわないことにしました』

 

 俺の独り言に、ヒスイさんがそう答えてきた。

 

「ヒスイさんは、このゲーム完全クリアしたわけ?」

 

『はい。配信に使うゲームは、『-TOUMA-』での失敗以降、『Stella』以外の全ての作品で、エンディングを見るまでプレイしてあります』

 

「うわー、頭が下がる思いだわ……」

 

『さすがヒスイさんです!』『よくやるわぁ』『今の商用ゲームにバグがほとんどないのも、こうしてAIが根気よくテストプレイを繰り返しているからなんだぞ』『ああ、それは昔聞いたことあるわ』『ソウルコネクトゲームでバグとか、ちょっと体験したくないね』

 

 21世紀の3Dゲームでたまにあった、地面をすり抜けて虚空に落下するバグ、VRで遭遇したら絶対に絶叫する自信があるぞ。

 

 と、そんな会話を交えながら、探索すること一時間半ほど。俺はとうとう全てのオーブを集めきった。

 本当ならこの迷宮では、死亡しても失われない『ルーン』という魔法を活用して、死に戻りを繰り返しながら探索時間を徐々に縮めていく攻略法を取るようだ。だが、俺はここまで一度も死んでいない。そのため、「スーファミ時代のアクションゲームにあったら、ちょうどいい長さのステージだな……」などと感想が思い浮かぶくらいの順調さで、ここまで来られた。

 

 残るはラスボス戦だ。俺は気合いを入れ、オーブを使って謁見の間へと続く扉を開けた。

 扉の向こうに広がっていたのは、広い空間だ。そして、一番奥にある玉座には、口ひげを生やした貴族風の男が足を組んで座っている。

 俺が近づくと、男は立ち上がり、玉座に立てかけられていた剣を握り、俺と対峙した。

 

 ふむ。人型サイズの敵相手なら、そう簡単には負けないぞ。

 派手なエフェクトの飛び交う戦いが繰り広げられ……それほど苦労することなく敵のHPを削りきった。

 すると、男はその場に膝をつく。そして、男の身体がどんどんと変化していき、巨大化もする。

 やがて現れたのは、いかにもRPGの魔王をやっていますよといった感じの巨大な悪魔だ。

 

 俺は剣と『ルーン』とアイテムを駆使し、その悪魔と対決する。

 そして……。

 

「よし、ノーデスクリアだ!」

 

『おおー』『さすが得意分野では強い!』『今日は死にざまを見られなかったか』『まあ昨日までは辛かっただろうから、ヨシちゃんにもご褒美は必要だよ』

 

 悪魔に次の形態はなかったらしく、鍵を残して崩れ去った。俺は、宙に輝きながら浮いている鍵を回収する。『悪魔王の鍵』、入手完了だ。

 と、感慨にふけっていると、急に地面がゆれ始めた。

 謁見の間の壁が崩れていき、天井から石材が落ちてくる。どうやら、城が崩壊し始めているらしい。

 すると、俺の身体は自動的に謁見の間の入口に向けて走り出し、ゆっくりと視界が暗くなっていった。

 

 数秒後、視界が明けると、俺はいつのまにか城の外に脱出していた。空の向こうからは朝日が昇り始めており、遠くには城が見えている。やがて、城は大きな音を立てて崩れ去った。うーん、様式美。

 

「長く苦しい戦いだった……」

 

 身体に自由が戻ってくると、目の前に豪華な扉が出現した。迷宮からの出口のようだ。

 その扉をくぐると、俺はどこかの建物の中に出た。扉の前には、鎧を着こんだ兵士がおり……。

 

 どうやらこの迷宮の扉はどこかの王国の王城に存在していたらしく、王と謁見させられ、どんな迷宮だったのか尋ねられた。どうやら『悪魔城の迷宮』から帰還した者はいままで誰もいなかったらしい。

 そして、当然のように王は鍵の買い取りを要求してきて……最終的に王城は崩壊した。城の崩壊、本日二度目である。

 

 魔法工房に戻った俺は、武装を解除して視聴者に向けて言った。

 

「さて、本日の目標は達成したわけだが……まだ配信開始から二時間弱。もう少し配信を続けてもいいな」

 

『おっ、次の迷宮か?』『今度は死ぬ迷宮?』『せっかく有終の美を飾ったのに、死ぬのか』『『運命の迷宮』で何階まで行けるかチャレンジしようぜ!』

 

 おっと、配信を続けるとは言ったが、まだ迷宮探索を続けるとは言っていないぞ。

 

「実は、『悪魔城の迷宮』から持ち帰った金貨が大量にあるんだ。これをどうにか使えないもんかと」

 

『酒場?』『武具店は意味ないよな』『服飾店か……』『ファッションショー再び!』

 

「おう、最高の中世風ファンタジー衣装を目指して、いろいろ買いあさるぞー!」

 

 という感じで、俺のローグライク配信はこうして無事に終わった。

 最終的にはアクションゲームに戻ってきてしまった気がしないでもない。でも、一つのゲームジャンルを詳しく知るきっかけになったこの五日間は、有意義な時間だったと言えるだろう。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

『最果ての迷宮』配信から三日後。

 俺は、空間投影画面でローグライクゲームのプレイ動画を検索して眺めていた。

 そんなとき、ふと気になる動画を一つ見つけた。

 

「見て見て、ヒスイさん。『最果ての迷宮』のRTAをやった人がいたみたいだ。できたてのダイジェスト動画版がアップされているぞ」

 

 イノウエさんとたわむれていたヒスイさんを呼んで、空間投影画面を見せた。

 

 どうやらこのRTAは挑戦を昨日したばかりらしく、時間加速機能を使いVR空間上の計150時間でクリアして、リアル時間で10分かかったと動画の説明に書かれている。100ある迷宮をぶっ通しでこなすとか、根性すごいな。

 

「150時間を現実の10分間でこなしたとなると、生身の人間では不可能な時間加速機能の倍率ですね。脳をサイボーグ化した方か、アンドロイドに魂をインストールした方でしょう」

 

 釣り竿型の猫じゃらしでイノウエさんと遊びながら、ヒスイさんがそうコメントを入れてくる。

 ふむ、RTA挑戦者の情報か。そこは確認していなかったな。

 

「名前はヨシノブだって。日系コミュニティ出身の人かな?」

 

「……いえ、ハンドルネームのようです。ヨシムネ様、投稿者コメントの最後をお読みください」

 

「ん? えーと……」

 

 この動画を偉大なる先駆者である、ヨシちゃん&ヒスイさんに捧げます。(私のことはノブちゃんと呼んでください!)

 ……そんなことが書かれていた。なんだこれ。

 

「どうやらこの方は、ヨシムネ様の配信に憧れて今年の八月に配信者を始めたようです。そして、二ヶ月間のスーパープレイ配信で(またた)くままに動画の再生数を伸ばすという実績を残して、先月に配信者として一級市民に認定されています」

 

「何それ!? 俺よりはるか高みにいる配信者じゃね!?」

 

「配信者としての価値は、ゲームの腕だけで決まるものではないですよ」

 

 ヒスイさんが優しくさとすようにそう言った。

 それもそうか。俺も21世紀でよくゲーム実況を見ていたが、プレイのすごさよりも、トークの面白さ優先で探していたな。

 

「そっかー。それにしても、ヨシノブか……。俺と名前が似すぎていて視聴者が混同しそうだな。……あれ? 吉宗(ヨシムネ)慶喜(ヨシノブ)。どっちも徳川将軍の名前じゃん!」

 

「ヨシムネ様にあやかって名づけたようですね。ちなみに、ワカバシリーズのガイノイドにソウルインストールしているそうで、同じニホンタナカインダストリ製のガイノイド使用者という縁で、ヨシムネ様のことを知ったようです」

 

「そうなのか……どこにそんな情報が?」

 

「SNSで本人が語っていますね」

 

「赤裸々ー。しかし、俺にもとうとう後追い(フォロワー)が出るようになったか……」

 

「そのうち徳川将軍が15人そろうのでしょうか?」

 

「そこまでくると、俺の存在が薄れそうだからやめてほしい!」

 

 ちなみにノブちゃんの動画を他にも探したら、『sheep and sleep』のRTA動画なるものが出てきた。えっ、あのゲームにクリアとかの概念あったの?

 

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